2026年度|神戸大学 編入試解説|理学部数学科|考え方と解答例

神戸大学|3年次編入試
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2026年度入学の神戸大学 理学部数学科の3年次編入学試験の筆記問題の解答の方針と解答例です.

問題は4問あり,全4問を解答します.試験時間は2時間です.この記事では全4問の解答の方針と解答例を掲載しています.

ただし,公式に採点基準などは発表されていないため,本稿の解答が必ずしも正解になるとは限りません.ご注意ください.

また,十分注意して解答を作成していますが,論理の飛躍・誤りが残っている場合があります.

なお,過去問は神戸大学の数学科編入試験の過去問題のページから入手できます.

第1問(線形代数学)

行列$A$を

\begin{align*}A=\pmat{3&-1&1\\-1&3&-1\\1&-1&3}\end{align*}

で定める.次の問に答えよ.

  1. $A$の固有値を求めよ.
  2. $A$を直交行列で対角化せよ.すなわち直交行列$P$と対角行列$D$で$P^{-1}AP=D$となるものを1組与えよ.
出典:神戸大学理学部数学科「令和8年度第3年次編入学試験問題:数学」

線形代数学の対称行列の直交行列による対角化に関する問題ですね.

解答の方針とポイント

はどちらも当たり前にしておき,実際に求められるようにしておきましょう.

また,一般に実正方行列$A$が直交行列により対角化可能であるための必要十分条件は$A$が対称行列であることですが,本問題の行列$A$は具体的なのでこの知識がなくても解けるようになっています.

固有多項式と固有値

固有多項式固有方程式は次のように定義されます.

$n$次正方行列$A$に対して,$|xI_n-A|$を$A$の固有多項式(characteristic polynomial)という.また,$|xI_n-A|=0$を$A$の固有方程式(characteristic equation)という.ただし,$I_n$は$n$次単位行列である.

つまり,正方行列$xI-A$の行列式$|xI-A|$を$A$の固有多項式というわけですね.また,固有方程式を解くことで固有値を求めることができることは重要ですね.

$n$次正方行列$A$とスカラー$\lambda$に対して,次は同値である.

  • $\lambda$は$A$の固有値である.
  • $\lambda$は固有方程式$|xI-A|=0$の解である.

つまり,固有方程式$|xI-A|=0$の解は全て$A$の固有値で,他に$A$の固有値はないというわけですね.

本問題での$A$の固有方程式$|xI-A|=0$は

\begin{align*}\vmat{x-3&1&-1\\1&x-3&1\\-1&1&x-3}=0\end{align*}

ですから,これを解けば固有値が得られますね.

正方行列の対角化と直交行列

正方行列の対角化については,次が重要なのでした.

$n$次正方行列$A$に対して,次は同値である.

  1. $A$は対角化可能である.
  2. $A$は$n$個の線形独立な固有ベクトルをもつ.

また,これらのいずれか(同値なので両方)を満たすとき,線形独立な固有ベクトルを$\m{p}_1,\dots,\m{p}_n$で,それぞれが属する固有値を$\lambda_1,\dots,\lambda_n$とするとき,$A$は$P:=[\m{p}_1,\dots,\m{p}_n]$によって

\begin{align*}P^{-1}AP=\bmat{\lambda_1&0&\dots&0\\0&\lambda_2&\ddots&\vdots\\\vdots&\ddots&\ddots&0\\0&\dots&0&\lambda_n}\end{align*}

と対角化される.

つまり,「正方行列$A$を対角化する正則行列$P$は線形独立な固有ベクトルを並べたものであり,そうしてできる対角行列は固有値を並べたもの」ということですね.

詳しくは対角化の必要十分条件を解説した記事「正方行列が対角化可能であるための必要十分条件と固有空間」を参照してください.

正方行列$P$が直交行列(orthogonal matrix)であるとは$P$が実行列で$P^TP=I_n$が成り立つことと定義することが多く,その必要十分条件としては次の命題がよく知られていますね.

$n$次実正方行列$P$に対して,次は同値である.

  • $P$は直交行列である.
  • $P=[\m{p}_1,\m{p}_2,\dots,\m{p}_n]$とするとき,$\m{p}_1,\m{p}_2,\dots,\m{p}_n$は$\R^n$の正規直交基底をなす.

以上より,$\R^3$の正規直交基底となる$A$の固有ベクトルを3個とってくることができれば,本問題(2)が解けますね.

