平成26年度/京都大学大学院/理学研究科/数学・数理解析専攻の大学院入試問題の「専門科目」の解答の方針と解答です.
ただし,採点基準などは公式に発表されていないため,ここでの解答が必ずしも正解とならない場合もあり得るので注意してください.
なお,過去問は京都大学のホームページから入手できます.
【参考:京都大学数学教室の過去問】
大学院入試の解答に関する記事一覧はこちら
問題
問題は12問あり,数学系志願者は問1~問10から選択して2問を,数理解析系志願者は問1〜問12から選択して2問を解答します.試験時間は3時間です.
この記事では問6,問7,問8を掲載しています.
- 解答作成には万全を期していますが,論理の飛躍,誤りがあることは有り得ます.
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問6
$f$を$\R$上の実数値$C^1$級関数とする.さらに,
が成り立っているとする.このとき以下を示せ.
(i) $g(x)=xf(x)^2$とおくと,$g’$は$\R$上可積分であり,$\lim\limits_{x\to\pm\infty}g(x)=0$となる.
(ii) $\dint_{-\infty}^{\infty}f(x)^2\,dx\le2\brb{\dint_{-\infty}^{\infty}x^2f(x)^2\,dx}^{1/2}\brb{\dint_{-\infty}^{\infty}f'(x)^2\,dx}^{1/2}$.
問7
$H$を実Hilbert空間とし,$T$を$H$上のコンパクト作用素とする.任意の$x\in H$に対して,$H$の点列$\{T^n{x}\}_{n=1}^{\infty}$が$n\to\infty$のとき0に弱収束しているとする.以下の問に答えよ.
(i) $H$の点列$\{T^n{x}\}_{n=1}^{\infty}$が$n\to\infty$のとき0に強収束していることを示せ.(補足説明:(i)で強収束とは,$H$のノルムに関する収束を意味する.)
(ii) 作用素列$\{T^n{x}\}_{n=1}^{\infty}$は0に作用素ノルムで収束していることを示せ.
問8
$C^2$級関数$u:\R^2\to\R$はすべての$(t,x)\in\R^2$で次の方程式をみたす.
このとき,$\R$上の3つの実数値関数$E$, $v_{+}$, $v_{-}$を次で定める.
ただし,複号同順である.
以下の問に答えよ.
(i) $\frac{dE}{dt}(t)$を関数$v_{\pm}$とその導関数を用いて表し,$E(t)$が$t\in\R$について単調増加であることを示せ.
(ii) $\sup\limits_{t\ge0}E(t)<\infty$なら,$\lim\limits_{t\to\infty}v_{\pm}(t)=0$となることを示せ.
参考文献
以下の問題集は,実際に私が大学院入試対策で使用したものである.
演習 大学院入試問題
まえがきに「修士の基礎数学の問題の範囲は,ほぼ本書中に網羅されている」と書かれているように,広い分野から問題が豊富に掲載されている.
全2巻で,
- 1巻 第1編 線形代数
1巻 第2編 微分・積分学
1巻 第3編 微分方程式 - 2巻 第4編 ラプラス変換,フーリエ変換,特殊関数,変分法
2巻 第5編 複素関数論
2巻 第6編 確率・統計
が扱われている.
問題の種類としては発想問題よりも,ちゃんと地に足つけた考え方で解ける問題が多い.
計算量が多い問題,基本問題も多く扱われているが,試験では基本問題ほど手早く処理することが求められるので,その意味で試験への対応力が養われるであろう.(私自身,計算力があまり高くないので苦労した.)
目次や詳しい内容は以下の記事を参照してください.
数学系の大学院入試の問題集である.まえがきで「修士の基礎数学の問題の範囲は,ほぼ本書中に網羅されている」とあるように,幅広い分野から豊富に問題が掲載されている.
詳解と演習大学院入試問題〈数学〉
上述の姫野氏の問題集とは対照的に,問題数はそこまで多くないが1問1問の解説が丁寧になされている.また,構成が読みやすい.
第1章 数え上げと整数
第2章 線形代数
第3章 微積分
第4章 微分方程式
第5章 複素解析
第6章 ベクトル解析
第7章 ラプラス変換
第8章 フーリエ変換
第9章 確率
典型的な問題でも複数の解法を紹介しているので,私は参考になることも多かった.
個人的に,この本は非常に好感が持てる良書であった.
目次や詳しい内容は以下の記事を参照してください.
数学系の大学院入試の問題集である.受験生が間違いやすいポイントや解法のコツなども書かれているので,数学的な考え方を身に付けることができる好著である.