2018年度 院試解説|京都大学 数学・数理解析専攻|基礎科目

京都大学|大学院入試
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2018年度入学の京都大学 理学研究科 数学・数理解析専攻の大学院入試問題の「基礎科目」の解答の方針と解答です.

問題は8問あり,数学系志願者は問1~問6の6問を,数理解析系志願者は

  • 問1〜問4の4問
  • 問5,問7から1問
  • 問6,問8から1問

の合計6問を解答します.試験時間は3時間30分です.この記事では問7まで解答の方針とポイント・解答例を掲載しています.

採点基準などは公式に発表されていないため,ここでの解答が必ずしも正解とならない場合もあり得ます.ご注意ください.

また,十分注意して解答を作成していますが,論理の飛躍・誤りが残っている場合があります.

なお,過去問は京都大学のホームページから入手できます.

過去の入試問題 | Department of Mathematics Kyoto University

第1問

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広義積分

   \begin{align*}\iiint_{V}\frac{1}{(1+x^{2}+y^{2})z^{3/2}}\,dxdydz\end{align*}

を計算せよ.ただし,$V=\set{(x,y,z)\in\R^{3}}{x^{2}+y^{2}\le z}$とする.

微分積分学の重積分の計算ですね.

解答の方針とポイント

被積分関数と積分領域$V$の条件にある$x^2+y^2$に注目して,$(x,y)$について

   \begin{align*}x=\cos{\theta},\quad y=\sin{\theta},\quad z=\eta\end{align*}

と極座標変換するのが良さそうですね.

多くの場合で広義積分であることを気せず変数変換して計算しても正しい結果が得られますが,この記事では(非負関数の)広義積分の定義に戻って計算しましょう.

どのような場合に気にせず変数変換してよいかについては,例えば「解析入門II」(杉浦光夫著,東京大学出版会)の第Ⅶ章の定理4.6を参照してください.

重積分の広義積分

非負実数値多変数関数の重積分の広義積分は,有界閉集合上で通常の重積分を計算したものの極限(または上限)により定義されます.

非負実数値$n$変数関数$f$と,体積確定集合$A\subset\R^n$を考える.さらに

   \begin{align*}A_n\subset A_{n+1},\quad A=\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n\end{align*}

を満たす体積確定な有界閉集合の列$\{A_n\}$をとる.任意の$n$に対して$f$が$A_n$上可積分であれば

   \begin{align*}\int_{A}f(x)\,dx=\lim_{n\to\infty}\int_{A_n}f(x)\,dx\end{align*}

を$f$の$A$上の広義積分という.

$f$が非負であることから,この$f$の$A$上の広義積分は列$\{A_n\}$のとりかたによらないことが従います.

ざっくり言えば,どんどん集合$A$に近付く有界閉集合上で$f$が可積分なら,その極限を$A$上での広義積分と定義するわけですね.

このあたりの考え方は1次元の広義積分と同様ですね.

重積分の変数変換

基本的な重積分の変数変換公式は有界閉集合上で成り立ちます.

体積確定な有界閉集合$A,B\subset\R^n$と,$C^1$級関数$\phi:A\to B$を考える.

  • $\phi$は全射
  • $A$から体積0の集合を除いたある集合上で$\phi$は単射
  • $A$から体積0の集合を除いたある集合上で$\phi$のヤコビ行列式$J_{\phi}(u)$は0でない

を満たすとき,$B$上の実数値連続関数$f$に対して

   \begin{align*}\int_{B}f(x)\,dx=\int_{A}f(\phi(u))|J_{\phi}(u)|\,du\end{align*}

が成り立つ.

ざっくり言えば,変数変換$\phi$が全射で,ほとんど全て単射で,ヤコビ行列式はほとんど全て0でなければ,変数変換公式が成り立つというわけですね.

例えば2次元の極座標変換

   \begin{align*}\phi:[0,\infty)\times[-\pi,\pi]\ni(r,\theta)\mapsto(r\cos{\theta}, r\sin{\theta})\in\R^2\end{align*}

は全射です.$r\neq0$かつ$\theta\neq\pi$とすれば(すなわち体積0の集合を除けば)$\phi$は単射です.

ヤコビ行列式は$\det{\frac{\partial(x,y)}{\partial(r,\theta)}}=\det{\bmat{\pd{x}{r}&\pd{x}{\theta}\\\pd{y}{r}&\pd{y}{\theta}}}=r$なので,$r\neq0$とすれば(すなわち体積0の集合を除けば)ヤコビ行列式は0ではありません.

よって,極座標変換は($r=0$や偏角$\theta=\pi$での対応は怪しいものの)問題なく行えるわけですね.

解答例

$n\in\N$に対して$V_n:=\set{(x,y,z)\in V}{z\le n^2}$とおくと,$\{V_n\}$は

   \begin{align*}V_n\subset V_{n+1},\quad V=\bigcup_{n=1}^{\infty}V_n\end{align*}

を満たす体積確定な有界閉集合の列である.被積分関数は$V$上で非負だから

   \begin{align*}\iiint_{V}\frac{1}{(1+x^{2}+y^{2})z^{3/2}}\,dxdydz =\lim_{n\to\infty}\iiint_{V_n}\frac{1}{(1+x^{2}+y^{2})z^{3/2}}\,dxdydz\end{align*}

である.

