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シュワルツ空間の定義と完備性|急減少関数の空間を考える

|x|\to\inftyのときに任意の多項式より速く減衰する関数を急減少関数 (rapidly decreasing function)といいます.

また,急減少関数全部の集合をSchwartz(シュワルツ)空間といい,Fourier(フーリエ)変換と密接な関係をもつなど重要な関数空間の1つです.

例えば,有界区間I上で1回連続微分可能な関数の空間C^1(I)

\begin{align*} \|f\|:=\sup_{x\in I}|f(x)|+\sup_{x\in I}|f'(x)| \end{align*}

をノルムとして完備となります.

このように,適当な性質をもつ可算個のセミノルムの族を備えた完備な空間をFréchet空間といい,実はSchwartz空間もFréchet空間です.

この記事では,Schwartz空間を定義し,完備性を証明します.

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シュワルツ空間の定義

Fréchet空間の定義を確認してから,Schwartz空間を定義します.

フレシェ空間の定義

まずはセミノルムの確認です.

複素線形空間Vに対して,関数\|\cdot\|:V\to\Rセミノルム (半ノルム,semi-norm)であるとは以下を満たすことをいう.

  1. 斉次性:\|\alpha \m{v}\|=|\alpha|\|\m{v}\| (\alpha\in\C, \m{v}\in V)
  2. 劣加法性:\|\m{u}+\m{v}\|\le \|\m{u}\|+\|\m{v}\| (\m{u},\m{v}\in V)

つまり,ノルムと比べて非退化性(\|\m{u}\|=0\Ra\ \m{u}=\m{0})を備えていなくてよいものがセミノルムというわけですね.

そこで,セミノルムたちがいくつか集まって非退化性をみたすような空間で,完備となるものをFréchet空間といいます.

複素線形空間V上の可算個のセミノルムの族\{\|\cdot\|_k\}_{k\in K}は,

\begin{align*} \brc{\all k\in\{1,2,\dots\}\quad \|\m{v}\|_k=0} \Ra \m{v}=\m{0} \end{align*}

をみたすとする.このとき,Vは距離空間とみなすことができ,この距離空間が完備であるとき,VFréchet空間という.

Fréchet空間について詳しくは以下の記事を参照してください.

シュワルツ空間の定義

次に,Schwartz空間を定義します.

以下で定まる線形空間\mathcal{S}(\R^n)Schwartz空間といい,\mathcal{S}(\R^n)の元を急減少関数 (rapidly decreasing function)という:

\begin{align*} \mathcal{S}(\R^n) :=\set{f\in C^\infty(\R^n)}{\all\alpha,\beta\in\N_{\ge0}^{n}\quad \|f\|_{\alpha,\beta}:=\sup_{x\in\R^n}\abs{x^{\alpha}\partial^{\beta}f(x)}<\infty} \end{align*}

ただし,\alpha=(\alpha_1,\dots,\alpha_n), \beta=(\beta_1,\dots,\beta_n)に対して,

\begin{align*} &x^{\alpha}:=x_1^{\alpha_1}\dots x_n^{\alpha_n}, \\&\partial^{\beta}f:=\frac{\partial f}{\partial x_1^{\beta_1}\dots \partial x_n^{\beta_n}} \end{align*}

である.

Schwartz空間\mathcal{S}(\R^n)の名前はフィールズ賞受賞者のLaurent Schwartz氏に由来しており,Cauchy-Schwarzの不等式のKarl Hermann Amandus Schwarz氏とは別人です(スペルも異なります).

また,どんなx^{\alpha}をかけても有界であることから,どんな多項式の逆数よりも速く減少していることになります.

例えば,f(x)=e^{-x^2}で定まる関数fは急減少関数の例です.

このことから,急減少関数という名前がついているわけですね.

さて,Schwartz空間\mathcal{S}(\R^n)\{\|\cdot\|_{\alpha,\beta}\}_{\alpha,\beta}をセミノルムの族となり,Fréchet空間になります.

Schwartz空間\mathcal{S}(\R^n)はFourier変換と相性が非常によく,Forier変換の性質を\mathcal{S}(\R^n)で証明したのち,稠密性を用いて他の関数空間に拡張することがよく行われます.

