ルベーグ積分において,例えば
が成り立ちます.
一般の測度空間でも零集合上のことは無視しても結果に影響がないことはよくあり,零集合上でのみ例外であることを「ほとんど至る所で」と表現します.
この記事では
- 「ほとんど至る所で」の定義
- 「ほとんど至る所で」の具体例
- 「ほとんど至る所で」の応用
を順に説明します.
「ほとんど至る所で」の定義
測度空間上の零集合上のみで条件を満たさないことを次のように言います.
条件
一般の測度空間
条件
こちらは「起こり得るかもしれないが,確率としては0であるような条件
「ほとんど至る所で」の具体例
以下では測度空間として
具体例1(本質的に恒等的に値0をとる関数)
恒等的に値0をとる
で定めます.
となります.よって,
などと表すわけですね.
具体例2(ディリクレ関数)
具体例1と同様に恒等的に値0をとる
で定まる
有理数全部の集合
となります.よって,
などと表すわけですね.
一般に可算集合が零集合だったので,可算集合上のみで異なる2つの関数は本質的に等しいと考えられますね.
具体例3(ほとんど至る所で各点収束)
と各点収束します.
また,恒等的に値1をとる
このとき,
となります.よって,
などと表すわけですね.
「ほとんど至る所で」の応用例
「ほとんど至る所」の応用例を考えましょう.
ルベーグ可積分関数はほとんど至る所で有限
普通,ルベーグ可測関数の終集合は拡大実数
が成り立つ.もし
ほとんど至る所で等しい2つの関数の積分
が成り立つ.また,
である.よって,
を得る.
同値関係による同一視
ほとんど至る所で等しい2つのルベーグ可測関数を関係付けると同値関係となります.
つまり,ほとんどいたるところ等しい関数たちをまとめてグループ分けできるということですね.
[反射律]任意のルベーグ可測関数
が成り立つから
[対称律]ルベーグ可測関数
が成り立つから
[推移律]ルベーグ可測関数
なので,
が成り立つから
この空間をルベーグ空間と呼び,
ルベーグ空間
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