H28院試/京都大学/数学・数理解析専攻/基礎科目II

平成28年度/京都大学大学院/理学研究科/数学・数理解析専攻の大学院入試問題の「基礎科目II」の解答の方針と解答です.

ただし,採点基準などは公式に発表されていないため,ここでの解答が必ずしも正解とならない場合もあり得るので注意してください.

なお,過去問は京都大学のホームページから入手できます.

【参考:京都大学数学教室の過去問

問題と解答の方針

問題は7問あり,数学系志願者は問1~問5の5問を,数理解析系志願者は問1〜問7から選択して5問を解答します.試験時間は3時間です.

この記事では問5まで掲載しています.

なお,解答作成には万全を期していますが,論理の飛躍や穴があることは有り得ます.

問1

次の積分が収束するような実数$\alpha$の範囲を求めよ.

\begin{align*} \iint_{D}\frac{dxdy}{\bra{x^2+y^2}^{\alpha}} \end{align*}

ただし.$D=\set{(x,y)\in\R^2}{-\infty<x<\infty,0<y<1}$とする.

解答の方針

まず,重積分を累次積分に直したい.被積分関数が非負であることからTonelliの定理より,

\begin{align*} \iint_{D}\frac{dxdy}{\bra{x^2+y^2}^{\alpha}} =\int_0^1\bra{\int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{\bra{x^2+y^2}^{\alpha}}}\,dy \end{align*}

が成り立つ.

なお,原点近くと,絶対値が十分大きいところでの収束,発散が問題となるため,積分を次のように分ける:

\begin{align*} 2\int_0^1\bra{\int_0^1\frac{dx}{\bra{x^2+y^2}^{\alpha}}}\,dy+2\int_1^{\infty}\bra{\int_0^1\frac{dy}{\bra{x^2+y^2}^{\alpha}}}\,dx. \end{align*}

$\dfrac{1}{t^{k}}$は0を含んだ区間の広義積分では$k<1$のとき積分可能,無限区間の広義積分では$k>1$のとき積分可能であることを用いて,それぞれ検証する.

解答例

$D$上で$\frac{1}{(x^2+y^2)^{\alpha}}>0$だから,Tonelliの定理より

\begin{align*} &\iint_{D}\frac{dxdy}{(x^2+y^2)^{\alpha}} \\=&\iint_{D\cap\{|x|\le1\}}\frac{dxdy}{(x^2+y^2)^{\alpha}} +\iint_{D\cap\{|x|>1\}}\frac{dxdy}{(x^2+y^2)^{\alpha}} \\=&2\int_{0}^{1}\bra{\int_{0}^{1}\frac{1}{(x^2+y^2)^{\alpha}}\,dx}\,dy +2\int_{1}^{\infty}\bra{\int_{0}^{1}\frac{1}{(x^2+y^2)^{\alpha}}\,dy}\,dx \end{align*}

である.よって,

\begin{align*} &I:=\int_{0}^{1}\bra{\int_{0}^{1}\frac{1}{(x^2+y^2)^{\alpha}}\,dx}\,dy, \\&J:=\int_{1}^{\infty}\bra{\int_{0}^{1}\frac{1}{(x^2+y^2)^{\alpha}}\,dy}\,dx \end{align*}

がともに収束するような実数$\alpha$の範囲を求めればよい.

[1] $I$について

\begin{align*} &\set{(x,y)\in\R^2}{x^2+y^2<1,x>0,y>0} \\\subset&\set{(x,y)\in\R^2}{0\le x\le1,0<y<1} \end{align*}

だから,極座標変換により

\begin{align*} I>\int_{0}^{1}\bra{\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\frac{r}{r^{2\alpha}}\,d\theta}\,dr =\frac{\pi}{2}\int_{0}^{1}\frac{1}{r^{2\alpha-1}}\,dr \end{align*}

である.よって,$I$が収束するためには$\alpha<1$であることが必要である.

