2015年度 院試解説|京都大学 数学・数理解析専攻|基礎科目I

京都大学|大学院入試
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2015年度入学の京都大学 理学研究科 数学・数理解析専の大学院入試問題の「基礎科目」の解答の方針と解答です.

問題は4問あり全4問を解答します.試験時間は2時間です.この記事では問4まで解答の方針とポイント・解答例を掲載しています.

採点基準などは公式に発表されていないため,ここでの解答が必ずしも正解とならない場合もあり得ます.ご注意ください.

また,十分注意して解答を作成していますが,論理の飛躍・誤りが残っている場合があります.

なお,過去問は京都大学のホームページから入手できます.

過去の入試問題 | Department of Mathematics Kyoto University

第1問

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次の広義積分を求めよ.

   \begin{align*}\iint_{D}\frac{y^2e^{-xy}}{x^2+y^2}\,dxdy.\end{align*}

ここで,$D=\set{(x,y)\in\R^2}{0<y\le x}$とする.

微分積分学の重積分の計算ですね.

解答の方針とポイント

問題の積分は

  • 積分領域$D$が有界閉集合でない
  • 積分領域$D$の境界点$(0,0)$で被積分関数$\frac{y^2e^{-xy}}{x^2+y^2}$が定義されない

のふたつの意味で広義積分になっていますね.

いま被積分関数の分母と積分領域$V$の条件にある$x^2+y^2$に注目して,

   \begin{align*}x=\cos{\theta},\quad y=\sin{\theta}\end{align*}

と極座標変換するのが良さそうです.重積分の変数変換ではヤコビアンを忘れないように注意しましょう.

形式的な計算

本問の積分領域$D$は以下の形をしていますね.

Rendered by QuickLaTeX.com

このことから,形式的に極座標変換から

   \begin{align*}&\iint_{D}\frac{y^2e^{-xy}}{x^2+y^2}\,dxdydz \\&=\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\bra{\int_{0}^{\infty}\frac{r^2\sin^2\theta\cdot e^{-r^2\cos\theta\sin\theta}}{r^2}\cdot r\,dr}\,d\theta \\&=\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\bra{\int_{0}^{\infty}r\sin^2\theta e^{-r^2\cos\theta\sin\theta}\,dr}\,d\theta \\&=\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\brc{-\frac{\sin{\theta}}{2\cos{\theta}}e^{-\frac{1}{2}r^2\sin{2\theta}}}_{0}^{\infty}\,d\theta \\&=\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\frac{\sin{\theta}}{2\cos{\theta}}\,d\theta =-\frac{1}{2}\int_{0}^{\pi/4}\frac{(\cos{\theta})'}{\cos{\theta}}\,d\theta \\&=-\frac{1}{2}\brc{\log{|\cos{\theta}|}}_{0}^{\pi/4} =-\frac{1}{2}\brb{\log{\bra{\cos{\frac{\pi}{4}}}}-\log{(\cos{0})}} \\&=-\frac{1}{2}\log{\frac{1}{\sqrt{2}}} =\frac{1}{4}\log{2}\end{align*}

と計算することができます.

「形式的」と書いたのは,本来

  • 重積分の広義積分は有界閉集合上での積分の極限で定義される
  • リーマン積分の変数変換は有界閉集合上で成り立つもの

だからです.本問の関数は原点での連続性が怪しいことなどから,広義積分のままの形式的な計算が本当に正しいのかは数学的に少し怖いところです.

どのような場合に広義積分でも気にせず変数変換してよいかについては,例えば「解析入門II」(杉浦光夫著,東京大学出版会)の第Ⅶ章定理4.6を参照してください.

重積分の広義積分

非負実数値多変数関数の重積分の広義積分は,有界閉集合上で通常の重積分を計算したものの極限(または上限)により定義されます.

