1/xᵖの2種類の広義積分|収束・発散するためのpの条件

微分積分学
微分積分学

微分積分学では$\dfrac{1}{x^p}$の広義積分として

    \begin{align*}\int_{0}^{1}\frac{1}{x^p}\,dx,\quad \int_{1}^{\infty}\frac{1}{x^p}\,dx\end{align*}

の2種類がよく現れます.

そのため,これらの広義積分が収束・発散するための$p$の必要十分条件は当たり前にしておきたいところです.

この記事では

  • $\dfrac{1}{x^p}$の$(0,1]$上の広義積分の収束・発散
  • $\dfrac{1}{x^p}$の$[1,\infty)$上の広義積分の収束・発散

を順に説明します.

広義積分の定義の確認

通常のリーマン積分は有界閉区間上で有界な関数に対して定義されます.

これに対して,積分区間が有界閉区間でなかったり,非有界な関数に対して定義する積分を広義積分(広義リーマン積分)といいますね.

ルベーグ積分に対しては広義積分という概念がない(ルベーグ積分は可測集合であれば有界・非有界関係なく考えられる)ので,「広義積分」と書いた時点で広義リーマン積分を意味します.

$a\in\R$とし,$b$は実数か$\infty$であるとする.区間$[a,b)$上で定義された関数$f$を考える.任意の$t\in[a,b)$に対して$f$が$[a,t]$上で有界であるとし,

    \begin{align*}\lim_{t\to b-0}\int_{a}^{t}f(x)\,dx\end{align*}

が収束するとき,$f$は$[a,b)$で広義積分可能であるといい,この極限を$\dint_{a}^{b}f(x)\,dx$と表し$f$の$[a,b)$上の広義積分という.

$f$は$[a,b)$上で定義されるので,任意の$t\in[a,b)$に対して有界閉区間$[a,t]$で有界なら$f$の$[a,t]$上の通常のリーマン積分が定義できます.

このため,いったん$b$より手前の$t$までの通常のリーマン積分を考えて,そのあと$t\to b$とすることで$[a,b)$上の広義積分を定義するわけですね.

また,$(a,b]$上の広義積分や$(a,b)$上の広義積分も同様に定義します.

${1/x^p}$の$(0,1]$上の広義積分の収束・発散

関数$f(x)=\dfrac{1}{x^p}$の$(0,1]$上での広義積分

    \begin{align*}\int_{0}^{1}\frac{1}{x^p}\,dx=\lim_{t\to+0}\int_{t}^{1}\frac{1}{x^p}\,dx\end{align*}

を考えましょう.

$p$が小さいほど収束しやすい

一般に広義積分が収束するためには,被積分関数の絶対値がそれほど大きくならないことが大切です.

例えば$p=\dfrac{1}{2}$のときと$p=2$のときを比較すると,$(0,1]$上で$0<\dfrac{1}{x^{1/2}}\le\dfrac{1}{x^2}$ですから,$\dint_{0}^{1}\dfrac{1}{x^2}\,dx$よりも$\dint_{0}^{1}\dfrac{1}{x^{1/2}}\,dx$の方が収束しやすいですね.

実際,$p=\dfrac{1}{2},2$の場合は,$t\in(0,1]$に対して

    \begin{align*}&\int_{t}^{1}\frac{1}{x^{1/2}}\,dx=\int_{t}^{1}x^{-1/2}\,dx=\brc{2x^{1/2}}_{t}^{1}=2-2t^{1/2}, \\&\int_{t}^{1}\frac{1}{x^2}\,dx=\int_{t}^{1}x^{-2}\,dx=\brc{-x^{-1}}_{t}^{1}=-1+t^{-1}\end{align*}

なので,$t\to+0$とすると$p=\dfrac{1}{2}$のときは収束し,$p=2$のときは発散することが分かりますね.

収束・発散の$p$の条件

このように,広義積分$\dint_{0}^{1}\dfrac{1}{x^p}\,dx$は$p$が小さいほど収束しやすく,詳しくは次のようになります.

$p\in\R$に対して,次が成り立つ.

    \begin{align*}\int_{0}^{1}\frac{1}{x^p}\,dx=\begin{cases}\infty,&p\ge1\\\frac{1}{1-p},&p<1.\end{cases}\end{align*}

つまり,広義積分$\dint_{0}^{1}\dfrac{1}{x^p}\,dx$は$p=1$で収束・発散が変わるわけですね.また,境界の$p=1$で発散することも当たり前にしておきましょう.

