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H27院試/京都大学/数学・数理解析専攻/基礎科目II

  
   

平成27年度/京都大学大学院/理学研究科/数学・数理解析専攻の大学院入試問題の「基礎科目II」の解答の方針と解答です.

ただし,採点基準などは公式に発表されていないため,ここでの解答が必ずしも正解とならない場合もあり得るので注意してください.

なお,過去問は京都大学のホームページから入手できます.

【参考:京都大学数学教室の過去問

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問題と解答の方針

問題は7問あり,数学系志願者は問1~問5の5問を,数理解析系志願者は問1から問7から選択して5問を解答します.試験時間は3時間です.

この記事では問5まで掲載しています.

解答はこのページの下部にPDFで掲載しています.

問1

f(x),\phi(x)は区間[0,\infty)上の実数値連続関数とし,さらに\phi(x)

\phi(x)=\phi(x+1)\quad (x \ge 0)
\dint_{0}^{1}\phi(x)\,dx=1

をみたすとする.このとき,任意の実数a>0に対し,

\li_{\lambda\to\infty}\dint_{0}^{a}f(x)\phi(\lambda x)\,dx=\dint_{0}^{a}f(x)\,dx

が成り立つことを示せ.

[解答の方針]

気持ちとしては,\phi(\lambda x)は周期1/\lambdaであり,\lambdaが十分大きければ周期が非常に小さい周期関数となる.

fの連続性から,この周期1/\lambdaの中でf(x)はほとんど変化しないので,各周期の中ではほとんど定数f(x)=Aとみなせる.よって,各周期の中での積分の値はほとんどA/\lambdaと考えられる.

この考え方を正当化するためには,積分区間を1/\lambdaずつに区切る必要がある.または,もともと\phiが周期1の周期関数であることから,y=\lambda xと変数変換すれば\phi(y)が現れるので区間を1ずつに区切って考えれば良い.

Riemann-Lebesgueの定理を知っていれば,問題の主張のイメージは掴めるであろう.

問2

nを正の整数とし,An次実正方行列で,交代行列であるとする.すなわちAの転置行列{}^{t}A-Aに一致するとする.このとき,以下の問に答えよ.

(i) 任意の列ベクトルu\in\R^nに対し\|(E-A)u\|\ge\|u\|が成立することを示せ.ただしEは単位行列であり,\|u\|はユークリッドノルム\sqrt{{}^{t}uu}である.

(ii) E-Aは正則行列であり,(E+A)(E-A)^{-1}は直交行列となることを示せ.

[解答の方針]

(i) \|(E-A)u\|^2\ge\|u\|^2を示せば良い.すなわち{}^{t}((E-A)u)(E-A)u\ge{}^{t}uuを示せばよい.これは左辺を変形していけば示すことができる.

(ii) 前半は(i)を用いて背理法により示す.後半は(E+A)(E-A)^{-1}の逆行列が(E-A)(E+A)^{-1}であるから,

(E-A)(E+A)^{-1}={}^{t}\bra{(E+A)(E-A)^{-1}}

を示せば良い.なお,E+Aも正則であることにはしっかり言及しておくべきだろう.

問3

aを正の実数とするとき,次の広義積分を求めよ.

\dint_{-\infty}^{\infty}\f{x\sin{x}}{(x^2+a^2)^2}\,dx

[解答の方針]

f(z)=\f{ze^{iz}}{(z^2+a^2)^2}とおいて,上半円とその直径の経路で留数定理を用いる.必要なのは\sinなので,最終的に虚部をとれば良い.

問4

1以上3500以下の整数xのうち,x^3+3x3500で割り切れるものの個数を求めよ.

[解答の方針]

\Z/3500\Zでのx^3+3x=0の解の個数を求めればよい.中国式剰余定理より,

\Z/3500\Z\cong\Z/2^2\Z\times\Z/7\Z\times\Z/5^3\Z

なので,\Z/2^2\Z\Z/7\Z\Z/5^3\Zそれぞれでのx^3+3x=0の解の個数を求めてかけ合わせればよい.

問5

2次元球面

S^2=\{(x,y,z)\in\R^3|x^2 + y^2 + z^2 = 1\}

上の関数

f(x,y,z) = xy + yz + zx

の臨界点をすべて求め,それらが非退化かどうかも答えよ.ただし,p\in S^2fの臨界点であるとは,S^2pのまわりの局所座標(u,v)に関して

\pd{f}{u}(p)=\pd{f}{v}(p)=0

となることである.また,fの臨界点p

\begin{pmatrix} \ppd{f}{u}&\ppdd{f}{u}{v}\\ \ppdd{f}{v}{u}&\ppd{f}{v} \end{pmatrix}

が正則行列であるとき非退化であるという.なおこれらの定義は(u,v)のとり方にはよらない.

[解答の方針]

2次元球面の座標近傍系をとってfのヤコビ行列を計算すれば良いが,単なる直交射影などで座標近傍系をとると計算が非常に煩雑になる.

fx,y,zに対称であることに注意して,x,y,zに対称になるように斜めに直交射影をとれば,計算が楽になる.そのために回転の線型変換を用いる.

解答

解答は以下のPDFに掲載しています.

H27_基礎科目II_解答

以下は注意事項です.

  • 解答作成には万全を期していますが,論理の飛躍,誤りがあることは有り得ます.
  • 本PDFは私に著作権があります.
  • 無断複製,無断転載は一切禁止します.これらの行為が認められた場合は,止むを得ず法的手段に出ることがあります.

この解答が大学院受験生の一助になれば幸いです.

参考文献

以下の3冊は,実際に私が使用したものである.

  • 「演習大学院入試問題(数学I) 第3版」(姫野俊一/陳啓浩 共著,サイエンス社)
  • 「演習大学院入試問題(数学II) 第3版」(姫野俊一/陳啓浩 共著,サイエンス社)
  • 「詳解と演習大学院入試問題〈数学〉」(海老原円 著,数理工学社)

演習大学院入試問題

ところどころ誤植があったり,もう少しスッキリ解答できるところがあるのが残念.しかし,問題量は非常に豊富である.全2巻で,

1巻

第1編 線形代数
第2編 微分・積分学
第3編 微分方程式

2巻

第4編 ラプラス変換,フーリエ変換,特殊関数,変分法
第5編 複素関数論
第6編 確率・統計

が扱われている.

問題の種類としては発想問題よりも,ちゃんと地に足つけた考え方で解ける問題が多い.

計算量が多い問題,基本問題も多く扱われているが,試験では基本問題ほど手早く処理することが求められるので,その意味で試験への対応力が養われるであろう.(私自身,計算力があまり高くないので苦労した.)

詳解と演習大学院入試問題〈数学〉

上述の姫野氏の問題集とは対照的に,問題数はそこまで多くないが1問1問の解説が丁寧になされている.また,構成が読みやすい.

第1章 数え上げと整数
第2章 線形代数
第3章 微積分
第4章 微分方程式
第5章 複素解析
第6章 ベクトル解析
第7章 ラプラス変換
第8章 フーリエ変換
第9章 確率

典型的な問題でも複数の解法を紹介しているので,私は参考になることも多かった.個人的にはこの本には非常に好感が持てる.

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