各$V_n$上で座標変換$(x,y,z)=(r\cos\theta,r\sin\theta,\eta)$($r\ge0$)を施すと,$V_n$は

   \begin{align*}W_n:&=\set{(r,\theta,\eta)}{0\le r^{2}\le \eta\le n^2,\ 0\le\theta<2\pi} \\&=\set{(r,\theta,\eta)}{0\le r\le n,\ 0\le r^{2}\le \eta\le n^2,\ 0\le\theta<2\pi}\end{align*}

に対応し,ヤコビ行列式は

   \begin{align*}\det{\frac{\partial(x,y,z)}{\partial(r,\theta,\eta)}} =\det{\bmat{\od{x}{r}&\od{x}{\theta}&\od{x}{\eta}\\\od{y}{r}&\od{y}{\theta}&\od{y}{\eta}\\\od{z}{r}&\od{z}{\theta}&\od{z}{\eta}}} =\det{\bmat{\cos{\theta}&-r\sin{\theta}&0\\\sin{\theta}&r\cos{\theta}&0\\0&0&1}}=r\end{align*}

である.よって,2次元の極座標変換と同様に重積分が書き換えられて

   \begin{align*}&\iiint_{V_n}\frac{1}{(1+x^{2}+y^{2})z^{3/2}}\,dxdydz =\iiint_{W_n}\frac{r}{(1+r^{2})\eta^{3/2}}\,drd\theta d\eta \\&=\int_{0}^{n}\bra{\int_{r^{2}}^{n^2}\bra{\int_{0}^{2\pi}\frac{r}{(1+r^{2})\eta^{3/2}}\,d\theta}\,d\eta}\,dr \\&=2\pi\int_{0}^{n}\bra{\int_{r^{2}}^{n^2}\frac{r}{(1+r^{2})\eta^{3/2}}\,d\eta}\,d\eta =-4\pi\int_{0}^{n}\frac{r}{1+r^{2}}\brc{\eta^{-1/2}}_{r^{2}}^{n^2}\,dr \\&=4\pi\int_{0}^{n}\bra{\frac{1}{1+r^{2}}-\frac{r}{n(1+r^{2})}}\,dr =4\pi\brc{\tan^{-1}{r}-\frac{1}{2n}\log{|1+r^2|}}_{0}^{n} \\&=4\pi\bra{\tan^{-1}{n}-\frac{1}{2n}\log{(1+n^2)}}\end{align*}

となるから,求める広義積分はこの$n\to\infty$の極限で

   \begin{align*}\iiint_{V}\frac{1}{(1+x^{2}+y^{2})z^{3/2}}\,dxdydz =4\pi\bra{\frac{\pi}{2}-0}=2\pi^2\end{align*}

を得る.

第2問

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$a$, $b$を実数とする.実行列

   \begin{align*}A=\pmat{1&1&a&b\\0&1&2&0\\2&0&1&4}\end{align*}

について,以下の問に答えよ.

  1. 行列$A$の階数を求めよ.
  2. 連立1次方程式

       \begin{align*}A\pmat{x_{1}\\x_{2}\\x_{3}\\x_{4}}=\pmat{1\\1\\1}\end{align*}

    が解を持つような実数$a$, $b$をすべて求めよ.

線形代数学の連立1次方程式の解の存在と係数行列拡大係数行列の階数(ランク)に関する問題ですね.

解答の方針とポイント

連立1次方程式$A\m{x}=\m{b}$の解の存在は係数行列$A$のランクと拡大係数行列$[A,\m{b}]$のランクを比較することで得られることは当たり前にしておきましょう.

$m\times n$行列$A$と$\m{b}\in\R^m$に対して,次は同値である.

  • $\m{x}\in\R^m$の連立1次方程式$A\m{x}=\m{b}$が解をもつ.
  • $\rank{A}=\rank{[A,\m{b}]}$が成り立つ.

単に行基本変形で$A$と$[A,\m{b}]$を階段行列(または簡約行列)に変形して,$\rank{A}$と$\rank{[A,\m{b}]}$を考えればよいですね.

解答例

$\m{b}:=\bmat{1\\1\\1}$とする.行列$\brc{A,\m{b}}$に行基本変形を施すと,

   \begin{align*}\brc{A,\m{b}}&=\bmat{1&1&a&b&1\\0&1&2&0&1\\2&0&1&4&1} \\&\to\bmat{1&1&a&b&1\\0&1&2&0&1\\0&-2&1-2a&4-2b&-1} \\&\to\bmat{1&0&a-2&b&0\\0&1&2&0&1\\0&0&5-2a&4-2b&1}\end{align*}

である.

(1)上の行基本変形により,

   \begin{align*}\operatorname{rank}{A}=\begin{cases}2&\bra{(a,b)=\bra{\frac{5}{2},2}}\\3&\bra{(a,b)\neq\bra{\frac{5}{2},2}}\end{cases}\end{align*}

である.

(2)上の行基本変形により,$(a,b)\neq\bra{\frac{5}{2},2}$のとき$\operatorname{rank}{A}=\operatorname{rank}{[A,\m{b}]}$であり,$(a,b)=\bra{\frac{5}{2},2}$のときはこれを満たさない.

よって,求める実数$a$, $b$は$(a,b)\neq\bra{\frac{5}{2},2}$である.

第3問

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広義積分

   \begin{align*}\int_{-\infty}^{\infty}\frac{\cos(\pi x)}{1+x^{2}+x^{4}}\,dx\end{align*}

を求めよ.

留数定理を用いる複素関数論の問題ですね.

解答の方針とポイント

ひと目で留数定理を使う形であることを見抜きたい問題です.

   \begin{align*}&f(z):=\frac{e^{\pi i z}}{1+z^{2}+z^{4}}, \\&L_{R}:=\set{z\in\C}{z=x,x\in[-R,R]}\end{align*}

とすれば,求める広義積分は$\lim\limits_{R\to\infty}\operatorname{Re}\dint_{L_R}f(z)\,dx$と複素積分で表せますね.

また,$1+z^2+z^4$は$e^{\pi i/3}$, $e^{2\pi i/3}$, $e^{4\pi i/3}$, $e^{5\pi i/3}$を根に持つので,

   \begin{align*}C_{R}:=\set{z\in\C}{z=Re^{i\theta},\theta\in[0,\pi]}\end{align*}

とすれば,$R>1$のときは$e^{\pi i/3}$, $e^{2\pi i/3}$を除く$C_{R}\cup L_{R}$の周および内部は$f$が正則な領域に含まれます.