非負実数値$n$変数関数$f$と,体積確定集合$D\subset\R^n$を考える.さらに

   \begin{align*}D_n\subset D_{n+1},\quad D=\bigcup_{n=1}^{\infty}D_n\end{align*}

を満たす体積確定な有界閉集合の列$\{D_n\}$をとる.任意の$n$に対して$f$が$D_n$上可積分であれば

   \begin{align*}\int_{D}f(x)\,dx=\lim_{n\to\infty}\int_{D_n}f(x)\,dx\end{align*}

を$f$の$D$上の広義積分という.

$f$が非負であることから,この$f$の$D$上の広義積分は列$\{D_n\}$のとりかたによらないことが従います.

ざっくり言えば,どんどん集合$D$に近付く有界閉集合上で$f$が可積分なら,その極限を$D$上での広義積分と定義するわけですね.

本問では被積分関数の原点付近での様子や,$D$が$x$軸を含まないことから,有界閉集合の列$\{D_n\}$を下図のようにとって計算すれば良いですね.

Rendered by QuickLaTeX.com

重積分の変数変換

基本的な重積分の変数変換公式は有界閉集合上で成り立ちます.

体積確定な有界閉集合$A,B\subset\R^n$と,$C^1$級の全単射$\phi:A\to B$を考える.

$A$上で$\phi$のヤコビ行列式$J_{\phi}$が値0をとらないなら,$B$上の実数値連続関数$f$に対して

   \begin{align*}\int_{B}f(x)\,dx=\int_{A}f(\phi(u))|J_{\phi}(u)|\,du\end{align*}

が成り立つ.

例えば,上の有界閉集合$D_n$上の極座標変換は全単射で,さらにヤコビ行列式は$D_n$上

   \begin{align*}\det{\frac{\partial(x,y)}{\partial(r,\theta)}}=\det{\bmat{\pd{x}{r}&\pd{x}{\theta}\\\pd{y}{r}&\pd{y}{\theta}}}=r\neq0\end{align*}

です.そのため,上の有界閉集合$D_n$上では問題なく極座標変換ができますね.

解答例

$n\in\N$に対して$D_n:=\set{(x,y)\in D}{\frac{1}{n^2}\le x^2+y^2\le n^2}$とおくと,$\{D_n\}$は

   \begin{align*}D_n\subset D_{n+1},\quad D=\bigcup_{n=1}^{\infty}D_n\end{align*}

を満たす面積確定な有界閉集合の列である.被積分関数は$D$上で非負だから

   \begin{align*}\iint_{D}\frac{y^2e^{-xy}}{x^2+y^2}\,dxdydz =\lim_{n\to\infty}\iint_{D_n}\frac{y^2e^{-xy}}{x^2+y^2}\,dxdydz\end{align*}

である.

各$D_n$上で極座標変換$(x,y)=(r\cos\theta,r\sin\theta)$を施すと,$D_n$は

   \begin{align*}E_n:&=\set{(r,\theta)}{\frac{1}{n}\le r\le n,\frac{\pi}{4n}\le\theta\le \frac{\pi}{4}}\end{align*}

に対応し,ヤコビ行列式は$r$である.よって,

   \begin{align*}&\iint_{D_n}\frac{y^2e^{-xy}}{x^2+y^2}\,dxdy \\&=\int_{\frac{\pi}{4n}}^{\frac{\pi}{4}}\bra{\int_{\frac{1}{n}}^{n}r\sin^2\theta e^{-r^2\cos\theta\sin\theta}\,dr}\,d\theta \\&=\int_{\frac{\pi}{4n}}^{\frac{\pi}{4}}\brc{-\frac{\sin{\theta}}{2\cos{\theta}}e^{-\frac{1}{2}r^2\sin{2\theta}}}_{\frac{1}{n}}^{n}\,d\theta \\&=\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\frac{\sin{\theta}}{2\cos{\theta}}\bra{e^{-\frac{1}{2n^2}\sin{2\theta}}-e^{-\frac{1}{2}n^2\sin{2\theta}}}\mathbb{I}_{[\frac{\pi}{4n},\frac{\pi}{4}]}(\theta)\,d\theta\end{align*}

となる.ただし,$\mathbb{I}_{[\frac{\pi}{4n},\frac{\pi}{4}]}$は定義関数である.

