2016年度の京都大学 理学研究科 数学・数理解析専攻の大学院入試問題の「基礎科目I」の解答の方針と解答です.
ただし,採点基準などは公式に発表されていないため,ここでの解答が必ずしも正解とならない場合もあり得ます.ご注意ください.
また,十分注意して解答を作成していますが,論理の飛躍・誤りが残っている場合があります.
なお,過去問は京都大学のホームページから入手できます.
大学院入試の解答に関する記事一覧はこちら
問題と解答の方針
問題は4問あり,全4問を解答します.試験時間は2時間です.
問1
線形写像
を用いて
が張る
解答の方針
である.
なので,
解答例
与えられた
とおく.任意の
よって,
だから,行基本変形により,
である.よって,
問2
について,以下の問に答えよ.
(i) 行列
(ii) 行列
解答の方針
(i) 固有方程式
(ii) 正方行列
とくに全ての固有値の重複度が
重複度が
解答例
(i)
である.よって,
とした.
(ii)
[1]
のとき,
[2]
だから,固有値
一方,固有値
[3]
だから,固有値
一方,固有値
[4]
だから,固有値
一方,固有値
以上より,
問3
次の極限値を求めよ.
ただし,
解答の方針1
また,
よって,求める値は
の
具体的には
と評価できて,この右辺と左辺の
解答例1
である.Taylor展開
だから,
である.したがって,はさみうちの原理より,
解答の方針2
部分積分により
を直接計算してもよい.
解答例2
であり,
だから,
である.Taylor展開
だから,結局
問4
の最大値および最小値のそれぞれについて,存在するなら求め,存在しないならそのことを示せ.
解答の方針1
よって,最小値の存在と値を調べれば良いが,
このとき,停留点を求めると
つぎに,極座標変換
よって,
境界上では
解答例1
[1]最大値について,
だから最大値は存在しない.
[2]最小値について,
だから,
である.
(i)
である.よって,
(ii)
である.よって,
(iii)
である.よって,
以上より,
ここで,極座標変換
である.よって,
解答の方針2
解答例2
だから
参考文献
以下,私も使ったオススメの入試問題集を挙げておきます.
詳解と演習大学院入試問題〈数学〉
[海老原円,太田雅人 共著/数理工学社]
理工系の修士課程への大学院入試問題集ですが,基礎〜標準的な問題が広く大学での数学の基礎が復習できる総合問題集として利用することができます.
実際,まえがきにも「単なる入試問題の解説にとどまらず,それを通じて,数学に関する読者の素養の質を高めることにある」と書かれているように,必ずしも大学院入試を受験しない一般の学習者にとっても学びやすい問題集です.また,構成が読みやすいのも個人的には嬉しいポイントです.
第1章 数え上げと整数
第2章 線形代数
第3章 微積分
第4章 微分方程式
第5章 複素解析
第6章 ベクトル解析
第7章 ラプラス変換
第8章 フーリエ変換
第9章 確率
一方で,問題数はそれほど多くないので,多くの問題を解きたい方には次の問題集もオススメです.
なお,本書については,以下の記事で書評としてまとめています.
【オススメの問題集|詳解と演習 大学院入試問題(数理工学社)】
本書の目次・必要な知識・良い点と気になる点・オススメの使い方などをレビューしています.
演習 大学院入試問題
[姫野俊一,陳啓浩 共著/サイエンス社]
上記の問題集とは対称的に問題数が多く,まえがきに「修士の基礎数学の問題の範囲は,ほぼ本書中に網羅されている」と書かれているように,広い分野から問題が豊富に掲載されています.
全2巻で,
1巻第1編 線形代数
1巻第2編 微分・積分学
1巻第3編 微分方程式
2巻第4編 ラプラス変換,フーリエ変換,特殊関数,変分法
2巻第5編 複素関数論
2巻第6編 確率・統計
が扱われています.
地道にきちんと地に足つけた考え方で解ける問題が多く,確かな「腕力」がつくテキストです.入試では基本問題は確実に解けることが大切なので,その意味で試験への対応力が養われると思います.
なお,私自身は受験生時代に計算力があまり高くなかったので,この本の問題で訓練したのを覚えています.
なお,本書については,以下の記事で書評としてまとめています.
【オススメの問題集|演習 大学院入試問題[数学](サイエンス社)】
本書の目次・必要な知識・良い点と気になる点・オススメの使い方などをレビューしています.
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