関数解析一覧

バナッハ空間とヒルベルト空間の完備でない部分空間の例

ノルムが備わっている線形空間をノルム空間,内積が備わっている線形空間を内積空間といいます.

ノルム空間,内積空間は元の大きさを測ることができる線形空間ということができ,解析学では頻繁に用いられます.

また,完備なノルム空間をBanach(バナッハ)空間,完備な内積空間をHilbert(ヒルベルト)空間といいます.

Banach空間/Hilbert空間はもとより線型空間なので線型空間としての部分空間を考えることができ,部分空間に元の空間と同じノルム/内積を与えたものはノルム空間/内積空間となります.

しかし,このノルム/内積を備えた部分空間が完備性をもつとは限りません.

つまり

  • Banach空間$V$の部分空間が,$V$と同じノルムでBanach空間になるとは限らない
  • Hilbert空間$V$の部分空間が,$V$と同じ内積でHilbert空間になるとは限らない

というわけですね.

本稿では,Banach空間/Hilbert空間の部分ノルム空間/部分内積空間で完備でないものの例を考えます.

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弱Lp有界性とマルチンキーヴィッツの実補間定理

関数空間の補間定理として,[Marcinkiewicz(マルチンキーヴィッツ)の実補間定理]があります.

定義はのちに述べますが,作用素の$L^p$有界性には

  • (普通の)$L^p$有界性
  • 弱$L^p$有界性

があります.名前からも分かるように,作用素$T$が$L^p$有界であれば弱$L^p$有界となります.

[Marcinkiewiczの実補間定理]は,ある種の三角不等式を満たす作用素$T$が

  • 弱$L^1$有界性
  • 弱$L^q$有界性 ($1<q$)

をもつとき,任意の$p\in(1,q)$に対して作用素$T$が$L^p$有界性をもつことを保証する定理です.つまり,両端$L^1$と$L^q$で弱有界であれば,その間で$L^p$有界となるわけですね.

この「両端は弱でよい」というのが[Marcinkiewiczの実補間定理]の優れた点で,加えて[Marcinkiewiczの実補間定理]は線形でない作用素に適用できる点も優れています.

なお,「マルチンキェーヴィツ」がMarcinkiewiczの正確な発音に近いようです.

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双対性議論(duality argument)について

$p\in[1,\infty)$に対して,$p’=\bra{1-\frac{1}{p}}^{-1}$で$p’\in(1,\infty]$を定める(すなわち,$p$と$p’$はHölder共役).

このとき,$L^{p}$の共役空間(双対空間)$(L^{p})^{*}$が$L^{p’}$と同型であることはよく知られているが,この事実を示すことは簡単ではない.

しかし,この双対的な議論をするとき,$(L^{p})^{*}\cong L^{p’}$まで用いる必要はなく,任意の$v\in L^{p’}(\Omega)$に対して,

    \begin{align*} \|v\|_{L^{p'}(\Omega)} =\sup_{\|u\|_{L^{p}(\Omega)}=1}\abs{\int_{\Omega}u(x)v(x)\,dx} \end{align*}

が成り立つことを用いれば十分なことも多い.

この記事では,この等式に関する証明を行う.

なお,$\Omega\subset\R^N$に対して,$I_{\Omega}$を$\Omega\subset\R^N$上の定義関数とする.

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Riesz-Thorinの複素補間定理とその証明

作用素の中でも,有界作用素は様々な良い性質をもつ.

作用素の有界性を保証する定理の一つとして,[Riesz(リース)-Thorin(ソリン,トーリン)の複素補間定理]がある.

[Riesz-Thorinの複素補間定理]は以下のように述べられる.

作用素$T$が$L^{p_0}$から$L^{q_0}$への有界作用素,かつ$L^{p_1}$から$L^{q_1}$への有界作用素でもあるとき,$T$は$L^{p_{\theta}}$から$L^{q_{\theta}}$への有界作用素となる.

ここに,$p_{\theta}$, $q_{\theta}$は次の通りである.

    \begin{align*} p_{\theta}:=\bra{\frac{1-\theta}{p_0}+\frac{\theta}{p_1}}^{-1},\quad q_{\theta}:=\bra{\frac{1-\theta}{q_0}+\frac{\theta}{q_1}}^{-1} \end{align*}

なお,座標平面上の点$(p_{\theta},q_{\theta})$は2点$(p_0,q_0)$, $(p_1,q_1)$を結ぶ線分の内分点である.

すなわち,ある2点$(p,q)=(p_0,q_0),(p_1,q_1)$で作用素$T$が$L^p$から$L^q$への有界作用素であれば,その2点を結ぶ線分上の任意の点$(p’,q’)$においても,$T$が$L^{p’}$から$L^{q’}$への有界作用素となる.

このように,ある2つの状況で成り立っており,それらの間でも成り立つことを保証する定理を補間定理という.

[Riesz-Thorinの複素補間定理]の証明には,[Hadamard-Phragmén-Lindelöfの三線定理]を用いる.

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ストーンの定理|強連続ユニタリ群になるための必要十分条件

Hilbert空間上の有界線形作用素の族$\{T_t\}_{t\in\R}$が強連続ユニタリ群になるための必要十分条件を与える[Stoneの定理]について説明します.

類似の定理としては[Hille-Yosidaの定理]があり,こちらはBanach空間上の線形作用素$A$が半群$\{T_t\}_{t\in\R}$の生成作用素となる必要十分条件を述べる定理です.

[Hille-Yosidaの定理]から[Stoneの定理]を証明することができるので[Hille-Yosidaの定理]があれば十分ですが,歴史的には[Stoneの定理]の方が先に証明されています.

また,[Stoneの定理]はHilbert空間の有界線形作用素の場合に限るためシンプルで分かりやすいので,[Hille-Yosidaの定理]の特別な場合として[Stoneの定理]を学んでおくのもよいでしょう.

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