別のセミノルム

Schwartz空間\mathcal{S}(\R^n)セミノルムの族Q=\{\|\cdot\|_{k,\alpha}\}

\begin{align*} \|f\|_{k,\alpha}:=\sup_{x\in\R^n}(1+|x|^2)^{k/2}|\partial^{\alpha}f(x)| \end{align*}

で定めます.

このとき,先ほどのSchwartz空間の定義のセミノルムの族P=\{\|\cdot\|_{\alpha,\beta}\}による位相と,セミノルムの族Qによる位相は一致します.

よって,Schwartz空間\mathcal{S}(\R^n)の定義において,セミノルムの族はQを採用してもよく,実際にQを定義として扱うことも多いです.

シュワルツ空間がフレシェ空間であることの証明

それではSchwartz空間がFréchet空間であることを証明しましょう.

\{\|\cdot\|_{\alpha,\beta}\}_{\alpha,\beta}\mathcal{S}(\R^n)上のセミノルムの族であり,\mathcal{S}(\R^n)はFréchet空間となる.

4つのステップ

  1. 全ての\|\cdot\|_{\alpha,\beta}がセミノルムであること
  2. セミノルムの族\{\|\cdot\|_{\alpha,\beta}\}_{\alpha,\beta}について,距離空間できること
  3. 完備性(前半)
  4. 完備性(後半)

を示す.

[Step 1]

\alpha,\beta\in\N_{\ge0}^{n}とする.任意のk\in\R, f,g\in\mathcal{S}(\R^n)に対して,\|\cdot\|_{\alpha,\beta}は斉次性

\begin{align*} \|k f\|_{\alpha,\beta} =&\sup_{x\in\R^n}\abs{x^{\alpha}\partial^{\beta}(kf)} \\=&|k|\sup_{x\in\R^n}\abs{x^{\alpha}\partial^{\beta} f} \\=&|k|\|f\|_{\alpha,\beta} \end{align*}

と劣加法性

\begin{align*} \\ \|f+g\|_{\alpha,\beta} =&\sup_{x\in\R^n}\abs{x^{\alpha}\partial^{\beta}(f+g)(x)} \\=&\sup_{x\in\R^n}\abs{x^{\alpha}\partial^{\beta}f(x)+x^{\alpha}\partial^{\beta}g(x)} \\\le&\sup_{x\in\R^n}\bra{\abs{x^{\alpha}\partial^{\beta}f(x)}+\abs{x^{\alpha}\partial^{\beta}g(x)}} \\\le&\sup_{x\in\R^n}\abs{x^{\alpha}\partial^{\beta}f(x)}+\sup_{x\in\R^n}\abs{x^{\alpha}\partial^{\beta}g(x)} \\=&\|f\|_{\alpha,\beta}+\|g\|_{\alpha,\beta} \end{align*}

をみたすからセミノルムである.

[Step 2]

任意の\alpha,\beta\in\N_{\ge0}^{n}に対して\|f\|_{\alpha,\beta}=0をみたすとする.

このとき,\|f\|_{0,0}はノルム(より詳しくは一様ノルム)だから,\|f\|_{0,0}=0よりf=0となる.

ただし,添字について0:=(0,\dots,0)\in\N_{\ge0}^{n}と表した.

よって,\mathcal{S}(\R^n)はセミノルムの族\{\|\cdot\|_{\alpha,\beta}\}_{\alpha,\beta}により距離空間となる.

[Step 3]

\mathcal{S}(\R^n)上の列\{f_k\}_kは,セミノルムの族\{\|\cdot\|_{\alpha,\beta}\}_{\alpha,\beta}に対してCauchy列であるとする.

すなわち,任意の\alpha,\beta\in\N_{\ge0}^{n}\epsilon>0に対して,あるN\in\Nが存在して,k,\ell>Nなら\|f_k-f_\ell\|_{\alpha,\beta}<\epsilonをみたすとする.

一様ノルム\sup_{x\in\R^n}|\cdot(x)|の完備性から,任意の\beta\in\N_{\ge0}^nに対して,ある関数g_{\beta}が存在して,

\begin{align*} \partial^{\beta}f_k\to g_{\beta}\quad (k\to\infty) \end{align*}

と一様収束する.とくに\{f_k\}_kg_0に一様収束するが,読みやすさのためにf:=g_0とする.

