自由シュレディンガー(Schrödinger)方程式とは,線形の偏微分方程式
のことで,非線形シュレディンガー方程式を考える際にも基本となる方程式です.
自由というのは「非線形項がなく自由に振る舞う」という意味で,散乱理論でよく用いられる呼び方です.
ここに
です.つまり,
自由シュレディンガー方程式の初期値問題の解
ストーンの定理を用いるためには自由シュレディンガー発展作用素
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【シュレディンガー方程式のストリッカーツ評価の導出】
自由シュレディンガー方程式の基本解
まずは自由シュレディンガー方程式の基本解の定義を述べ,直接計算して解の形を求めましょう.
基本解の定義
他の方程式にも適用できるより広い基本解の定義はありますが,シュレディンガー方程式に限れば基本解は以下のように定義されます.
[基本解]自由シュレディンガー方程式の初期値問題
の
なお,
基本解は厳密には
そのため,以下の計算では単純な関数としてみると怪しいところが散見されますが,超関数として考えると全て正当化されます.
基本解の形
それではシュレディンガー方程式の基本解の形を求めましょう.
上の
となる.ただし,
となる.両辺に
となり,
となる.ここに,
となるから,解
となる.
この証明で定義した
自由シュレディンガー発展作用素
初期値
一般にノルム空間
このことを用いると以下を証明できます.
任意の
[1]合成積の線形性から,任意の
となるので,
[2]任意の
となって,
[1],[2]と
はSchwartz空間 で定義されていること の ノルムによる閉包が であること
を併せると,関数解析の一般論から
この証明から分かるように,
強連続ユニタリ群
ここでは強連続ユニタリ群を定義して,自由シュレディンガー発展作用素の族
強連続ユニタリ群
一般にHilbert空間上の有界線形作用素の族がユニタリ群であるとは,次のように定義されます.
[強連続ユニタリ群]Hilbert空間
- 任意の
に対して, である. である.ただし, は 上の恒等作用素である.- 任意の
, に対して, である. - 任意の
に対して, はユニタリ作用素(全単射かつ等長)である.
を満たすことをいう.
条件1〜3のみを満たす
自由シュレディンガー発展作用素
自由シュレディンガー発展作用素の族
任意に
だから,
フーリエ変換が
となって,
フーリエ変換の線形性,
となる.
先ほど示したように
であり
ストーンの定理の適用
次の定理をストーンの定理といいます.
[ストーンの定理]
ストーンの定理より,自由シュレディンガー発展作用素の族
このとき,任意の
となります.
なので,
このことから,ラプラシアン
以上をまとめると,以下のようになります.
自由シュレディンガー方程式の初期値問題
の
と表せる.
次の記事では,シュレディンガー方程式の基本解の基礎的な評価である
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