2025年度|神戸大学 編入試解説|理学部数学科|考え方と解答例

神戸大学|3年次編入試
神戸大学|3年次編入試

2025年度入学の神戸大学 理学部数学科の3年次編入学試験の筆記問題の解答の方針と解答例です.

問題は4問あり,全4問を解答します.試験時間は2時間です.この記事では全4問の解答の方針と解答例を掲載しています.

ただし,公式に採点基準などは発表されていないため,本稿の解答が必ずしも正解になるとは限りません.ご注意ください.

また,十分注意して解答を作成していますが,論理の飛躍・誤りが残っている場合があります.

なお,過去問は神戸大学の数学科編入試験の過去問題のページから入手できます.

第1問(線形代数学)

実数$a$, $b$に対し,正方行列

\begin{align*}A=\pmat{0&1&0\\1&0&a\\0&b&0}\end{align*}

を考える.次の問に答えよ.

  1. $A$が相異なる3つの実固有値をもつための,$a$, $b$についての条件を求めよ.
  2. (1)の条件が成り立つとする.このとき,$A$のそれぞれの固有値と,それに対応する固有ベクトルを1つずつ求めよ.
  3. (1)の条件が成り立つとする.このとき,$P^TAP$が対角行列となるような直交行列$P$が存在するためには,$a$, $b$がどのような条件をみたせばよいか.また,その条件が成り立つとき,そのような直交行列$P$を1つ求めよ.ただし,$P^T$は$P$の転置を表す.

線形代数学の直交行列による対角化に関する問題ですね.

解答の方針とポイント

固有多項式(固有方程式)を用いて固有値が求められること,固有ベクトルは定義から求められることは当たり前にしておきましょう.

一般に実行列$A$が直交行列により対角化可能であるための必要十分条件は$A$が対称行列であることですが,本問題の行列$A$は具体的なのでこの知識がなくても解けるようになっています.

固有多項式と固有値・固有ベクトルの求め方

固有多項式固有方程式は次のように定義されます.

$n$次正方行列$A$に対して,$|xI_n-A|$を$A$の固有多項式(characteristic polynomial)という.また,$|xI_n-A|=0$を$A$の固有方程式(characteristic equation)という.ただし,$I_n$は$n$次単位行列である.

つまり,正方行列$xI-A$の行列式$|xI-A|$を$A$の固有多項式というわけですね.また,固有方程式を解くことで固有値を求めることができることは重要ですね.

$n$次正方行列$A$とスカラー$\lambda$に対して,次は同値である.

  • $\lambda$は$A$の固有値である.
  • $\lambda$は固有方程式$|xI-A|=0$の解である.

つまり,固有方程式$|xI-A|=0$の解は全て$A$の固有値で,他に$A$の固有値はないというわけですね.

さらに,$A$が固有値$\lambda$を持つことが分かれば,固有ベクトルの定義から

\begin{align*}A\m{p}=\lambda\m{p}\end{align*}

を満たす$\m{p}\neq\m{0}$が$A$の固有値$\lambda$に属する固有ベクトルです.よって,整理して$\m{p}$の連立1次方程式$(A-\lambda I)\m{p}=\m{0}$を掃き出し法で解けば良いですね.

直交行列と対称行列の対角化

実正方行列$P$を直交行列(orthogonal matrix)であるとは$P^TP=I_n$が成り立つことと定義することが多く,その必要十分条件としては次の命題がよく知られていますね.

$n$次実正方行列$P$に対して,次は同値である.

  • $P$は直交行列である.
  • $P=[\m{p}_1,\m{p}_2,\dots,\m{p}_n]$とするとき,$\m{p}_1,\m{p}_2,\dots,\m{p}_n$は$\R^n$の正規直交基底をなす.