固有ベクトルとグラム-シュミットの直交化法

一般に,$A$が固有値$\lambda$を持つことが分かれば,固有ベクトルの定義から

\begin{align*}A\m{p}=\lambda\m{p}\end{align*}

を満たす$\m{p}\neq\m{0}$が$A$の固有値$\lambda$に属する固有ベクトルです.よって,整理して$\m{p}$の連立1次方程式$(A-\lambda I)\m{p}=\m{0}$を掃き出し法で解けば,固有値$\lambda$に属する固有ベクトルが得られますね.

さて,本問題では(1)で$A$の固有値2,2,5が得られるので,固有値2に属する線形独立な2本の固有ベクトルと固有値5に属する1本の固有ベクトルを求めることが,対角化では重要ですね.

ただし,勝手に固有ベクトルをとってくるだけでは$\R^3$の正規直交基底になっているとは限らないので,次の命題・定理を使いましょう.

実対称行列の異なる固有値に属する固有ベクトルは直交する.

[グラム-シュミットの直交化法]線形独立な$\m{a}_1,\dots,\m{a}_r\in\R^n$に対して,

\begin{align*}\m{b}_1&:=\frac{1}{\|\m{a}_1\|}\m{a}_1,
\\\m{a}’_k&:=\m{a}_k-\sum_{i=1}^{k-1}\anb{\m{a}_k,\m{b}_i}\m{b}_i,
\\\m{b}_k&:=\frac{1}{\|\m{a}’_k\|}\m{a}’_k\end{align*}

とおく($k=2,3,\dots,r$).このとき,組$(\m{b}_1,\dots,\m{b}_r)$は$\m{a}_1,\dots,\m{a}_r$が張る空間の正規直交基底である.

よって,固有値2に属する固有ベクトルと固有値5に属する固有ベクトルは直交するので,固有値2に属する線形独立な2つの固有ベクトルと固有値5に属する1本の固有ベクトルのそれぞれでグラム-シュミットの直交化法を用いればよいですね.

解答例

$I$を3次単位行列とする.

(1)の解答

定義より,$A$の固有多項式

\begin{align*}|xI-A|&=\vmat{x-3&1&-1\\1&x-3&1\\-1&1&x-3}
\\&=\{(x-3)^3+1\cdot1\cdot(-1)+(-1)\cdot1\cdot1\}
\\&\quad-\{(x-3)\cdot1\cdot1+1\cdot1\cdot(x-3)+(-1)\cdot(x-3)\cdot(-1)\}
\\&=(x-3)^3-3(x-3)-2
=\{(x-3)+1\}\{(x-3)^2-(x-3)-2\}
\\&=\{(x-3)+1\}^2\{(x-3)-2\}
=(x-2)^2(x-5)\end{align*}

である.よって,固有方程式$|xI-A|=0$は$x=2,2,5$と解けるから,固有値は2(重複度2),5(重複度1)である.

(2)の解答

行基本変形により

\begin{align*}A-2I&=\pmat{1&-1&1\\-1&1&-1\\1&-1&1}\to\pmat{1&-1&1\\0&0&0\\0&0&0},
\\A-5I&=\pmat{-2&-1&1\\-1&-2&-1\\1&-1&-2}\to\pmat{0&-3&-3\\0&-3&-3\\1&-1&-2}
\\&\to\pmat{1&0&-1\\0&1&1\\0&0&0}\end{align*}

と変形できるから,$\m{p}\in\R^3$の連立1次方程式

\begin{align*}A\m{p}=2\m{p},\quad
A\m{p}=5\m{p}\end{align*}

の解はそれぞれ

\begin{align*}\m{p}=k_1\bmat{1\\1\\0}+k_2\bmat{-1\\0\\1},\quad
\m{p}=k_3\bmat{1\\-1\\1}\end{align*}

と解ける(掃き出し法).ただし,$k_1,k_2,k_3\in\R$は任意定数である.

よって,$A$の固有値2に属する固有ベクトル$\m{p}_1:=\bmat{1\\1\\0}$, $\m{p}_2:=\bmat{-1\\0\\1}$,固有値5に属する固有ベクトル$\m{p}_3:=\bmat{1\\-1\\1}$がとれる.