一般に連続関数の一様収束極限は連続だからg_{\beta}\R^n上で連続である.

ここで\beta_1:=(1,0,\dots,0)とし,任意にa=(a_1,a_2,\dots,a_n)\in\R^nをとる.x=(x_1,\dots,x_n)\in\R^nの関数として

\begin{align*} \int_{a_1}^{x_1}\partial^{\beta_1}f(t,x_2,\dots,x_n)\,dt =&\int_{a_1}^{x_1}\partial_{x_1}f_k(t,x_2,\dots,x_n)\,dt \\=&f_{k}(x)-f_{k}(a) \end{align*}

である.\partial^{\beta_1}f_k\to g_{\beta_1} (k\to\infty)は一様収束だったから,極限k\to\inftyと積分の順序交換ができて,

\begin{align*} \int_{a_1}^{x_1}g_{\beta_1}(t,x_2,\dots,x_n)\,dt =&f(x)-f(a) \\=&\int_{a_1}^{x_1}\partial_{x_1}f{x_1}(t,x_2,\dots,x_n)\,dt \\=&\int_{a_1}^{x_1}\partial^{\beta_1}f(t,x_2,\dots,x_n)\,dt \end{align*}

が成り立つ.ただし,2つめの等号では微分積分学の基本定理も用いた.両辺をx_1で微分してg_{\beta_1}=\partial^{\beta_1}fを得る.

同様に考えれば,帰納的に任意の\beta\in\N_{\ge0}^{n}に対してg_{\beta}=\partial^{\beta}fが従い,f\in C^{\infty}(\R^n)であることが分かる.

[Step 4]

任意の\alpha,\beta\in\mathcal{S}(\R^n)に対して,k,\ell>Nなら

\begin{align*} \sup_{x\in\R^n}\abs{x^{\alpha}\partial^{\beta}f_k(x)-x^{\alpha}\partial^{\beta}f(x)} =\|f_k-f_\ell\|_{\alpha,\beta} <\epsilon \end{align*}

なので,任意のx\in\R^nに対して

\begin{align*} \abs{x^{\alpha}\partial^{\beta}f_k(x)-x^{\alpha}\partial^{\beta}f_\ell}<\epsilon \end{align*}

が成り立つ.ここで,\ell\to\inftyとすると,k>Nなら任意のx\in\R^nに対して

\begin{align*} \abs{x^{\alpha}\partial^{\beta}f_k(x)-x^{\alpha}\partial^{\beta}f(x)}\le\epsilon \end{align*}

だから,\|f_k-f\|_{\alpha,\beta}\le\epsilonが成り立つ.よって,

\begin{align*} \|f\|_{\alpha,\beta}\le\|f_k\|_{\alpha,\beta}+\epsilon<\infty \end{align*}

だからf\in\mathcal{S}(\R^n)である.既に\|f_k-f\|_{\alpha,\beta}\le\epsilonだったから,\{f_k\}_k\mathcal{S}(\R^n)上の収束列である.

[1]-[4]より\mathcal{S}(\R^n)がFréchet空間であることが分かった.

最後にもう一度,最後に流れを確認しておきます.

[1]:全ての\|\cdot\|_{\alpha,\beta}がセミノルムであること,すなわち斉次性と劣加法性をみたすことを示しています.

[2]:セミノルム\|\cdot\|_{\alpha,\beta}たちが「協力して」非退化性をみたすことを示しています.これが示されれば距離空間とみなせることは先ほども挙げた以下の記事で説明しています.

[3]:\beta\in\N_{\ge0}^{n}について極限g_{\beta}の存在を別々に示し,g_{\beta}たちが実はf=g_{0}の微分としてg_{\beta}=\partial^{\beta}fと表されることを示しています.

この議論は微分積分学でお馴染みのものですね.

[4]:Cauchy列の定義から,全ての\alpha,\beta\in\N_{\ge0}^{n}に対して\|f_n-f\|_{\alpha,\beta}をみたすことを示しています.

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