線形代数23|固有値・固有ベクトルの求め方は2ステップ

線形代数学の基本
線形代数学の基本

前回の記事では正方行列の対角化固有値固有ベクトルが密接に関わっていることを説明しましたが,固有値・固有ベクトルの求め方までは説明しませんでした.

実は固有値・固有ベクトルの基本的な求め方は確立されており,結論から言えば

  1. 固有方程式から固有値を求める
  2. 連立方程式を解いて固有ベクトルを求める

という順番で求めることができます.

この記事では

  • 固有値と固有ベクトルの復習
  • 固有値の求め方
  • 固有ベクトルの求め方

を説明します.

なお,この記事の行列・ベクトルは特に断らない限り複素成分とします.

線形代数学の参考文献

以下は線形代数学に関するオススメの教科書です.

大学教養 線形代数(加藤文元 著)

数学科など理論系の学生向けの線形代数の入門書です.平易な具体例から丁寧に説明されているので,初学者にも読み進めやすい教科書です.

手を動かしてまなぶ 線形代数(藤岡敦 著)

理論と演習のバランスをとりながら勉強したい人にオススメの入門書です.

固有値と固有ベクトルの復習

前回の記事で説明した固有値固有ベクトルの定義を確認しておきましょう.

$n$次正方行列$A$を考える.スカラー$\lambda$と$\m{0}$でない$n$次列ベクトル$\m{a}$が存在して$\lambda\m{a}=A\m{a}$が成り立つとき

  • $\lambda$を$A$の固有値
  • $\m{a}$を$A$の固有値$\lambda$に属する固有ベクトル

という.

定義から$\m{0}$は固有ベクトルにはならないことに注意しましょう.

図形的には$\m{0}$でない$\m{a}\in\R^n$を勝手にとってくると,$\m{a}$は$A\m{a}\in\R^n$と平行とは限りませんが,うまく$\m{a}$をとれば$A\m{a}$と$\m{a}$が平行になることがあります.

つまり,$\lambda\in\R$をうまくとって$A\m{a}=\lambda\m{a}$となるような$\m{a}$をとれることがあります.

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このときの$\m{a}$を固有値ベクトル,伸び率$\lambda$を固有値というわけですね.

線形代数22|対角化を固有値・固有ベクトルと併せて解説
一般に正方行列Aの冪Aⁿを直接計算するのは非常に面倒ですが,正方行列の「対角化」を用いれば冪Aⁿは比較的簡単に計算することができます.この記事では「対角化」に密接に関わる固有値・固有ベクトルも併せて解説します.

固有値の求め方

冒頭でも説明したように,固有値と固有ベクトルは

  1. 固有方程式から固有値を求める
  2. 連立方程式を解いて固有ベクトルを求める

という順番で求めることができます.

固有方程式

固有値を求めるために,まずは固有方程式を準備します.

$n$次正方行列$A$に対して,$x$の方程式$|xI-A|=0$を$A$の固有方程式 (characteristic equation)という.

ただし,$I$は$n$次正方行列であり,$|xI-A|$は正方行列$xI-A$の行列式である.

具体例を考えてみましょう.

次の正方行列の固有方程式を求めて解け.

   \begin{align*}(1)\ A=\bmat{1&2\\2&1} &&(2)\ B=\bmat{1&1&0\\2&0&0\\0&0&-1}\end{align*}

(1) $A=\bmat{1&2\\2&1}$の固有方程式は

   \begin{align*}|xI-A| =&\abs{x\bmat{1&0\\0&1}-\bmat{1&2\\2&1}} =\vmat{x-1&-2\\-2&x-1} \\=&(x-1)\cdot(x-1)-(-2)\cdot(-2) \\=&x^2-2x-3 =(x-3)(x+1)\end{align*}

より$(x-3)(x+1)=0$である.これを解くと$x=-1,3$である.

(2) $B=\bmat{1&1&0\\2&0&0\\0&0&-1}$の固有方程式は

   \begin{align*}|xI-B| =&\abs{x\bmat{1&0&0\\0&1&0\\0&0&1}-\bmat{1&1&0\\2&0&0\\0&0&-1}} =\vmat{x-1&-1&0\\-2&x&0\\0&0&x+1} \\=&(x+1)\vmat{x-1&-1\\-2&x} =(x+1)\{(x-1)\cdot x-(-1)\cdot(-2)\} \\=&(x+1)(x^2-x-2) =(x+1)^2(x-2)\end{align*}

より$(x+1)^2(x-2)=0$である.これを解くと$x=-1,2$となる.

この例からも分かるように,$A$が$n$次正方行列なら行列式として対角成分の積に$n$次の項が現れるので,$|xI-A|$は$n$次式となりますね.

このことから$|xI-A|$を固有多項式といいます.

固有値の求め方

実は正方行列$A$に対して,$A$の固有値と$A$の固有方程式の解は一致します.すなわち,次が成り立ちます.

スカラー$\lambda$と正方行列$A$に対して,次は同値である.