ここで,$\m{p}_1$, $\m{p}_2$はいずれも$\m{p}_3$と直交することに注意する.$\|\cdot\|$を標準ノルム,$\anb{\cdot,\cdot}$を標準内積として

\begin{align*}\m{q}_1&:=\frac{1}{\|\m{p}_1\|}\m{p}_1=\frac{1}{\sqrt{2}}\bmat{1\\1\\0},
\\\m{p}’_2&:=\m{p}_2-\anb{\m{p}_2,\m{q}_1}\m{q}_1=\bmat{-1\\0\\1}+\frac{1}{2}\bmat{1\\1\\0}=\frac{1}{2}\bmat{-1\\1\\2},
\\\m{q}_2&:=\frac{1}{\|\m{p}’_2\|}\m{p}’_2=\frac{1}{\sqrt{6}}\bmat{-1\\1\\2},
\\\m{q}_3&:=\frac{1}{\|\m{p}_3\|}\m{p}_3=\frac{1}{\sqrt{3}}\bmat{1\\-1\\1}\end{align*}

とおくと,組$(\m{q}_1,\m{q}_2,\m{q}_3)$は$\R^3$の正規直交基底である(グラム-シュミットの直交化法).

また,$\m{q}_1$, $\m{q}_2$は固有値2に属する固有ベクトルの線形結合だから固有値2に属し,$\m{q}_3$は固有値5に属する固有ベクトルの線形結合だから固有値5に属する.

以上より,$P=[\m{q}_1,\m{q}_2,\m{q}_3]$, $D=\bmat{2&0&0\\0&2&0\\0&0&5}$とおくと,$P$は直交行列で,$P^{-1}AP=D$が成り立つ.

補足(対称行列の対角化)

実正方行列の直交行列による対角化については,次の定理がよく知られています.

$n$次実正方行列$A$に対して,次は同値である.

  • $A$は対称行列である.
  • $A$は直交行列により対角化可能である.

直交行列に対応する複素正方行列はユニタリ行列です.また,複素正方行列$A$に対して,$A$がユニタリ行列により対角化可能であることと,$A$が正規行列であることは同値です.

そのため,本問題で$A$が直交行列で対角化できるのは,$A$が対称行列であることから必然だったわけですね.

第2問(線形代数学)

$A=\pmat{a&b\\c&d}$を実2次正方行列とし,写像$f_A:\R^2\to\R^2$を$f_A(\pmat{x\\y}):=A\pmat{x\\y^2}$により定める.このとき,次の問に答えよ.

  1. $A=\pmat{1&0\\1&0}$のとき,$f_A$が線形写像であるか判定せよ.
  2. $A=\pmat{1&0\\1&1}$のとき,$f_A$が線形写像であるか判定せよ.
  3. $f_A$が線形写像になるような$a$, $b$, $c$, $d$の条件を求めよ.
出典:神戸大学理学部数学科「令和8年度第3年次編入学試験問題:数学」

線形代数学の線形写像の問題ですね.

解答の方針とポイント

そもそも線形写像は和・スカラー倍を保つ写像のことをいうのでした.

実線形空間$U$, $V$に対して,線形写像$f:U\to V$が線形であるとは,任意の$\m{u},\m{v}\in U$, $k,\ell\in\R$に対して

\begin{align*}f(k\m{u}+\ell\m{v})=kf(\m{u})+\ell f(\m{v})\end{align*}

が成り立つことをいう.

この定義式は$f(\m{u}+\m{v})=f(\m{u})+f(\m{v})$, $f(k\m{u})=kf(\m{u})$と分けて書かれることもありますが,両者は同値ですね.

直観的には,線形写像は定数項のない1次式と捉えることができるので,$y^2$が消えるような$A$であれば$f_A$は線形写像になりそうです.

すなわち,(1)では$f_A\bra{\pmat{x\\y}}=\pmat{x\\x}$となり線形であり,(2)では$f_A\bra{\pmat{x\\y}}=\pmat{x\\x+y^2}$となり線形でないと直観的に分かるので,それぞれそのことを定義に従って示せばよいですね.

また,(3)は(1), (2)の様子から$b=d=0$が条件であることがみてとれるので,この条件が必要十分であることを示します.

解答例

(1)の解答

$A=\bmat{1&0\\1&0}$のとき,$\bmat{x\\y}\in\R^2$に対して

\begin{align*}f_A\bra{\bmat{x\\y}}&=\bmat{1&0\\1&0}\bmat{x\\y^2}=\bmat{x\\x}\end{align*}

である.よって,任意の$\m{x}=\bmat{x\\y},\m{x}’=\bmat{x’\\y’}\in\R^2$, $k,\ell\in\R$に対して,

\begin{align*}f_A(k\m{x}+\ell\m{x}’)&=f_A\bra{\bmat{kx+\ell x’\\ky+\ell y’}}=\bmat{kx+\ell x’\\kx+\ell x’}
\\&=k\bmat{x\\x}+\ell\bmat{x’\\x’}=kf_A(\m{x})+\ell f_A(\m{x}’)\end{align*}

が成り立つから$f_A$は線形である.

