【SPONSORED LINK】

群と環と体の定義とそれらの具体例

代数学は数学の構造を研究する分野であり,群(group),環(ring),体(field)上において理論が展開されることは非常に多いです.

群,環,体といった代数構造を定義するためには,「集合」と「演算」が必要となります.

例えば,

  • 整数の集合\Zは通常の加法+によって「群」
  • 実数係数の1変数多項式\R[x]の集合は通常の加法+と乗法\cdotによって「環」
  • 実数の集合\Rは通常の加法+と乗法\cdotによって「体」

となります.

この記事では,最初に「2項演算」を説明し,そのあとに群,環,体の定義とそれらの例を挙げます.

【SPONSORED LINK】

2項演算

まず,2項演算について説明します.

2項演算の定義

集合X上の2項演算を次で定めます.

[2項演算] 集合Xに対して,写像f:X\times X\to XX上の2項演算(または,単に演算)という.任意のa,b\in Xに対して,f(a,b)を単にabと書くことも多い.

また,「演算を\cdot+とする」と書いた場合には,a\cdot ba+bなどと書く.

以降,2項演算は単に演算と書きます.

演算の定め方は無数にあります.例えば,任意のa,b\in\Rに対して

  • f(a,b)=ab
  • f(a,b)=a+4b
  • f(a,b)=a^3

で定まるf:\R\times\R\to\Rはいずれも演算です.

要するに,2つの元a,b\in Xに対して,行き先が1つに決まればそれは演算というわけですね.そのため,演算が必ずしも「良い性質」をみたすとは限りません.

しかし,無茶苦茶な演算が定まった集合を考えてもそれほど有用な結果は得られそうにありませんから,「良い性質をもった演算」が定まっている集合を考えましょう.

2項演算の3法則

いま「良い性質をもった演算」と書きましたが,ここで「良い性質」とは

  • 結合法則
  • 交換法則
  • 分配法則

のことを指しています.

[結合法則] 集合Xに演算\cdotが定まっているとする.このとき,任意のa,b,c\in Xに対して,

\begin{align*} (a\cdot b)\cdot c=a\cdot (b\cdot c) \end{align*}

が成り立つことを,結合法則 (associative law)が成り立つという.

[交換法則] 集合Xに演算\cdotが定まっているとする.このとき,任意のa,b,c\in Xに対して,

\begin{align*} a\cdot b=b\cdot a \end{align*}

が成り立つことを,交換法則 (commutative law)が成り立つという.

[分配法則] 集合Xに加法+と乗法\cdotが定まっているとする.このとき,任意のa,b,c\in Xに対して,

\begin{align*} a\cdot(b+c)=a\cdot b+a\cdot c,\quad (a+b)\cdot c=a\cdot c+b\cdot c \end{align*}

が成り立つことを,分配法則 (distributive law)が成り立つという.

[結合法則]と[交換法則]は1つの演算に関する性質であり,[分配法則]は2つの演算に関する性質であることに注意してください.

算数以来,これらの3法則は当たり前に成り立ってきましたが,特に交換法則は成り立たないことは珍しくなく,交換法則が成り立つことを可換といい,交換法則が成り立たないことを非可換といいます.

この節では,群を定義し,群の例を挙げます.

群の定義

群の定義は次の通りです.

[群] 集合Gに演算\cdotが定まっているとする.次の1〜3を満たすとき,集合と演算の組(G,\cdot)を群(group)という.演算が明らかな場合は,単にG群(group)という.

  1. あるe\in Gが存在して,任意のg\in Gに対してe\cdot g=g\cdot e=gが成り立つ.
  2. 任意のg\in Gに対して,あるh\in Gが存在してg\cdot h=h\cdot g=eが成り立つ.
  3. \cdotに関して[結合法則]が成り立つ.

加えて次をみたすとき,群(G,\cdot)可換群(commutative group)(またはアーベル群(abelian group))であるという.

  1. 演算\cdotに関して,[交換法則]が成り立つ.

条件1のe\in G単位元 (identity element)といい,条件2のh\in Gg逆元 (inverse element)といいます.

単位元は全ての元に対してe\cdot g=g\cdot e=gを満たさなければなりませんが,逆元はg\in Gごとに決まることに注意してください.

群の定義から分かるように,群は「集合」と「演算」により定まるわけですね.