逆に$\alpha<1$のとき,

\begin{align*} &\set{(x,y)\in\R^2}{x^2+y^2<2,x\ge0,y>0} \\\supset&\set{(x,y)\in\R^2}{0\le x\le1,0<y<1} \end{align*}

だから,

\begin{align*} I<&\int_{0}^{\sqrt{2}}\bra{\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\frac{r}{r^{2\alpha}}\,d\theta}\,dr \\=&\frac{\pi}{2}\int_{0}^{\sqrt{2}}\frac{1}{r^{2\alpha-1}}\,dr =\frac{\pi}{(1-\alpha)2^{\alpha}}<\infty \end{align*}

である.よって,$I$は収束する.

これより,$I$が収束するための必要十分条件が$\alpha<1$であることが分かる.

[2] $J$について

各$y\in(0,1)$に対し,$\dint_{0}^{1}\frac{1}{\bra{x^2+y^2}^{\alpha}}\,dx$が収束する$\alpha$の範囲は$\dint_{0}^{1}\frac{1}{x^{2\alpha}}\,dx$が収束する$\alpha$の範囲に一致するから,$2\alpha>1\iff\alpha>\frac{1}{2}$であることが必要である.

逆に$\alpha>\frac{1}{2}$のとき,

\begin{align*} J\le&\int_{1}^{\infty}\bra{\int_{0}^{1}\sup_{y\in(0,1)}\frac{1}{\bra{x^2+y^2}^{\alpha}}\,dy}\,dx \\=&\int_{1}^{\infty}\frac{1}{x^{2\alpha}}\,dx =\frac{1}{2\alpha-1} <\infty \end{align*}

である.よって,$J$は収束する.

これより,$J$が収束するための必要十分条件が$\frac{1}{2}<\alpha$であることが分かる.

以上より,求める$\alpha$の範囲は$\frac{1}{2}<\alpha<1$である.

問2

$A$と$B$を複素3次正方行列とする.$A$の最小多項式は$x^3-1$, $B$の最小多項式は$(x-1)^3$とする.このとき,

\begin{align*} AB\neq BA \end{align*}

となることを示せ.

解答の方針

否定の証明なので,背理法を用いる.すなわち,$AB=BA$と仮定して矛盾を導く.

$A$の固有多項式が$x^3-1$であることから,$A$の固有値は1, $\omega$, $\omega^2$である.ただし,$\omega$は1の原始3乗根である.

ここで,$A$の固有値1, $\omega$, $\omega^2$に属する固有ベクトルをそれぞれ$x_1$, $x_2$, $x_3$とする.異なる固有値に属する固有ベクトルだから,$x_1$, $x_2$, $x_3$は線形独立である.

背理法の仮定より,$x_1$, $x_2$, $x_3$は$B$の固有ベクトルであることが分かる.いま,$x_1$, $x_2$, $x_3$は線形独立だから,$B$は対角化可能である.

一方,$B$の固有多項式が$(x-1)^3$であることから,$B$のJordan標準系は$J_3(1)$である.よって,$B$は対角化可能でない.これは矛盾である.

解答例

$\omega$は1の原始三乗根とすると,$A$の最小多項式が3次式$x^3-1$であることから,$A$の固有値は$x^3-1$の根$1$, $\omega$, $\omega^2$である.

$A$は3次行列だから固有値の重複度は全て1なので,固有値の固有空間の次元は全て1である.

$A$の固有値$1$, $\omega$, $\omega^2$に属する固有ベクトルをそれぞれ$\m{a}_1$, $\m{a}_2$, $\m{a}_3$とすると,$\m{a}_1$, $\m{a}_2$, $\m{a}_3$は線型独立である.

ここで,$AB=BA$が成り立つと仮定する.

$B$の最小多項式が$(x-1)^3$であることから,$B$のJordan標準形は$J_{3}(1)$と分かるので,$B$は正則である.

固有値の定義から$\m{a}_i\neq0$ $(i=1,2,3)$だから,$B$の正則性と併せて$B\m{a}_i\neq0$であり,

\begin{align*} &AB\m{a}_1=BA\m{a}_1=B\m{a}_1, \\&AB\m{a}_2=BA\m{a}_2=\omega B\m{a}_2, \\&AB\m{a}_3=BA\m{a}_3=\omega^2B\m{a}_3 \end{align*}

だから,$B\m{a}_1$, $B\m{a}_2$, $B\m{a}_3$はそれぞれ$A$の固有値$1$, $\omega$, $\omega^2$に属する固有ベクトルである.

