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Lᵖ双対性を証明する議論(duality argument)について

関数解析
関数解析

p[1,)のとき

  • ルベーグ空間Lp(RN)の共役空間Lp(RN)
  • ルベーグ空間Lp(RN)

が同型であることはよく知られています(ppのヘルダー共役).

この同型について,任意のvLp(Ω)に対して

vLp(Ω)=supuLp(Ω)=1|Ωu(x)v(x)dx|.

が成り立ち,これをLp双対性といいます.LpLq空間でも同様にLpLq双対性が成り立ち,これらの双対性を用いる論法を双対性議論(duality argument)などといいます.

この記事では複素数値関数に対するLp双対性,LpLq双対性を示します..

この記事では

  • 準備(定義関数)
  • Lp空間の双対性議論
  • LpLq空間の双対性

を順に解説します.

準備(定義関数)

本題に入る前に定義関数ヘルダーの不等式を準備しておきます.

定義関数

[定義関数]集合Aとその部分集合Bに対して

f(x):={1(xB)0(xB)

で定まる写像f:ARB上の定義関数であるという.

この記事ではΩRNに対して,Ω上の定義関数RNRIΩと表します:

IΩ(x):={1(xΩ),0(xΩ).

ヘルダーの不等式

Lp双対性の証明のベースとなるのはヘルダーの不等式です.

[ヘルダーの不等式]AR可測集合とし,p,q>11p+1q=1を満たすとする.このとき,A上のルベーグ可測関数f,gに対して,不等式

A|f(x)g(x)|dxfpgq

が成り立つ.

実は実数値関数に対するLp双対性(p(1,))はヘルダーの不等式から簡単に証明でき,実際にp(1,)の場合は以下の記事で証明しています.

ヘルダーの不等式の証明・応用|ルベーグ積分の基本不等式
ルベーグ積分(測度論)を扱う分野では「ヘルダーの不等式」は基本的な不等式のひとつとして重要です.この記事では,ヘルダーの不等式の証明と,ヘルダーの不等式の応用(双対性)を説明します.

また,p=1のときはq=となり,とくに性質を使うまでもなく

A|f(x)g(x)|dxf(x)A|g(x)|dx=f(x)g1

が得られ,この場合も含めてヘルダーの不等式ということもあります.以下,このp=1の場合も含めてヘルダーの不等式といいます.





Lp空間の双対性議論

この記事では複素数値関数に対するLp双対性を示しましょう.

ルベーグ空間Lp

まずはルベーグ空間Lpの定義を確認します.

[ルベーグ空間]ΩRNをルベーグ可測集合とし,p[1,]とする.このとき,ノルム

up=uLp(Ω):={(Ω|u(x)|pdx)1/p(p[1,))esssupxΩ|u(x)|(p=)

を備えた複素数値ルベーグ可測関数全部の空間をルベーグ空間といいLp(Ω)と表す.

ルベーグ空間(Lᵖ空間)|ルベーグ積分に関するノルム・内積
測度空間Xに対して,Xでp乗可積分な関数の(商)空間をLᵖ(X)と表します.この記事ではLᵖ(X)の正確な定義を説明し,LᵖノルムによってLᵖ(X)がノルム空間・内積空間となることを解説します.
本質的有界な関数のルベーグ空間L^∞|ノルム空間として定義
(適切な同一視のもとで)本質的有界な可測関数全部の集合L^∞はバナッハ空間(完備なノルム空間)となります.この空間L^∞を「ルベーグ空間」と言います.

Lp空間の双対性

Lp双対性]ΩRNをルベーグ可測集合とし,p[1,)とする.このとき,任意のvLp(Ω)に対して,

vp=supup=1|Ωu(x)v(x)dx|

が成り立つ.ただし,p(1,]pのヘルダー共役である:1p+1p=1

ヘルダーの不等式より,任意のvLp(Ω)に対して,

supup=1|Ωu(x)v(x)dx|supup=1upvp=vp

だから,あとは逆向きの不等式を示せばよい.

p=1の場合の証明

p=1のときはp=なので,v<である.任意にϵ>0をとる.mをルベーグ測度とする.

