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書評/関数解析(黒田成俊著,共立出版)

  
関数解析
   

【書名】 関数解析

【著者】 黒田成俊

【出版】 共立出版

関数解析の入門書.

関数解析の和書では,定番中の定番となっている.

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全体の感想

関数解析の良著.

特に前半は証明や例が非常に丁寧に書かれており,とても読みやすく理解が進む.

その後の理解のために読者自身で考えるべき部分には多少の行間があるが,無茶な行間ではなくその節の基本を理解していれば埋められる程度の行間である.

そのため,演習も兼ねて読み進めることができ,非常に身に付きやすい.

各章末の問題はA問題,B問題,C問題からなっており,基本的にはこの順に難しくなるように構成されている.

問題数も少なくなく,A問題だけでも理解の手助けになる.B問題で「理解」の後の「慣れ」が養われ,C問題は難問が多い.著者が「まえがき」で「Cは篤志家がじっくり考えてほしい問題」と書いているように,C問題は解けなくても問題はない.

必要な知識

集合論

写像と集合の知識は必要.

線形代数

関数解析は無限次元の線形代数という側面をもつ.したがって,関数解析を学ぶためには線形代数の知識は必須である.

ただし,必要な線形代数の知識は本書の序盤に簡単にまとめてあるので,それによって読み進めることは不可能ではない.

しかし,やはり線形代数の知識は事前に持っておくことが望ましい.

Lebesgue積分論

関数解析は積分を頻繁に用いる.その際に使う積分は,Riemann積分ではなくLebesgue積分である.

巻末に付録として,Lebesgue積分について簡潔にまとめられている.

そのため,Lebesgue積分を学んだことがなくても,本文中でLebesgue積分の知識が必要になったときは,この巻末の付録を参照すれば読み進めることができる.

なお,私は本書をLebesgue積分の理解が不十分なまま読んだが,読み進めることができた.というより,本書でLebesgueの収束定理などの使い方をこの本を通して身に付けたとも言える.

良い点と悪い点

良い点

  • 証明や例が丁寧
  • 章末問題が多い
  • Lebesgue積分の知識がなくても(巻末の付録を参照すれば)読み進めることができる
  • 最初に線形空間→ノルム空間→Banach空間と説明が進むので,初学者がつまずきやすい導入部をしっかりフォローしている
  • 「証明は他の本に譲る」などが少ないので,ほとんどこの一冊だけで完結できる

不満な点

  • Sobolev空間の内容が薄い.
  • 偏微分方程式への応用が少ない.

しかし,関数解析の入門書である以上,他の専門書で身につけるべきであろう.

目次

第1章:Banach空間・Hilbert空間

  1. 線形空間
  2. Banach空間
  3. Hilbert空間
  4. 部分空間
  5. 有限次元ノルム空間
  6. 線形作用素

第2章:関数空間

  1. まえおき
  2. \mathcal{B}^m(\Omega)
  3. L^{1}(\Omega)
  4. L^{p}(\Omega)
  5. L^{\infty}(\Omega)

第3章:Hilbert空間の完全正規直交系

  1. まえおき
  2. 正射影
  3. 正規直交系
  4. 完全正規直交系の存在

第4章:Fourier級数

  1. Fourier展開
  2. 完全性の証明
  3. Fourier級数とたたみこみ
  4. Poisson積分
  5. Poisson積分の調和性・正則性
  6. 単位円内で正則な関数,調和な関数
  7. Dirichlet問題・Neumann問題
  8. 多重Fourier級数

第5章:Fourier変換

  1. 定義と例
  2. Fourier変換とたたみこみ,Gauss総和法
  3. Fourier変換のL^{2}理論
  4. 上半平面のPoisson積分
  5. 上半平面で正則な関数,調和な関数

第6章:Sobolev空間

  1. まえおき
  2. 軟化作用素
  3. 一般化された導関数とSobolev空間W^{m,p}(\Omega)
  4. 一般化された導関数とSobolev空間W^{m,p}(\Omega),続
  5. Sobolev空間H^{s}(\mathbb{R}^n)
  6. 一般領域におけるDirichlet問題

第7章:線形作用素

  1. 有界線形作用素
  2. 一般の線形作用素
  3. 線形作用素の例
  4. 閉作用素
  5. 一様有界性の原理
  6. 開写像原理,閉グラフ定理

第8章:線型汎関数と共役空間

  1. 定義と例,Rieszの定理
  2. Hahn-Banachの定理
  3. Hahn-Banachの定理の応用,共役作用素
  4. 第2共役空間
  5. 弱収束,汎弱収束
  6. 共役作用素
  7. 共役作用素の例

第9章:レゾルベント・スペクトル

  1. Neumann級数
  2. レゾルベント・スペクトル
  3. 実例

第10章:線型汎関数の半群

  1. まえおき
  2. ベクトル値関数
  3. 半群と生成作用素,簡単な例
  4. 半群と生成作用素,Hille-吉田の定理
  5. 熱伝導方程式の基本解

第11章:コンパクト作用素,Fredholm作用素

  1. 直和分解と補空間
  2. コンパクト作用素
  3. 作用素I-K
  4. Fredholm作用素と指数
  5. 安定性の定理
  6. コンパクト作用素のスペクトル理論
  7. コンパクト作用素の実例
  8. 自己共役なコンパクト作用素

第12章:自己共役作用素のスペクトル分解定理

  1. Stieltjes積分
  2. 調和関数に関する1つの表現定理
  3. 射影作用素と単位の分解
  4. 対称作用素,自己共役作用素
  5. スペクトル分解定理(レゾルベントの表現)
  6. 作用素解析とスペクトル分解定理

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