連結性2
集合が「連結」であることの定義と具体例

位相空間$X$に対して,集合$A\subset X$が「ひとまとまりになっていること」を表す概念として

  • 連結性
  • 弧状連結性

があります.

集合$A$内の任意の2点を$A$内の連続曲線で結べるとき$A$は弧状連結であるといいますが,この弧状連結性については前回の記事で定義と具体例を説明しました.

一方,集合$A$が2つの開集合によって分けることができないとき$A$は連結であるといいます.

なお,連結性も弧状連結性も「集合に離れた点がないこと」を表す概念ではありますが,実は「弧状連結$\Ra$連結」は成り立つものの逆は成り立ちません.つまり,連結性の方が少し広い性質となっています.

この「逆が成り立たないこと」については次の記事に回すとし,この記事では

  • 連結性の定義
  • 連結な集合の具体例

を説明します.

解説動画

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「【連結・弧状連結】「集合がひとまとまり」ってどう考える?」(10分50秒)

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連結性の定義と弧状連結性との関係

この記事では$X$を位相空間としますが,位相空間をよく知らない方は2次元ユークリッド空間$\R^2$($xy$平面)と思って読み進めても問題ありません.

連結性の定義

早速,連結性を定義しましょう.

[連結] 集合$A\subset X$が連結であるとは,次の条件を満たす空でない開集合$U_{1},U_{2}\subset X$が存在しないことをいう:

\begin{align*} A\subset U_{1}\cup U_{2},\quad U_{1}\cap U_{2}=\emptyset,\quad A\cap U_{i}\neq\emptyset\ (i=1,2). \end{align*}

上記の条件を満たす$U_{1}$, $U_{2}$が存在「しない」ときに連結ということに注意してください.

要は2つの開集合$U_{1}$, $U_{2}$で集合$A$を分解できるとき,集合$A$は「ひとまとまり」になっているとは言えないというイメージですね.

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連結性と弧状連結性との関係

冒頭でも説明したように次が成り立ちます.

[連結性と弧状連結性] $A\subset X$とする.$A$が弧状連結なら,$A$は連結である.

弧状連結な集合とは「任意の2点をつなぐ連続曲線が存在する集合」のことですが,詳しくは前回の記事を参照してください.


背理法により示す.すなわち,弧状連結な$A$が連結でないと仮定して矛盾を導く.

$A$は連結でないから

\begin{align*} A\subset U_{1}\cup U_{2},\quad U_{1}\cap U_{2}=\emptyset,\quad A\cap U_{i}\neq\emptyset\ (i=1,2). \end{align*}

なる開集合$U_{1},U_{2}\subset X$が存在する.

このとき,任意の$a\in A\cap U_{1}$, $b\in A\cap U_{2}$に対して,$a,b\in A$だから$A$の弧状連結性より$f(0)=a$, $f(1)=b$なる連続曲線$f:[0,1]\to A$が存在する.

\begin{align*} V_i:=f^{-1}(A\cap U_i)\quad(i=1,2) \end{align*}

で$V_1,V_2\subset[0,1]$を定め,$[0,1]$を通常の距離(位相)をもつ$\R$の部分位相空間とする.

$A$を$X$の部分位相空間とみると,$i=1,2$に対して$A\cap U_i$は開だから$V_i:=f^{-1}(A\cap U_i)$は$\R$上の開集合で,さらに次が成り立つ.

\begin{align*} [0,1]\subset V_{1}\cup V_{2},\quad V_{1}\cap V_{2}=\emptyset,\quad [0,1]\cap V_{i}\neq\emptyset\ (i=1,2). \end{align*}

これにより$[0,1]$は$\R$で連結でないことになるが,次節「連結な集合の具体例」の例1から$[0,1]$は連結だから矛盾する.

要は「2つの空でない開集合$U_1$, $U_2$で$A$を分割できるなら,2点$a\in U_1$, $b\in U_2$を$A$上の曲線で結ぶことはできない」ということを証明したわけですね.