[1]$p=1$のとき,任意の$t\in(0,1]$に対して,

    \begin{align*}\int_{t}^{1}\frac{1}{x^p}\,dx=\int_{t}^{1}\frac{1}{x}\,dx=[\log{|x|}]_{t}^{1}=-\log{t}\end{align*}

だから,広義積分は

    \begin{align*}\int_{0}^{1}\frac{1}{x^p}\,dx=\lim_{t\to+0}\int_{t}^{1}\frac{1}{x^p}\,dx=\lim_{t\to+0}(-\log{t})=\infty\end{align*}

と発散する.

[2]$p\neq1$のとき,任意の$t\in(0,1]$に対して,

    \begin{align*}\int_{t}^{1}\frac{1}{x^p}\,dx=\brc{\frac{1}{1-p}x^{1-p}}_{t}^{1}=\frac{1}{1-p}(1-t^{1-p})\end{align*}

だから,広義積分は

    \begin{align*}\int_{0}^{1}\frac{1}{x^p}\,dx=\lim_{t\to+0}\int_{t}^{1}\frac{1}{x^p}\,dx=\begin{cases}\infty,&x>1\\\frac{1}{1-p},&x<1.\end{cases}\end{align*}

と収束・発散する.

${1/x^p}$の$[1,\infty)$上の広義積分の収束・発散

関数$f(x)=\dfrac{1}{x^p}$の$[1,\infty)$上での広義積分

    \begin{align*}\int_{1}^{\infty}\frac{1}{x^p}\,dx=\lim_{t\to\infty}\int_{1}^{t}\frac{1}{x^p}\,dx\end{align*}

を考えましょう.

$p$が大きいほど収束しやすい

先ほどの$(0,1]$上での広義積分と同様に,被積分関数の絶対値がそれほど大きくならないことが広義積分が収束するためには大切です.

ここでも$p=\dfrac{1}{2}$のときと$p=2$のときを比較すると,$[1,\infty)$上で$0<\dfrac{1}{x^2}\le\dfrac{1}{x^{2/1}}$ですから,$\dint_{1}^{\infty}\dfrac{1}{x^{1/2}}\,dx$よりも$\dint_{1}^{\infty}\dfrac{1}{x^{2}}\,dx$の方が収束しやすいですね.

実際,$p=\dfrac{1}{2},2$の場合は,$t\in[1,\infty)$に対して

    \begin{align*}&\int_{1}^{t}\frac{1}{x^{1/2}}\,dx=\int_{1}^{t}x^{-1/2}\,dx=\brc{2x^{1/2}}_{1}^{t}=2t^{1/2}-2, \\&\int_{1}^{t}\frac{1}{x^2}\,dx=\int_{1}^{t}x^{-2}\,dx=\brc{-x^{-1}}_{1}^{t}=-t^{-1}+1\end{align*}

なので,$t\to\infty$とすると$p=2$のときは収束し,$p=\dfrac{1}{2}$のときは発散することが分かりますね.

収束・発散の$p$の条件

このように,広義積分$\dint_{1}^{\infty}\dfrac{1}{x^p}\,dx$は$p$が大きいほど収束しやすく,詳しくは次のようになります.

$p\in\R$に対して,次が成り立つ.

    \begin{align*}\int_{1}^{\infty}\frac{1}{x^p}\,dx=\begin{cases}\infty,&p\le1\\\frac{1}{p-1},&p>1.\end{cases}\end{align*}

つまり,広義積分$\dint_{1}^{\infty}\dfrac{1}{x^p}\,dx$は$p=1$で収束・発散が変わるわけですね.また,境界の$p=1$で発散することも当たり前にしておきましょう.

[1]$p=1$のとき,任意の$t\in[1,\infty)$に対して,

    \begin{align*}\int_{1}^{t}\frac{1}{x^p}\,dx=\int_{1}^{t}\frac{1}{x}\,dx=[\log{|x|}]_{1}^{t}=\log{t}\end{align*}

だから,広義積分は

    \begin{align*}\int_{1}^{\infty}\frac{1}{x^p}\,dx=\lim_{t\to\infty}\int_{1}^{t}\frac{1}{x^p}\,dx=\lim_{t\to\infty}\log{t}=\infty\end{align*}

と発散する.

[2]$p\neq1$のとき,任意の$t\in[1,\infty)$に対して,

    \begin{align*}\int_{1}^{t}\frac{1}{x^p}\,dx=\brc{\frac{1}{1-p}x^{1-p}}_{1}^{t}=\frac{1}{p-1}(t^{1-p}-1)\end{align*}

だから,広義積分は

    \begin{align*}\int_{1}^{\infty}\frac{1}{x^p}\,dx=\lim_{t\to\infty}\int_{1}^{t}\frac{1}{x^p}\,dx=\begin{cases}\infty,&x<1\\\frac{1}{p-1},&x>1.\end{cases}\end{align*}

と収束・発散する.