$A$の固有空間の次元は全て1だったから,任意の$i\in\{1,2,3\}$に対して,ある$k_i\in\C\setminus\{0\}$が存在して$B\m{a}_i=k_i\m{a}_i$をみたす.

よって,$\m{a}_i$はいずれも$B$の固有値である.

一方,$B$は対角化可能でない3次行列だから,固有空間の$\m{a}_1$, $\m{a}_2$, $\m{a}_3$が線形独立であることに矛盾する.

よって,仮定は誤りで$AB\neq BA$が従う.

問3

複素関数$f(z)$は$z=0$の近傍で正則な関数で$f(z)e^{f(z)}=z$をみたすとする.以下の問に答えよ.

(i) 非負整数$n$と十分小さい正数$\epsilon$に対して次の式が成り立つことを示せ.

\begin{align*} \frac{f^{(n)}(0)}{n!}=\frac{1}{2\pi i}\int_{C_{\epsilon}}\frac{1+u}{e^{nu}u^{n}}\,du. \end{align*}

ここで積分路$C_{\epsilon}$は円周$C_{\epsilon}=\set{u\in\C}{|u|=\varepsilon}$を正の向きに一周するものとする.

(ii) $f(z)$の$z=0$におけるベキ級数展開を求め,その収束半径を求めよ.

解答の方針

(i) $f(z)e^{f(z)}=z$の両辺を$z$で微分すると,$f'(z)e^{f(z)}\left(1+f(z)\right)=1$である.$u=f(z)$とおけば,十分小さい$\delta$が存在して$f(C_{\delta})$が原点の周りを正方向に1周する.

$f$は$z=0$で正則だから,$z=0$においてベキ級数展開ができる:

\begin{align*} &f(z)=\sum_{n=0}^{\infty}a_nz^n, \\&a_n=\frac{1}{2\pi i}\int_{C_{\delta}}\frac{f(z)}{\xi^{n+1}}\,dz. \end{align*}

これから,

\begin{align*} \int_{C_{\epsilon}}\frac{1+u}{e^{nu}u^{n}}\,du =\int_{C_{\delta}}\frac{f(z)}{\xi^{n+1}}\,dz \end{align*}

を示せば良いことが分かる.

(ii) (i)と留数定理を用いて,ベキ級数展開を求める.収束半径は$\abs{\frac{a_{n+1}}{a_n}}$を計算して,逆数をとれば良い.

解答例

$f$は$z=0$の近傍$D$で正則であるとする.

$f(z)e^{f(z)}=z$より$f(0)e^{f(0)}=0$だから$f(0)=0$である.

また,$D$で$f(z)e^{f(z)}=z$の両辺を$z$で微分すると,$f'(z)e^{f(z)}+f'(z)f(z)e^{f(z)}=1$となって$f'(0)=1$を得る.よって,$z=0$は$f$の1位の零点である.

したがって,$\delta>0$が存在して,

  • $f(C_\delta)\subset D$
  • $C_\delta$上を正の向きに1周するとき$f(C_\delta)$は$z=0$の周囲を正の向きに1周する.

を満たす.

$f$が$D$で正則であることと$f(C_\delta)\subset D$から,$f$を$z=0$でベキ級数展開して,

\begin{align*} f(z)=\sum_{n=0}^{\infty}a_nz^n,\quad a_n=\frac{1}{2\pi i}\dint_{C_\delta}\frac{f(\xi)}{\xi^{n+1}}\,d\xi \end{align*}

となる.よって,

\begin{align*} \frac{f^{(n)}(0)}{n!} =\frac{n!a_n}{n!} =\frac{1}{2\pi i}\int_{C_\delta}\frac{f(\xi)}{\xi^{n+1}}\,d\xi \end{align*}

である.

$u=f(\xi)$と変数変換すれば,$f(\xi)e^{f(\xi)}=\xi$より$ue^u=\xi$である.