そのため,「自然数の集合\Nは群か?」と問われても,演算が何であるか分からないため群であるかどうか答えようがなく,「\Nに定義されている演算は何ですか?」と逆に問い返すことになりますね.

乗法と加法

群における慣習的な「乗法」と「加法」という言葉の使い分け方について説明します.

可換群の場合にも非可換群の場合にも群に定まっている演算は「乗法」と呼ばれることが多く,「乗法」と言う場合には演算の記号は\cdotで表すことが多いです.

一方,群に定まっている演算を「加法」と言った場合には,その演算は可換であることが普通です.すなわち,非可換な演算に「加法」ということはまずありません.

乗法による計算結果を,加法による計算結果をといいます.

また,乗法\cdotの記号はよく省略しますが,加法+の記号は省略しません.

さらに,乗法に関するgの逆元はg^{-1}で表し,加法に関するgの逆元は-gで表します.

群の例

以下に群の例を挙げます.

例1

1つの元のみからなる集合X=\{x\}を考えます.

このとき,X上の演算は(x,x)\mapsto xしかあり得ませんが,この演算を乗法\cdotとすることにより(X,\cdot)は可換群となります.

この群1つの元のみからなる集合を自明な群(trivial group)といいます.

例2

整数の集合\Zと,通常の加法+の組(\Z,+)を考えます.

ここで,「通常の加法」とは小学校から扱ってきた単なる足し算のことで,

  1. 任意のn\in\Zに対してn+0=0+n=nが成り立つので,単位元は0です.
  2. 任意のn\in\Zに対してn+(-1)n=(-1)n+n=0が成り立つので-n=(-1)nです.
  3. 整数の足し算なので,[結合法則]は成り立ちます.
  4. 整数の足し算なので,[交換法則]は成り立ちます.

よって,組(\Z,+)が可換群であることが分かりました.

例3

有理数の集合から0を除いた集合\Q\setminus\{0\}と,通常の乗法\cdotの組(\Q\setminus\{0\},\cdot)を考えます.

ここで,「通常の乗法」とは小学校から扱ってきた単なる掛け算のことで,

  1. :任意のx\in\Q\setminus\{0\}に対して1\cdot x=x\cdot1=xが成り立つので,単位元は1です.
  2. 任意のx\in\Q\setminus\{0\}に対してx\cdot\dfrac{1}{x}=\dfrac{1}{x}\cdot x=1が成り立つので,x^{-1}=\dfrac{1}{x}です.
  3. 有理数の掛け算なので,[結合法則]は成り立ちます.
  4. 有理数の掛け算なので,[交換法則]は成り立ちます.

よって,組(\Q\setminus\{0\},\cdot)が可換群であることが分かりました.

例4

整数の集合\Zと,通常の乗法\cdotの組(\Z,\cdot)を考えます.

  1. :任意のn\in\Zに対して1\cdot n=n\cdot1=nが成り立つので,単位元は1です.
  2. 2\in\Zに対して2\cdot n=1をみたすような\Zの元は存在しません.よって,2\in\Zは逆元を持ちません.

群は任意の元に逆元を持たなければならりませんから,組(\Z,\cdot)は群ではありません.

なお,ここで

  • 例2と例4を比較すれば,同じ集合であっても演算が異なれば群であったりなかったりする
  • 例3と例4を比較すれば,同じ演算であっても集合が異なれば群であったりなかったりする

ということに注意してください.

例5

成分が\R(m,n)型行列の集合M_{mn}(\R)と,通常の乗法+の組(M_{mn}(\R),+)は可換群です.

  1. 任意のA\in M_{mn}(\R)に対してA+O=O+A=Aが成り立つので,単位元は零行列Oです.
  2. 任意のA\in M_{mn}(\R)に対してA+(-1)A=(-1)A+A=0が成り立つので,(-1)AAの逆元です.
  3. 各成分で\Rの加法なので,[結合法則]は成り立ちます.
  4. 各成分の\Rの加法なので,[交換法則]は成り立ちます.

よって,組(M_{mn}(\R),+)が可換群であることが分かりました.

例6

成分が\Rn次正則行列の集合GL_n(\R)と,通常の加法\cdotの組(GL_n(\R),\cdot)は群ですが,可換ではありません.