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なお,一般に複素関数$g$, $h$が$g(a)\neq0$, $h(a)=0$, $h'(a)\neq0$をみたすなら,$a$での$\frac{g}{h}$の留数

   \begin{align*}\mrm{Res}\bra{\frac{g}{h},a}=\frac{g(a)}{h'(a)}\end{align*}

で求められます.

解答例

複素関数$f:\C\to\C$を

   \begin{align*}f(z):=\frac{e^{\pi i z}}{1+z^{2}+z^{4}}\bra{=\frac{\cos{(\pi z)}+i\sin{(\pi z)}}{1+z^{2}+z^{4}}}\end{align*}

で定め,任意の$R>2$に対して$C_{R},L_{R}\subset\C$を

   \begin{align*}&L_{R}:=\set{z\in\C}{z=x,x\in[-R,R]}, \\&C_{R}:=\set{z\in\C}{z=Re^{i\theta},\theta\in[0,\pi]}\end{align*}

で定める.このとき,

   \begin{align*}\int_{-\infty}^{\infty}\frac{\cos(\pi x)}{1+x^{2}+x^{4}}\,dx &=\lim_{R\to\infty}\int_{-R}^{R}\frac{\cos(\pi x)}{1+x^{2}+x^{4}}\,dx \\&=\lim_{R\to\infty}\int_{L_{R}}\frac{\cos(\pi z)}{1+z^{2}+z^{4}}\,dz \\&=\lim_{R\to\infty}\operatorname{Re}\int_{L_{R}}f(z)\,dz \\&=\lim_{R\to\infty}\operatorname{Re}\bra{\int_{C_{R}\cup L_{R}}f(z)\,dz-\int_{C_{R}}f(z)\,dz}\end{align*}

である.ただし,$\xi\in\C$に対して,$\xi$の実部を$\operatorname{Re}\xi$で表す.

[1]$\int_{C_{R}\cup L_{R}}f(z)\,dz$を考える.

   \begin{align*}(1-z^{2})(1+z^{2}+z^{4})=1-z^{6}\end{align*}

なので,$1+z^{2}+z^{4}=0$の解は$z$の6乗根のうち$\pm1$を除いた$e^{\pi i/3}$, $e^{2\pi i/3}$, $e^{4\pi i/3}$, $e^{5\pi i/3}$である.

よって,$e^{\pi i/3},e^{2\pi i/3},e^{4\pi i/3},e^{5\pi i/3}$は$f$の1位の極であり,この他に$f$は極をもたないから,$e^{\pi i/3}$, $e^{2\pi i/3}$を除く$C_{R}\cup L_{R}$の周および内部は$f$が正則な領域に含まれる.

$e^{\pi i/3}$, $e^{2\pi i/3}$での$f$の留数は

   \begin{align*}\mrm{Res}\bra{f,e^{\pi i/3}} &=\left.\frac{e^{\pi iz}}{\od{}{z}(1+z^{2}+z^{4})}\right|_{z=e^{\pi i/3}} =\frac{e^{\pi ie^{\pi i/3}}}{2e^{\pi i/3}+4e^{\pi i}} \\&=\frac{e^{\pi i(1+\sqrt{3}i)/2}}{\bra{1+\sqrt{3}i}-4} =\frac{ie^{-\pi\sqrt{3}/2}}{-3+\sqrt{3}i} \\\mrm{Res}\bra{f,e^{2\pi i/3}} &=\left.\frac{e^{\pi iz}}{\od{}{z}(1+z^{2}+z^{4})}\right|_{z=e^{2\pi i/3}} =\frac{e^{\pi ie^{2\pi i/3}}}{2e^{2\pi i/3}+4e^{2\pi i}} \\&=\frac{e^{\pi i(-1+\sqrt{3}i)/2}}{\bra{-1+\sqrt{3}i}+4} =\frac{-ie^{-\pi\sqrt{3}/2}}{3+\sqrt{3}i}\end{align*}

だから,留数定理より,

   \begin{align*}\int_{C_{R}\cup L_{R}}f(z)\,dz &=2\pi i\bra{\mrm{Res}\bra{f,e^{\pi i/3}}+\mrm{Res}\bra{f,e^{2\pi i/3}}} \\&2\pi i\bra{\frac{1}{-3+\sqrt{3}i}-\frac{1}{3+\sqrt{3}i}}ie^{-\pi\sqrt{3}/2} \\&=2\pi\cdot\frac{6e^{-\pi\sqrt{3}/2}}{12} =\pi e^{-\pi\sqrt{3}/2}\end{align*}

である.

[2]$\int_{C_{R}}f(z)\,dz$を考える.

   \begin{align*}\abs{\int_{C_{R}}f(z)\,dz} &=\abs{\int_{C_{R}}\frac{e^{\pi iz}}{1+z^{2}+z^{4}}\,dz} \\&=\abs{\int_{0}^{\pi}\frac{e^{\pi iRe^{i\theta}}}{1+R^{2}e^{2i\theta}+R^{4}e^{4i\theta}}\cdot Rie^{i\theta}\,d\theta} \\&\le\int_{0}^{\pi}\abs{\frac{Rie^{i\theta}e^{\pi iR(\cos{\theta}+i\sin{\theta})}}{1+R^{2}e^{2i\theta}+R^{4}e^{4i\theta}}}\,d\theta\end{align*}

ここで,$R>2$に注意して三角不等式を繰り返し用いて

   \begin{align*}|1+R^{2}e^{2i\theta}+R^{4}e^{4i\theta}| &>|R^{4}e^{4i\theta}|-|1+R^{2}e^{2i\theta}| \\&\ge R^{4}-(1+|R^{2}e^{2i\theta}|) \\&=R^{4}-R^{2}-1\end{align*}

となるから,

   \begin{align*}\abs{\int_{C_{R}}f(z)\,dz} &\le\int_{0}^{\pi}\frac{R|e^{-\pi R\sin\theta}|}{R^{4}-R^{2}-1}\,d\theta \\&\le\int_{0}^{\pi}\frac{R}{R^{4}-R^{2}-1}\,d\theta \\&=\frac{\pi R}{R^{4}-R^{2}-1} \xrightarrow[]{R\to\infty}0\end{align*}

である.よって,$\lim\limits_{R\to\infty}\dint_{C_{R}}f(z)\,dz=0$が従う.

