上極限と下極限のイメージ|具体例から定義と性質を理解する

実数列$\{a_n\}$に対して,極限$\lim\limits_{n\to\infty}a_n$を考えることはよくあります.

しかし,例えば一般項が$a_n=(-1)^n$の数列$\{a_n\}$は極限をもちません.

このように,数列の極限はいつでも存在するとは限らず,これによって数列の扱いが面倒になることも少なくありません.

そこで,極限の一歩手前のものとして

  • 上極限
  • 下極限

があり,上極限と下極限は($\pm\infty$を許せば)いつでも存在するという良さがあります.

上極限と下極限の定義は一見してややこしそうに見えますが,具体例を考えるとイメージはすぐに理解できるでしょう.

この記事では

  • 上極限と下極限の定義
  • 上極限と下極限の具体例
  • 上極限と下極限の性質

を説明します.

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【上極限・下極限】具体例から定義のイメージを理解する!数列の極限が存在するための必要十分条件(11分3秒)

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上極限と下極限の定義と具体例

まずは上極限と下極限の定義を説明し,具体例を考えます.

定義

実数列$\{a_n\}$に対して

  • $\overline{a_n}:=\sup_{p\ge n}a_p$
  • $\underline{a_n}:=\inf_{p\ge n}a_p$

とする.このとき

  • $\lim\limits_{n\to\infty}\overline{a_n}$
  • $\lim\limits_{n\to\infty}\underline{a_n}$

をそれぞれ数列$\{a_n\}$の上極限下極限といい,$\varlimsup\limits_{n\to\infty}a_n$, $\varliminf\limits_{n\to\infty}a_n$と表す.

上極限を$\limsup\limits_{n\to\infty}a_n$,下極限を$\liminf\limits_{n\to\infty}a_n$と表すこともあります.

言葉で説明すれば

  • $\overline{a_n}$は$\{a_n,a_{n+1},a_{n+2},\dots\}$の上限
  • $\underline{a_n}$は$\{a_n,a_{n+1},a_{n+2},\dots\}$の下限

ですね.

ただし,注意として項$\overline{a_n}$は$\infty$となることもありますし,項$\underline{a_n}$は$-\infty$となることもあります.

また,以降この記事では$\overline{a_n}$と$\underline{a_n}$はこの定義で定めたものとします.

上極限と下極限の具体例

具体例を考えましょう.

一般項が

\begin{align*} a_n=(-1)^n\bra{1+\frac{1}{n}} \end{align*}

の数列$\{a_n\}$の上極限と下極限を求めよ.

数列$\{a_n\}$を初項から順に書き並べると

\begin{align*} -2,\ \frac{3}{2},\ -\frac{4}{3},\ \frac{5}{4},\ -\frac{6}{5},\ \frac{7}{6},\ -\frac{8}{7},\ \dots \end{align*}

である.

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$\overline{a_1},\overline{a_2},\overline{a_3},\dots$は

\begin{align*} &\overline{a_1}:=\sup_{p\ge 1}a_p=a_2=\frac{3}{2}, \\&\overline{a_2}:=\sup_{p\ge 2}a_p=a_2=\frac{3}{2}, \\&\overline{a_3}:=\sup_{p\ge 3}a_p=a_4=\frac{5}{4}, \\&\overline{a_4}:=\sup_{p\ge 4}a_p=a_4=\frac{5}{4}, \\&\dots \end{align*}

となり,数列$\{a_n\}$の上極限は$\varlimsup\limits_{n\to\infty}\overline{a_n}=1$である.

また,$\underline{a_1},\underline{a_2},\underline{a_3},\dots$は

\begin{align*} &\underline{a_1}:=\inf_{p\ge 1}a_p=a_1=-2, \\&\underline{a_2}:=\inf_{p\ge 2}a_p=a_3=-\frac{4}{3}, \\&\underline{a_3}:=\inf_{p\ge 3}a_p=a_3=-\frac{4}{3}, \\&\underline{a_4}:=\inf_{p\ge 4}a_p=a_5=-\frac{6}{5}, \\&\dots \end{align*}

となり,数列$\{a_n\}$の下極限は$\varliminf\limits_{n\to\infty}\overline{a_n}=-1$である.

つまり,

  • $\{a_1,a_2,a_3,a_4,\dots\}$の上限$\overline{a_1}$は?
  • $\{a_2,a_3,a_4,a_5,\dots\}$の上限$\overline{a_2}$は?
  • $\{a_3,a_4,a_5,a_6,\dots\}$の上限$\overline{a_3}$は?
  • $\{a_4,a_5,a_6,a_7,\dots\}$の上限$\overline{a_4}$は?
  • ……

と追いかけていった極限が上極限ですね.言い換えれば,数列$\{a_n\}$の項を添字$n$の小さい方から削っていったときの上限の極限を上極限というわけですね.

また,これが上限ではなく下限なら下極限になるわけですね.

上極限と下極限の性質

それでは,上極限と下極限の性質を説明します.

上極限と下極限の存在

冒頭でも書いたように,次が成り立ちます.

任意の実数列$\{a_n\}$に対して,上極限と下極限は($\pm\infty$を許せば)常に存在する.


上極限の場合の証明も下極限の場合の証明も同様なので,上極限の場合のみ示す.

[1] $\overline{a_1}<\infty$のとき

$\{\overline{a_n}\}$は(広義)単調減少な数列である.

一般に(広義)単調減少する数列は($-\infty$を許して)極限をもつから,$\lim_{n\to\infty}a_n$が存在する.