(2)の解答

$A=\bmat{1&0\\1&1}$のとき,$\bmat{x\\y}\in\R^2$に対して

\begin{align*}f_A\bra{\bmat{x\\y}}=\bmat{1&0\\1&1}\bmat{x\\y^2}=\bmat{x\\x+y^2}\end{align*}

である.よって,

\begin{align*}&f_A\bra{\bmat{0\\1}+\bmat{0\\1}}=f_A\bra{\bmat{0\\2}}=\bmat{0\\4},\quad
\\&f_A\bra{\bmat{0\\1}}+f_A\bra{\bmat{0\\1}}=\bmat{0\\1}+\bmat{0\\1}=\bmat{0\\2}\end{align*}

より$f_A\bra{\bmat{0\\1}+\bmat{0\\1}}\neq f_A\bra{\bmat{0\\1}}+f_A\bra{\bmat{0\\1}}$なので$f_A$は和を保たないから$f_A$は線形でない.

(3)の解答

$A=\bmat{a&b\\c&d}$のとき,$\bmat{x\\y}\in\R^2$に対して

\begin{align*}f_A\bra{\bmat{x\\y}}=\bmat{a&b\\c&d}\bmat{x\\y^2}=\bmat{ax+by^2\\cx+dy^2}\end{align*}

である.$b\neq0$または$d\neq0$なら,

\begin{align*}&f_A\bra{\bmat{0\\1}+\bmat{0\\1}}=f_A\bra{\bmat{0\\2}}=\bmat{4b\\4d},\quad
\\&f_A\bra{\bmat{0\\1}}+f_A\bra{\bmat{0\\1}}=\bmat{b\\d}+\bmat{b\\d}=\bmat{2b\\2d}\end{align*}

より$f_A\bra{\bmat{0\\1}+\bmat{0\\1}}\neq f_A\bra{\bmat{0\\1}}+f_A\bra{\bmat{0\\1}}$なので$f_A$は和を保たないから$f_A$は線形でない.

逆に,$b=d=0$なら,任意の$\m{x}=\bmat{x\\y},\m{x}’=\bmat{x’\\y’}\in\R^2$, $k,\ell\in\R$に対して,

\begin{align*}f_A(k\m{x}+\ell\m{x}’)&=f_A\bra{\bmat{kx+\ell x’\\ky+\ell y’}}=\bmat{a(kx+\ell x’)\\c(kx+\ell x’)}
\\&=k\bmat{ax\\cx}+\ell\bmat{ax’\\cx’}=kf_A(\m{x})+\ell f_A(\m{x}’)\end{align*}

が成り立つから$f_A$は線形である.

以上より,$f_A$が線形写像であるような$a$, $b$, $c$, $d$の必要十分条件は$b=d=0$である.

おそらく出題者は「(1), (2)をヒントに(3)を解いて欲しい」という意図でこの順番で問題を配置しているものと思われます.

しかし,パッと(3)が解けるのであれば先に(3)を解き,その結果を適用して(1), (2)を解いてもよいです.

第3問(微分積分学)

次の問に答えよ.

  1. $a$, $b$を実数とする.次の積分を計算せよ.\begin{align*}\int_D(ax^2+by^2)dxdy,\qquad
    D=\set{(x,y)}{x^2+y^2\le 4x}\end{align*}
  2. $f(x,y)=xy(24-3x-4y)$に対し$f_x(x,y)=f_y(x,y)=0$を満たす点を求めよ.また$f(x,y)$の極値を求めよ.
出典:神戸大学理学部数学科「令和8年度第3年次編入学試験問題:数学」

微分積分学の小問集合で,積分の計算問題と多変数関数の極値問題ですね.

解答の方針とポイント1

どちらも基本問題なので丁寧に解きましょう.ただ,(1)は普通に計算しても解けますが,対称性を用いる少し楽な方法もあるのでのちに別解として紹介します.

縦線集合上での重積分は逐次積分に等しい

本来的には

  • 重積分$\displaystyle\iint_{A\times B}f(x,y)\,dxdy$
  • 逐次積分$\displaystyle\int_{A}\bra{\displaystyle\int_{B}f(x,y)\,dy}\,dx$

は全く別物として定義されますが,多くの場合でこれらは等しくなります.より一般に,縦線集合上で重積分は逐次積分に等しいことが証明されます.