一般に正方行列$A$が正則行列$P=[\m{p}_1,\m{p}_2,\dots,\m{p}_n]$により対角化されるとき$\m{p}_1,\m{p}_2,\dots,\m{p}_n$は固有ベクトルなのでしたから,本問題(3)は(2)で得られた固有ベクトルが$\R^3$の正規直交基底をなす条件を求めれば良いですね.

解答例

$I$を3次単位行列とする.

(1)の解答

定義より,$A$の固有多項式

\begin{align*}|xI-A|&=\vmat{x&-1&0\\-1&x&-a\\0&-b&x}
\\&=(x^3+(-1)\cdot(-a)\cdot0+0\cdot(-1)\cdot(-b))
\\&\quad-(0\cdot x\cdot0+(-1)\cdot(-1)\cdot x+x\cdot(-a)\cdot(-b))
\\&=x^3-(1+ab)x=x(x^2-(1+ab))\end{align*}

である.よって,固有方程式$|xI-A|=0$は

  • $1+ab<0$なら虚数解$\pm\sqrt{-(1+ab)}i$をもつ
  • $1+ab=0$なら3重解0をもつ
  • $1+ab>0$なら相異なる3つの実数解$0,\pm\sqrt{1+ab}$をもつ

ので求める$a$, $b$の条件は$1+ab>0$である.

(2)の解答

(1)より$A$は固有値$0,\pm\sqrt{1+ab}$をもつ.また,行基本変形より

\begin{align*}&A-0I=\sbmat{0&1&0\\1&0&a\\0&b&0}\to\sbmat{0&1&0\\1&0&a\\0&0&0},
\\&A-\sqrt{1+ab}I=\sbmat{-\sqrt{1+ab}&1&0\\1&-\sqrt{1+ab}&a\\0&b&-\sqrt{1+ab}}
\to\sbmat{-\sqrt{1+ab}&1&0\\-ab&0&a\\b\sqrt{1+ab}&0&-\sqrt{1+ab}}
\to\sbmat{-\sqrt{1+ab}&1&0\\0&0&0\\b&0&-1},
\\&A+\sqrt{1+ab}I=\sbmat{\sqrt{1+ab}&1&0\\1&\sqrt{1+ab}&a\\0&b&\sqrt{1+ab}}
\to\sbmat{\sqrt{1+ab}&1&0\\-ab&0&a\\-b\sqrt{1+ab}&0&\sqrt{1+ab}}
\to\sbmat{\sqrt{1+ab}&1&0\\0&0&0\\-b&0&1}\end{align*}

となるから,$\m{p}\in\R^3$の連立1次方程式

\begin{align*}A\m{p}=0\m{p},\quad
A\m{p}=\sqrt{1+ab}\m{p},\quad
A\m{p}=-\sqrt{1+ab}\m{p}\end{align*}

の解はそれぞれ

\begin{align*}\m{p}=k_1\bmat{-a\\0\\1},\quad
\m{p}=k_2\bmat{1\\\sqrt{1+ab}\\b},\quad
\m{p}=k_3\bmat{1\\-\sqrt{1+ab}\\b}\end{align*}

と解ける(掃き出し法).ただし,$k_1,k_2,k_3\in\R$である.よって,$A$の0,$\sqrt{1+ab}$,$-\sqrt{1+ab}$それぞれに属する固有ベクトルとして

\begin{align*}\bmat{-a\\0\\1},\quad
\bmat{1\\\sqrt{1+ab}\\b},\quad
\bmat{1\\-\sqrt{1+ab}\\b}\end{align*}

がとれる.

