ルベーグ積分7|可測関数の定義・具体例・必要十分条件

ルベーグ積分の基本
ルベーグ積分の基本

これまでの記事ではルベーグ測度$m$を説明してきましたが,この記事からは主役がルベーグ可測関数に変わります.

リーマン積分でもそうでしたが,ルベーグ積分もどんな関数に対しても定義できるわけではありません.

実はルベーグ積分を考えられる関数がルベーグ可測関数で,ルベーグ積分では重要な関数です.

ルベーグ可測関数でないとルベーグ積分を考えない理由はのちの記事で分かります.

この記事では

  • ルベーグ可測関数の定義と具体例
  • ルベーグ可測関数であるための必要十分条件

を順に説明します.

なお,この一連の記事ではルベーグ可測集合全部の族を$\mathcal{L}$で表しており,以下ではルベーグ可測集合のことを単に可測集合と呼びます.

ルベーグ積分の参考文献

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ルベーグ積分と関数解析

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ルベーグ可測関数の定義と具体例

ルベーグ可測関数はルベーグ可測集合を用いて定義されます.ルベーグ可測集合については以前の以下の記事を参照してください.

ルベーグ積分3|可測集合の定義と具体例・ルベーグ測度の定義
外測度m*はほぼ「集合の長さを測る写像」と言えますが実は少し不都合があり,「m*の定義域を少し狭めることで不都合を排除しよう」という方法を採用します.この定義域を狭めてできる写像mをルベーグ測度といいます.

$A\in\mathcal{L}$に対して,関数$f:A\to\overline{\R}$が$A$上ルベーグ可測関数(または単に可測関数)であるとは,任意の$\alpha\in\R$に対して

   \begin{align*}\set{x\in A}{f(x)\ge\alpha}\in\mathcal{L}\end{align*}

であることをいう.

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ただし,$f$の終集合$\overline{\R}$は拡大実数$\R\cup\{\infty,-\infty\}$である.

このこまでで可測集合と可測関数の2つの「可測」が定義されましたが,混同しないように注意してください.

以下でいくつか具体的に可測関数を考えてみましょう.

具体例1

関数$f:\R\to\R$を

   \begin{align*}f(x)=\frac{1}{2}x\end{align*}

で定めるとき,$f$が$\R$上ルベーグ可測関数であることを証明せよ.

定義域の$\R$は可測である.任意に$\alpha\in\R$に対して,

   \begin{align*}\set{x\in\R}{f(x)\ge\alpha} =&\set{x\in\R}{\frac{1}{2}x\ge\alpha} \\=&\set{x\in\R}{x\ge2\alpha} \\=&[2\alpha,\infty)\end{align*}

である.任意の区間は可測集合なので$\set{x\in\R}{f(x)\ge\alpha}\in\mathcal{L}$である.

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よって,定義から$f$はルベーグ可測関数である.

具体例2

$I=[0,\infty)$とする.関数$f:I\to\R$を

   \begin{align*}f(x)=-\log{x}\end{align*}

で定めるとき,$f$が$I$上ルベーグ可測関数であることを証明せよ.

$I\subset\R$は区間だから可測である.任意の$\alpha\in\R$に対して,

   \begin{align*}\set{x\in\R}{f(x)\ge\alpha} =&\set{x\in\R}{-\log{x}\ge\alpha} \\=&\set{x\in\R}{x\le e^{-\alpha}} \\=&(0,e^{-\alpha}]\end{align*}

である.任意の区間は可測集合なので$\set{x\in\R}{f(x)\ge\alpha}\in\mathcal{L}$である.

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よって,定義から$f$はルベーグ可測関数である.

具体例3

関数$f:\R\to\R$を

   \begin{align*}f(x)=x^2\end{align*}

で定めるとき,$f$が$\R$上ルベーグ可測関数であることを証明せよ.

$\R$は可測である.任意に$\alpha\in\R$をとる.

[2] $\alpha\le0$のとき

   \begin{align*}\set{x\in\R}{f(x)\ge\alpha} =\set{x\in\R}{x^2\ge\alpha} =\R\end{align*}

である.$\R\in\mathcal{L}$なので$\set{x\in\R}{f(x)\ge\alpha}\in\mathcal{L}$である.

[2] $\alpha>0$のとき

   \begin{align*}\set{x\in\R}{f(x)\ge\alpha} =&\set{x\in\R}{x^2\ge\alpha} \\=&\set{x\in\R}{x\le-\sqrt{\alpha},\sqrt{\alpha}\le x} \\=&\bigl(-\infty,-\sqrt{\alpha}\bigr]\cup\bigl[\sqrt{\alpha},\infty\bigr)\end{align*}

である.任意の区間は可測集合で,一般に可測集合の和集合も可測集合なので$\set{x\in\R}{f(x)\ge\alpha}\in\mathcal{L}$である.

[1], [2]より,定義から$f$はルベーグ可測関数である.

冒頭でも触れましたが,実は可測集合上の連続関数は全て可測関数であることが証明できます.この事実を知っていれば,以上の例の関数$f$が全て可測であることはすぐに分かりますね.

ルベーグ可測関数であるための必要十分条件

ルベーグ可測関数であるための必要十分条件を2つ紹介します.