ここで,$[0,\frac{\pi}{4}]$上の関数列$\{f_n\}$を

   \begin{align*}f_n(\theta)=\frac{\sin{\theta}}{2\cos{\theta}}\bra{e^{-\frac{1}{2n^2}\sin{2\theta}}-e^{-\frac{1}{2}n^2\sin{2\theta}}}\mathbb{I}_{[\frac{\pi}{4n},\frac{\pi}{4}]}(\theta)\end{align*}

で定め,この関数列が$\frac{\sin{\theta}}{2\cos{\theta}}$に一様収束することを示す.

   \begin{align*}&\sup_{\theta\in[0,\frac{\pi}{4}]}\abs{\frac{\sin{\theta}}{2\cos{\theta}}-f_n(\theta)} \\&\le\sup_{\theta\in[0,\frac{\pi}{4n}]}\abs{\frac{\sin{\theta}}{2\cos{\theta}}-f_n(\theta)}+\sup_{\theta\in[\frac{\pi}{4n},\frac{\pi}{4}]}\abs{\frac{\sin{\theta}}{2\cos{\theta}}f_n(\theta)}\end{align*}

であり,第1項について

   \begin{align*}\sup_{\theta\in[0,\frac{\pi}{4n}]}\abs{\frac{\sin{\theta}}{2\cos{\theta}}-f_n(\theta)} =\sup_{\theta\in[0,\frac{\pi}{4n}]}\frac{\sin{\theta}}{2\cos{\theta}} =\frac{\sin{\frac{\pi}{4n}}}{2\cos{\frac{\pi}{4n}}}\xrightarrow[]{n\to\infty}0\end{align*}

が成り立ち,第2項について

   \begin{align*}&\sup_{\theta\in[\frac{\pi}{4n},\frac{\pi}{4}]}\abs{\frac{\sin{\theta}}{2\cos{\theta}}-f_n(\theta)} \\&=\sup_{\theta\in[\frac{\pi}{4n},\frac{\pi}{4}]}\frac{\sin{\theta}}{2\cos{\theta}}\bra{\bra{1-e^{-\frac{1}{2n^2}\sin{2\theta}}}+e^{-\frac{1}{2}n^2\sin{2\theta}}} \\&\le\frac{\sin{\frac{\pi}{4}}}{2\cos{\frac{\pi}{4}}}\bra{\bra{1-e^{-\frac{1}{2n^2}\sin{\frac{\pi}{2}}}}+e^{-\frac{1}{2}n^2\sin{\frac{\pi}{2n}}}} \\&\le\frac{1}{2}\bra{\bra{1-e^{-\frac{1}{2n^2}}}+e^{-\frac{1}{2}n^2\cdot\frac{1}{n}}} \\&=\frac{1}{2}\bra{\bra{1-e^{-\frac{1}{2n^2}}}+e^{-\frac{1}{2}n}} \xrightarrow[]{n\to\infty}0\end{align*}

が成り立つ.ただし,第2項の最後の不等号では,任意の$\phi\in[0,\frac{\pi}{2}]$に対して$\frac{2}{\pi}\phi\le\sin{\phi}$が成り立つことを用いた.

よって,$[0,\frac{\pi}{4}]$上の一様収束

   \begin{align*}f_n(\theta)\rightrightarrows\frac{\sin{\theta}}{2\cos{\theta}}\quad(n\to\infty)\end{align*}

が得られたから,

   \begin{align*}\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}f_n(\theta)\,d\theta &=\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\frac{\sin{\theta}}{2\cos{\theta}}\,d\theta =-\frac{1}{2}\brc{\log{|\cos{\theta}|}}_{0}^{\pi/4} \\&=-\frac{1}{2}\log{\frac{1}{\sqrt{2}}} =\frac{1}{4}\log{2}\end{align*}

が成り立つ.以上より,

   \begin{align*}\iint_{D}\frac{y^2e^{-xy}}{x^2+y^2}\,dxdydz=\frac{1}{4}\log{2}\end{align*}

を得る.

