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外測度はルベーグ積分の第1歩!「集合の長さ」を測る方法

ルベーグ積分の基本
ルベーグ積分の基本

大学の微分積分学で学ぶリーマン積分 (Riemann integral)は定義域を細かく分割して長方形近似によって面積を求める積分で,このことからリーマン積分は「縦切りの積分」ということができます.

一方,ルベーグ積分 (Lebesgue integral)はリーマン積分とは対照的に値域に注目して分割する積分で,このことからルベーグ積分は「横切りの積分」と言われることもあります.

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ルベーグ積分は定義までは少々道のりが長いものの,一度整備してしまえば非常に性質がよく扱い易い積分となっています.

さて,ルベーグ積分を考えるには「集合の『長さ』」が鍵となります.

例えば「区間[0,1]の長さ」はもちろん1ですが,それでは「区間[0,1]上の有理数の集合Q[0,1]の長さ」はどのように考えればよいでしょうか?

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集合Q[0,1]は「まばら」な集合なので,我々がこれまで考えてきた「長さ」とは少し考え方を変える必要がありそうですね.

そこで,この記事では

  • 外測度の定義
  • 集合の外測度の具体例

を順に説明します.

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ルベーグ積分の参考文献

以下はルベーグ積分に関するオススメの教科書です.

ルベグ積分入門

ロングセラーの入門書です.専門書ですが,文庫なので安く購入できるのも魅力です.

ルベーグ積分と関数解析

ルベーグ積分から更なるステップに進みたい人向けの教科書です.

外測度

外測度とは集合の長さを「外側」から測るものと言うことができるため,そのように名前が付いています.

区間の長さ

外測度を定義するために,まずは区間の長さを定義しておきましょう.

a,bRa<bを満たすとする.このとき,右半開区間[a,b)の長さを

    \begin{align*}|[b-a)|\end{align*}

と表しbaと定める.

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例えば,

    \begin{align*}|[0,3)|=3-0=3,\quad |[-3,1)|=1-(-3)=4\end{align*}

というわけですね.

「なぜ右半開区間を考えるのか」というと,例えば

    \begin{align*}[0,1)\cup[1,3)=[0,3)\end{align*}

のように右半開区間であればピッタリと区間を繋げることができたりと扱いやすいことが理由です.

理論上は開区間でも,閉区間でも,左半開区間でも問題ないのですが,この一連の記事では右半開区間に対して長さを定義して話を進めます.

外測度の考え方

外測度の考え方を理解するために,まずは下図のような集合ARの長さを測る方法を考えましょう.

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集合Aは例えば下図のような右半開区間I1, I2によって覆うことができますね.

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このI1, I2に対して,直感的には

(集合Aの長さ)|I1|+|I2|

と言ってよさそうです.ただ,もっと「ゆとり」を小さくAを覆うこともできますね.

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このI1, I2, I3に対しても,やはり

(集合Aの長さ)|I1|+|I2|+|I3|

と言ってよさそうです.

これでもまだI2には余裕がありますが,このように「ゆとり」を小さくしていけば,Aを覆う区間たちの長さの和は集合Aの「長さ」に近付いていくと言えそうですね.

外測度の定義

集合ARを右半開区間I1,I2,I3,で覆う方法は無数に考えられますが,

    \begin{align*}\sum_{n=1}^{\infty}|I_n|=|I_1|+|I_2|+|I_3|+\dots\end{align*}

が小さくなるようにすると,これは集合Aの「長さ」に近いと言えそうです.

この考え方で集合Aの「長さ」を測るものを外測度といいます.

集合ARに対して,

m(A)=inf{n=1|In| | An=1In,Inは右半開区間}

で定まるm(A)Aルベーグ外測度または単に外測度という.

ただし,Aを覆う右半開区間が有限個の場合,n=1|In|は有限和とみなす.

実数の連続性公理よりRの部分集合の下限infは(±を許して)必ず存在するので,mは任意のARに対して定義できますね.

このことから,ルベーグ外測度mRの冪集合P(R)を定義域とする写像といえますね.

Rの部分集合全部の集合を冪集合といい,P(R)2Rなどと表します.

また,ルベーグ外測度の定義のn=1|In|は0以上なので,ルベーグ外測度は常に0以上ですね.

なお,「外測度」と呼ぶ理由は集合を右半開区間で「外側」から覆って「測る」ものだからですね.

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外測度の具体例

いくつか簡単にルベーグ外測度が得られる具体例を考えてみましょう.