必要十分条件1

$A\in\mathcal{L}$と関数$f:A\to\overline{\R}$に対して,次は同値である.

  1. $f$は$A$上ルベーグ可測関数
  2. 任意の$\alpha\in\R$に対して$\set{x\in A}{f(x)>\alpha}\in\mathcal{L}$
  3. 任意の$\alpha\in\R$に対して$\set{x\in A}{f(x)\le\alpha}\in\mathcal{L}$
  4. 任意の$\alpha\in\R$に対して$\set{x\in A}{f(x)<\alpha}\in\mathcal{L}$

この記事では集合$\set{x\in A}{f(x)\ge\alpha}$を用いてルベーグ可測関数を定義したことを思い出しましょう.

この定理は集合$\set{x\in A}{f(x)\ge\alpha}$の条件部分の不等号を$>,\le,<$としても,全く同じことだということを示しているわけですね.

一般に$B\in\mathcal{L}\iff B^c\in\mathcal{L}$であることと

   \begin{align*}\set{x\in A}{f(x)\ge\alpha}^c=\set{x\in A}{f(x)<\alpha}\end{align*}

から$(1)\iff(4)$が成り立つ.同様に$(2)\iff(3)$が成り立つから,$(1)\iff(2)$を示せば定理が従う.

[$(1)\Ra(2)$の証明] 任意の$\alpha\in\R$に対して,

   \begin{align*}\set{x\in A}{f(x)>\alpha} =\bigcup_{n=1}^{\infty}\set{x\in A}{f(x)\ge\alpha+\frac{1}{n}}\end{align*}

である.(1)が成り立つなら

   \begin{align*}\set{x\in A}{f(x)\ge\alpha+\frac{1}{n}}\in\mathcal{L}\quad (n=1,2,\dots)\end{align*}

であり,一般に可測集合の和集合も可測集合だから$\set{x\in A}{f(x)>\alpha}\in\mathcal{L}$である.

[$(2)\Ra(1)$の証明] 任意の$\alpha\in\R$に対して,

   \begin{align*}\set{x\in A}{f(x)\ge\alpha} =\bigcap_{n=1}^{\infty}\set{x\in A}{f(x)>\alpha-\frac{1}{n}}\end{align*}

である.(2)が成り立つなら

   \begin{align*}\set{x\in A}{f(x)>\alpha-\frac{1}{n}}\in\mathcal{L}\quad (n=1,2,\dots)\end{align*}

であり,一般に可測集合の共通部分も可測集合だから$\set{x\in A}{f(x)\ge\alpha}\in\mathcal{L}$である.

よって,$f$は$A$上ルベーグ可測関数である.

これらを組み合わせると,次の系が成り立つことも分かりますね.

$A\in\mathcal{L}$と関数$f:A\to\overline{\R}$とに対して,次の集合はいずれも可測集合である.

   \begin{align*}&\set{x\in A}{\alpha<f(x)<\beta},\quad \set{x\in A}{\alpha<f(x)\le\beta}, \\&\set{x\in A}{\alpha\le f(x)<\beta},\quad \set{x\in A}{\alpha\le f(x)\le\beta}\end{align*}

ただし,$\alpha,\beta\in\R$である.

いずれも可測集合

   \begin{align*}&\set{x\in A}{f(x)>\alpha},\quad \set{x\in A}{f(x)\ge\alpha}, \\&\set{x\in A}{f(x)<\beta},\quad \set{x\in A}{f(x)\le\beta}\end{align*}

のうちの2つの共通部分で表せるから可測集合である.

この系から,可測関数を横切りしてできる「階段状の関数」は可測関数であることが分かります.

このことがルベーグ積分において可測関数が重要な役割を果たす理由になっているのですが,詳しくは次の記事で説明します.

必要十分条件2

$A\in\mathcal{L}$と関数$f:A\to\overline{\R}$に対して,次は同値である.

  1. $f$は$A$上ルベーグ可測関数
  2. 任意の$r\in\Q$に対して$\set{x\in A}{f(x)\ge r}\in\mathcal{L}$

(1)より(2)の方が明らかに弱い条件になっていることに注意しましょう.

すなわち,(2)が成り立てば自動的に無理数$\alpha$に対しても$\set{x\in A}{f(x)\ge\alpha}\in\mathcal{L}$であることが成り立つというわけですね.

(1)が成り立てば,任意の$r\in\Q\subset\R$に対して$\set{x\in A}{f(x)\ge r}$は可測集合だから(2)が成り立つ.

一方,(2)が成り立つとし,任意に$\alpha\in\R$をとる.

有理数の稠密性より$\lim\limits_{n\to\infty}r_n=\alpha$となる単調増加有理数列$\{r_n\}$が存在するから,

   \begin{align*}\set{x\in A}{f(x)\ge\alpha} =\bigcap_{n=1}^{\infty}\set{x\in A}{f(x)\ge r_n}\end{align*}

が成り立つ.全ての$\set{x\in A}{f(x)\ge r_n}$ ($n=1,2,\dots$)が可測集合であり,一般に可測集合の共通部分も可測集合だから$\set{x\in A}{f(x)\ge\alpha}\in\mathcal{L}$である.

よって,$f$は$A$上ルベーグ可測関数である.

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