$a,b\in\R$は$a<b$を満たすとし,関数$\phi,\psi:[a,b]\to\R$は連続で,任意の$x\in[a,b]$に対して$\phi(x)\le\psi(x)$であるとする.このとき,集合

\begin{align*}D:=\set{(x,y)\in[a,b]\times\R}{\phi(x)\le y\le\psi(x)}\end{align*}

上で連続な関数$f:D\to\R$に対して

\begin{align*}\iint_{D}f(x,y)\,dxdy=\int_{a}^{b}\bra{\int_{\phi(x)}^{\psi(x)}f(x,y)\,dy}\,dx\end{align*}

が成り立つ.

この定理の集合$D$を縦線集合というので,標語的には「縦線集合上の連続関数について,重積分と逐次積分は等しい」ということになりますね.

本問題の積分領域$D$は

\begin{align*}D=\set{(x,y)\in[0,4]\times\R}{-\sqrt{4x-x^2}\le y\le\sqrt{4x-x^2}}\end{align*}

と書き換えられるので,問題の重積分は

\begin{align*}\int_D(ax^2+by^2)\,dxdy
=\int_{0}^{4}\bra{\int_{-\sqrt{4x-x^2}}^{\sqrt{4x-x^2}}(ax^2+by^2)\,dy}\,dx\end{align*}

となり,あとはこれを丁寧に計算すればよいですね.

停留点での極大・極小の判定にはヘッセ行列を用いる

1変数関数の場合には増減表を書くことで極大・極小の判定ができましたが,多変数関数の場合には変数の動きが1方向ではないので増減表により極大・極小の判定をするのは難しいです.

しかし,多変数関数の場合は停留点でヘッセ行列を用いることで判定する方法があります.ここでは本問題に合わせて2変数の場合を考えます.

2回微分可能な2変数実数値関数$f$に対して,

\begin{align*}H(x,y):=\bmat{\frac{\partial^2 f}{\partial x^2}(x,y)&\frac{\partial^2 f}{\partial x \partial y}(x,y)\\\frac{\partial^2 f}{\partial y \partial x}(x,y)&\frac{\partial^2 f}{\partial y^2}(x,y)}\end{align*}

を$f$の$(x,y)$でのヘッセ行列という.また,$H$自体も関数を値にとる写像と考えてヘッセ行列という.

点$(a,b)\in\R^2$の近傍で$C^2$級の実数値関数$f$が$\frac{\partial f}{\partial x}(a,b)=\frac{\partial f}{\partial y}(a,b)=0$を満たすとする.このとき,次が成り立つ.

  1. $|H(a,b)|>0$かつ$\frac{\partial^2 f}{\partial x^2}(a,b)>0$なら,点$(a,b)$は$f$の極小点である.
  2. $|H(a,b)|>0$かつ$\frac{\partial^2 f}{\partial x^2}(a,b)<0$なら,点$(a,b)$は$f$の極大点である.
  3. $|H(a,b)|<0$なら,点$(a,b)$は$f$の鞍点である.

(1)の$|H(a,b)|>0$かつ$\frac{\partial^2 f}{\partial x^2}(a,b)>0$は「$H(a,b)$は正定値行列」,(2)の$|H(a,b)|>0$かつ$\frac{\partial^2 f}{\partial x^2}(a,b)<0$は「$H(a,b)$は負定値行列」と言い換えられますね.

$f'(a)=0$を満たす$C^2$級の1変数関数$f$との対応を考えると,(1)は「$f”(a)>0$なら$a$は$f$の極小点」,(2)は「$f”(a)<0$なら$a$は$f$の極大点」という事実に対応します.

解答例1

(1)の解答

$x^2+y^2\le 4x$は$(x-2)^2+y^2\le 4$と同値なので

\begin{align*}D=\set{(x,y)\in[0,4]\times\R}{-\sqrt{4x-x^2}\le y\le\sqrt{4x-x^2}}\end{align*}

である.$D$は縦線集合なので

\begin{align*}\int_D(ax^2+by^2)\,dxdy
=\int_{0}^{4}\bra{\int_{-\sqrt{4x-x^2}}^{\sqrt{4x-x^2}}(ax^2+by^2)\,dy}\,dx\end{align*}