  1. 任意のA\in GL_n(\R)に対してAI=IA=Aが成り立つので,単位元は単位行列Iです.
  2. 任意のA\in GL_n(\R)に対して,A^{-1}Aの逆元です.
  3. 行列の積なので,[結合法則]は成り立ちます.
  4. 行列の積なので,[交換法則]は成り立ちません.

よって,組(GL_n(\R),+)が群ですが,可換群ではないことが分かりました.

参考文献

代数学1 群論入門

本書は群論の入門書です.

具体例が多く行間が少ないため,初学者にも非常に読みやすい良著です.さらに,章末問題が豊富な上に解答の解説も非常に丁寧です.

章末問題のレベルもその賞で学んだ基本的な内容から,少し考える問題まで様々なので理解を深めるのに非常に便利です.

また,「群論入門」は予備知識をあまり仮定せず,必要事項を第1章にまとめてあり,1から独学で学ぶことができる点も嬉しいところですね.

なお,本書について,詳しくは以下の書評を参照してください.

この節では,環を定義し,環の例を挙げます.

環の定義

環の定義は次の通りです.

[環] 集合Rに2つの演算+, \cdotが定まっているとする.次の1〜4を満たすとき,集合と演算の組(R,+,\cdot)環 (ring)という.演算が明らかな場合は,単にRを環という.

  1. (R,+)は可換群である.
  2. あるe\in Rが存在して,任意のr\in Rに対してe\cdot r=r\cdot e=rが成り立つ.
  3. \cdotに関して[結合法則]が成り立つ.
  4. +\cdotに関して[分配法則]が成り立つ.

このとき,+を加法,\cdotを乗法という.加えて次をみたすとき,環(R,+,\cdot)可換環 (commutative ring)であるという.

  1. 演算\cdotに関して[交換法則]が成り立つ.

条件1の加法+に関する単位元を加法単位元 (additive identity)零元 (zero element)といい0で表し,条件2のe\in R乗法単位元 (multiplicative identity)といい1で表します.

条件1は加法+に関する条件であり,条件2と条件3は乗法\cdotに関する条件ですね.さらに,条件4は加法と乗法に関する条件です.

条件4によって,加法+と乗法\cdotは別々に勝手にとっていいわけではなく,[分配法則]が成り立つ程度に加法+と乗法\cdotの整合性を保っていなければならないというわけですね.

また,環においては,乗法\cdotに関して,逆元を持たない元があっても構いません.

群においてもそうでしたが,「有理数の集合\Qは環か?」などと問われても,演算が何であるか分からないため環であるかどうか答えようがなく,「\Qに定義されている加法と乗法は何ですか?」と逆に問い返すことになります.

環の例

以下に環の例を挙げます.

例1

1つの元のみからなる集合X=\{x\}を考えます.

このとき,X上の演算は(x,x)\mapsto xしかあり得ませんが,この演算を加法+と乗法\cdotとすることにより(X,+,\cdot)は可換環となります.

この群1つの元のみからなる集合を零環(zero ring)といいます.

環に関する多くの理論は加法単位元0と乗法単位元1が異なるとして考える方が都合が良く,これらが一致する零環には一般論が通用せず都合が悪いことが多いです.

そのため,環を考える際には初めから0\neq1として零環を除いておくことが多いです.

例2

有理数の集合\Qと,通常の加法+と乗法\cdotの組(\Q,+,\cdot)は可換環です.

  1. 加法+に関して\Qは可換群です:
    1. 任意のx\in\Qに対してx+0=0+x=xが成り立つので,加法単位元は0です.
    2. 任意のx\in\Qに対してx+(-1)x=(-1)x+x=0が成り立つので,-x=(-1)xです.
    3. 有理数の足し算なので,[結合法則]は成り立ちます.
    4. 有理数の足し算なので,[交換法則]は成り立ちます.
  2. 任意のr\in\Qに対して1\cdot r=r\cdot 1=rが成り立つので,乗法単位元は1です.
  3. 有理数の掛け算なので,[結合法則]が成り立ちます.
  4. 有理数の足し算と掛け算なので,[分配法則]は成り立ちます.
  5. 有理数の掛け算なので,[交換法則]は成り立ちます.

したがって,組(\Q,+,\cdot)が可換環であることが分かりました.