例1(空集合の外測度)

空集合のルベーグ外測度が0であることを示せ.すなわち,m()=0を示せ.

任意にϵ>0をとる.空集合は任意の集合の部分集合なので[0,ϵ)だから,ルベーグ外測度の定義より

    \begin{align*}m^{*}(\emptyset)\le|[0,\epsilon)|=\epsilon\end{align*}

が成り立つ.

ϵの任意性よりm()0が成り立つから,もとより成り立つ0m()と併せてm()=0を得る.

例2(有限集合の外測度)

有限集合{a1,a2,,an}Rのルベーグ外測度が0であることを示せ.すなわち,m({a1,a2,,an})=0を示せ.

考え方は例1とほとんど同じです.

任意にϵ>0をとる.Ik:=[ak,ak+ϵn)とおくと,

    \begin{align*}\{a_1,a_2,\dots,a_n\}\subset\bigcup_{k=1}^{n}I_k\end{align*}

である.

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よって,ルベーグ外測度の定義より

    \begin{align*}m^{*}(\{a_1,a_2,\dots,a_n\}) &\le\sum_{k=1}^{n}\abs{\left[a_k,a_k+\frac{\epsilon}{n}\right)} \\&=\sum_{k=1}^{n}\brb{\bra{a_k+\frac{\epsilon}{n}}-a_k}=\epsilon\end{align*}

が成り立つ.

ϵの任意性よりm({a1,a2,,an})0が成り立つから,もとより成り立つ0m({a1,a2,,an})と併せてm({a1,a2,,an})=0を得る.

例3(可算無限集合の外測度)

可算無限集合ARのルベーグ外測度が0であることを示せ.すなわち,m(A)=0を示せ.

可算無限集合なのでA={a1,a2,}と全ての元に番号をつけることができますね.

しかし,例2と同じように長さが一定の右半開区間で覆うのでは,区間の長さの和が正の無限大に発散してうまくいきません.

このような場合は和が等比級数となるように,どんどん小さくなる右半開区間を設定するとうまくいきます.

任意にϵ>0をとる.A={a1,a2,}を可算無限集合とする.In:=[an,an+ϵ2n)とおくと,

    \begin{align*}A\subset\bigcup_{n=1}^{\infty}I_n\end{align*}

である.

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よって,外測度の定義より

    \begin{align*}m^{*}(A)\le\sum_{n=1}^{\infty}|I_n|=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{\epsilon}{2^n}=\epsilon\end{align*}

が成り立つ.

ϵの任意性よりm(A)0が成り立つから,もとより成り立つ0m({a})と併せてm({a})=0を得る.

等比級数n=112n=1は当たり前にしておきたいですね.

例えば,整数全部の集合Nや有理数全部の集合Qは可算無限集合なので

    \begin{align*}m^{*}(\N)=0,\quad m^{*}(\Q)=0\end{align*}

が従いますね.さらに,冒頭で問題提起した集合Q[0,1]も可算集合なので

    \begin{align*}m^{*}(\Q\cap[0,1])=0\end{align*}

が成り立つことが分かりますね.

例4(区間の外測度)

右半開区間IRのルベーグ外測度が|I|であることを示せ.すなわち,m(I)=|I|を示せ.

直感的にはルベーグ外測度mが集合の「長さ」を測るものなので|I|となりそうです.

しかし,左辺のIの外測度m(I)の定義は「Iを覆うあらゆる右半開区間の列{In}を考えたときの,n=1|In|の集合の下限inf」なので,右辺の区間の長さ|I|のような単純な定義ではありません.

そのため,これらが等しいことは直ちに成り立つわけではありませんが,このことを証明するのがこの問題ですね.

IIが成り立つから,外測度の定義よりm(I)Iが成り立つ.

また,Iの外測度m(I)の定義より,任意のϵ>0に対して,In=1なる右半開区間の列{In}が存在し

    \begin{align*}m^{*}(I)+\epsilon>\sum_{n=1}^{\infty}|I_n|\end{align*}

が成り立つ.

また,In=1より|I|n=1|In|が成り立つことと併せて

    \begin{align*}m^{*}(I)+\epsilon>|I|\end{align*}

が成り立つから,ϵの任意性よりm(I)|I|を得る.よって,m(I)=|I|が従う.

証明中の「右半開区間In=1なら|I|n=1|In|が成り立つ」という部分は,直感的には捉え易いと思いますが本来は証明すべき箇所です.

しかし,この証明は少々厄介なので,この一連の記事では省略します.証明が知りたい方は例えば序盤に紹介した参考文献を参照してください.

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