が成り立つ.被積分関数は$y$について偶関数なので,任意の$x\in[0,4]$に対して

\begin{align*}\int_{-\sqrt{4x-x^2}}^{\sqrt{4x-x^2}}(ax^2+by^2)\,dy
&=2\brc{ax^2y+\frac{1}{3}by^3}_0^{\sqrt{4x-x^2}}
\\&=2\bra{ax^2+\frac{1}{3}b(4x-x^2)}\sqrt{4x-x^2}
\\&=\frac{2}{3}\bra{(3a-b)x^2+4bx}\sqrt{4x-x^2}\end{align*}

である.ここで,

\begin{align*}&\int_{0}^{4}x\sqrt{4x-x^2}\,dx
\\&=-\frac{1}{2}\int_{0}^{4}(4x-x^2)’\sqrt{4x-x^2}\,dx+2\int_{0}^{4}\sqrt{4x-x^2}\,dx
\\&=-\frac{1}{2}\brc{\frac{2}{3}(4x-x^2)^{3/2}}_{0}^{4}+2\cdot\frac{2^2\pi}{2}
=4\pi\end{align*}

である.また,$x-2=2\sin{\theta}$($-\frac{\pi}{2}\le\theta\le \frac{\pi}{2}$)とおくと,

\begin{align*}4x-x^2=4-(x-2)^2=4-4\sin^2{\theta}=4\cos^2{\theta}\end{align*}

なので,$\frac{dx}{d\theta}=2\cos{\theta}$と併せて

\begin{align*}&\int_{0}^{4}x^2\sqrt{4x-x^2}\,dx
\\&=\int_{-\pi/2}^{\pi/2}(2+2\sin{\theta})^2\sqrt{4\cos^2{\theta}}\cdot2\cos{\theta}\,d\theta
\\&=16\int_{-\pi/2}^{\pi/2}(1+2\sin{\theta}+\sin^2{\theta})\cos^2{\theta}\,d\theta\end{align*}

となる.

\begin{align*}\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\cos^2{\theta}\,d\theta
&=2\int_{0}^{\pi/2}\frac{1+\cos{2\theta}}{2}\,d\theta
\\&=\brc{\theta+\frac{1}{2}\sin{2\theta}}_{0}^{\pi/2}
=\frac{\pi}{2}\end{align*}

であり,$\sin{\theta}\cos^2{\theta}$は奇関数なので

\begin{align*}\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\sin{\theta}\cos^2{\theta}\,d\theta=0\end{align*}

であり,

\begin{align*}\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\sin^2{\theta}\cos^2{\theta}\,d\theta
&=2\int_{0}^{\pi/2}\bra{\frac{\sin{2\theta}}{2}}^2\,d\theta
\\&=\frac{1}{2}\int_{0}^{\pi/2}\frac{1-\cos{4\theta}}{2}\,d\theta
\\&=\frac{1}{4}\brc{\theta-\frac{1}{4}\sin{4\theta}}_{0}^{\pi/2}
=\frac{\pi}{8}\end{align*}

である.以上より,

\begin{align*}&\int_D(ax^2+by^2)\,dxdy
\\&=\frac{2}{3}\bra{(3a-b)\int_{0}^{4}x^2\sqrt{4x-x^2}\,dx+4b\int_{0}^{4}x\sqrt{4x-x^2}\,dx}
\\&=\frac{2}{3}\bra{(3a-b)\cdot16\bra{\frac{\pi}{2}+0+\frac{\pi}{8}}+4b\cdot4\pi}
\\&=\frac{2}{3}\bra{10(3a-b)+16b}\pi
=4(5a+b)\pi\end{align*}

を得る.

(2)の解答

$f(x,y)=xy(24-3x-4y)$より

\begin{align*}f_x(x,y)&=y(24-3x-4y)+xy(-3)
\\&=2y(12-3x-2y),
\\f_y(x,y)&=x(24-3x-4y)+xy(-4)
\\&=x(24-3x-8y)\end{align*}

だから,$f_x(x,y)=f_y(x,y)=0$は

\begin{align*}y(12-3x-2y)=x(24-3x-8y)=0\end{align*}

となる.

  • $x=0$かつ$y=0$のときはこの方程式を満たす
  • $x=0$かつ$y\neq0$のときは$12-3x-2y=0$を満たすから$y=6$が得られる
  • $x\neq0$かつ$y=0$のときは$24-3x-8y=0$を満たすから$x=8$が得られる
  • $x\neq0$かつ$y\neq0$のときは$12-3x-2y=24-3x-8y=0$を満たすから$x=\frac{8}{3}$, $y=2$が得られる

ので,$f_x(x,y)=f_y(x,y)=0$を満たす点は$(0,0)$, $(0,6)$, $(8,0)$, $(\frac{8}{3},2)$である.