(3)の解答

$P^TAP$が対角行列となるような直交行列$P$が存在するとき,直交行列の定義から$P^T=P^{-1}$なので,$A$は$P$により対角化可能である.よって,$P$をなす列ベクトルは$A$の固有ベクトルなので,(2)で求めた異なる固有値に属する固有ベクトルは直交するから

\begin{align*}\bmat{-a\\0\\1}\cdot\bmat{1\\\sqrt{1+ab}\\b}=0\end{align*}

が成り立ち,これを解いて$a=b$を得る.逆に$a=b$のとき,

\begin{align*}\m{p}_1:=\tfrac{1}{\sqrt{1+a^2}}\sbmat{-a\\0\\1},\quad
\m{p}_2:=\tfrac{1}{\sqrt{2+2a^2}}\sbmat{1\\\sqrt{1+a^2}\\a},\quad
\m{p}_3:=\tfrac{1}{\sqrt{2+2a^2}}\sbmat{1\\-\sqrt{1+a^2}\\a}\end{align*}

はそれぞれ$A$の0,$\sqrt{1+a^2}$,$-\sqrt{1+a^2}$に属する固有ベクトルで,$\R^3$の正規直交基底をなす.よって,$P=[\m{p}_1,\m{p}_2,\m{p}_3]$は直交行列で$P^TAP=P^{-1}AP$は対角行列である.

したがって,求める$a$, $b$の条件は$a=b$で,求める$P$として$P=[\m{p}_1,\m{p}_2,\m{p}_3]$がとれる.

補足(対称行列の対角化)

実正方行列の直交行列による対角化については,次の定理がよく知られています.

$n$次実正方行列$A$に対して,次は同値である.

  • $A$は対称行列である.
  • $A$は直交行列により対角化可能である.

直交行列に対応する複素正方行列はユニタリ行列です.また,複素正方行列$A$に対して,$A$がユニタリ行列により対角化可能であることと,$A$が正規行列であることは同値です.

この定理を知っていれば本問題の(3)は$a=b$と即答できますが,知らなくても(2)で得られる固有ベクトルと直交行列の特徴付けから,上の解答例のように$a=b$が得られますね.





第2問(微分積分学)

$a$を実数とする.次のそれぞれの積分について,積分が収束するための$a$の条件とそのときの積分$I$の値を求めよ.

  1. $I=\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}e^{-ax^2}\,dx$
  2. $I=\displaystyle\int_{D}(1-x-y)^a\,dxdy$, $D=\set{(x,y)}{x>0,\ y>0,\ x+y<1}$

微分積分学の広義積分の計算問題ですね.広義積分の定義に従って解きましょう.

解答の方針とポイント

通常のリーマン積分は有界閉集合上の有界関数に対して定義されます.

本問題の(1)は非有界な集合$\R$上の積分,(2)は開集合$D$上の積分なので,どちらも通常のリーマン積分ではありません.問題文の「積分が収束するための」は「広義積分と解釈せよ」という意図ですね.

1次元の広義積分の定義

非有界な区間上での広義積分は有界閉区間でのリーマン積分の極限として定義されますね.

関数$f:[a,\infty)\to\R$を考える.任意の$a\le R$に対して$f$は$[a,R]$上のリーマン積分可能で,この極限

\begin{align*}\lim_{R\to\infty}\int_{a}^{R}f(x)\,dx\end{align*}

が存在するとき,この極限を$f$の$[a,\infty)$上での広義積分といい

\begin{align*}\int_{a}^{\infty}f(x)\,dx\end{align*}

と表す.

$(-\infty,a]$上の広義積分や$\R$上の広義積分も同様に定義されます.本問題の(1)は$\R$上の広義積分なので

\begin{align*}I=\lim_{R\to\infty}\int_{-R}^{R}e^{-ax^2}\,dx\end{align*}

を計算すればよいですね.

より定義に忠実に従えば$I=\lim\limits_{R,S\to\infty}\int_{-R}^{S}e^{-ax^2}\,dx$ですが,被積分関数が正なのでこれは$\int_{-R}^{R}$の場合と同じものになります.

$a\le0$のときは遠方でどの方向にも0に収束しませんから発散することは簡単に分かります.

一方,$a>0$の場合は$e$の冪が$a$倍されているだけで本質的にガウス積分と同じです.実際にガウス積分と変数変換により求めることができます.