本質的有界性の定義より,あるルベーグ可測集合ΩϵΩ0<|Ωϵ|<を満たすものが存在して

xΩϵ|v(x)|>vϵ

が成り立つ.このとき,w:ΩC

w(x):=v(x)m(Ωϵ)|v(x)|IΩϵ(x)

で定めると

wp=Ω|w(x)|dx=1m(Ωϵ)Ωϵdx=1

だから

supup=1|Ωu(x)v(x)dx||Ωw(x)v(x)dx|=|1m(Ωϵ)Ωϵv(x)v(x)|v(x)|dx|=1m(Ωϵ)Ωϵ|v(x)|dx>1m(Ωϵ)Ωϵ(vϵ)dx=vϵ

となって,ϵの任意性からsupup=1|Ωu(x)v(x)dx|vが従う.

p(1,)のとき,p(1,)である.

θx:=argv(x)とし,w:ΩCw(x):=|v(x)|p1vpp/peiθxで定める.このとき,

wp=(Ω|w(x)|pdx)1/p=1vpp/p(Ω|v(x)|p(p1)dx)1/p=1vpp/p(Ω|v(x)|pdx)1/p=1

だから

supup=1|Ωu(x)v(x)dx||Ωw(x)v(x)dx|=|1vpp/pΩ|v(x)|p1eiθx|v(x)|eiθxdx|=1vpp/pΩ|v(x)|pdx=vpppp=vp

が従う.





LpLq空間の双対性

次に,LpLq空間の双対性を説明します.

LpLq空間

まずはLpLq空間を定義します.

[LpLq空間] i=1,2に対して,ΩiRNiを開集合とし,p,q[1,]とする.このとき,ノルム

uLpLq=up,q:={Ω1(Ω2|u(x1,x2)|qdx2)p/qdx1}1/q

が有限なLebesgue可測な関数全部の空間をLpLq(Ω1×Ω2)Lp(Ω1;Lq(Ω2))などと表す.

このLpLq空間は,例えば時間発展する非線形偏微分方程式で

  • 空間Rnに関してLp
  • 時間Rに関してLq

である場合などに用います.

シュレディンガー方程式の分散性|基本解のLpLq評価の導出
シュレディンガー方程式の基本解に関してLpLq評価という基本的な不等式があります.LpLq評価はシュレディンガー方程式を考える上で重要なストリッカーツ評価のベースとなります.

LpLq空間の双対性

Lp空間の双対性と同様に,LpLq空間について以下が成り立つ.

[LpLq空間の双対性] i=1,2に対して,ΩiRNiを開集合とし,pi[1,)とする.このとき,任意のvLp1(Ω1;Lp2(Ω2))に対して,

vp1,p2=supup1,p2=1|Ω1Ω2u(x1,x2)v(x1,x2)dx2dx1|

が成り立つ.ただし,pi(1,]piのHölder共役である(i=1,2).


x:=(x1,x2)とする.Hölderの不等式より,任意のvLp1(Ω1;Lp2(Ω2))に対して,

supup1,p2=1|Ω1(Ω2u(x)v(x)dx2)dx1|supup1,p2=1Ω1|Ω2u(x)v(x)dx2|dx1supup1,p2=1Ω1u(x1,)p1v(x1,)p1dx1supup1,p2=1up1,p2vp1,p2=vp1,p2

だから,あとは

supup1,p2=1|Ω1(Ω2u(x)v(x)dx2)dx1|vp1,p2

を示せば[LpLq空間の双対性]が従う.これを

  • p1=p2=1のとき
  • p1=1, p2(1,)のとき
  • p1,p2(1,)のとき

に分けて証明する.

[1] p1=p2=1のとき,p1=p2=である.

任意のϵ>0, i{1,2}に対して,ある可測集合ΩiΩ0<|Ωi|<を満たすものが存在して,xΩ1×Ω2が成り立つなら

|v(x)|>v(x1,)L(Ω2)ϵ>vp1,p22ϵ

が成り立つ.このとき,w:Ω1×Ω2C

w(x):=v(x)|Ω1||Ω2|v(x)IΩ1×Ω2(x)

で定めると

wp1,p2=Ω1(Ω2|w(x)|dx2)dx1=1|Ω1||Ω2|Ω1(Ω2dx2)dx1=1

だから

supup1,p2=1|Ω1(Ω2u(x)v(x)dx2)dx1||Ω1(Ω2w(x)v(x)dx2)dx1|=|1|Ω1||Ω2|Ω1(Ω2v(x)v(x)v(x)dx2)dx1|=1|Ω1||Ω2|Ω1(Ω2|v(x)|dx2)dx1>1|Ω1||Ω2|Ω1(Ω2(vp1,p22ϵ)dx2)dx1=vp1,p22ϵ

となって,ϵの任意性からsupup1,p2=1|Ω1(Ω2u(x)v(x)dx2)dx1|vp1,p2が従う.