これも冒頭で説明したように,この逆は成り立ちません.つまり,連結であっても弧状連結であるとは限りません.

この「連結であるが弧状連結ではない集合」の具体例は次の記事を参照してください.

連結な集合の具体例

例1で連結な集合を,例2で連結でない集合を扱います.

例1

$\R$は通常の位相が定められた位相空間とする.すなわち,1次元ユークリッド空間とする.集合$[0,1]\subset\R$は連結であることを示せ.

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背理法により示す.すなわち,$I:=[0,1]$が連結でないと仮定して矛盾を導く.

$I$は連結でないから

\begin{align*} I\subset V_{1}\cup V_{2},\quad V_{1}\cap V_{2}=\emptyset,\quad I\cap V_{i}\neq\emptyset\ (i=1,2). \end{align*}

なる開集合$V_{1},V_{2}\subset I$が存在する.

$V_1$, $V_2$は対称なので$1\in V_2$としてよく,さらに$a:=\sup{(I\cap V_1)}$とする.

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$V_1$は開集合だから$a\not\in V_1$であり,$I\subset V_{1}\cup V_{2}$と併せると$a\in V_2$である.

$V_2$は開集合だから$a$のある近傍$V$が存在して$V\subset V_2$となるが,$a=\sup V_1$より$V\cap V_1\neq\emptyset$となって$V_{1}\cap V_{2}=\emptyset$に矛盾する.

一般に$\R$上の任意の区間は連結です.

例2

$\R^2$は通常の位相が定められた位相空間とする.すなわち,2次元ユークリッド空間とする.$A\subset\R^2$を

\begin{align*} A=\set{\bmat{x\\0}\in\R^2}{x\neq0} \end{align*}

とすると,$A$が連結でないことを示せ.

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$A$は$x$軸から原点を除いた集合ですね.前回の記事でこの集合$A$が弧状連結でないことを示しました.

このことと先ほど説明した定理[連結性と弧状連結性]から$A$は連結でないことが分かりますが,ここでは連結性の定義から示しましょう.


$U_i\subset\R^2$ ($i=1,2$)を次で定める.

\begin{align*} U_1=\set{\bmat{x\\y}\in\R^2}{x>0},\quad U_2=\set{\bmat{x\\y}\in\R^2}{x<0}. \end{align*}

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このとき,

\begin{align*} A\subset U_{1}\cup U_{2},\quad U_{1}\cap U_{2}=\emptyset,\quad A\cap U_{i}\neq\emptyset\ (i=1,2). \end{align*}

を満たすので,$A$は連結でない.

参考文献

集合・位相入門

[松坂和夫 著/岩波書店]

本書は「集合論」「位相空間論」をこれから学ぶ人のための入門書です.

説明が丁寧で行間が少ないのは初学者にありがたいところですね.

実際,本書は1968年に発刊されて以来売れ続けている超ロングセラーで,2018年に新装版が発売されたことからも現在でも教科書として広く使われていることが分かります.

具体例が多く扱われているのも特徴で,新しい概念のイメージも掴みやすいように書かれています.

また,各セクションの終わりに少なくない数の演習問題も載っており,演習書的な使い方もできます.

なお,本書については,以下の記事で書評としてまとめています.

集合と位相

[鎌田正良 著/近代科学社(現代数学ゼミナール)]

本書はすっきりと書かれた「集合論」「位相空間論」の教科書です.

簡潔な説明が多いので,集合と位相の基本の全体像をさらうのに適しています.

裏返せば簡潔すぎてかえって分かりにくい可能性もありますが,数学をきちんと学びたい人には是非読みこなして欲しいテキストです.

また,演習問題の解説も丁寧に書かれているので,この点は独学で学ぶ場合には重宝します.

背景にある位相の圏論的な性質も踏まえて解説されており,数学系の学生は是非とも理解しておきたい考え方です.