非負値関数の広義重積分の定義

リーマン重積分の場合は区間のように左右に区間を伸ばすだけではないので1次元の広義積分ほど単純ではありませんが,有界閉集合の通常のリーマン重積分の極限として定義する点は同じです.

(2次元の場合)有界閉集合でない集合$D\subset\R^2$と,非負値関数$f:D\to\R$を考える.$\bigcup_{n=1}^{\infty}D_n=D$を満たす単調増大する有界閉集合列$\{D_n\}$をとり,任意の$n$に対して$f$は$D_n$上のリーマン重積分可能で,この極限

\begin{align*}\lim_{n\to\infty}\iint_{D_n}f(x)\,dxdy\end{align*}

が存在するとき,この極限を$f$の$D$上での広義積分といい

\begin{align*}\iint_{D}f(x)\,dxdy\end{align*}

と表す.

被積分関数が非負値なら$\bigcup_{n=1}^{\infty}D_n=D$と$D_n\subset D_{n+1}$を満たしていれば,$\{D_n\}$のとり方によらず極限は等しくなります(すなわち,上の定義はwell-definedです).

本問題の(2)は$\R^2$上の開集合上の広義積分なので,例えば

\begin{align*}D_n=\set{(x,y)}{x\ge\frac{1}{n},\ y\ge\frac{1}{n},\ x+y\le1-\frac{1}{n}}\end{align*}

ととって

\begin{align*}I=\lim_{n\to\infty}\iint_{D_n}(1-x-y)^a\,dxdy\end{align*}

を計算すればよいですね.

積分領域Dと積分領域Dₙ
有界閉集合$D_n$は単調増大で集合$D$に近付いていく

解答例

(1)の解答

$a\le0$のとき$e^{-ax^2}\ge e^0=1$なので

\begin{align*}I\ge\lim_{R\to\infty}\int_{-R}^{R}\,dx=\lim_{R\to\infty}2R=\infty\end{align*}

となって$I$は発散する.以下,$a>0$のときを考える.

\begin{align*}I=\lim_{R\to\infty}\int_{-R}^{R}e^{-ax^2}\,dx\end{align*}

である.また,$y=\sqrt{a}x$とおくと,任意の$R>0$に対して

\begin{align*}\int_{-R}^{R}e^{-ax^2}\,dx=\frac{1}{\sqrt{a}}\int_{-\sqrt{a}R}^{\sqrt{a}R}e^{-y^2}\,dy\end{align*}

である.よって,ガウス積分$\int_{-\infty}^{\infty}e^{-y^2}\,dy=\sqrt{\pi}$と併せて

\begin{align*}I&=\lim_{R\to\infty}\frac{1}{\sqrt{a}}\int_{-\sqrt{a}R}^{\sqrt{a}R}e^{-y^2}\,dy
\\&=\frac{1}{\sqrt{a}}\int_{-\infty}^{\infty}e^{-y^2}\,dy
=\sqrt{\frac{\pi}{a}}\end{align*}

を得る.

以上より,$I$が収束するための必要十分条件は$a>0$で,このとき$I=\sqrt{\frac{\pi}{a}}$である.

(2)の解答

有界閉集合の列$\{D_n\}_{n=1}^{\infty}$を

\begin{align*}D_n=\set{(x,y)}{x\ge\frac{1}{n},\ y\ge\frac{1}{n},\ x+y\le1-\frac{1}{n}}\end{align*}

で定めると,$D_n\subset D_{n+1}$($n\in\{1,2,\dots\}$)かつ$D=\bigcup_{n=1}^{\infty}D_n$が成り立つ.

\begin{align*}I_n:=\iint_{D_n}(1-x-y)^a\,dxdy\end{align*}

とおくと,被積分関数は非負値なので$I=\lim\limits_{n\to\infty}I_n$である.$n\ge3$に対して

\begin{align*}I_n=\int_{\frac{1}{n}}^{1-\frac{2}{n}}\bra{\int_{\frac{1}{n}}^{1-\frac{1}{n}-y}(1-x-y)^a\,dx}dy\end{align*}

である.

