ルベーグ積分11|一般の可測関数にルベーグ積分を定義する

ルベーグ積分の基本
ルベーグ積分の基本

前々回の記事でルベーグ可測単関数のルベーグ積分を定義し,前回の記事ではルベーグ可測関数がルベーグ可測単関数列で近似できることを説明しました.

これらを踏まえると,ルベーグ可測集合$A$上のルベーグ可測関数$f$をルベーグ可測単関数列$\{f_n\}$で近似したとき,

   \begin{align*}\lim_{n\to\infty}\int_{A}f_{n}(x)\,dx=\lim_{n\to\infty}\int_{A}f(x)\,dx\end{align*}

となるように,一般のルベーグ可測関数$f$に対するルベーグ積分を定義したいところですね.

この記事では

  • 非負値可測関数のルベーグ積分
  • 一般の非負値可測関数のルベーグ積分

を順に説明します.

以下では

と呼び,$\R$上のルベーグ可測集合全部の族を$\mathcal{L}$で表します.

ルベーグ積分の参考文献

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ルベグ積分入門

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ルベーグ積分と関数解析

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非負値可測関数のルベーグ積分

ここでは可測単関数に対するルベーグ積分を復習して,一般の可測関数に対してルベーグ積分を定義します.

ルベーグ可測単関数のルベーグ積分(復習)

単関数可測関数であるときのルベーグ積分は次のように定義されるのでした.

$A\in\mathcal{L}$上の可測単関数$f$が有限個の値$\alpha_1,\dots,\alpha_n$のみとるとき,

   \begin{align*}\int_{A}f(x)\,dx=\sum_{k=1}^{n}\alpha_k\times m(\set{x\in A}{f(x)=\alpha_k})\end{align*}

を可測単関数$f$の$A$上のルベーグ積分 (Lebesgue integral)という.

言い換えれば,可測単関数$f$の値域が$\{\alpha_1,\dots,\alpha_n\}$のとき,

  • $\alpha_1\times(f(x)=\alpha_1$となる$x$の集合の測度$)$
  • $\alpha_2\times(f(x)=\alpha_2$となる$x$の集合の測度$)$
  • ……
  • $\alpha_n\times(f(x)=\alpha_n$となる$x$の集合の測度$)$

を足し合わせたものを$f$のルベーグ積分というわけですね.

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例えば,上のグラフをもつ可測単関数$f$のルベーグ積分は

   \begin{align*}\int_{[0,3]}f(x)\,dx =1\times1+2\times\frac{3}{2}+3\times\frac{1}{2} =\frac{11}{2}\end{align*}

となるわけですね.

非負値可測関数のルベーグ積分の定義

ここで前回の記事で証明した次の単関数近似定理を思い出しておきましょう.

$A\in\mathcal{L}$上の非負値可測関数$f$に対して,ある非負単関数列$\{f_n\}$が存在して,

  1. 任意の$n$に対して$f_n$は可測関数
  2. $\{f_n\}$は広義単調増加
  3. $\lim\limits_{n\to\infty}f_n=f$

が成り立つ.

この定理をふまえて非負値可測関数のルベーグ積分を次のように定義します.

$A\in\mathcal{L}$上の非負値可測関数$f$と,$A$の分割

  • $A=A_1\cup A_2\cup\dots\cup A_n$
  • $A_i\cap A_j=\emptyset$ ($i\neq j$)
  • $A_1,A_2,\dots,A_n\in\mathcal{L}$

を考え,$\alpha_k:=\inf_{x\in A_k}f(x)$とする.このとき,$A$の分割をさまざまに取ったときの和

   \begin{align*}\alpha_1 m(A_1)+\alpha_2 m(A_2)+\dots+\alpha_n m(A_n)\quad\dots(*)\end{align*}

の集合の上限を$\dint_{A}f(x)\,dx$と表し,非負値可測関数$f$の$A$上のルベーグ積分という.

この非負値可測関数のルベーグ積分は,関数を下から近似しているようなイメージですね.