補足

積分区間が1をまたぐ場合,高次元の場合について補足します.

積分区間が1をまたぐ場合

上でみた$\dfrac{1}{x^p}$の積分区間は$(0,1]$と$[1,\infty)$でしたが,積分区間がこれら以外の広義積分の収束・発散を具体例から考えましょう.

$\dint_{0}^{2}\frac{1}{x^p}\,dx$が収束するための$p$の必要十分条件を答えよ.

問題の積分は

    \begin{align*}\int_{0}^{2}\frac{1}{x^p}\,dx &=\lim_{t\to+0}\int_{t}^{2}\frac{1}{x^p}\,dx \\&=\lim_{t\to+0}\int_{t}^{1}\frac{1}{x^p}\,dx+\int_{1}^{2}\frac{1}{x^p}\,dx\end{align*}

となり,第2項目の$\dint_{1}^{2}\frac{1}{x^p}\,dx$は通常のリーマン積分だから有限の値をとる.

よって,求める$p$の条件は$\dint_{0}^{1}\dfrac{1}{x^p}\,dx$が収束するための必要十分条件と同値で$p<1$である.

$\dint_{1/2}^{\infty}\frac{1}{x^p}\,dx$が収束するための$p$の必要十分条件を答えよ.

問題の積分は

    \begin{align*}\int_{1/2}^{\infty}\frac{1}{x^p}\,dx &=\lim_{t\to\infty}\int_{1/2}^{t}\frac{1}{x^p}\,dx \\&=\lim_{t\to\infty}\int_{1}^{\infty}\frac{1}{x^p}\,dx+\int_{1/2}^{1}\frac{1}{x^p}\,dx\end{align*}

となり,第2項目の$\dint{1/2}^{1}\frac{1}{x^p}\,dx$は通常のリーマン積分だから有限の値をとる.

よって,求める$p$の条件は$\dint_{1}^{\infty}\dfrac{1}{x^p}\,dx$が収束するための必要十分条件と同値で$p>1$である.

これらの例のように,積分空間が1をまたぐ場合も0の付近の増大,無限遠方の減衰のみが収束・発散に影響することが分かりますね.

高次元の場合

上記のように1次元の場合は$p=1$で収束・発散が変わりましたが,$d$次元の場合の広義積分

    \begin{align*}\int_{\{|x|\le1\}}\dfrac{1}{|x|^p}\,dx,\quad \int_{\{|x|\ge1\}}\dfrac{1}{|x|^p}\,dx\end{align*}

は$p=d$で収束・発散が変わります.すなわち,次のようになります.

$\R^d$の部分集合$D_1$, $D_2$を

    \begin{align*}D_1:=\set{x\in\R^d}{|x|\le1},\quad D_2:=\set{x\in\R^d}{|x|\ge1}\end{align*}

とする.このとき,$p\in\R$に対して

  • $\dint_{D_1}\dfrac{1}{|x|^p}\,dx$が収束するための必要十分条件は$p<d$
  • $\dint_{D_2}\dfrac{1}{|x|^p}\,dx$が収束するための必要十分条件は$p>d$

である.

このことは極座標変換により証明できます.例えば$d=2$のときは

    \begin{align*}x=r\cos{\theta},\quad y=r\sin{\theta}\end{align*}

とおくと,ヤコビアンは$r$なので

    \begin{align*}&\int_{D_1}\frac{1}{|x|^p}\,dx =\lim_{t\to+0}\int_{t}^{1}\bra{\int_{0}^{2\pi}\frac{r}{r^p}\,d\theta}\,dr =\lim_{t\to+0}2\pi\int_{t}^{1}\frac{1}{r^{p-1}}\,dr\end{align*}

だから,1次元の場合に帰着して$\dint_{D_1}\dfrac{1}{|x|^p}\,dx$が収束するための必要十分条件は$p-1<1\iff p<2$となりますね.

同様に

    \begin{align*}&\int_{D_2}\frac{1}{|x|^p}\,dx =\lim_{t\to+0}2\pi\int_{1}^{t}\frac{1}{r^{p-1}}\,dr\end{align*}

だから,$\dint_{D_2}\dfrac{1}{|x|^p}\,dx$が収束するための必要十分条件は$p-1>1\iff p>2$となりますね.

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