[1]$a=-1$のとき

\begin{align*}\int_{\frac{1}{n}}^{1-\frac{1}{n}-y}(1-x-y)^{a}\,dx
&=\brc{-\log{|1-x-y|}}_{x=\frac{1}{n}}^{x=1-\frac{1}{n}-y}
\\&=\log{n}+\log\bra{1-\frac{1}{n}-y}
\\&=\log{(n-1-ny)}\end{align*}

なので,

\begin{align*}I_n&=\int_{\frac{1}{n}}^{1-\frac{2}{n}}\log{(n-1-ny)}dy
\\&=-\frac{1}{n}\int_{\frac{1}{n}}^{1-\frac{2}{n}}(n-1-ny)’\log{(n-1-ny)}dy
\\&=-\frac{1}{n}\bra{\brc{(n-1-ny)\log{(n-1-ny)}}_{\frac{1}{n}}^{1-\frac{2}{n}}-\int_{\frac{1}{n}}^{1-\frac{2}{n}}(-n)dy}
\\&=-\frac{1}{n}\bra{-(n-2)\log{(n-2)}+n\bra{1-\frac{3}{n}}}
\\&=\bra{1-\frac{2}{n}}\log{(n-2)}-1+\frac{3}{n}
\xrightarrow[]{n\to\infty}\infty\end{align*}

と発散する.

[2]$a\neq-1$のとき

\begin{align*}&\int_{\frac{1}{n}}^{1-\frac{1}{n}-y}(1-x-y)^a\,dx
\\&=\brc{-\frac{1}{a+1}(1-x-y)^{a+1}}_{x=\frac{1}{n}}^{x=1-\frac{1}{n}-y}
\\&=\frac{1}{a+1}\bra{\bra{1-\frac{1}{n}-y}^{a+1}-\bra{\frac{1}{n}}^{a+1}}\end{align*}

なので,

\begin{align*}I_n=\frac{1}{a+1}\bra{\int_{\frac{1}{n}}^{1-\frac{2}{n}}\bra{1-\frac{1}{n}-y}^{a+1}\,dy-\bra{1-\frac{2}{n}}\bra{\frac{1}{n}}^{a+1}}\end{align*}

である.

(i)$a=-2$のとき

\begin{align*}\int_{\frac{1}{n}}^{1-\frac{2}{n}}\bra{1-\frac{1}{n}-y}^{a+1}\,dy
&=\brc{-\log\bra{1-\frac{1}{n}-y}}_{\frac{1}{n}}^{1-\frac{2}{n}}
\\&=\log\bra{1-\frac{2}{n}}-\log\bra{\frac{1}{n}}=\log{(n-2)}\end{align*}

なので,

\begin{align*}I_n=-\log{(n-2)}+n-2\xrightarrow[]{n\to\infty}\infty\end{align*}

と発散する.

(ii)$a\neq-2$のとき

\begin{align*}\int_{\frac{1}{n}}^{1-\frac{2}{n}}\bra{1-\frac{1}{n}-y}^{a+1}\,dy
&=\brc{-\frac{1}{a+2}\bra{1-\frac{1}{n}-y}^{a+2}}_{\frac{1}{n}}^{1-\frac{2}{n}}
\\&=\frac{1}{a+2}\bra{\bra{1-\frac{2}{n}}^{a+2}-\bra{\frac{1}{n}}^{a+2}}\end{align*}

なので,

\begin{align*}I_n&=\frac{1}{a+1}\bra{\frac{1}{a+2}\bra{\bra{1-\frac{2}{n}}^{a+2}-\bra{\frac{1}{n}}^{a+2}}-\bra{1-\frac{2}{n}}\bra{\frac{1}{n}}^{a+1}}
\\&=\frac{1}{(a+1)(a+2)}\bra{1-\frac{2}{n}}^{a+2}-\frac{1}{a+1}\bra{\frac{1}{n(a+2)}+\bra{1-\frac{2}{n}}}\bra{\frac{1}{n}}^{a+1}\end{align*}

となる.