例3

\Z/6\Z=\{0,1,2,3,4,5\}において,加法+と乗法\cdot

  • 加法+a,b\in\Z/6\Zに対して,\Zの通常の加法でa+bを計算して,6で割った余りを\Z/6\Zの和とする.
  • 乗法\cdota,b\in\Z/6\Zに対して,\Zの通常の乗法でa\cdot bを計算して,6で割った余りを\Z/6\Zの積とする.

と定めると,組(\Z/6\Z,+,\cdot)は可換環です.

例えば,加法に関しては

  • 1+2=3
  • 2+3=5
  • 3+5=2

であり,乗法に関しては

  • 1\cdot3=3
  • 2\cdot3=0
  • 3\cdot5=3

ですね.イメージとしては,0,1,2,3,4,5,0,1,2,\dotsのように6になると0に戻る演算だと思えばよいですね.

  1. 加法+に関して\Z/6\Zは可換群です:
    1. 任意のx\in\Z/6\Zに対してn+0=0+n=nが成り立つので,加法単位元は0です.
    2. 0+0=0, 1+5=5+1=0, 2+4=4+2=0, 3+3=0なので,-0=0, -1=5, -2=4, -3=3, -4=2, -5=1となって,任意のn\in\Z/6\Zに対して,nの逆元が存在します.
    3. \Zの通常の加法+では[結合法則]が成り立つから,\Zの計算をして6で割った余りを考えることで[結合法則]は成り立ちます.
    4. \Zの通常の加法+では[交換法則]が成り立つから,\Zの計算をして6で割った余りを考えることで[交換法則]は成り立ちます.
  2. 任意のn\in\Z/6\Zに対して1\cdot n=n\cdot 1=nが成り立つので,乗法単位元は1です.
  3. \Zの通常の乗法\cdotでは[結合法則]が成り立つので,\Zの計算をして6で割った余りを考えることで[結合法則]は成り立ちます.
  4. \Zの通常の加法+と乗法\cdotでは[分配法則]が成り立つので,\Zの計算をして6で割った余りを考えることで[分配法則]は成り立ちます.
  5. \Zの通常の乗法\cdotでは[交換法則]が成り立つので,\Zの計算をして6で割った余りを考えることで[交換法則]は成り立ちます.

したがって,組(\Z/6\Z,+,\cdot)が可換環であることが分かりました.

例4

\R成分のn次正方行列の集合M_n(\R)と,通常の加法+と乗法\cdotの組(M_n(\R),+,\cdot)は環ですが,可換環ではありません.

  1. 加法+に関してM_n(\R)は可換群です:
    1. 加法単位元は零行列Oです.
    2. 任意のA\in M_n(\R)に対して,(-1)AAの逆元です.
    3. 通常の行列の加法+なので,[結合法則]は成り立ちます.
    4. 通常の行列の加法+なので,[交換法則]は成り立ちます.
  2. 乗法単位元は単位行列Iです
  3. 通常の行列の乗法\cdotなので,[結合法則]は成り立ちます.
  4. 通常の行列の加法+と乗法\cdotなので,[分配法則]は成り立ちます.
  5. 通常の行列の乗法\cdotなので,[交換法則]は成り立ちません.

したがって,組(M_n(\R),+,\cdot)が環ですが,可換環ではないことが分かりました.

この節では,体を定義し,体の例を挙げます.

体の定義

体の定義は次の通りです.

[体] 組(F,+,\cdot)が零環でない可換環であり,さらに加法単位元を除く全ての元に乗法\cdotに関する逆元が存在するとき,(F,+,\cdot)体(Field)であるという.

可換環においては,乗法\cdotに関する逆元は条件に含まれていませんでした.

そこで「可換環の全ての元に逆元が存在する」という条件を付け加えたものが体というわけです.

要するに,体は可換な加乗除ができる集合ということですね.

また,加法単位元0以外の全ての元に逆元を持つ環を可除環 (division ring)といいます.さらに,非可換な可除環を斜体 (skew field)という.

ただし,「可除環」と「斜体」の定義を同じとする流儀もあるので注意が必要です.

体の例

以下に体の例を挙げます.

例1

有理数の集合\Qと,通常の加法+と乗法\cdotの組(\Q,+,\cdot)は体です.

環の例1で可換環であることは確かめました.