[2] p1=1,p2(1,)のとき,p1=,p2(1,)である.

任意のϵ>0に対して,ある可測集合Ω1Ω10<|Ω1|<を満たすものが存在して,xΩ1×Ω2が成り立つとき,

v(x1,)Lp2(Ω2)>v1,p2ϵ

が成り立つ.このとき,θx:=argv(x)とし,w:Ω1×Ω2C

w(x):=|v(x)|p21|Ω1|v(x1,)Lp2(Ω2)p2/p2eiθxIΩ1×Ω2(x)

で定めると

wp1,p2=Ω1(Ω2|w(x)|p2dx2)1/p2dx1=1|Ω1|Ω11v(x1,)Lp2(Ω2)p2/p2(Ω2|v(x)|p2(p21)dx2)1/p2dx1=1|Ω1|Ω11v(x1,)Lp2(Ω2)p2/p2(Ω2|v(x)|p2dx2)1/p2dx1=1|Ω1|Ω1dx1=1

だから

supup1,p2=1|Ω1(Ω2u(x)v(x)dx2)dx1||Ω1(Ω2w(x)v(x)dx2)dx1|=|1|Ω1|Ω1(1v(x1,)Lp2(Ω2)p2/p2Ω2|v(x)|p21eiθxv(x)dx2)dx1|=1|Ω1|Ω1(1v(x1,)Lp2(Ω2)p2/p2Ω2|v(x)|p2dx2)dx1=1|Ω1|Ω1v(x1,)Lp2(Ω2)p2p2p2dx1=1|Ω1|Ω1v(x1,)Lp2(Ω2)dx1>1|Ω1|Ω1(vp1,p2ϵ)dx1=vp1,p2ϵ

となって,ϵの任意性からsupup1,p2=1|Ω1(Ω2u(x)v(x)dx2)dx1|vp1,p2が従う.

[3] p1,p2(1,)のとき,p1,p2(1,)である.

θx:=argv(x)とし,w:Ω1×Ω2C

w(x):=|v(x)|p21vp1,p2p1/p1v(x1,)Lp2(Ω2)1p1+p2/p2eiθx

で定めると

(Ω1|Ω2|w(x)|p2dx2|p1/p2dx1)1/p2=1vp1,p2p1/p1(Ω11v(x1,)Lp2(Ω2)p1(1p1+p2/p2)(Ω2|v(x)|p2(p21)dx2)p1/p2dx1)1/p1=1vp1,p2p1/p1(Ω11v(x1,)Lp2(Ω2)p1(1p1+p2/p2)(Ω2|v(x)|p2dx2)p1/p2dx1)1/p1=1vp1,p2p1/p1(Ω1v(x1,)Lp2(Ω2)p1(p11)dx1)1/p1=1vp1,p2p1/p1(Ω1v(x1,)Lp2(Ω2)p1dx1)1/p1=1

である.すなわちwp1,p2=1だから

supup1,p2=1|Ω1(Ω2u(x)v(x)dx2)dx1||Ω1(Ω2w(x)v(x)dx2)dx1|=|1vp1,p2p1/p1Ω1(1v(x1,)Lp2(Ω2)1p1+p2/p2Ω2|v(x)|p21eiθxv(x)dx2)dx1|=1vp1,p2p1/p1Ω1(1v(x1,)Lp2(Ω2)1p1+p2/p2Ω2|v(x)|p2dx2)dx1=1vp1,p2p1/p1Ω1(1v(x1,)Lp2(Ω2)1p1+p2/p2v(x1,)Lp2(Ω2)p2)dx1=1vp1,p2p1/p1Ω1v(x1,)Lp2(Ω2)p11+p2(11/p2)dx1=1vp1,p2p1/p1Ω1v(x1,)Lp2(Ω2)p1dx1=1vp1,p2p1/p1vp1,p2p1=vp1,p2p1(11/p1)=vp1,p2

が従う.

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