第2問

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$\R^2$で定義された関数

   \begin{align*}f(x,y)=\frac{4x^2+(y+2)^2}{x^2+y^2+1}\end{align*}

のとりうる値の範囲を求めよ.

微分積分学の関数の最大値・最小値の問題ですね.

解答の方針とポイント

関数$f$が非負で$f(0,-2)=0$なので,最小値が0であることはすぐに分かります.

問題は最大値ですが,分母も分子も$x$, $y$ともに2次式なので,十分遠方ではそれほど大きくはなっていなさそうです.

そこで,$f$の停留点で最大値をとることが予想されますね.

極値と停留点

1変数関数と同様に,多変数関数でも次が成り立ちます.

開集合$U\subset\R^n$上で微分可能な実数値関数$f$が,点$a\in U$で極値をとるなら

   \begin{align*}\pd{f}{x_1}(a)=\pd{f}{x_2}(a)=\dots=\pd{f}{x_n}(a)=0\end{align*}

が成り立つ.

逆が成り立たないことも大切ですね.

本問は2変数なので

   \begin{align*}\pd{f}{x}(a,b)=\pd{f}{y}(a,b)=0\end{align*}

となる点$(a,b)$を見つけられれば,その点で極値をとり得ますから,最大値の候補となりますね.

有界閉集合上の連続関数の最大値・最小値

$\R^n$上の有界閉集合(コンパクト集合)上の連続関数については次の定理が重要です.

$\R^n$上の有界閉集合上の連続関数は,極値または境界値で最大値・最小値をとる.

停留点での値を直接求めて,遠方でその値より小さくなることが分かれば,その極値が最大であることが分かりますね.

解答例

関数$f$は連結集合$\R^2$上の連続関数だから,$f(x,y)$の最小値以上,最大値以下の値をとる.

実数の2乗は非負だから$f(x,y)\ge0$であり,$f(0,-2)=0$なので最小値は0である.

以下,最大値について考える.

   \begin{align*}\pd{f}{x}(x,y)&=\frac{8x(x^2+y^2+1)-2x(4x^2+y^2+4y+4)}{(x^2+y^2+1)^2} \\&=\frac{2x(3y^2-4y)}{(x^2+y^2+1)^2} =\frac{2xy(3y-4)}{(x^2+y^2+1)^2}, \\\pd{f}{y}(x,y)&=\frac{2(y+2)(x^2+y^2+1)-2y(4x^2+y^2+4y+4)}{(x^2+y^2+1)^2} \\&=\frac{-2(3x^2y-2x^2+2y^2+3y-2)}{(x^2+y^2+1)^2}\end{align*}

だから,

   \begin{align*}\begin{cases}\pd{f}{x}(x,y)=0\\\pd{f}{y}(x,y)=0\end{cases} \iff\begin{cases}x=0\ \text{or}\ y=0\ \text{or}\ y=\frac{4}{3}\\3x^2y-2x^2+2y^2+3y-2=0\end{cases}\end{align*}

である.$g(x,y)=3x^2y-2x^2+2y^2+3y-2$とおく.

   \begin{align*}&g(0,y)=2y^2+3y-2=(2y-1)(y+2), \\&g(x,0)=4x^2-2x^2+\frac{32}{9}+4-2=-2x^2-2<0, \\&g\bra{x,\frac{4}{3}}=4x^2-2x^2+\frac{32}{9}+4-2=2x^2+\frac{40}{9}<0\end{align*}

だから,$f$の停留点は$(0,\frac{1}{2})$, $(0,-2)$に限る.$f(0,\frac{1}{2})=5$, $f(0,-2)=0$である.

