ルベーグ積分10|ルベーグ可測関数を単関数列で近似する

ルベーグ積分の基本
ルベーグ積分の基本

前回の記事では単関数を定義して,ルベーグ可測単関数のルベーグ積分を定義しました.

ルベーグ可測関数はこの単関数列で近似することができ,実はこの事実をふまえてルベーグ積分が定義されます.

この記事では

  • 可測関数の単関数近似定理と考え方
  • 単関数近似定理の証明

を順に説明します.

以下では

と呼び,$\R$上のルベーグ可測集合全部の族を$\mathcal{L}$で表します.

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ルベーグ可測関数の単関数近似定理と考え方

次の定理がこの記事のメインテーマです.

$A\in\mathcal{L}$上の非負値可測関数$f$に対して,ある非負値単関数列$\{f_n\}$が存在して,

  1. 任意の$n$に対して$f_n$は可測関数
  2. $\{f_n\}$は広義単調増加
  3. $\lim\limits_{n\to\infty}f_n=f$

が成り立つ.

言葉で言えば,「非負可測関数は下から非負可測単関数列により近似できる」ということになりますね.

この定理は具体的に可測単関数列$\{f_n\}$を構成することにより示すことができますが,いきなり証明を読んでも分かりづらいので,$f_1$と$f_2$の構成を説明してイメージをつかんでおきましょう.

$f_1$の構成

まず$f_1$を

  • $0\le f(x)<\dfrac{1}{2}$なる$x\in A$で値$0$
  • $\dfrac{1}{2}\le f(x)<1$なる$x\in A$で値$\dfrac{1}{2}$
  • $1\le f(x)$なる$x\in A$で値$1$

をとる単関数と定めましょう.

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つまり,$0$から$1$までを幅$\dfrac{1}{2}$で「横切り」して単関数をつくるわけですね.

$f_2$の構成

次に$f_2$を

  • $0\le f(x)<\dfrac{1}{4}$なる$x\in A$で値$0$
  • $\dfrac{1}{4}\le f(x)<\dfrac{1}{2}$なる$x\in A$で値$\dfrac{1}{4}$
  • $\dfrac{1}{2}\le f(x)<\dfrac{3}{4}$なる$x\in A$で値$\dfrac{1}{2}$
  • ……
  • $\dfrac{7}{4}\le f(x)<2$なる$x\in A$で値$\dfrac{7}{4}$
  • $2\le f(x)$なる$x\in A$で値$2$

をとる単関数と定めましょう.

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つまり,$0$から$2$までを幅$\dfrac{1}{4}$で「横切り」して単関数をつくるわけですね.

このように$0$から$n$までを幅$\dfrac{1}{2^n}$で「横切り」してできる単関数を$f_n$とすると,条件を満たす単関数列$\{f_n\}$ができあがります.

単関数近似定理の証明

単関数近似定理の証明のために,前回の記事で示した単関数が可測関数であるための必要十分条件を思い出しておきましょう.

$A\in\mathcal{L}$上の単関数$f$が有限個の値$\alpha_1,\dots,\alpha_n$のみとるとき,次は同値である.

  1. $f$は$A$上可測関数
  2. 任意の$k\in\{1,2,\dots,n\}$に対して$\set{x\in A}{f(x)=\alpha_k}\in\mathcal{L}$

この補題が効いて,上で考えた構成で各$f_n$が単関数になっていることが分かります.

(再掲)$A\in\mathcal{L}$上の非負可測関数$f$に対して,ある非負単関数列$\{f_n\}$が存在して,

  1. 任意の$n$に対して$f_n$は可測関数
  2. $\{f_n\}$は広義単調増加
  3. $\lim\limits_{n\to\infty}f_n=f$

が成り立つ.

$n\in\N$に対して,$f_n:A\to\R_{\ge0}$を

  • $0\le f(x)<\dfrac{1}{2^n}$なる$x\in A$で値$0$
  • $\dfrac{1}{2^n}\le f(x)<\dfrac{2}{2^n}$なる$x\in A$で値$\dfrac{1}{2^n}$
  • $\dfrac{2}{2^n}\le f(x)<\dfrac{3}{2^n}$なる$x\in A$で値$\dfrac{2}{2^n}$
  • ……
  • $n-\dfrac{1}{2^n}\le f(x)<n$なる$x\in A$で値$n-\dfrac{1}{2^n}$
  • $n\le f(x)$なる$x\in A$で値$n$

をとる関数と定める.このとき,$f_n$がとる値は$0,\dfrac{1}{2^{n}},\dfrac{2}{2^{n}},\dots,n-\dfrac{1}{2^{n}},n$の有限個だから,$\{f_n\}$は単関数列である.

[可測性] 任意の$k\in\{0,1,2,\dots,n\cdot2^n-1\}$に対して,前回の記事で証明したように

   \begin{align*}\set{x\in A}{\frac{k}{2^{n}}\le f(x)<\frac{k+1}{2^{n}}}\in\mathcal{L}\end{align*}

だから,上で示した補題より$f_n$は可測関数である.

[単調性] 任意に$n\in\N$, $k\in\{0,1,\dots,n\cdot2^n-1\}$をとる.

$\dfrac{k}{2^n}\le f(x)<\dfrac{k+1}{2^n}$なる$x\in A$に対して,$f_n(x)=\dfrac{k}{2^n}$であることに注意しておく.

$\dfrac{k}{2^n}\le f(x)<\dfrac{k+\frac{1}{2}}{2^n}\iff\dfrac{2k}{2^{n+1}}\le f(x)<\dfrac{2k+1}{2^{n+1}}$なる$x\in A$に対して,

   \begin{align*}f_n(x)=\frac{2k}{2^{n+1}}=\frac{k}{2^n}=f_{n+1}(x)\end{align*}

であり,$\dfrac{k+\frac{1}{2}}{2^n}\le f(x)<\dfrac{k+1}{2^n}\iff\dfrac{2k+1}{2^{n+1}}\le f(x)<\dfrac{2k+2}{2^{n+1}}$なる$x\in A$に対して,

   \begin{align*}f_n(x)=\frac{2k+1}{2^{n+1}}\ge\frac{k}{2^n}=f_{n+1}(x)\end{align*}

である.よって,$\{f_n\}$は広義単調増加である.

[各点収束] $f(x)=\infty$なる$x\in A$においては,

   \begin{align*}\lim_{n\to\infty}f_n(x)=\lim_{n\to\infty}n=\infty=f(x)\end{align*}

が成り立つ.

また,$f(x)<\infty$なる$x\in A$においては,十分大きな$n\in\N$に対して

   \begin{align*}0\le|f_n(x)-f(x)|\le\frac{1}{2^n}\bra{\xrightarrow[]{n\to\infty}0}\end{align*}

だから,$\lim\limits_{n\to\infty}f_n(x)=f(x)$が成り立つ.

なお,$f_n$で$f(x)\ge n$の部分を全て$n$にするのは,$f_n$のとる値を有限個にするためです.

つまり,$f$が非有界の場合に$f(x)\ge n$でも同様に「横切り」していくと,$f_n$のとる値が有限個になり得ますね.

(3)の証明については,可測関数$f$の終集合が拡大実数$\R\cup\{\pm\infty\}$であることに注意してください.

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