$f$の定義域を$\R^2$とすると,極値点の候補はこれら4点である.

\begin{align*}&f_{xx}(x,y)=-6y,\quad
f_{yy}(x,y)=-8x,\quad
\\&f_{xy}(x,y)=f_{yx}(x,y)=24-6x-8y\end{align*}

だから,$f$のヘッセ行列を$H$とおくと,$f$のヘッセ行列式は

\begin{align*}|H(x,y)|=\abs{\bmat{-6y&24-6x-8y\\24-6x-8y&-8x}}=48xy-(24-6x-8y)^2\end{align*}

である.よって,

\begin{align*}|H(0,0)|=-24^2<0,\quad
|H(0,6)|=-24^2<0,\quad
|H(8,0)|=-24^2<0\end{align*}

なので,$f$が$C^2$級であることと併せて$(0,0)$, $(0,6)$, $(8,0)$はいずれも鞍点である.一方,

\begin{align*}\abs{H\bra{\frac{8}{3},2}}=256-8^2=192>0,\quad
f_{xx}\bra{\frac{8}{3},2}=-12<0\end{align*}

なので$H(\frac{8}{3},2)$は負定値行列だから,$(\frac{8}{3},2)$は極大点である.

以上より,$f$の極値は極大値

\begin{align*}f(\frac{8}{3},2)=\frac{8}{3}\cdot2\cdot(24-3\cdot\frac{8}{3}-4\cdot2)=\frac{128}{3}\end{align*}

のみである.

解答の方針とポイント2((1)のみ)

(1)は対称性を用いることで,解答例1よりも楽に解くことができます.しかし,発想としては少々難しいので鑑賞用とするのがよいでしょう.

積分領域$D$は中心$(2,0)$の円板なので,少し積分の直観がはたらきづらいので変数変換して積分領域を原点中心の円板に変えましょう.つまり,$x=2+s$, $y=t$とおくと$D$は

\begin{align*}E:=\set{(s,t)\in\R^2}{s^2+t^2\le4}\end{align*}

に対応し,ヤコビアンは$\frac{\partial(x,y)}{\partial(s,t)}=1$なので

\begin{align*}\int_D(ax^2+by^2)\,dxdy=\int_E(4a+4as+as^2+bt^2)\,dsdt\end{align*}

が成り立ちます.

解答例2((1)のみ)

$x^2+y^2\le 4x$は$(x-2)^2+y^2\le 4$と変形できるので,$x=2+s$, $y=t$とおくと,$D$は

\begin{align*}E:=\set{(s,t)\in\R^2}{s^2+t^2\le4}\end{align*}

に対応する.またヤコビアンは$\frac{\partial(x,y)}{\partial(s,t)}=1$なので

\begin{align*}\int_D(ax^2+by^2)\,dxdy=\int_E(4a+4as+as^2+bt^2)\,dsdt\end{align*}

が成り立つ.$4a$は定数なので

\begin{align*}\int_{E}4a\,dsdt=4a|E|=4a\cdot2^2\pi=16\pi a\end{align*}

であり,$E$は$t$軸に関して対称で$4as$は$s$に関する奇関数なので

\begin{align*}\int_{E}4as\,dsdt=0\end{align*}

である.また,$E$における$s$, $t$の対称性より

\begin{align*}\int_{E}s^2\,dsdt=\int_{E}t^2\,dsdt\end{align*}

であり,極座標変換$s=r\cos{\theta}$, $t=r\sin{\theta}$と対称性より

\begin{align*}\int_{E}(s^2+t^2)\,dsdt
&=4\int_{E\cap\{s\ge0,t\ge0\}}(s^2+t^2)\,dsdt
\\&=4\int_{0}^{2}\bra{\int_{0}^{\pi/2}r^2\cdot r\,d\theta}\,dr
\\&=2\pi\int_{0}^{2}r^3\,dr
=2\pi\brc{\frac{1}{4}r^4}_{0}^{2}=8\pi\end{align*}

なので,

\begin{align*}\int_{E}s^2\,dsdt=\int_{E}t^2\,dsdt=4\pi\end{align*}である.

以上より,

\begin{align*}\int_D(ax^2+by^2)\,dxdy
&=16a\pi+0a+4\pi a+4\pi b
\\&=4\pi(5a+b)\end{align*}

を得る.