[1], [2]より$\dint_{-\infty}^{\infty}\frac{\cos(\pi x)}{1+x^{2}+x^{4}}\,dx=\pi e^{-\pi\sqrt{3}/2}$を得る.

第4問

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閉区間$[0,1]$上の実数値関数列$\{f_{n}\}_{n=1}^{\infty}$について,各$f_{n}$は広義単調増加であるものとする.つまり,$0\le x<y\le 1$なら,$f_{n}(x)\le f_{n}(y)$である.この関数列$\{f_{n}\}_{n=1}^{\infty}$が$n\to\infty$で関数$f$に各点収束したとする.

  1. 任意の$0\le x<y\le1$に対し,不等式

       \begin{align*}\sup_{z\in[x,y]}|f_{n}(z)-f(z)|\le\max\{|f_{n}(x)-f(y)|,|f_{n}(y)-f(x)|\}\end{align*}

    を示せ.

  2. 関数$f$が連続であるとき,関数列$\{f_{n}\}_{n=1}^{\infty}$は$f$に$[0,1]$上で一様収束することを示せ.

微分積分学の関数列の一様収束を示す問題ですね.

解答の方針とポイント

関数列の一様収束を示すために,連続性をどう使うかがポイントですね.

一様ノルム

関数の絶対値の上限を測るノルムを一様ノルムといい,この一様ノルムによる収束を一様収束といいますね.

集合$A\subset\R^n$上の実数値関数$f$に対して

   \begin{align*}\|f\|:=\sup_{x\in A}|f(x)|\end{align*}

とするとき,$\|\cdot\|$は$A$上の実数値関数全部の線形空間のノルムとなり,このノルムを$A$上の一様ノルムという.

一様ノルム$\|\cdot\|$に対して,$\|f-g\|=\sup_{x\in A}|f(x)-g(x)|$は大雑把には「$f(x)$と$g(x)$の最も離れている$x$での$f(x)$と$g(x)$の(1次元ユークリッド)距離」と言えますね.

集合$A\subset\R^n$上の実数値関数$f$と実数値関数列$\{f_n\}$に対して

   \begin{align*}\lim_{n\to\infty}\|f_n-f\|=0\end{align*}

が成り立つとき,$\{f_n\}$は$f$に$A$上一様収束するという.ただし,$\|\cdot\|$を$A$上の一様ノルムとする.

つまり,$\{f_n\}$は$f$に一様収束するとは「$n$を大きくしていくと$f_n(x)$と$f(x)$の最も離れているところの(1次元ユークリッド)距離が0に近付く」と言えますね.

本問(1)は$f_n$と$f$の一様ノルムの差を評価するものになっており,本問(2)への誘導となっています.

まず極限が等号付き不等号を保存することから極限関数も広義単調増加であることが分かります.

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$\sup_{z\in[x,y]}|f_{n}(z)-f(z)|$は$[x,y]$上で$f_n(z)$と$f(z)$の距離の上限ですから,

  • $f_n(z)$を目一杯小さくして$f(z)$を目一杯大きくする
  • $f_n(z)$を目一杯大きくして$f(z)$を目一杯小さくする

のいずれかで上から評価でき,本問(1)の不等式が得られます.

コンパクト集合上の連続関数

有界閉区間$[0,1]$上で$f$が連続であるということから,次の定理を思い出しておきましょう.

[ハイネ-カントール(Heine-Cantor)の定理]有界閉集合(コンパクト集合)上の連続関数は一様連続である.

この定理により$f$は$[0,1]$上で一様連続なので,十分に細かく$[0,1]$を分割すれば分割内での$f$の2点での値の差は一様に小さくできます.

このときの分点を$0=t_0<t_1<\dots<t_n=1$とし,各分割内で本問(1)を用いれば各分点$t_0,t_1,\dots,t_n$での各点収束性の議論に持ち込めます.

分点$t_0,t_1,\dots,t_n$は有限個なので,十分$n$が大きくすれば全ての分点$t_0,t_1,\dots,t_n$での$f_n$の値は$f$の値に一様に近くでき,一様収束性が従います.

解答例

(1)任意の$0\le s<t<1$に対して$f_{n}(s)\le f_{n}(t)$だから,両辺で$n\to\infty$とすると$f(s)\le f(t)$が従う.

よって,$f$, $f_n$はともに広義単調増加だから,任意の$n\in\{1,2,\dots\}$と$z\in[x,y]$に対して,

   \begin{align*}f_n(x)\le f_n(z)\le f_n(y),\quad f(x)\le f(z)\le f(y)\end{align*}

が成り立つ.よって,

   \begin{align*}|f_{n}(z)-f(z)|&=\max\{f(z)-f_{n}(z),f_{n}(z)-f(z)\} \\&\le\max\{f(y)-f_{n}(x),f_{n}(y)-f(x)\} \\&\le\max\{|f_{n}(x)-f(y)|,|f_{n}(y)-f(x)|\}\end{align*}

が従う.

(2)任意に$\epsilon>0$をとる.$f$は有界閉区間$[0,1]$で連続だから,$f$は$[0,1]$上一様連続である.すなわち,ある$\delta>0$が存在して,$|x-y|<\delta$なら$|f(x)-f(y)|<\epsilon$が成り立つ.

