線形代数9
行列の正則性を判定できる行列式のイメージ

線形代数学の基本
線形代数学の基本

これまでの記事で正方行列$A=[\m{a}_1,\dots,\m{a}_n]$ ($\m{a}_1,\dots,\m{a}_n\in\R^n$)が正則であるための必要十分条件として

  • 連立方程式$A\m{x}=\m{0}$が自明解$\m{x}=\m{0}$のみ
  • $\rank{A}=r$
  • $\m{a}_1,\dots,\m{a}_n$が線形独立

などを考えてきました.

このように線形代数学の様々な概念と繋がっている正方行列の正則性はとても重要です.

そこでこの記事から正方行列の正則性を判定するために便利な行列式を解説していきます.

そこで,この記事では

  • 2次正方行列の行列式の定義とイメージ
  • 3次以上の正方行列の行列式のイメージ

を順に説明します.

なお,この記事では特に断らない限り実行列・実ベクトルを扱うことにしますが,複素行列など一般のを成分とする行列・ベクトルに対しても同様です.

参考文献(線形代数)

手を動かしてまなぶ 線形代数

線形代数の入門書で,説明も非常に丁寧なので初学者にも読み進めやすい教科書です.

線型代数入門

理論系でガッツリ線形代数を学ぶ人のための入門書です.

2次正方行列の行列式

最初に2次正方行列の行列式のイメージを説明しますが,そのためにいくつか準備をしておきましょう.

準備

前回の記事で定義した線形独立性について,次が成り立ちます.

$\m{0}$でない$\m{a},\m{b}\in\R^{n}$に対して,次は同値である.

  1. $\m{a}$と$\m{b}$は平行である
  2. $\m{a}$と$\m{b}$は線形従属である

$\m{a},\m{b}$のうちどちらかが$\m{0}$のときは$\m{a},\m{b}$の平行性が定義されません.


[$1\Ra2$の証明] $\m{a}$と$\m{b}$が平行なら,$\m{a}=k\m{b}$なる$k\in\R$が存在する.

よって,$\m{a}-k\m{b}=\m{0}$となって$\m{a}$と$\m{b}$に非自明な線形関係が存在するから$\m{a}$と$\m{b}$は線形従属である.

[$2\Ra1$の証明] $\m{a}$と$\m{b}$が線形従属なら,非自明な線形関係$k\m{a}+\ell\m{b}=\m{0}$が存在する.

また,このとき$k=0$なら$\m{b}\neq\m{0}$と併せて$\ell=0$となるから$k\m{a}+\ell\m{b}=\m{0}$が非自明な線形関係であることに矛盾する.よって,$k\neq0$である.

よって,$k\m{a}+\ell\m{b}=\m{0}$の両辺を$k$で割って整理すると$\m{a}=-\frac{\ell}{k}\m{b}$となるから$\m{a}$と$\m{b}$は平行である.

この命題の対偶を考えると,次の系が従いますね.

$\m{0}$でない$\m{a},\m{b}\in\R^{n}$に対して次は同値である.

  1. $\m{a}$と$\m{b}$は平行でない
  2. $\m{a}$と$\m{b}$は線形独立である

線形独立性を大雑把に言えば「全てのベクトルが完全にバラバラな向きを向いていること」でしたから,このイメージとも一致させておいてください.

また,次の命題も当たり前にしておいてください.

$\m{a}_1,\dots,\m{a}_r\in\R^{n}$のうちどれか1つでも$\m{0}$なら$\m{a}_1,\dots,\m{a}_r$は線形従属である.


$\m{a}_k=\m{0}$なら,例えば

   \begin{align*}0\m{a}_1+\dots+0\m{a}_{k-1}+1\m{a}_{k}+0\m{a}_{k+1}+\dots+0\m{a}_{r}\end{align*}

が成り立つ.よって,$\m{a}_1,\dots,\m{a}_r$の非自明な線形関係が存在するから$\m{a}_1,\dots,\m{a}_r$は線形独立でない.

2次正方行列の行列式とイメージ

$\m{a}=\bmat{a_{1}\\a_{2}},\m{b}=\bmat{b_{1}\\b_{2}}\in\R^{2}$が線形独立であるとします.

このとき,$\m{a},\m{b}\neq\m{0}$であり,上の系から$\m{a}$と$\m{b}$は平行ではありませんから,$\m{a}$と$\m{b}$によって張られる平行四辺形の面積は0ではありません.

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この平行四辺形の面積は高校数学で学ぶように$|a_{1}b_{2}-a_{2}b_{1}|$ですから,$a_{1}b_{2}-a_{2}b_{1}\neq0$が成り立ちます.

逆に$a_{1}b_{2}-a_{2}b_{1}=0$なら

  • $\m{a}=\m{0}$
  • $\m{b}=\m{0}$
  • $\m{a},\m{b}$が平行

の少なくともいずれかが成り立ちますから,$\m{a}$と$\m{b}$は線形従属となります.

このことを念頭に置き,以下のように2次正方行列の行列式を次の定義します.

2次正方行列$A=\bmat{a&b\\c&d}$に対し,$ad-bc$を$A$の行列式 (determinant)といい,$|A|$や$\det{A}$などと表す.

一般に$\m{a},\m{b}\in\R^2$が線形独立であることと,2次正方行列$[\m{a},\m{b}]$が正則であることは同値でしたから,上で考えたことと併せて以下が成り立ちますね.

2次正方行列$A$に対して,以下は同値である.

  1. $A$は正則である.
  2. $|A|\neq0$が成り立つ.

具体例

2次正方行列$A,B,C$を

   \begin{align*} A:=\bmat{1&2\\3&4},\quad B:=\bmat{1&1\\2&2},\quad C:=\bmat{0&-2\\3&\pi} \end{align*}

と定める.このとき,それぞれ行列式を求め,正則性を判定せよ.

行列式の定義より

   \begin{align*} & |A|=1\cdot4-2\cdot3=-2, \\& |B|=1\cdot2-1\cdot2=0, \\& |C|=0\cdot\pi-(-2)\cdot3=6 \end{align*}

なので,$A$, $C$は正則,$B$は非正則である.

3次以上の正方行列の行列式

2次の場合のイメージがあれば,3次正方行列$A=[\m{a},\m{b},\m{c}]$に対しては,$\m{a},\m{b},\m{c}$が張る平行六面体の体積に相当するものを$|A|$と定めれば

  • $\m{a}$, $\m{b}$, $\m{c}$が線形独立でない
  • $|A|=0$

が同値であることがみてとれますね.

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つまり,$\m{a}$, $\m{b}$, $\m{c}$が同一平面上にあれば平行六面体は「潰れて」体積が0となりますし,この逆も成り立ちます.

一般に,$A=[\m{a}_{1},\dots,\m{a}_{n}]\in\Mat_{n}(\R)$に対しては,$\m{a}_{1},\dots,\m{a}_{n}$が張る「平行立体の$n$次元体積」に相当するものを$|A|$と定めれば,$\m{a}_{1},\dots,\m{a}_{n}$が線形独立でないことと$|A|=0$は同値となります.

置換

しかし,$4$以上の$n\in\N$に対して「平行立体の$n$次元体積」を考えるのは少し難しそうですね.

そこで,我々は体積という幾何学的なアプローチから離れて,置換という代数的な概念を用いて行列式を定義することにします.

次の記事では

  • 置換の定義
  • 重要な置換

を説明します

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