ルベーグ外測度
実はルベーグ外測度はルベーグ積分の土台となるルベーグ測度を定義するために必要なもので,ルベーグ外測度
結論から言えば,ルベーグ外測度
一方でルベーグ外測度
この記事では
- ルベーグ外測度の5つの性質
- ルベーグ外測度の不具合とルベーグ測度
- ルベーグ外測度の性質の証明
を順に説明します.
以下ではルベーグ外測度を
「ルベーグ積分の基本」の一連の記事
- ルベーグ積分入門
- ルベーグ測度
- ルベーグ可測関数とルベーグ積分
ルベーグ外測度の5つの性質
まずはこの記事の本題である外測度の5性質を紹介します.
ルベーグ外測度
- [非負値性]任意の集合
は を満たす.また, が成り立つ. - [平行移動不変性]平行移動で移り合う集合
は を満たす. - [単調性]
を満たす集合 は を満たす. - [劣加法性]集合
は を満たす. - [区間の外測度]右半開区間
は を満たす.
それぞれ言葉で説明すると,
- 外測度は0以上であり,空集合
の外測度は0 - 平行移動して移り合う2つの集合の外測度は等しい
- 大きい集合の方が外測度も大きい
- 和集合の外測度よりも,それぞれの外測度の和の方が大きいか等しい
- 右半開区間の外測度は
の長さに等しい
ということですね.
直感的には外測度が集合の「長さ」を測るものなので,これらの性質が成り立つのはそんなにおかしなことではありませんね.
このうち[非負値性][区間の外測度]は外測度の定義の記事で証明しました.残りはこの記事の最後に証明します.
ルベーグ外測度の不具合とルベーグ測度
しかし,実は外測度にはあまり嬉しくない性質があります.
ルベーグ外測度の不具合
実は外測度について次の命題が成り立ちます.
(選択公理を仮定すれば)
つまり,2つの集合
- 和集合
の外測度 - 外測度
, の和
が等しいとは限らないわけですね.
この性質は「外測度
そこで,そのような集合が存在しないように
いまの命題のような集合
ルベーグ測度
上の不具合から
「外測度
と考えてできるものがルベーグ測度と呼ばれるもので,ルベーグ測度はルベーグ積分において本質的に重要な役割を果たします.
ルベーグ測度の定義はのちの記事に譲りますが,結論からルベーグ測度の重要な性質は次の定理です.
が成り立つ.
この性質は測度
ルベーグ外測度ではさきほどみた不具合があるので,この完全加法性は成り立ちません.
ルベーグ外測度では成り立たないこの性質をもつおかげで,ルベーグ測度
外測度の性質の証明
それでは上で説明した外測度の性質の証明を与えていきますが,[非負値性]と[区間の外測度]は外測度の定義の記事で証明しました.
よって,あとは[平行移動不変性]と[単調性]と[劣加法性]を示せば良いですね.
平行移動不変性
外測度の平行移動不変性は「平行移動して移り合う集合の外測度は等しい」というものでした.
集合
が成り立つ.
集合
このとき,
各
が成り立つ.
また,
単調性
集合
が成り立つ.
が成り立つ.一般に
が成り立つ.
途中の「一般に
劣加法性
外測度の劣加法性は「和集合の外測度より,外測度の和の方が大きいか等しい」というものでした.
集合
が成り立つ.
有限集合の元の個数のイメージをもてば,この性質は直感的に理解できます.
有限集合
となりますから,
これは
これと同様に右辺
一般に
任意に
なる右半開区間の列
このとき,
が成り立つ.
また,任意の
だから,
が成り立つ.
最初に
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