よって,$\frac{1}{N}<\delta$を満たす$N\in\N$をとると,任意の$k\in\{0,1,\dots,N-1\}$に対して,

   \begin{align*}\abs{f\bra{\frac{k+1}{N}}-f\bra{\frac{k}{N}}}<\epsilon\end{align*}

が成り立つ.

また,関数列$\{f_{n}\}_{n=1}^{\infty}$が$n\to\infty$で関数$f$に各点収束するから,任意の$k\in\{0,1,\dots,N-1\}$に対して,ある$n_{k}\in\N$が存在して,$n>n_{k}$なら

   \begin{align*}\abs{f_{n}\bra{\frac{k}{N}}-f\bra{\frac{k}{N}}}<\epsilon\end{align*}

が成り立つ.よって,(1)を用いると,$n>n_{k}$なら

   \begin{align*}&\sup_{z\in\brc{\frac{k}{N},\frac{k+1}{N}}}|f_{n}(z)-f(z)| \\&\le\max\brb{\abs{f_{n}\bra{\frac{k}{N}}-f\bra{\frac{k+1}{N}}},\abs{f_{n}\bra{\frac{k+1}{N}}-f\bra{\frac{k}{N}}}} \\&\le\max\left\{\abs{f_{n}\bra{\frac{k}{N}}-f\bra{\frac{k}{N}}}+\abs{f\bra{\frac{k}{N}}-f\bra{\frac{k+1}{N}}},\right. \\&\qquad\left.\abs{f_{n}\bra{\frac{k+1}{N}}-f\bra{\frac{k+1}{N}}}+\abs{f\bra{\frac{k+1}{N}}-f\bra{\frac{k}{N}}}\right\} \\&<\epsilon+\epsilon <2\epsilon\end{align*}

が成り立つ.よって,$n>\max\{n_0,n_1,\dots,n_{N-1}\}$なら,

   \begin{align*}\sup_{z\in[0,1]}|f_{n}(z)-f(z)| =\max_{k\in\{0,1,\dots,N-1\}}\sup_{z\in\brc{\frac{k}{N},\frac{k+1}{N}}}|f_{n}(z)-f(z)| <2\epsilon\end{align*}

が成り立つから,題意が従う.

有限個の実数には最大値が存在するので,$\max\{n_0,n_1,\dots,n_{N-1}\}$は何らかの有限の実数です.

一方,無限個の実数には最大値が存在するとは限りませんから,$f$の一様連続性より有限個の分割で評価できることが重要になっているわけですね.

第5問

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$p$を素数とし,$\mathbb{F}_{p}=\Z/p\Z$を位数$p$の有限体とする.行列の乗法による群$G$を

   \begin{align*}G=\set{\begin{pmatrix}1&a&b\\0&1&c\\0&0&1\end{pmatrix}}{a,b,c\in\mathbb{F}_{p}}\end{align*}

で定める.このとき,$G$から乗法群$\C^{\times}=\C\setminus\{0\}$への準同型写像の個数を求めよ.

解答の方針とポイント

$A:=\bmat{1&1&0\\0&1&0\\0&0&1}$, $B:=\bmat{1&0&1\\0&1&0\\0&0&1}$, $C:=\bmat{1&0&0\\0&1&1\\0&0&1}$が$G$の元として最も単純で,

   \begin{align*}A^{n}=\bmat{1&n&0\\0&1&0\\0&0&1},\quad B^{n}=\bmat{1&0&n\\0&1&0\\0&0&1},\quad C^{n}=\bmat{1&0&0\\0&1&n\\0&0&1}\end{align*}

となることは,いずれもJordan標準形もしくはJordan標準形に近い形をしていることから直ちに分かります.

このことから,$G=\anb{A,B,C}$となること,すなわち$G$が$A$, $B$, $C$により生成されることが予想でき,実際に

   \begin{align*}B^{b}C^{c}A^{a}=\bmat{1&a&b\\0&1&c\\0&0&1}\end{align*}

が成り立ちます.また,$AC=BCA$より$B=ACA^{-1}C^{-1}$なので,結局は$G=\anb{A,C}$と$G$が生成されることが分かります.

あとは準同型$f:G\to\C^\times$による$A$, $C$の移り先を$p$が素数であることに気をつけて考えれば良いですね.

解答例

$I$を3次正方行列とし,$A, B\in G$を

   \begin{align*}A:=\bmat{1&1&0\\0&1&0\\0&0&1},\quad B:=\bmat{1&0&0\\0&1&1\\0&0&1},\quad C:=\bmat{1&0&0\\0&1&1\\0&0&1}\end{align*}

で定める.

任意の$n\in\Z$に対して,

   \begin{align*}A^{n}=\bmat{1&n&0\\0&1&0\\0&0&1},\quad B^{n}=\bmat{1&0&n\\0&1&0\\0&0&1},\quad C^{n}=\bmat{1&0&0\\0&1&n\\0&0&1}\end{align*}

が成り立つ.実際,$n=1$のときは明らかで,ある$n$で成り立つとすると

   \begin{align*}A^{n+1}=A^{n}A=\bmat{1&n&0\\0&1&0\\0&0&1}\bmat{1&1&0\\0&1&0\\0&0&1}=\bmat{1&n+1&0\\0&1&0\\0&0&1}\end{align*}

となるから帰納的に従う.$B$, $C$も同様である.よって,任意の$a,b,c\in\mathbb{F}_{p}$に対して,

   \begin{align*}B^{b}C^{c}A^{a} &=\bmat{1&0&b\\0&1&0\\0&0&1}\bmat{1&0&0\\0&1&c\\0&0&1}\bmat{1&a&0\\0&1&0\\0&0&1} \\&=\bmat{1&0&b\\0&1&c\\0&0&1}\bmat{1&a&0\\0&1&0\\0&0&1} =\bmat{1&a&b\\0&1&c\\0&0&1}\end{align*}

となることが分かり,$G=\anb{A,B,C}$を得る.

