例えば,実数係数の多項式全部の集合
は通常の和とスカラー倍により線形空間となります.また,実数係数の2次以下の多項式全部の集合
も通常の和とスカラー倍により線形空間となります.
いま
この記事では
- 線形部分空間の定義
- 線形部分空間であることの証明の例題
- 線形部分空間の基本性質
を順に解説します.
列ベクトルの線形空間

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線形部分空間の定義
まずは線形部分空間を定義します.
もとの
一方,
また,定義の条件について
- 任意の
に対して が成り立つことを, は の和について閉じている - 任意の
, に対して が成り立つことを, は のスカラー倍について閉じている
といいます.
のちに示すように,(2)の条件はもう少し便利に書き換えることもできます.
線形部分空間であることの証明の例題
線形部分空間であることの証明では
- 空集合でない
- 和について閉じている
- スカラー倍について閉じている
を示すのがテンプレートです.
例1(多項式の線形部分空間)
冒頭で挙げた多項式の線形空間
実数係数の多項式全部の線形空間
は
零多項式
よって,
和について閉じていることの証明
任意の
和
となっており,
スカラー倍について閉じていることの証明
任意の
スカラー倍
となっており,
具体的には,
も
も
上の解答では,このように
一般に
例2( の線形部分空間)
基本的な線形空間である実数成分の
が
- (第1成分)+(第2成分)+(第3成分)=0
- (第1成分)-(第3成分)=0
を満たす
よって,
和について閉じていることの証明
任意に
を満たす.和
となっており,
スカラー倍について閉じていることの証明
任意に
を満たす.スカラー倍
となっており,
例3(数列の線形部分空間)
実数列の線形空間
実数列全部の線形空間
が
よって,
和について閉じていることの証明
任意に
を満たす.和
となっており,
スカラー倍について閉じていることの証明
任意に
を満たす.スカラー倍
となっており,
線形部分空間の基本性質
ここでは2つの性質を証明します.
和・スカラー倍が閉じていることの言い換え
線形空間
- 任意の
, に対して が成り立つ. - 任意の
, に対して が成り立つ. - 任意の
, に対して が成り立つ.
この命題の(1)は
(1)では和とスカラー倍が閉じていることを別々に証明することになりますが,(2), (3)はひとつの式を証明すればよいので(1)よりも手軽です.
の証明
任意に
が成り立つ.よって,(2)が従う.
の証明
任意に
が成り立つ.よって,(3)が従う.
の証明
任意に
が成り立つ.よって,(1)が従う.
この証明では例えば
他の
線形部分空間が線形空間であること
線形空間
[1]和について
- 任意の
に対し, - 任意の
に対し, ( は の零ベクトル) - 任意の
に対し, - 任意の
に対し,
[2]スカラー倍について
- 任意の
, に対し, - 任意の
に対し,
[3]和とスカラー倍について
- 任意の
, に対し, - 任意の
, に対し
また,
が成り立つ.よって,(2), (3)も
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