$C_\delta$上を正の向きに1周するとき$f(C_\delta)$は$z=0$の周囲を正の向きに1周することと併せると,$C_{\varepsilon}\subset D$なる$\varepsilon>0$が存在して,

\begin{align*} \int_{C_\delta}\frac{f(\xi)}{\xi^{n+1}}\,d\xi =&\int_{C_\delta}\frac{e^{-f(\xi)}}{(f(\xi)e^{f(\xi)})^{n}}\,d\xi \\=&\int_{f(C_\delta)}\frac{e^{-u}}{(ue^u)^{n}}(e^u+ue^u)\,d\xi \\=&\int_{C_\varepsilon}\frac{1+u}{e^{nu}u^{n}}\,du \end{align*}

が従う.

(ii) $f(0)=0$, $f'(0)=1$は(i)でみた.$n\ge2$に対し,$g_{n}(u):=\frac{1+u}{e^{nu}u^{n}}$とおく.

$C_\varepsilon$の周および$u=0$を除く$C_\varepsilon$の内部で$g_{n}$が正則であるように$\varepsilon>0$をとる.

$g_n$は$u=0$を$n$位の極とするから,留数定理より,

\begin{align*} &\frac{(n-1)!}{2\pi i}\int_{C_\varepsilon}g_{n}(u)\,du \\=&(n-1)!\mrm{Res}(g_n,0) =\lim_{u\to0}\frac{d^{n-1}}{du^{n-1}}u^ng_n(u) =\lim_{u\to0}\frac{d^{n-1}}{du^{n-1}}(1+u)e^{-nu} \\=&\lim_{u\to0}\sum_{k=0}^{n-1}\pmat{n-1\\k}\frac{d^{k}}{du^{k}}(1+u)\cdot\frac{d^{n-k-1}}{du^{n-k-1}}e^{-nu} \\=&\lim_{u\to0}\brb{\pmat{n-1\\1}\frac{d}{du}(1+u)\cdot\frac{d^{n-2}}{du^{n-2}}e^{-nu} +\pmat{n-1\\0}(1+u)\cdot\frac{d^{n-1}}{du^{n-1}}e^{-nu}} \\=&\lim_{u\to0}\brb{(n-1)(-n)^{n-2}e^{-nu}+(1+u)(-n)^{n-1}e^{-nu}} \\=&(n-1)(-n)^{n-2}+(-n)^{n-1} =-(-n)^{n-2} \end{align*}

である.これは$n=1$の場合も含む.

したがって,$f$の$z=0$におけるベキ級数展開は

\begin{align*} f(z)=&\sum_{n=1}^{\infty}\frac{-(-n)^{n-2}}{(n-1)!}z^n \\=&\sum_{n=1}^{\infty}\frac{(-n)^{n-1}}{n!}z^n \end{align*}

である.最後に,収束半径は

\begin{align*} \lim_{n\to\infty}\abs{\frac{\frac{(-n-1)^{n}}{(n+1)!}}{\frac{(-n)^{n-1}}{n!}}} =&\lim_{n\to\infty}\frac{\frac{(n+1)^{n}}{(n+1)!}}{\frac{n^{n-1}}{n!}} \\=&\lim_{n\to\infty}\frac{(n+1)^{n}}{(n+1)!}\cdot\frac{n!}{n^{n-1}} \\=&\lim_{n\to\infty}\bra{1+\frac{1}{n}}^{n-1} \\=&\lim_{n\to\infty}\bra{1+\frac{1}{n}}^{n}\bra{1+\frac{1}{n}}^{-1} \\=&e\cdot1 =e\quad \end{align*}

の逆数の$e^{-1}$である.

問4

正則な複素2次正方行列のなす群を$GL_2(\C)$とおく.行列

\begin{align*} A=\pmat{0&-1\\1&1},\quad B=\pmat{0&1\\1&0} \end{align*}

で生成される$GL_2(\C)$の部分群$G$について,以下の問に答えよ.

(i) 群$G$の位数を求めよ.

(ii) 群$G$の中心の位数を求めよ.

(iii) 群$G$に含まれる位数2の元の個数を求めよ.

解答の方針

(i) $G$は2面体群と同型であるが,そのことを示すよりも実際に書き出す方が速い.

\begin{align*} \pm A,\pm A^2,\pm A^3=\mp I,\pm BA,\pm BA^2,\pm BA^3=\mp B \end{align*}

の他にないことを示し,これらが異なることを示せばよい.