  1. $\lambda$は$A$の固有値である.
  2. $\lambda$は固有方程式$|xI-A|=0$の解である.

この定理を用いると,上でみた具体例より

  • $A=\bmat{1&2\\2&1}$の固有値は,固有方程式の解と一致して$-1$, $3$
  • $A=\bmat{1&2&0\\2&0&0\\0&0&-1}$の固有値は,固有方程式の解と一致して$-1$, $2$

と分かりますね.

[$(1)\Ra(2)$の証明] $A$の固有値$\lambda$に属する固有ベクトルを$\m{a}$とする.

このとき,$A\m{a}=\lambda\m{a}$が成り立つから,移項して

   \begin{align*}\m{0}=(\lambda I-A)\m{a}\end{align*}

が成り立つ.もし$\lambda I-A$が正則なら,両辺に左から$(\lambda I-A)^{-1}$をかけて$\m{0}=\m{a}$となるが,$\m{a}$は固有ベクトルだから$\m{a}\neq\m{0}$なので矛盾する.

よって,$\lambda I-A$は正則でないから,$|\lambda I-A|=0$を満たす.

[$(2)\Ra(1)$の証明] $|\lambda I-A|=0$が成り立つなら,$\m{x}$の連立方程式$(\lambda I-A)\m{x}=\m{0}$は$\m{0}$でない解$\m{a}$をもつ.

このとき,

   \begin{align*}\m{0}=(\lambda I-A)\m{a}\iff A\m{a}=\lambda\m{a}\end{align*}

が成り立つから,$\lambda$は$A$の固有値(で,$\m{a}$は$A$の固有値$\lambda$に属する固有ベクトル)である.

$n$次正方行列$A$が複素行列なら,$A$の固有方程式$|xI-A|=0$は複素係数の$n$次方程式となります.

そのため,代数学の基本定理より$A$の固有方程式$|xI-A|=0$は重複を許して$n$個の複素数解をもつので,$A$は複素数の範囲に重複を許して$n$個の固有値を持ちます.

よって,複素正方行列の固有値は複素数の範囲で考えるのが普通です.

実数は複素数の一種なので,実正方行列も複素数の範囲に重複を許して$n$個の固有値を持ちます.

固有ベクトルの求め方

$\lambda$が正方行列$A$の固有値と分かっていれば,$\m{0}$でない$\m{v}$が固有値$\lambda$に属する固有ベクトルであることは

   \begin{align*}A\m{v}=\lambda\m{v}\iff (A-\lambda I)\m{v}=\m{0}\end{align*}

を満たすことに他なりません.

これは$\m{x}$の連立方程式$(A-\lambda I)\m{x}=\m{0}$の解が$\m{v}$であることと同じことですから,この連立方程式の解が固有ベクトルとなりますね.

正方行列$A=\bmat{1&2\\2&1}$の固有値を全て求め,それぞれの固有値に属する固有ベクトルも全て求めよ.

$\m{x}$の連立方程式$P\m{x}=\m{q}$は,拡大係数行列$[P,\m{q}]$に行基本変形を施すことで解けること(掃き出し法)を思い出しておきましょう.

$A=\bmat{1&2\\2&1}$の固有値が$-1$ ,$3$であることは上で説明したので

  • 固有値$-1$に属する固有ベクトル
  • 固有値$3$に属する固有ベクトル

を求めれば良い.

(i) $\m{v}\in\C^n$が$A$の固有値$-1$の固有ベクトルであることと

   \begin{align*}A\m{v}=(-1)\m{v}\iff(A+I)\m{v}=\m{0}\end{align*}

を満たすことは同値である.$A+I$は行基本変形により

   \begin{align*}A+I =\bmat{1&2\\2&1}+\bmat{1&0\\0&1} =\bmat{2&2\\2&2} \to\bmat{1&1\\0&0}\end{align*}

となるから,掃き出し法の考え方から$\m{v}=c\bmat{1\\-1}$が$(A+I)\m{v}=\m{0}$の解である.

よって,$A$の固有値$-1$に属する固有ベクトルは$c\bmat{1\\-1}$ ($c\neq0$)である.

(ii) $\m{v}\in\C^n$が$A$の固有値$3$の固有ベクトルであることと

   \begin{align*}A\m{v}=3\m{v}\iff(A-3I)\m{v}=\m{0}\end{align*}

を満たすことは同値である.$A-3I$は行基本変形により

   \begin{align*}A-3I =\bmat{1&2\\2&1}-3\bmat{1&0\\0&1} =\bmat{-2&2\\-2&2} \to\bmat{1&-1\\0&0}\end{align*}

となるから,掃き出し法の考え方から$\m{v}=d\bmat{1\\1}$が$(A-3I)\m{v}=\m{0}$の解である.

よって,$A$の固有値$3$に属する固有ベクトルは$d\bmat{1\\1}$ ($d\neq0$)である.

なお,$c\neq0$, $d\neq0$としているのは,固有ベクトルは$\m{0}$でないためですね.

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