また,乗法単位元は1であり,任意のx\in\Q\setminus\{0\}に対して,xの乗法\cdotに関する逆元\dfrac{1}{x}\in\Qが存在します.

したがって,組(\Q,+,\cdot)が体であることが分かりました.

例2

\mathbb{F}_7=\Z/7\Z=\{0,1,2,3,4,5,6\}において,加法+と乗法\cdot

  • 加法+a,b\in\mathbb{F}_7に対して,\Zの通常の加法でa+bを計算して,7で割った余りを\mathbb{F}_7の和とする.
  • 乗法\cdota,b\in\mathbb{F}_7に対して,\Zの通常の乗法でa\cdot bを計算して,7で割った余りを\mathbb{F}_7の積とする.

と定めると,組(\mathbb{F}_7,+,\cdot)は体です.

環の例3と同様にイメージとしては0,1,2,3,4,5,6,0,1,2,\dotsのように7になると0に戻る演算だと思えばよく,環の例3と同様に考えて\mathbb{F}_7が可換環であることが分かります.

また,乗法単位元は1であり,

\begin{align*} 1\cdot1=1,\quad 2\cdot4=1,\quad 3\cdot5=1,\quad 6\cdot6=1 \end{align*}

なので,任意のn\in\mathbb{F}_7\setminus\{0\}に対して,nの乗法\cdotに関する逆元が存在します.

よって,組(\mathbb{F}_7,+,\cdot)が体であることが分かりました.

一般に素数pに対して(\Z/p\Z,+,\cdot)は体となり,\Z/p\Z\mathbb{F}_pで表すことが多いです.

例3

集合\Q[\sqrt{5}]=\set{a+b\sqrt{5}}{a,b\in\Q}と,通常の加法+と乗法\cdotの組(\Q[\sqrt{5}],+,\cdot)は可換環です.

加法+と乗法\cdotが演算になっていることを確認しなければなりませんが,それは任意のa+b\sqrt{5},c+d\sqrt{5}\in\Q[\sqrt{5}]に対して,

\begin{align*} &(a+b\sqrt{5})+(c+d\sqrt{5})=(a+b)+(c+d)\sqrt{5}\in\Q[\sqrt{5}], \\&(a+b\sqrt{5})\cdot(c+d\sqrt{5})=(ac+5bd)+(ad+bc)\sqrt{5}\in\Q[\sqrt{5}] \end{align*}

なので,確かに加法+と乗法\cdot\Q[\sqrt{5}]上の演算ですね.

  1. 加法+に関して\Q[\sqrt{5}]は可換群です:
    1. 任意のx\in\Q[\sqrt{5}]に対してx+0=0+x=xが成り立つので,加法単位元は0です.
    2. 任意のx\in\Q[\sqrt{5}]に対してx+(-x)=(-x)+x=0が成り立つので,-xxの逆元です.
    3. 実数の足し算なので,[結合法則]は成り立ちます.
    4. 実数の足し算なので,[交換法則]は成り立ちます.
  2. 任意のx\in\Q[\sqrt{5}]に対して1\cdot x=x\cdot 1=xが成り立つので,乗法単位元は1です.
  3. 実数の掛け算なので,[結合法則]が成り立ちます.
  4. 実数の足し算と掛け算なので,[分配法則]は成り立ちます.
  5. 有理数の掛け算なので,[交換法則]は成り立ちます.
  6. \Q[\sqrt{5}]0でない任意の元a+b\sqrt{5}に対して,\dfrac{a-b\sqrt{5}}{a^2-5b^2}\in\Q[\sqrt{5}]が逆元として存在します.

したがって,組(\Q[\sqrt{5}],+,\cdot)が体であることが分かりました.

参考文献

代数学2 環と体とガロア理論 (雪江明彦著,日本評論社)

「代数学2 環と体とガロア理論」(雪江明彦著,日本評論社)は環論,体論の入門書です.

1巻の「群論入門」と同じく,具体例と章末問題が豊富で,独学でも十分に読み進めることができます.

特に代数学の1つの大きな分野であるGalois理論について具体例を多く扱っており,私はここの具体例をしっかり読み込むことで環論と体論の良い演習になったように感じます.

ただし,誤植が散見されるので,しっかり間違いを見極めて読み進めるようにしてください.

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

最後までありがとうございました!

以下の関連記事もいかがですか?