(ii) $i=1,2$に対して

\begin{align*} A^iB\neq BA^i,\quad B^2A^i\neq BA^iB \end{align*}

である.よって,$A^i$, $BA^i$, $B$は中心に属さない.残る$\pm A^3=\mp I$は中心に属する.

(iii) 2乗してもとに戻る元の個数を求めれば良い.

解答例

(i) 計算により,

\begin{align*} A^2=\bmat{-1&-1\\1&0},\quad A^3=-I,\quad B^2=I \end{align*}

である.

「任意の行列に$B$を左からかけることで行が逆転し,右からかけることで列が逆転する」$\dots(*)$ことに注意すると,$BA^2=-AB$が成り立つことが分かる.

よって,$G$の元は,$AB$の部分を$-BA^2$に置き換えて,$A^3=-I$, $B^2=I$を用いることで,$\pm BA^n$, $\pm A^n$ $(n=1,2,3)$に限ることが分かる.

これらの中に同じものがないことは,$\pm A$, $\pm A^2$, $\pm I$が等しくなく,かつ行を逆転させた$\pm BA$, $\pm BA^2$, $\pm B$とも異なることが実際の行列を見ることで分かる.

以上より,

\begin{align*} G=\{\pm I,\pm A,\pm A^2,\pm B,\pm BA,\pm BA^2\} \end{align*}

で,$|G|=12$を得る.

(ii) $(*)$に注意すると,$i=\{1,2\}$に対して

\begin{align*} A^{i}B\neq BA^{i},\quad B\cdot BA^{i}=A^{i}\neq BA^{i}B\quad \end{align*}

が分かるから,$A^{i}$, $BA^{i}$, $B$は中心に属さない.よって,$-A^{i}$, $-BA^{i}$, $-B$も中心に属さない.

残る$\pm I$は明らかに中心に属する.

以上より,$G$の中心$Z(G)$の位数は$\abs{Z(G)}=2$である.

(iii) $I$でない元を2乗して$I$になるものの個数を求めれば良い.

  • $(-I)^2=I$
  • $(\pm A)^2=A^2\neq I$
  • $(\pm A^2)^2=A^4\neq I$
  • $(\pm B)^2=I$
  • $(\pm BA)^2=BABA=B(-BA^2)A=-B^2A^3=I$
  • $(\pm BA^2)^2=BA^2BA^2=(-AB)BA^2=-AIA^2=-A^3=I$

だから,$G$に含まれる位数2の元の個数は7である.

問5

3次元微分可能多様体$M=\set{(x,y,z,w)\in\R^4}{xy-z^2=w}$から$\R^3$への写像$f=(f_1,f_2,f_3):M\to\R^3$を

\begin{align*} f(x,y,z,w)=(x+y,z,w) \end{align*}

により定める.以下の問に答えよ.

(i) $f$の臨界点の集合$C$を求めよ.ただし$p\in M$が$f$の臨界点であるとは,$p$の周りの$M$の座標系$(u_1,u_2,u_3)$に関するヤコビ行列

\begin{align*} \bra{\pd{f_i}{u_j}(p)}_{1\le i,j\le 3} \end{align*}

が正則でないことである.

(ii) $C$が$M$の部分多様体になることを証明せよ.

解答の方針

(i) $\phi:M\to\R^3$を第1成分,第2成分,第3成分への直交射影とすると,$\{(M,\phi)\}$は$M$の座標近傍系となる.これを利用してJacobi行列を計算し,臨界点を求める.

(ii) 正則値定理(沈め込み定理)を用いれば良い.

解答例

写像$\phi:M\to\R^3;(x,y,z,w)\mapsto(x,y,z)$を定めると,$\{(M,\phi)\}$は$M$の座標近傍系となり,

\begin{align*} \phi^{-1}:\phi(M)\to M;(u_1,u_2,u_3)\mapsto\bra{u_1,u_2,u_3,u_1u_2-{u_3}^2} \end{align*}

である.以下は全てこの座標近傍系で考える.