[2] $\overline{a_1}=\infty$のとき

任意の$n\ge2$に対して,ある$N\in\N$が存在して$a_1,\dots,a_{n-1}<a_N$となるから

\begin{align*} \overline{a_n}=\overline{a_1}=\infty \end{align*}

である.よって,上極限は

\begin{align*} \varlimsup_{n\to\infty}a_n=\lim_{n\to\infty}\overline{a_n}=\infty \end{align*}

である.

この証明からも分かるように

  • $\overline{a_1}=\infty$なら上極限も$\infty$
  • $\overline{a_1}<\infty$なら上極限はある値に収束するか$-\infty$

というわけですね.

$\infty$を任意の実数より大きい「数」,$-\infty$を任意の実数より小さい「数」と捉えれば,場合分けしなくても良いですね.

上極限と下極限の不等式

上極限と下極限について,次は基本的な不等式です.

$C\in\R$とする.実数列$\{a_n\}$について,次が成り立つ.

(1) 任意の$n\in\N$に対して,$\overline{a_n}\ge\underline{a_n}$が成り立つ.
(2) ある$N\in\N$が存在して,任意の$n>N$に対して$C\le a_n$が成り立つなら,$C\le\varliminf\limits_{n\to\infty}a_n$が成り立つ.
(3) ある$N\in\N$が存在して,任意の$n>N$に対して$D\ge a_n$が成り立つなら,$D\ge\varlimsup\limits_{n\to\infty}a_n$が成り立つ.


(1) 一般に実数の集合$S$に対して$\sup S\ge \inf S$が成り立つから,任意の$n\in\N$に対して

\begin{align*} &\sup\{a_n,a_{n+a},\dots\}\ge\inf\{a_n,a_{n+a},\dots\} \\\iff&\sup_{p\ge n}a_p\ge\inf_{p\ge n}a_p \\\iff&\overline{a_n}\ge\underline{a_n} \end{align*}

が成り立つ.

(2) 任意の$n>N$に対して,$C\le a_n$が成り立つから

\begin{align*} C\le\inf_{p\ge n}a_p=\underline{a_n} \end{align*}

が成り立つ.極限は不等号の向きを保つから

\begin{align*} C=\lim_{n\to\infty}C\le\lim_{n\to\infty}\underline{a_n}=\varliminf_{n\to\infty}a_n \end{align*}

を得る.

(3) (2)と同様に成り立つ.

(2)と(3)は普通の極限でも同様のことが言えますね.

(1)で極限をとれば以下がすぐに得られますね.

実数列$\{a_n\}$に対して,$\varlimsup\limits_{n\to\infty}a_n\ge\varliminf\limits_{n\to\infty}a_n$が成り立つ.

極限と上極限・下極限

上極限と下極限を用いて,極限が存在するための必要十分条件を述べることができます.

実数列$\{a_n\}$に対して,次は同値である.

(1) 上極限と下極限が一致する.
(2) 極限$\alpha$が存在する


上極限を$S$,下極限を$I$とする.

[$(1)\Ra(2)$の証明] 対偶を示す.すなわち,数列$\{a_n\}$が極限を持たないとし,$S\neq I$が成り立つことを示す.

数列$\{a_n\}$が収束しないことから,ある$\epsilon>0$が存在して,任意の$N\in\N$に対して,ある$n>N$が存在して$a_n\le S-\epsilon$が成り立つ.

よって,上の不等式の命題より$I\le S-\epsilon$となるから$I\neq S$である.

[$(2)\Ra(1)$の証明] 任意に$\epsilon>0$をとる.

数列$\{a_n\}$が$\alpha$に収束することから,ある$N\in\N$が存在して,$n>N$なら$|a_n-\alpha|<\epsilon$が成り立つので,

  • $a_n<\alpha+\epsilon$より$S\le\alpha+\epsilon$
  • $a_n>\alpha-\epsilon$より$I\ge\alpha-\epsilon$,すなわち$-I\le -\alpha+\epsilon$

が成り立つ.これらと上の系より$0\le S-I\le2\epsilon$だから,$\epsilon$の任意性より$S=I$が成り立つ.

数列$\{a_n\}$の添字$n$が小さい項$a_n$から順に削っていくと,$\overline{a_n}$が下がってきて$\underline{a_n}$が上がっていきます.

$n\to\infty$でこれらが同じところに近付くなら,そこが極限$\lim_{n\to\infty}a_n$となっているわけですね.

解析入門

[杉浦光男 著/東京大学出版会]

解析学の教科書としては非常に有名で,理論系で解析がしっかり必要となる人は持っておいてよいテキストです.

  • 第1巻で1変数の微分積分学
  • 第2巻で多変数の微分積分学

を扱っています.本書に対応した演習書「解析演習」も出版されています.

本書の特徴としては

  • 数学的に厳密に書かれている
  • 基本的な微分積分学の知識体系は網羅されている

の2点が挙げられます.

このため,辞書的に使う教科書という位置付けて持っている人も多いようです.

なお,この記事の内容は第1巻に載っています.

微分積分学

[笠原晧司 著/サイエンス社]

微分積分学の教科書として有名な名著です.

具体例を多く扱いイメージを掴むことに重点を置きつつ,議論もきっちりしているため,大学1年生の微分積分学をしっかり学びたい人には心強い味方になると思います.

具体例のレベルは基本的なものに加えて少々難しいものも含まれているので,いろいろな具体例に触れたい人は持っておいてもよいでしょう.

このため,しっかり数学をやりたい人の微分積分学の導入としてオススメできる一冊です.

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