SPONSORED LINK
関連記事

記事一覧はこちらからどうぞ!

コメント

  1. クロ より:

    環の定義の中の環が群になってますよ!
    群(ring)

    • yama-taku より:

      ご指摘をありがとうございます.

      ご指摘の通り,環の定義で「環」と書くべきところを「群」と表記しておりました.
      誤植部分を修正しました.

  2. TKD より:

    体の定義の記述部分についてです。
    「乗法単位元0」と記述されているのですが、0は加法元ではないのですか?
    大学数学を学び始めたばかり故、間違っていたら説明していただけると幸いです。

    • yama-taku より:

      ご質問をありがとうございます.
      ご指摘の通り,0は乗法単位元ではなく,加法単位元でした.
      誤植部分を修正しました.

      高校までの数学が「論理的に問題を解けることを重視している」とすれば,大学からの数学は「厳密に数学の構造を理解することを重視している」と言えると思います.
      そのため,考え方や表現の仕方に戸惑うこともあるかと思いますが,ぜひ楽しんでください.

  3. ごたん より:

    独学で代数学を勉強しております。専門書に載っている(\Q,+,\cdot)のような表記の意味などが良くわからずとても苦戦しておりましたが、この記事のお陰で理解が深まりました。ありがとうございます!!

    • yama-taku より:

      コメントをありがとうございます.
      お力になれたようで嬉しく思います!

  4. […] とりあえずこのページ見つけたけどこれでいい? https://math-note.xyz/algebra/basis-of-algebra/ […]

  5. Kr より:

    大変わかりやすくて、群・環・体の理解度が高まりました!
    体の例3の6.についてお聞きしたいのですが
    逆元は\dfrac{a-b\sqrt{5}}{a^2-5b^2}ではないのですか?

    • yama-taku より:

      ご指摘とご感想をありがとうございます!
      ご指摘の通り,逆元は\dfrac{a-b\sqrt{5}}{a^2-5b^2}が正しいです.
      誤植を修正しました.

  6. cerveceria より:

    分かりやすい解説ありがとうございます。
    確認ですが、環の例2の(1-2)において、「-nnの逆元」とありますが、-nは、\Z/6\Z=\{0,1,\dots,5\}の元に含まれていません。加法可換群である以上、逆元ももとの集合の中に含まれるべきと考えますが。或いは、元は絶対値表示してあるという意味でしょうか?
    私の理解不足による誤解かもしれません。ご指導お願いいたします。

    • yama-taku より:

      ご指摘をありがとうございます.
      仰るようにここの書き方はよくありませんでした.

      小学校以来,実数に慣れ親しんできた私達は「たとえば-10は数直線上で0に関して10と対称な位置にあるような実数」として理解してきました.
      しかし,群の定義では-nnの加法逆元という意味,すなわちnと足し合わせて加法単位元0になるものという意味でしかありません.
      ですから,\Z/6\Z=\{0,1,\dots,5\}に対して,たとえば1+5=5+1=0ですから1の逆元は5なので,-1=5ということになります.
      この意味で,「-nnの逆元である.」という文は,トートロジーになっており間違いではないにしろ何も説明していませんでした.

      このように,実数で考えると-nは「n-1をかけたもの」ではありますが,一般の群では-nは「n-1をかけたもの」ではなく「nに両側から加えて0になるもの」という理解をされるのがよいと思います.
      仰るようにn-1をかけたものが定義されていないかも知れませんから.
      記事の説明を修正しましたので,是非ご確認ください.

      • cerveceria より:

        yama-taku 様、早速の解説ありがとうございました。例文も確認いたしました。この説明でスッキリ納得できました。

  7. ry より:

    大変わかりやすく読ませていただいています。
    読み進めての疑問なのですが、
    群の例 3. で、「有理数の集合と乗法の組は可換群」とありますが、0 に対する逆元は存在しないのではないでしょうか?
    私の理解不足かもしれません。ご指導お願い致します。

    • yama-taku より:

      ご指摘をありがとうございます.
      ご指摘の通り,0に乗法逆元はなく誤りで,正しくは「有理数の集合から0を除いた集合\Q\setminus\{0\}」です.
      誤植部分を修正しました.

記事一覧は

こちら

Twitterを

フォロー

大学院入試

解答例

大学受験

解説ブログ