いま,$A^{-1}=A^{p-1}$, $C=C^{p-1}$だから$A$, $C$はいずれも正則で,

   \begin{align*}AC=\bmat{1&1&1\\0&1&1\\0&0&1}=BCA\end{align*}

より$B=ACA^{-1}C^{-1}$となることと併せて,結局$G=\anb{A,C}$が従う.

ここで,$f:G\to\C^{\times}$を準同型とすると,$f(A)^{p}=f(A^{p})=I$で$p$は素数だから$f(A)=e^{2\pi ik/p}$($k=1,\dots,p$)である.同様に$f(C)=e^{2\pi i\ell/p}$($\ell=1,\dots,p$)である.

また,$C$の乗法群$\C^{\times}$は可換だから

   \begin{align*}f(B)=f(ACA^{-1}C^{-1})=f(A)f(C)f(A)^{-1}f(C)^{-1}=I\end{align*}

である.よって,任意の$B^{b}C^{c}A^{a}\in G$に対して,

   \begin{align*}f(B^{b}C^{c}A^{a})=f(B)^{b}f(C)^{c}f(A)^{a}=e^{2\pi i(ak+c\ell)/p}\end{align*}

が成り立つ.

逆に,$k,\ell\in\{1,\dots,p\}$を固定し,写像$f:G\to\C^{\times}$を

   \begin{align*}f(B^{b}C^{c}A^{a}):=e^{2\pi i(ak+c\ell)/p}\end{align*}

で定める.任意の$B^{b}C^{c}A^{a},B^{b’}C^{c’}A^{a’}\in G$に対して,

   \begin{align*}B^{b}C^{c}A^{a}\cdot B^{b'}C^{c'}A^{a'} &=\bmat{1&a&b\\0&1&c\\0&0&1}\bmat{1&a'&b'\\0&1&c'\\0&0&1} \\&=\bmat{1&a+a'&b+b'+ac'\\0&1&c+c'\\0&0&1} \\&=B^{b+b'+ac'}C^{c+c'}A^{a+a'}\end{align*}

なので,

   \begin{align*}f(B^{b}C^{c}A^{a}\cdot B^{b'}C^{c'}A^{a'}) &=f(B^{b+b'+ac'}C^{c+c'}A^{a+a'}) \\&=e^{2\pi i\{(a+a')k+(c+c')\ell\}/p} \\&=e^{2\pi i(ak+c\ell)/p}\cdot e^{2\pi i(a'k+c'\ell)/p} \\&=f(B^{b}C^{c}A^{a})\cdot f(B^{b'}C^{c'}A^{a'})\end{align*}

となるから,$f$は準同型である.また,$f(A)=e^{2\pi ik/p}$, $f(C)=e^{2\pi i\ell/p}$である.

よって,$k$, $\ell$の選び方はともに$|\{1,2,\dots,p\}|=p$通りだから,$G$から乗法群$\C^{\times}=\C\setminus\{0\}$への準同型写像の個数は$p^{2}$である.

第6問

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$\R^{4}$の部分空間$M$を

   \begin{align*}M=\set{(x,y,z,w)\in\R^{4}}{x^{2}+y^{2}+z^{2}+w^{2}=1,xy+zw=0}\end{align*}

で定める.

  1. $M$が2次元微分可能多様体になることを示せ.
  2. $M$上の関数$f$を

       \begin{align*}f(x,y,z,w)=x\end{align*}

    で定めるとき,$f$の臨界点をすべて求めよ.ただし,$p\in M$が$f$の臨界点であるとは,$p$における$M$の局所座標$(u,v)$に関して

       \begin{align*}\pd{f}{u}(p)=\pd{f}{v}(p)=0\end{align*}

    となることである.

解答の方針とポイント

(1)$g:\R^4\to\R^2$を

   \begin{align*}g(x,y,z,w)=(x^{2}+y^{2}+z^{2}+w^{2}-1,xy+zw)\end{align*}

で定義すると$M=g^{-1}(0,0)$となりますから,$g$に正則値定理(沈め込み定理)を用いればよいですね.

(2)$f:M\to\R$の変化が$M$上で$0$となる点$p\in M$が臨界点となります.言い換えれば,$f$の$\R^4$への自然な延長$F:\R^4\to\R;(x,y,z,w)\mapsto x$の変化が$M$に現れないような点$p\in M$が$f$の臨界点です.

したがって,$f$の微分$df_p:T_{p}M\to\R$の定義域$T_{p}M$が$dF_p:\R^4\to\R$にすっぽり覆われているような,すなわち

   \begin{align*}T_{p}M\subset\operatorname{Ker}dF_{p}=\{0\}\times\R^3\end{align*}

を満たすような点$p\in M$を求めれば良いですね.また,逆写像定理より$T_{p}M=\Ker{dg_{p}}$であることにも注意します.

多様体$M$は$x$と$y$のペア,$z$と$w$のペアで対称なので,$T_{p}M=\{(0,0)\}\times\R^2$の場合のみ$T_{p}M\subset\{0\}\times\R^3$となることが予想され,実際これは正しいことが分かります.

解答例

(1)写像$g:\R^{4}\to\R^{2}$,実2次正方行列$A$, $B$を

   \begin{align*}&g(x,y,z,w)=(x^{2}+y^{2}+z^{2}+w^{2}-1,xy+zw), \\&A:=\bmat{2x&2y\\y&x},\quad B:=\bmat{2z&2w\\w&z}\end{align*}

で定める.$M=g^{-1}(0,0)$であり,$(1,0,0,0)\in M$だから$M\neq\emptyset$である.

