連結性3
連結であっても弧状連結でない集合の具体例

集合が「ひとまとまり」であることを表す概念として

  • 前々回の記事で弧状連結性の定義と具体例
  • 前回の記事で連結性の定義と具体例

を説明しました.

また,前回の記事では連結性と弧状連結性の関係として,「弧状連結なら連結」が成り立つことを説明しました.

しかし,実はこの逆は成り立ちません.つまり連結であっても弧状連結でない集合が存在します.

この記事では,基本事項を確認したのち「連結であっても弧状連結でない集合」を紹介します.

解説動画

この記事の解説動画をYouTubeにアップロードしています.

「【連結・弧状連結】「集合がひとまとまり」ってどう考える?」(10分50秒)

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準備

この記事では$X$を位相空間としますが,位相空間をよく知らない方は2次元ユークリッド空間$\R^2$($xy$平面)と思って読み進めても問題ありません.

本題の「連結だが弧状連結でない集合」を紹介する前にいくつか準備をしておきます.

連結性と弧状連結性の定義の確認

まずは弧状連結性と連結性の定義を確認しておきます.

[弧状連結] 集合$A\subset X$が弧状連結であるとは,任意の$a,b\in A$に対して,$a$, $b$を結ぶ$A$上の連続曲線が存在することをいう.

[連結] 集合$A\subset X$が連結であるとは,次の条件を満たす空でない開集合$U_{1},U_{2}\subset X$が存在しないことをいう:

\begin{align*} A\subset U_{1}\cup U_{2},\quad U_{1}\cap U_{2}=\emptyset,\quad A\cap U_{i}\neq\emptyset\ (i=1,2). \end{align*}

定義のイメージや具体例については,冒頭でも紹介した以下の記事を参照してください.

連結な集合に関する定理

ここで次の定理を紹介します.

$A\subset X$は連結であるとする.このとき,$A\subset B\subset\overline{A}$なる$B\subset X$も連結である.

$\overline{A}$は$A$の閉包です.

つまり,連結な集合とその閉包で挟まれている集合も連結であるというわけですね.

イメージとして「閉包」は「触れている点も併せてできる集合」なので,「もともとが『ひとまとまり』なら触れている点を集めても『ひとまとまり』」ということですね.


背理法により示す.すなわち,$B$が連結でないと仮定して矛盾を導く.

$B$は連結でないから

\begin{align*} B\subset U_{1}\cup U_{2},\quad U_{1}\cap U_{2}=\emptyset,\quad B\cap U_{i}\neq\emptyset\ (i=1,2). \end{align*}

なる開集合$U_{1},U_{2}\subset X$が存在する.

$A\susbet B$と$B\subset U_{1}\cup U_{2}$を併せると

\begin{align*} A\subset U_{1}\cup U_{2},\quad \end{align*}

が成り立つ.

ここで,$A\cap U_i\neq\emptyset$ ($i=1,2$)を背理法により示す.すなわち,$A\cap U_i=\emptyset$であると仮定して矛盾を導く.

\begin{align*} A\cap U_i=\emptyset \iff A\subset {U_i}^c \end{align*}

である(${U_i}^c$は$X$における$U_i$の補集合).

また,$U_i$は開だから${U_i}^c$は閉であり,定義から閉包$\overline{A}$は$A$を含む閉集合の共通部分だから,$\overline{A}\subset {U_i}^c$である.

これは$\overline{A}\cap U_i=\emptyset$と同値なので,仮定$B\subset\overline{A}$と併せて$B\cap U_{i}=\emptyset$となるが,これは$B\cap U_{i}\neq\emptyset$に矛盾する.

よって,$A\cap U_{i}\neq\emptyset$が成り立つことが分かったので,$A$が連結であることに矛盾し,仮定は誤りで$B$は連結であることが示された.

連結だが弧状連結でない集合の例

次がこの記事の本題の「連結だが弧状連結でない集合」の具体例になっています.

$\R^2$は通常の位相が定められた位相空間とする.すなわち,2次元ユークリッド空間とする.$A\subset\R^2$を

\begin{align*} A=\set{(0,y)\in\R^{2}}{0<y<1} \end{align*}

で定め,$B\subset\R^2$を

\begin{align*} &B_{1}=\set{(x,0)\in\R^{2}}{0<x<1}, \\&B_{n}=\set{\bra{\frac{1}{n},y}\in\R^{2}}{0<y<1}\ (n=2,3,\dots), \\&B=B_{1}\cup B_{2}\cup B_{3}\cup\dots \end{align*}

で定める.このとき,$A\cup B$は連結だが弧状連結ではないことを示せ.

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点$(0,0)$が抜けていることから,$A\cup B$は弧状連結ではありませんね.

一方,$A$と$B$がくっつき過ぎているので,$A\cup B$を2つの空でない開集合で分割することができません.そのため,$A\cup B$は連結ということになります.

連結であることを示すには,上で証明した定理を用いるのが簡単です.


$a\in A$と$b\in B$を$A\cup B$上の連続曲線で結ぶことはできない.よって,弧状連結ではない.

また,$\overline{B}=A\cup B\cup\{(0,0)\}$だから,$B\subset A\cup B\subset \overline{B}$が成り立つ.

さらに,$B$は弧状連結だから連結なので,上の定理より$A\cup B$は連結である.

参考文献

集合・位相入門

[松坂和夫 著/岩波書店]

本書は「集合論」「位相空間論」をこれから学ぶ人のための入門書です.

説明が丁寧で行間が少ないのは初学者にありがたいところですね.

実際,本書は1968年に発刊されて以来売れ続けている超ロングセラーで,2018年に新装版が発売されたことからも現在でも教科書として広く使われていることが分かります.

具体例が多く扱われているのも特徴で,新しい概念のイメージも掴みやすいように書かれています.

また,各セクションの終わりに少なくない数の演習問題も載っており,演習書的な使い方もできます.

なお,本書については,以下の記事で書評としてまとめています.