よって,$I$の収束・発散は$\lim\limits_{n\to\infty}\bra{\frac{1}{n}}^{a+1}$の収束・発散に一致するので,$I$が収束するためには$a>-1$が必要十分である.さらに,このとき

\begin{align*}I=\lim_{n\to\infty}I_n=\frac{1}{(a+1)(a+2)}\end{align*}

である.

以上より,$I$が収束するための必要十分条件は$a>-1$で,このとき$I=\frac{1}{(a+1)(a+2)}$である.

補足(広義積分の変数変換)

本問題の(1)について「わざわざ$\lim\limits_{R\to\infty}\int_{-R}^{R}$に直さなくても,$\int_{-\infty}^{\infty}$のまま変数変換すればいいのでは?」と考えた人もいるかもしれません.

しかし,変数変換は本来リーマン積分で示される公式なので,広義積分にどの程度流用できるかは少々繊細な部分があります.

ただ実際に広義積分に流用できることは多く,本問題の(1)の広義積分もその範囲内ではあるのですが,以上の理由から定義に従って極限に直して考えられるようにしておくのと安全です.





第3問(線形代数学)

4次の正方行列$A$は,重複度2の固有値1と,重複度1の固有値2,重複度1の固有値3をもつとする.またベクトル$(1,0,1,0)^T$は固有値1に対応する固有ベクトル,ベクトル$(1,1,0,1)^T$は固有値2に対応する固有ベクトルであるとする.このとき,次の問に答えよ.ただし,$I$は単位行列,$*^T$は$*$の転置を表す.

  1. $\operatorname{rank}A$を求めよ.
  2. $\dim{\operatorname{Im}(A-2I)}$を求めよ.
  3. $x=(0,-1,1,-1)^T$とする.このとき,正の整数$n$に対して,$A^n x$を求めよ.
  4. $x=(0,-1,1,-1)^T$とする.このとき,$Ay=x$となる$y$を求めよ.

線形代数学の固有値・固有ベクトルに関する問題ですね.

解答の方針とポイント

固有値固有ベクトルの定義がきちんと分かっていれば,それを利用することで解けます.4つの小問からなりますが,誘導になっているわけではなくそれぞれ独立に解けます.

固有値と固有ベクトルの定義

大雑把には,正方行列をかけて平行なベクトル(または零ベクトル)に移るとき,そのベクトルを固有ベクトルといい,そのときの伸び率を固有値といいますね.

$n$次正方行列$A$に対して,$A\m{p}=\lambda\m{p}$を満たすスカラー$\lambda$と$n$次列ベクトル$\m{p}\neq\m{0}$が存在するとき,$\lambda$を$A$の固有値といい,$\m{p}$を$A$の$\lambda$に対応する固有ベクトルという.

本問題では固有値1と固有値2に対応する固有ベクトルが与えられているので

\begin{align*}&A\sbmat{1\\0\\1\\0}=\sbmat{1\\0\\1\\0},\quad
A\sbmat{1\\1\\0\\1}=2\sbmat{1\\1\\0\\1}\end{align*}

が成り立ちますね.これらの固有ベクトルを用いて(3)と(4)の$x$が$x=\sbmat{1\\0\\1\\0}-\sbmat{1\\1\\0\\1}$と表せることに気付けば解けます.

固有値の重複度は固有多項式から定義される

$n$次正方行列$A$に対して,$x$の多項式$|xI-A|$を$A$の固有多項式といい,$x$の方程式$|xI-A|=0$を$A$の固有方程式といいますね.固有値は固有方程式を解くことで求めることができることは重要ですね.

スカラー$\lambda$と正方行列$A$に対して,次は同値である.

  1. $\lambda$は$A$の固有値である.
  2. $\lambda$は$A$の固有方程式の解である.

