$p\in[1,\infty)$のとき
- Lebesgue空間$L^{p}(\R^N)$の共役空間$L^{p}(\R^N)^{*}$
- Lebesgue空間$L^{p’}(\R^N)$
が同型であることはよく知られています(すなわち,$p’$は$p$のHölder共役).
この同型$(L^{p})^{*}\cong L^{p’}$について,次の$L^p$双対性が成り立ちます:任意の$v\in L^{p’}(\Omega)$に対して
また,同様に$L^pL^q$空間でも双対性の等式が成り立ちます.
これらの双対性を用いる論法を双対性議論 (duality argument)などといいます.
この記事では,これら$L^p$双対性,$L^pL^q$双対性に関する等式を証明します.
準備
ここでは本題に入る前に
- 定義関数
- Hölder共役
の定義を確認しておきます.
定義関数
定義関数を以下で定義します.
[定義関数] 集合$A$とその部分集合$B$に対して
で定まる写像$f:A\to\R$を$B$上の定義関数であるという.
この記事では$\Omega\subset\R^N$に対して,$\Omega$上の定義関数$\R^N\to\R$を$I_{\Omega}$と表します:
Hölder共役
Hölder共役を定義します.
[Hölder共役] $p\in[1,\infty]$に対して
で定まる$p’\in[1,\infty]$を$p$のHölder共役という.ただし,$p=1$のときは$p’=\infty$とみなし,$p=\infty$のときは$p’=1$とみなす.
例えば,
- $p=2$のHölder共役$p’$は$p’=2$
- $p=3$のHölder共役$p’$は$p’=3/2$
- $p=5/2$のHölder共役$p’$は$p’=5/3$
ですね.
$L^p$空間の双対性議論
まず$L^p$空間の双対性を説明します.
$L^p$空間
まずは$L^{p}$空間の定義を確認します.
[$L^p$空間] $\Omega\subset\R^N$を開集合とし,$p\in[1,\infty]$とする.このとき,ノルム
を備えたLebesgue(ルベーグ)可測な関数全部の空間を$L^p(\Omega)$と表す.
$L^p(\Omega)$は「ノルム$\|\cdot\|_p$を備えた$p$乗Lebesgue可積分な関数全部の空間」ということもできますね.
$L^p$空間の双対性
冒頭で述べたように,$L^p$空間の双対性について以下が成り立つ.
[$L^{p}$空間の双対性] $\Omega\subset\R^N$を開集合とし,$p\in[1,\infty)$とする.このとき,任意の$v\in L^{p’}(\Omega)$に対して,
が成り立つ.ただし,$p’\in(1,\infty]$は$p$のHölder共役である.
Hölderの不等式より,任意の$v\in L^{p’}(\Omega)$に対して,
だから,あとは
を示せば[$L^{p}$空間の双対性]が従う.これを
- $p=1$のとき
- $p\in(1,\infty)$のとき
に分けて示す.
[1] $p=1$のとき,$p’=\infty$である.
任意の$\epsilon>0$に対して,ある可測集合$\Omega’\subset\Omega$で$0<|\Omega’|<\infty$を満たすものが存在して
が成り立つ.このとき,$w:\Omega\to\C$を
で定めると
だから
となって,$\epsilon$の任意性から$\sup\limits_{\|u\|_{p}=1}\abs{\dint_{\Omega}u(x)v(x)\,dx}\ge\|v\|_{\infty}$が従う.
[2] $p\in(1,\infty)$のとき,$p’\in(1,\infty)$である.
$\theta_{x}:=\arg v(x)$とし,$w:\Omega\to\C$を$w(x):=\dfrac{|v(x)|^{p’-1}}{\|v\|_{p’}^{p’/p}}e^{-i\theta_{x}}$で定める.このとき,
だから
が従う.
$L^pL^q$空間の双対性
次に,$L^pL^q$空間の双対性を説明します.
$L^pL^q$空間
まずは$L^{p}L^{q}$空間を定義します.
[$L^pL^q$空間] $i=1,2$に対して,$\Omega_i\subset\R^{N_i}$を開集合とし,$p,q\in[1,\infty]$とする.このとき,ノルム
が有限なLebesgue可測な関数全部の空間を$L^{p}L^{q}(\Omega_1\times\Omega_2)$や$L^p(\Omega_1;L^q(\Omega_2))$などと表す.
この$L^{p}L^{q}$空間は,例えば時間発展する非線形偏微分方程式で
- 空間$\R^n$に関して$L^{p}$
- 時間$\R$に関して$L^{q}$
である場合などに用います.
$L^pL^q$空間の双対性
$L^p$空間の双対性と同様に,$L^{p}L^{q}$空間について以下が成り立つ.
[$L^{p}L^{q}$空間の双対性] $i=1,2$に対して,$\Omega_i\subset\R^{N_i}$を開集合とし,$p_i\in[1,\infty)$とする.このとき,任意の$v\in L^{p’_1}(\Omega_1;L^{p’_2}(\Omega_2))$に対して,
が成り立つ.ただし,$p’_i\in(1,\infty]$は$p_i$のHölder共役である($i=1,2$).
$x:=(x_1,x_2)$とする.Hölderの不等式より,任意の$v\in L^{p’_1}(\Omega_1;L^{p’_2}(\Omega_2))$に対して,
だから,あとは
を示せば[$L^{p}L^{q}$空間の双対性]が従う.これを
- $p_1=p_2=1$のとき
- $p_1=1$, $p_2\in(1,\infty)$のとき
- $p_1,p_2\in(1,\infty)$のとき
に分けて証明する.
[1] $p_1=p_2=1$のとき,$p’_1=p’_2=\infty$である.
任意の$\epsilon>0$, $i\in\{1,2\}$に対して,ある可測集合$\Omega’_i\subset\Omega$で$0<|\Omega’_i|<\infty$を満たすものが存在して,$x\in\Omega’_1\times\Omega_2$が成り立つなら
が成り立つ.このとき,$w:\Omega_1\times\Omega_2\to\C$を
で定めると
だから
となって,$\epsilon$の任意性から$\sup\limits_{\|u\|_{p_1,p_2}=1}\abs{\dint_{\Omega_1}\bra{\int_{\Omega_2}u(x)v(x)\,dx_2}\,dx_1}\ge\|v\|_{p’_1,p’_2}$が従う.
[2] $p_1=1,p_2\in(1,\infty)$のとき,$p’_1=\infty,p’_2\in(1,\infty)$である.
任意の$\epsilon>0$に対して,ある可測集合$\Omega’_1\subset\Omega_1$で$0<|\Omega’_1|<\infty$を満たすものが存在して,$x\in\Omega’_1\times\Omega_2$が成り立つとき,
が成り立つ.このとき,$\theta_{x}:=\arg v(x)$とし,$w:\Omega_1\times\Omega_2\to\C$を
で定めると
だから
となって,$\epsilon$の任意性から$\sup\limits_{\|u\|_{p_1,p_2}=1}\abs{\dint_{\Omega_1}\bra{\int_{\Omega_2}u(x)v(x)\,dx_2}\,dx_1}\ge\|v\|_{p’_1,p’_2}$が従う.
[3] $p_1,p_2\in(1,\infty)$のとき,$p’_1,p’_2\in(1,\infty)$である.
$\theta_{x}:=\arg v(x)$とし,$w:\Omega_1\times\Omega_2\to\C$を
で定めると
である.すなわち$\|w\|_{p_1,p_2}=1$だから
が従う.
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