例えば,$A=[-1,1]$とし非負値関数$f:A\to\R;x\mapsto -x^2+1$を考えましょう.$n=6$で

   \begin{align*}&A_1:=[-1,-0.7],\quad A_2:=(-0.7,-0.3),\quad A_3:=[-0.3,0.1], \\&A_4:=(0.1,0.5],\quad A_5:=(0.5,0.8],\quad A_6:=(0.8,1]\end{align*}

とすると,和$(*)$は下図の色付き部分の面積になりますね.

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$A$の分割はこの他にも無数に考えられ,もっと細かく分割していくと$y=f(x)$と$x$軸に囲まれる領域の面積に近付いていくことが見てとれます.

このように$A$をさまざまに分割してできる和$(*)$の上限を$f$のルベーグ積分と定めるわけですね.

このように定義すると,単関数近似定理で示された下から単調に非負値可測関数$f$に各点収束する可測単関数列$\{f_n\}$に関して,項別積分

   \begin{align*}\lim_{n\to\infty}\int_{A}f_{n}(x)\,dx=\lim_{n\to\infty}\int_{A}f(x)\,dx\end{align*}

が成り立つことが証明できます.この証明には少し準備が必要なので,のちの記事で示します.

一般の可測関数のルベーグ積分

非負とは限らない一般の可測関数$f$のルベーグ積分は,$f$の正成分・負成分に分けて定義されます.

正成分と負成分(復習)

まずは関数の正成分負成分について確認しておきましょう.

$A\subset\R$とする.関数$f:A\to\R$に対して,

   \begin{align*}f_+(x)=\max\{f(x),0\},\quad f_-(x)=\max\{-f(x),0\}\end{align*}

で定まる関数$f_+,f_-:A\to\R$をそれぞれ$f$の正成分負成分という.

つまり,

  • 関数の負の部分を全て0にしたものが正成分
  • 関数の正の部分を全て0にして$-1$をかけたものが負成分

ですね.また,次の補題も思い出しておきましょう.

$A\in\mathcal{L}$上の可測関数$f$に対して,正成分$f_+$と負成分$f_-$はともに非負値可測関数である.

この補題から可測関数$f$の正成分$f_-$と負成分$f_+$には非負値可測関数のルベーグ積分が定義されることが分かりますね.

一般の可測関数のルベーグ積分の定義

一般の可測関数$f$のルベーグ積分は(正成分$f_+$のルベーグ積分)-(負成分$f_-$のルベーグ積分)で定義されます.

$A\in\mathcal{L}$上の可測関数$f$を考える.正成分$f_+$と負成分$f_-$の非負値可測関数のルベーグ積分について,

  1. $\int_{A}f_+(x)\,dx<\infty$
  2. $\int_{A}f_-(x)\,dx<\infty$

のいずれか一方を満たすとき,

   \begin{align*}\int_{A}f_+(x)\,dx-\int_{A}f_-(x)\,dx\end{align*}

を$\dint_{A}f(x)\,dx$と表し,可測関数$f$の$A$上のルベーグ積分という.

また,(1), (2)の両方を満たすとき,すなわちルベーグ積分が有限の値をとるとき,$f$はルベーグ可積分関数という.

$\int_{A}f_+(x)\,dx$と$\int_{A}f_-(x)\,dx$がともに$\infty$の場合は$\infty-\infty$となって定義できないため,どちらか一方は$\infty$でない場合のみ定義するわけですね.

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プロフィール

山本やまもと 拓人たくと

元予備校講師.講師として駆け出しの頃から予備校の生徒アンケートで抜群の成績を残し,通常の8倍の報酬アップを提示されるなど頭角を表す.

飛び級・首席合格で大学院に入学しそのまま首席修了するなど数学の深い知識をもち,本質をふまえた分かりやすい授業に定評がある.

現在はオンライン家庭教師,社会人向け数学教室での講師としての教育活動とともに,京都大学で数学の研究も行っている.専門は非線形偏微分方程式論.大学数学系YouTuberとしても活動中.

趣味は数学,ピアノ,甘いもの食べ歩き.公式LINEを友達登録で【限定プレゼント】配布中.

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