ルベーグの優収束定理の練習|具体例から使い方を理解する

この記事では次の極限を考えます:

\begin{align*} \lim_{n\to\infty}\int_{0}^{\infty}\frac{1}{1+x^n}\,dx \end{align*}

文字$n$が入ったまま$\dint_{0}^{\infty}\dfrac{1}{1+x^n}\,dx$を計算するのは少々面倒なので,工夫して計算したいところです.

もし極限$\lim\limits_{n\to\infty}$と積分$\dint_{0}^{\infty}$の順序を交換できれば,先に極限$\lim\limits_{n\to\infty}\dfrac{1}{1+x^n}$を計算して$n$が消え,あとは普通に積分$\dint_{0}^{\infty}$をすることで値が求められます.

そのため極限$\lim$と積分$\dint$が交換できるための条件があれば嬉しいわけですが,ルベーグ積分にはこの順序交換のための条件を述べた便利な定理があり,それがこの記事のタイトルにもあるLebesgue(ルベーグ)の優収束定理です.

この記事ではLebesgueの収束定理を紹介して,上の極限を具体例としてLebesgueの収束定理の使い方を説明します.

解説動画

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【ルベーグの収束定理】「積分」と「極限」の順序交換のための定理!ルベーグ積分の便利さを知って欲しい(10分55秒)

【1分問題解説】ルベーグの収束定理 (1分00秒)

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ルベーグの収束定理

次の極限と積分の順序交換ができるための定理をLebesgueの優収束定理 (dominated convergence theorem)または単にLebesgueの収束定理といいます.

[ルベーグの優収束定理] 可測集合$A$上の可測関数列$\{f_n\}$は$A$上各点収束するとする.このとき,ある$A$上可積分関数$g$が存在して,任意の$n$に対して

\begin{align*} |f_n(x)|\le g(x)\quad \mrm{a.e.}\ x\in A \end{align*}

を満たすなら,次の等式が成り立つ:

\begin{align*} \lim_{n\to\infty}\int_{A}f_n(x)\,dx =\int_{A}\lim_{n\to\infty}f_n(x)\,dx. \end{align*}

この定理の中で重要なのは

  • 任意の$n$と(ほとんど)全ての$x\in A$に対して$|f_n(x)|\le g(x)$
  • $A$上可積分:$\int_{A}g(x)\,dx<\infty$

を満たす関数$g$がとれることですね.

つまり,$n$によらず$f_n$たちを上からおさえられる可積分関数$g$をとれれば良いわけですね.

また,この$g$は$n$によらない関数であることに注意してください.

$|f_n|\le g$が成り立つことから,この関数$g$を$\{f_n\}$の優関数といいます.

ルベーグの収束定理の具体例

冒頭に挙げた極限をLebesgueの収束定理を用いて求めましょう.

$n\in\N$とする.極限

\begin{align*} \lim_{n\to\infty}\int_{0}^{\infty}\frac{1}{1+x^{n}}\,dx \end{align*}

を求めよ.

広義積分とみて,任意の$\epsilon>0$に対して,積分区間を

\begin{align*} [0,1-\epsilon)\cup[1-\epsilon,1+\epsilon)\cup[1+\epsilon,\infty) \end{align*}

と分け,$[0,1-\epsilon)$と$[1+\epsilon,\infty)$上一様収束を示すことで極限と積分の順序交換することもできますが,慣れてしまえばLebesgueの収束定理の方が手軽に感じられるでしょう.

解答例


$n\to\infty$を考えるので$n\ge2$としてよい.

(i) 任意の$n\in\N$に対して,関数$f_n:[0,\infty)\to\R$を

\begin{align*} f_n(x):=\frac{1}{1+x^{n}} \end{align*}

で定める.$f_n$は連続だから可測関数であり,関数列$\{f_n\}$は$n\to\infty$で$[0,\infty)$上で各点収束する:

\begin{align*} \lim_{n\to\infty}f_n(x)=\begin{cases}1&x\in[0,1),\\\frac{1}{2}&x=1,\\0&x\in(1,\infty)\end{cases} \end{align*}

(ii) また,関数$g:[0,\infty)\to\R$を

\begin{align*} g(x):=\frac{2}{1+x^{2}} \end{align*}

で定める.

Rendered by QuickLaTeX.com

このとき,$g$, $f_n$はともに単調減少なので,$x\in[0,1]$なら

\begin{align*} |f_n(x)|\le f_n(0)=1=g(1)\le g(x) \end{align*}

であり,$x\in(1,\infty)$なら

\begin{align*} |f_n(x)|\le\frac{1}{1+x^{2}}<g(x) \end{align*}

だから,$[0,\infty)$上で$|f_n|\le g$が成り立つ.

(iii) $g$は$[0,\infty)$上で可積分である:

\begin{align*} \int_{0}^{\infty}g(x)\,dx =\brc{2\tan^{-1}{x}}_{0}^{\infty} =\pi<\infty \end{align*}

(i)-(iii)から,Lebesgueの収束定理を適用できて,問題の極限は

\begin{align*} &\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{\infty}f_n(x)\,dx =\int_{0}^{\infty}\lim_{n\to\infty}f_n(x)\,dx \\=&\int_{[0,1)}1\,dx+\int_{\{1\}}\frac{1}{2}\,dx+\int_{(1,\infty)}0\,dx \\=&1+0+0=1 \end{align*}

を得る.

$f_n(x)=\frac{1}{1+x^n}$とみて

  • (i)で$\{f_n\}$が各点収束すること
  • (ii)で$g$が$\{f_n\}$の優関数であること
  • (iii)で$g$が可積分であること

を示していますね.

優関数$g$のとり方

優関数$g$はさまざまなとり方が有り得ます.

例えば,

\begin{align*} g(x)=\begin{cases}1&(0\le x\le 1)\\\frac{1}{x^2}&(1<x)\end{cases} \end{align*}

で関数$g:[0,\infty)\to\R$を定めると,この$g$も優関数で可積分となります.

Rendered by QuickLaTeX.com

Lebesgueの収束定理を適用するには優関数が1つでも存在することを示せば良いので,この$g$をとってきても良いわけですね.

参考文献

以下は参考文献です.

ルベグ積分入門

[吉田洋一 著/ちくま学芸文庫]

初学者向けに丁寧に書かれたルベーグ積分の入門書です.

初版は1965年でもとは培風館から出版されていましたが,現在は筑摩書房より出版されているロングセラーの教科書です.

現在は文庫ですが内容は培風館の時と同じくきちんと専門的で,文庫になったことで1500円程度とずいぶん安く購入できるようになりました

第1章ではリーマン積分と比べてルベーグ積分がどのように「良い積分」となっているのか説明されているのは初学者がルベーグ積分のイメージをつくる際に役立ちますね.

また,第2章で「集合と写像の基本事項」について説明しており,数学的な基礎が不安な人にも配慮されています.

ルベーグ積分の重要定理である「ルベーグの収束定理」(テキストの表記では「Lebesgueの項別積分定理」)は第5章にあります.

なお,第6章ではルベーグ積分と微分の関係,第7章では多変数のルベーグ積分,第8章以降では速度論の一般論が説明されています.

最後までありがとうございました!

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