ここで,任意の$p:=(x,y,z,w)\in M$が$g$の正則点であることを示す.そのために,$\operatorname{rank}Jg_{p}\neq2$と仮定して矛盾を導く.

   \begin{align*}&Jg_{p}=\bmat{2x&2y&2z&2w\\y&x&w&z}=[A,B], \\&|A|=2(x^{2}-y^{2})=2(x+y)(x-y), \\&|B|=2(z^{2}-w^{2})=2(z+w)(z-w)\end{align*}

だから,$(x,z)=(\pm y,\pm w)$(複号任意)のいずれかが成り立つ.

(i)もし$(x,z)=(\pm y,\pm w)$(複号同順)なら,$xy+zw=0$より$x^2+z^2=0$となって$p=(0,0,0,0)$となるが,これは$x^2+y^2+z^2+w^2=1$を満たさない.

(ii)もし$(x,z)=(y,-w)$なら,行基本変形により

   \begin{align*}Jg_{p}=\bmat{2y&2y&-2w&2w\\y&y&w&-w}\to\bmat{y&y&0&0\\0&0&w&-w}\end{align*}

となるから$y=0$または$w=0$である.$xy+zw=0$と併せると$p=(0,0,0,0)$となるが,これは$x^2+y^2+z^2+w^2=1$を満たさない.

(iii)もし$(x,z)=(-y,w)$なら,(ii)と同様に矛盾.

以上より仮定は誤りで任意の$p\in M$が$g$の正則点である.よって,正則値定理より$M=g^{-1}(0,0)$は微分可能多様体で,次元は$4-2=2$である.

(2)$f:M\to\R$の$\R^4$への延長$F:\R^4\to\R$を$\tilde{f}(x,y,z,w)=x$で定める.

このとき,$p=(x,y,z,w)\in M$が$f$の臨界点であることと,$T_{p}M\subset\operatorname{Ker}dF_{p}$が成り立つことは同値である.

さらに,$M\subset\R^{4}$より$T_{p}M\subset\R^{4}$とみなすことができ,$JF_{p}=[1,0,0,0]$より$\operatorname{Ker}dF_{p}=\{0\}\times\R^{3}$なので,$T_{p}M\subset\{0\}\times\R^{3}$となる$p\in M$を全て求めればよい.

ここで,

   \begin{align*}T_{p}M&=\operatorname{Ker}dg_{p} \\&=\set{\bmat{\m{u}\\\m{v}}\in\R^{4}}{\begin{gathered}Jg_{p}\bmat{\m{u}\\\m{v}}=\m{0},\\\m{u},\m{v}\in\R^{2}\end{gathered}} \\&=\set{\bmat{\m{u}\\\m{v}}\in\R^{4}}{A\m{u}=-B\m{v}}\end{align*}

であることに注意する.

[1]$z\neq\pm w$のとき,$B$は正則だから

   \begin{align*}T_{p}M&=\set{\bmat{\m{u}\\\m{v}}\in\R^{4}}{-B^{-1}A\m{u}=\m{v}} \\&=\set{\bmat{\m{u}\\-B^{-1}A\m{u}}\in\R^{4}}{\m{u}\in\R^{2}}\end{align*}

なので,第1成分が0でないベクトルが$T_{p}M$に属するから$T_{p}M\subset\{0\}\times\R^{3}$とはなり得ない.

[2]$z=\pm w$かつ$z\neq0$のとき,複号同順で

   \begin{align*}A\m{u}=-B\m{v} \iff\bmat{2xu_{1}+2yu_{2}\\yu_{1}+xu_{2}}=-z(v_{1}\pm v_{2})\bmat{2\\\pm1}\end{align*}

なので,たとえば$\bra{1,\pm1,-\frac{x}{z},-\frac{y}{z}}\in T_{p}M$だから,$T_{p}M\subset\{0\}\times\R^{3}$とはなり得ない.

[3]$z=w=0$のとき,$p\in M$と併せて

   \begin{align*}\begin{cases}x^{2}+y^{2}=1\\xy=0\end{cases}\iff (x,y)=(\pm1,0),(0,\pm1)\end{align*}

となる.

[1]-[3]より,$p\in M$なら$p=(\pm1,0,0,0),(0,\pm1,0,0)$を満たす.

逆に,このとき$A$は正則で$B$は零行列となるから,

   \begin{align*}T_{p}M&=\set{\bmat{\m{u}\\\m{v}}\in\R^{4}}{A\m{u}=-B\m{v}} \\&=\set{\bmat{\m{u}\\\m{v}}\in\R^{4}}{A\m{u}=\m{0}} \\&=\set{\bmat{\m{u}\\\m{v}}\in\R^{4}}{\m{u}=\m{0}} \\&=\{(0,0)\}\times\R^{2} \subset\{0\}\times\R^{3}\end{align*}

となるから,$f$の臨界点は$(\pm1,0,0,0)$, $(0,\pm1,0,0)$である.

第7問

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$A$を実正方行列,$k$を正の整数とし,$\rank{(A^{k+1})}=\rank{(A^k)}$が成り立つとする.このとき,任意の整数$m\ge k$に対し,$\rank{(A^m)}=\rank{(A^k)}$であることを証明せよ.ここで,行列$X$に対し,$\rank(X)$は$X$の階数を表す.

線形代数学のランクに関する問題ですね.

解答の方針とポイント

正方行列の冪を考える際は対角化を考えるとよいことが多く,対角化不可能でもJordan標準形を考えるとよいことが多いです.

一般に複素正方行列にはJordan標準形が存在するのでした.

任意の$n$次複素正方行列$A$に対して,ある$n$次正方行列$P$が存在して,$P^{-1}AP$はJordan行列となる.