(i) $(M,\phi)$上で$f$は

\begin{align*} \bra{f\circ\phi^{-1}}(u_1,u_2,u_3)=\bra{u_1+u_2,u_3,u_1u_2-{u_3}^2} \end{align*}

となるから,点$\phi^{-1}(u_1,u_2,u_3)\in M$での$f$のJacobi行列$Jf_{(u_1,u_2,u_3)}$は

\begin{align*} |Jf_{(u_1,u_2,u_3)}| =&\vmat{\pd{}{u_{1}}(u_1+u_2)&\pd{}{u_{2}}(u_1+u_2)&\pd{}{u_{3}}(u_1+u_2)\\ \pd{}{u_{1}}u_{3}&\pd{}{u_{2}}u_{3}&\pd{}{u_{3}}u_{3}\\ \pd{}{u_{1}}(u_1u_2-{u_3}^2)&\pd{}{u_{2}}(u_1u_2-{u_3}^2)&\pd{}{u_{3}}(u_1u_2-{u_3}^2)} \\=&\vmat{1&1&0\\0&0&1\\u_2&u_1&-2u_3} =u_2-u_1 \end{align*}

だから,点$\phi^{-1}(u_1,u_2,u_3)\in M$が$f$の臨界点であるためには

\begin{align*} |Jf_{\phi^{-1}(u_1,u_2,u_3)}|=0 \iff u_1=u_2 \end{align*}

あることが必要十分である.よって,

\begin{align*} C=&\set{\phi^{-1}(u_{1},u_{2},u_{3})\in M}{u_{1}=u_{2}} \\=&\set{(x,y,z,w)\in M}{x=y} \end{align*}

である.

(ii) 写像$g:M\to\R:(x,y,z,w)\mapsto y-x$を定めると,

\begin{align*} \bra{g\circ\phi^{-1}}(u_1,u_2,u_3) =u_2-u_1 \end{align*}

である.よって,点$\phi^{-1}(u_1,u_2,u_3)\in M$での$g$のJacobi行列$Jg_{(u_1,u_2,u_3)}$は

\begin{align*} Jg_{(u_1,u_2,u_3)} =\brc{\pd{u_2-u_1}{u_{1}},\pd{u_2-u_1}{u_{2}},\pd{u_2-u_1}{u_{3}}} =[-1,1,0] \end{align*}

だから,

\begin{align*} \operatorname{rank}{Jg_{(u_1,u_2,u_3)}}\neq0 \iff\operatorname{rank}{[-1,1,0]}\neq0 \end{align*}

なので,点$\phi^{-1}(u_1,u_2,u_3)\in M$が$f$の正則点である.

これより,任意の$(u_1,u_2,u_3)\in M$で$g$は正則だから,正則値定理より$C=g^{-1}(0)$は$M$の閉部分多様体である.

参考文献

以下の問題集は,実際に私が大学院入試対策で使用したものである.

演習 大学院入試問題

まえがきに「修士の基礎数学の問題の範囲は,ほぼ本書中に網羅されている」と書かれているように,広い分野から問題が豊富に掲載されている.

全2巻で,

  • 1巻 第1編 線形代数
    1巻 第2編 微分・積分学
    1巻 第3編 微分方程式
  • 2巻 第4編 ラプラス変換,フーリエ変換,特殊関数,変分法
    2巻 第5編 複素関数論
    2巻 第6編 確率・統計

が扱われている.

問題の種類としては発想問題よりも,ちゃんと地に足つけた考え方で解ける問題が多い.

計算量が多い問題,基本問題も多く扱われているが,試験では基本問題ほど手早く処理することが求められるので,その意味で試験への対応力が養われるであろう.(私自身,計算力があまり高くないので苦労した.)

目次や詳しい内容は以下の記事を参照してください.

詳解と演習大学院入試問題〈数学〉

上述の姫野氏の問題集とは対照的に,問題数はそこまで多くないが1問1問の解説が丁寧になされている.また,構成が読みやすい.

第1章 数え上げと整数
第2章 線形代数
第3章 微積分
第4章 微分方程式
第5章 複素解析
第6章 ベクトル解析
第7章 ラプラス変換
第8章 フーリエ変換
第9章 確率

典型的な問題でも複数の解法を紹介しているので,私は参考になることも多かった.

個人的に,この本は非常に好感が持てる良書であった.

目次や詳しい内容は以下の記事を参照してください.

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