第4問(微分積分学)

関数$f(x,y)$を

\begin{align*}f(x,y)=\begin{cases}\dfrac{x^4y^2}{x^8+y^4}&(\text{$(x,y)\neq(0,0)$のとき})\\
0&(\text{$(x,y)=(0,0)$のとき})\end{cases}\end{align*}

により定める.このとき次の問に答えよ.

  1. $f(x,y)$は点$(0,0)$において$x$, $y$に関して偏微分可能であることを示せ.
  2. $n$を正の整数とする.極限$\lim\limits_{x\to0}f(x,x^n)$を求めよ.
出典:神戸大学理学部数学科「令和8年度第3年次編入学試験問題:数学」

微分積分学の多変数関数の偏微分可能性と極限に関する問題ですね.

解答の方針とポイント

(1)は偏微分可能であることの定義に丁寧に従えば解けます.また,(2)は$n$によってどう様子が変わるかを実験すれば簡単に解けます.

偏微分可能性の定義

点$(a,b)$の近傍で定義された実数値関数$f$に対して,

\begin{align*}\lim_{h\to0}\frac{f(a+h,b)-f(a,b)}{h}\end{align*}

が存在するとき,$f$は点$(a,b)$において$x$に関して偏微分可能であるという.また,この極限を$f$の点$(a,b)$における$x$偏微分係数といい$\frac{\partial f}{\partial x}(a,b)$と表す.

$y$に関する偏微分も同様に定義されます.

本問題(1)では点$(0,0)$での偏微分係数を求めます.$x$偏微分係数は,定義から

\begin{align*}\lim_{h\to0}\frac{f(0+h,0)-f(0,0)}{h}\end{align*}

です.$h\to0$の極限を考えるときは$h\neq0$とするのが決まりですから,$f(h,0)$は$f(x,y)=\frac{x^4y^2}{x^8+y^4}$に代入することになり,$f(0,0)$はそのまま0ですね.

解答例

(1)の解答

$h\neq0$なら

\begin{align*}&\frac{f(0+h,0)-f(0,0)}{h}
=\frac{\frac{h^4\cdot0^2}{h^8+0^4}-0}{h}
=0
\\&\frac{f(0,0+h)-f(0,0)}{h}
=\frac{\frac{0^4\cdot h^2}{0^8+h^4}-0}{h}
=0\end{align*}

である.よって,

\begin{align*}\lim_{h\to0}\frac{f(0+h,0)-f(0,0)}{h}
=\lim_{h\to0}\frac{f(0,0+h)-f(0,0)}{h}
=0\end{align*}

なので,$f$は点$(0,0)$において$x$, $y$に関して偏微分可能で($\frac{\partial f}{\partial x}(0,0)=\frac{\partial f}{\partial y}(0,0)=0$で)ある.

(2)の解答

$x\neq0$なら

\begin{align*}f(x,x^n)=\frac{x^4(x^n)^2}{x^8+(x^n)^4}=\frac{x^{4+2n}}{x^8+x^{4n}}\end{align*}

なので,

  • $n=1$のとき,\begin{align*}f(x,x^n)=\frac{x^6}{x^8+x^4}=\frac{x^2}{x^4+1}\xrightarrow[]{x\to0}0\end{align*}
  • $n=2$のとき,\begin{align*}f(x,x^n)=\frac{x^8}{x^8+x^8}=\frac{1}{2}\xrightarrow[]{x\to0}\frac{1}{2}\end{align*}
  • $n\ge3$のとき,$2n-4>0$かつ$4n-8>0$より\begin{align*}f(x,x^n)=\frac{x^{2n-4}}{1+x^{4n-8}}\xrightarrow[]{x\to0}0\end{align*}

である.以上をまとめて

\begin{align*}\lim_{x\to0}f(x,x^n)=\begin{cases}\frac{1}{2}&n=2,\\0,&n\neq2\end{cases}\end{align*}

である.

管理人

プロフィール

山本やまもと 拓人たくと

元予備校講師.講師として駆け出しの頃から予備校の生徒アンケートで抜群の成績を残し,通常の8倍の報酬アップを提示されるなど頭角を表す.

飛び級・首席合格で大学院に入学しそのまま首席修了するなど数学の深い知識をもち,本質をふまえた分かりやすい授業に定評がある.

現在はオンライン家庭教師,社会人向け数学教室での講師としての教育活動とともに,京都大学で数学の研究も行っている.専門は非線形偏微分方程式論.大学数学系YouTuberとしても活動中.

趣味は数学,ピアノ,甘いもの食べ歩き.公式LINEを友達登録で【限定プレゼント】配布中.

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