固有値$a$の$n$次Jordan細胞を$J_n(a)$と表しましょう:

   \begin{align*}J_n(a)=\bmat{a&1&0&\dots&0\\0&a&1&\ddots&\vdots\\0&0&a&\ddots&\vdots\\\vdots&\ddots&\ddots&\ddots&1\\0&\dots&\dots&0&a}.\end{align*}

もし$a\neq0$なら全ての冪$J_n(a)^m$は上三角行列で対角成分は$a^m\neq0$なので

   \begin{align*}J_n(a)=J_n(a)^2=J_n(a)^3=\dots\end{align*}

を満たします.

一方,たとえば固有値0の4次Jordan細胞$J_4(0):=\bmat{0&1&0&0\\0&0&1&0\\0&0&0&1\\0&0&0&0}$は

   \begin{align*}J_4(0)^2:=\bmat{0&0&1&0\\0&0&0&1\\0&0&0&0\\0&0&0&0},\quad J_4(0)^3:=\bmat{0&0&0&1\\0&0&0&0\\0&0&0&0\\0&0&0&0},\quad J_4(0)^4:=\bmat{0&0&0&0\\0&0&0&0\\0&0&0&0\\0&0&0&0}\end{align*}

と4乗まで階数は1ずつ小さくなり,そのあとは零行列なので階数は変化しません.

よって,$A$のJordan標準形を考えて,固有値0のJordan細胞$J_n(0)$の次数に注目すれば示すことができますね.

解答例

$A$は複素(実)正方行列なので,ある正則行列$P$が存在して

   \begin{align*}P^{-1}AP:=J_{n_1}(0)\oplus\dots\oplus J_{n_p}(0)\oplus J_{N_{1}}(a_1)\oplus\dots\oplus J_{N_q}(a_q).\end{align*}

が成り立つ.ここに$a_{1},\dots,a_{q}\in\C\setminus\{0\}$であり,$J_{n}(a)$は固有値$a$の$n$次Jordan細胞である.任意の$m\in\N$に対して

   \begin{align*}P^{-1}A^{m}P:=J_{n_1}(0)^{m}\oplus\dots\oplus J_{n_p}(0)^{m}\oplus J_{N_1}(a_1)^{m}\oplus\dots\oplus J_{N_q}(a_q)^{m}\end{align*}

であり,正則行列をかけることによって階数は不変だから,

   \begin{align*}\rank{\bra{A^m}}&=\rank{\bra{J_{n_1}(0)^m\oplus\dots\oplus J_{n_p}(0)^m\oplus J_{N_1}(a_1)^m\oplus\dots\oplus J_{N_q}(a_q)^m}} \\&=\rank{\bra{J_{n_1}(0)^m}}+\dots+\rank{\bra{J_{n_p}(0)^m}}+\rank{\bra{J_{N_1}(a_1)^m}}+\dots+\rank{\bra{J_{N_q}(a_q)^m}}\end{align*}

である.ここで,Jordan細胞$J_{n}(a)$は以下を満たす:

  • $a\in\R\setminus\{0\}$のとき,任意の$m\in\N$に対して$\rank{(J_{n}(a)^{m+1})}=\rank{(J_{n}(a)^m)}$
  • $a=0$かつ$n\ge2$のとき,
    • 任意の$m\in\{1,2,\dots,n-1\}$に対して,$\rank{(J_{n}(a)^{m+1})}+1=\rank{(J_{n}(a)^m)}$
    • 任意の$m\in\{n,n+1,\dots\}$に対して,$\rank{(J_{n}(a)^{m+1})}=\rank{(J_{n}(a)^m)}$
  • $a=0$かつ$n=1$のとき,任意の$m\in\N$に対して$\rank{(J_{n}(a)^{m+1})}=\rank{(J_{n}(a)^m)}$

よって,$\rank{(A^{k+1})}=\rank{(A^k)}$が成り立つ最小の$k$は$k:=\max\{n_1,\dots,n_p\}$であり,任意の整数$m\ge\max\{n_1,\dots,n_p\}$に対し,

   \begin{align*}\rank{(A^m)}=\rank{(A^k)}\end{align*}

が従う.

参考文献

以下,私も使ったオススメの入試問題集を挙げておきます.

詳解と演習大学院入試問題〈数学〉

[海老原円,太田雅人 共著/数理工学社]

理工系の修士課程への大学院入試問題集ですが,基礎〜標準的な問題が広く大学での数学の基礎が復習できる総合問題集として利用することができます.

実際,まえがきにも「単なる入試問題の解説にとどまらず,それを通じて,数学に関する読者の素養の質を高めることにある」と書かれているように,必ずしも大学院入試を受験しない一般の学習者にとっても学びやすい問題集です.また,構成が読みやすいのも個人的には嬉しいポイントです.

第1章 数え上げと整数
第2章 線形代数
第3章 微積分
第4章 微分方程式
第5章 複素解析
第6章 ベクトル解析
第7章 ラプラス変換
第8章 フーリエ変換
第9章 確率

一方で,問題数はそれほど多くないので,多くの問題を解きたい方には次の問題集もオススメです.

なお,本書については,以下の記事で書評としてまとめています.

演習 大学院入試問題

[姫野俊一,陳啓浩 共著/サイエンス社]

上記の問題集とは対称的に問題数が多く,まえがきに「修士の基礎数学の問題の範囲は,ほぼ本書中に網羅されている」と書かれているように,広い分野から問題が豊富に掲載されています.

全2巻で,

1巻第1編 線形代数
1巻第2編 微分・積分学
1巻第3編 微分方程式
2巻第4編 ラプラス変換,フーリエ変換,特殊関数,変分法
2巻第5編 複素関数論
2巻第6編 確率・統計

が扱われています.

地道にきちんと地に足つけた考え方で解ける問題が多く,確かな「腕力」がつくテキストです.入試では基本問題は確実に解けることが大切なので,その意味で試験への対応力が養われると思います.

なお,私自身は受験生時代に計算力があまり高くなかったので,この本の問題で訓練したのを覚えています.

なお,本書については,以下の記事で書評としてまとめています.

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