また,極座標変換$x=r\cos\theta$, $y=r\sin\theta$で

   \begin{align*}f(x,y) &=\frac{4x^2+y^2+4y+4}{x^2+y^2+1} \\&=\frac{4r^2\cos^{2}{\theta}+r^2\sin^{2}{\theta}+4r\sin{\theta}+4}{r^2+1} \\&\xrightarrow[]{r\to\infty}1+3\cos^{2}{\theta}\le1+3=4\end{align*}

が$\theta$によらず一様に成り立つから,ある$R>0$が存在して,$x^2+y^2\ge R^2$を満たすとき$f(x,y)\le\frac{9}{2}$をみたす.

よって,$f(0,\frac{1}{2})=5$と併せて,$f$は$\set{(x,y)\in\R^2}{x^2+y^2\ge R}$上で最大値をとり得ないことが分かる.

$D:=\set{(x,y)\in\R^2}{x^2+y^2\le R}$はコンパクト集合で$f$は連続だから,$f$は$D$の境界上または$D$内部の停留点で最大値をとる.

いま,$D$の境界上で$f(x,y)\le\frac{9}{2}<5$だったから,$f$は停留点$(0,\frac{1}{2})$で最大値5をとる.

以上より,$f$のとりうる値の範囲は$0\le f(x,y)\le5$である.

上記の方法などで最大値が5であることを求めておき,答案では

   \begin{align*}f(x,y)&=5+\frac{-x^2-4y^2+4y-1}{x^2+y^2+1} \\&=5-\frac{x^2+(2y+1)^2}{x^2+y^2+1} \le5, \\&f(0,-\frac{1}{2})=5\end{align*}

として5が最大値であることを示すこともできます.

第3問

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$a$, $b$を複素数とする.3次正方行列

   \begin{align*}A=\pmat{2&a&a\\b&2&0\\-b&0&2},\quad B=\pmat{2&1&0\\0&2&0\\0&0&2}\end{align*}

について,以下の問に答えよ.

(i) 行列$A$の固有値を求めよ.

(ii) 行列$A$と行列$B$が相似となるような複素数$a$, $b$をすべて求めよ.ただし,$A$と$B$が相似であるとは,複素正則行列$P$で$A=P^{-1}BP$をみたすものが存在することをいう.

線形代数学の相似変換の問題ですね.

解答の方針とポイント

$n$次正方行列$X$と$n$次正則行列$P$に対して,$P^{-1}XP$を$X$の$P$による相似変換といいます.

この言葉を使えば,$A$と$B$が相似であるとは相似変換で移り合うことと言えます.

$A$と$B$が相似であることの必要十分条件は,次のようにジョルダン標準形を用いて述べることができます.

$n$次正方行列$A$, $B$に対して,次は同値である.

  • $A$と$B$は相似である
  • $A$のジョルダン標準形と$B$のジョルダン標準形がジョルダン細胞の順番の違いを除いて一致する

よって,本問では$A$と$B$のジョルダン標準形が一致するような$a$, $b$を求めればよいわけですね.

解答例

$I$を3次単位行列とする.

(i) $A$の固有多項式

   \begin{align*}|xI-A| &=\vmat{x-2&-a&-a\\-b&x-2&0\\b&0&x-2} \\&=\{(x-2)^3+0+0\}-\{-ab(x-2)+ab(x-2)\} \\&=(x-2)^3\end{align*}

であるから,$A$の固有値は2,2,2である.

(ii) $A$, $B$が相似であることと,$A$のジョルダン標準形と$B$のジョルダン標準形がジョルダン細胞の順番の違いを除いて一致することは同値である.

$B$はもとよりジョルダン行列$J_2(2)\oplus J_1(2)$だから,$A$, $B$が相似であることと

   \begin{align*}\begin{cases}\operatorname{rank}(2I-A)=1\\\operatorname{rank}(2I-A)^2=0\end{cases}\end{align*}

は同値である.

   \begin{align*}\operatorname{rank}(2I-A)=1 &\iff\operatorname{rank}\bmat{0&-a&-a\\-b&0&0\\b&0&0}=1, \\\operatorname{rank}(2I-A)^2=0 &\iff\operatorname{rank}\bmat{0&0&0\\0&ab&ab\\0&-ab&-ab}=0\end{align*}

なので,$ab=0$かつ$(a,b)\neq(0,0)$をみたす組$(a,b)$が求める複素数の組である.

