指数型の非線形項をもつ非線形シュレディンガー(Schrödinger)方程式
(NLS)
を考えます.ただし,
- $u:\R_x^d\times\R_t\to\C$
- $\partial_{t}u=\dfrac{\partial u}{\partial t}$
- $\Delta{u}=\dsum_{k=1}^{d}\dfrac{\partial^2 u}{\partial {x_i}^2}$, $\lambda\in\R$
- $p>1$
とします.この記事では,非線形シュレディンガー方程式(NLS)の解$u$は
で定まる$M(u),E(u):\R\to\R$が一定であることを説明します.
なお,物理的な由来から$M(u)$を質量,$E(u)$をエネルギーと呼ばれ,それぞれが保存することを質量保存則,エネルギー保存則といいます.
シュレディンガー方程式の2つの保存量
冒頭で述べたように,非線形シュレディンガー方程式(NLS)の解$u$の質量$M(u)$,エネルギー$E(u)$は保存されます.
非線形シュレディンガー方程式(NLS)の解$u$が存在する任意の時刻$t$, $t’$に対して
が成り立つ.
なお,$L^r$ノルム$\|\cdot\|_{L^r}$と$H^1$ノルム$\|\cdot\|_{H^1}$を用いれば,質量$M(u)$,エネルギー$E(u)$は
とも表せますね.
質量,エネルギーが保存することの証明
それでは非線形シュレディンガー方程式(NLS)の解$u$の質量$M(u)$,エネルギー$E(u)$が保存することを証明しましょう.
これら質量$M(u)$,エネルギー$E(u)$はいずれも$t$の関数なので,
を示せばよいですね.
厳密には$u$を遠方$|x|\to\infty$で減衰する滑らかな関数で近似することで微分と積分の交換などが保証できますが,以下の証明ではその議論は省略しています.
質量保存
非線形シュレディンガー方程式(NLS)の両辺に$\overline{u}$をかけると
となる.ここで$u=v+iw$ ($v,w:\R^d\times\R\to\R$)とおけば
であり,$\lambda|u|^{p+1}$が実数値であることから,$(*)$の両辺で虚部をとって$\R^d$で積分すれば
となる.部分積分より$\dint_{\R^d}(v\Delta{w}-w\Delta{v})\,dx=0$であり,単純な計算より$\dfrac{1}{2}\partial_{t}|u|^2=v\partial_{t}v+w\partial_{t}w$なので,等式$(**)$から
を得る.
エネルギー保存
非線形シュレディンガー方程式(NLS)の両辺に$\partial_{t}\overline{u}$をかけると
となる.ここで$u=v+iw$ ($v,w:\R^d\times\R\to\R$)とおけば
であり,$i|\partial_{t}u|^2$が純虚数値であることから,$(*)$の両辺で実部をとって$\R^d$で積分すれば
となる.部分積分より
であり,
だから,等式$(**)$から
を得る.
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