第4問

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$a$, $b$, $c$, $d$を複素数とする.次の行列階数を求めよ.

   \begin{align*}\pmat{2&-3&6&0&-6&a\\ -1&2&-4&1&8&b\\ 1&0&0&1&6&c\\ 1&-1&2&0&-1&d}\end{align*}

線形代数学のランクの問題ですね.

解答の方針とポイント

行列階数(ランク)は基本変形により階段行列に変形することがポイントですね.

基本変形により行列$A$を階段行列に変形したときの,主成分の個数を$A$の階数またはランクといい,$\operatorname{rk}{A}$や$\operatorname{rank}{A}$などと表す.

本問はこの定義だけで十分ですが,行列のランクにより

などができることも当たり前にしておきましょう.

解答例

行基本変形により

   \begin{align*}&\pmat{2&-3&6&0&-6&a\\-1&2&-4&1&8&b\\1&0&0&1&6&c\\1&-1&2&0&-1&d} \\&\to\pmat{0&-3&6&-2&-18&a-2c\\0&2&-4&2&14&b+c\\1&0&0&1&6&c\\0&-1&2&-1&-7&d-c} \\&\to\pmat{0&0&0&1&3&(a-2c)+3(d-c)\\0&0&0&0&0&(b+c)+2(d-c)\\1&0&0&1&6&c\\0&1&-2&1&7&c-d} \\&=\pmat{0&0&0&1&3&a-5c+3d\\0&0&0&0&0&b-c+2d\\1&0&0&1&6&c\\0&1&-2&1&7&c-d}\end{align*}

だから,階数

   \begin{align*}\operatorname{rank}\pmat{2&-3&6&0&-6&a\\-1&2&-4&1&8&b\\1&0&0&1&6&c\\1&-1&2&0&-1&d} =\begin{cases}3&(c=b+2d)\\4&(c\neq b+2d)\end{cases}\end{align*}

である.

参考文献

以下,私も使ったオススメの入試問題集を挙げておきます.

詳解と演習大学院入試問題〈数学〉

[海老原円,太田雅人 共著/数理工学社]

理工系の修士課程への大学院入試問題集ですが,基礎〜標準的な問題が広く大学での数学の基礎が復習できる総合問題集として利用することができます.

実際,まえがきにも「単なる入試問題の解説にとどまらず,それを通じて,数学に関する読者の素養の質を高めることにある」と書かれているように,必ずしも大学院入試を受験しない一般の学習者にとっても学びやすい問題集です.また,構成が読みやすいのも個人的には嬉しいポイントです.

第1章 数え上げと整数
第2章 線形代数
第3章 微積分
第4章 微分方程式
第5章 複素解析
第6章 ベクトル解析
第7章 ラプラス変換
第8章 フーリエ変換
第9章 確率

一方で,問題数はそれほど多くないので,多くの問題を解きたい方には次の問題集もオススメです.

なお,本書については,以下の記事で書評としてまとめています.

演習 大学院入試問題

[姫野俊一,陳啓浩 共著/サイエンス社]

上記の問題集とは対称的に問題数が多く,まえがきに「修士の基礎数学の問題の範囲は,ほぼ本書中に網羅されている」と書かれているように,広い分野から問題が豊富に掲載されています.

全2巻で,

1巻第1編 線形代数
1巻第2編 微分・積分学
1巻第3編 微分方程式
2巻第4編 ラプラス変換,フーリエ変換,特殊関数,変分法
2巻第5編 複素関数論
2巻第6編 確率・統計

が扱われています.

地道にきちんと地に足つけた考え方で解ける問題が多く,確かな「腕力」がつくテキストです.入試では基本問題は確実に解けることが大切なので,その意味で試験への対応力が養われると思います.

なお,私自身は受験生時代に計算力があまり高くなかったので,この本の問題で訓練したのを覚えています.

なお,本書については,以下の記事で書評としてまとめています.

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