固有多項式の因数分解の表示から,同時に固有値の重複度も分かります.

$n$次正方行列$A$の固有多項式が

\begin{align*}|xI-A|=(x-\lambda_1)^{n_1}(x-\lambda_2)^{n_2}\dots(x-\lambda_r)^{n_r}\end{align*}

と表せたとする.ただし,$\lambda_1,\lambda_2,\dots,\lambda_r$は相異なるとする.このとき,固有値$\lambda_i$の(代数的)重複度を$n_i$と定める.

正方行列$A$の固有多項式の次数は$A$の次数に等しいので,$A$の固有値の重複度の合計は$A$の次数に等しくなります.

本問題では与えられている$A$の固有値1,2,3の重複度は合計で4ですから,$A$は1,2,3以外の固有値をもたないことに注意しましょう.

核$\operatorname{Ker}{(A-\lambda I)}$の次元

スカラー$\lambda$に対して,行列$A-\lambda I$の$\operatorname{Ker}{(A-\lambda I)}$の定義は

\begin{align*}\operatorname{Ker}{(A-\lambda I)}=\set{\m{p}\in\R^4}{(A-\lambda I)\m{p}=\m{0}}\end{align*}

です.この条件部分の等式は$A\m{p}=\lambda\m{p}$と同値なので,核$\operatorname{Ker}{(A-\lambda I)}$に属する元は

  • $\lambda$が$A$の固有値なら,零ベクトルと固有値$\lambda$に対応する固有ベクトル
  • $\lambda$が$A$の固有値でないなら,零ベクトルのみ

となりますね.

$\lambda$が$A$の固有値のとき,この核$\operatorname{Ker}{(A-\lambda I)}$は$\lambda$の固有空間といいますね.

本問題の(1)と(2)は行列のランクを求める問題ですが

を併せれば,解けますね.

解答例

(1)の解答

$A$の固有値1,2,3の重複度の合計は4で,これは$A$の次数に等しい.よって,$A$は1,2,3以外に固有値をもたないので,0は$A$の固有値ではない.

これより,連立1次方程式$A\m{p}=\m{0}$を満たす4次列ベクトル$\m{p}$は零ベクトルのみなので$\dim\operatorname{Ker}A=0$である.したがって,次元定理と併せて

\begin{align*}\operatorname{rank}A=\dim\operatorname{Ima}{A}=4-\dim\operatorname{Ker}{A}=4\end{align*}

である.

(2)の解答

$A$の固有値2の重複度は1だから,$A\m{p}=2\m{p}$すなわち$(A-2I)\m{p}=\m{0}$を満たす$\m{p}$全部の空間は1次元である.よって,$\dim\operatorname{Ker}{(A-2I)}=1$である.

したがって,次元定理と併せて

\begin{align*}\dim\operatorname{Ima}{(A-2I)}=4-\dim\operatorname{Ker}{(A-2I)}=3\end{align*}

である.

(3)の解答

仮定より

\begin{align*}&A^n\sbmat{1\\0\\1\\0}=A^{n-1}\sbmat{1\\0\\1\\0}=\dots=\sbmat{1\\0\\1\\0},
\\&A^n\sbmat{1\\1\\0\\1}=2A^{n-1}\sbmat{1\\1\\0\\1}=\dots=2^n\sbmat{1\\1\\0\\1}\end{align*}

であり,$x=\sbmat{1\\0\\1\\0}-\sbmat{1\\1\\0\\1}$だから

\begin{align*}A^nx=A^n\sbmat{1\\0\\1\\0}-A^n\sbmat{1\\1\\0\\1}=\sbmat{1-2^n\\-2^n\\1\\-2^n}\end{align*}

である.

(4)の解答

仮定より

\begin{align*}&A\sbmat{1\\0\\1\\0}=\sbmat{1\\0\\1\\0},\quad
A\sbmat{1\\1\\0\\1}=2\sbmat{1\\1\\0\\1}\end{align*}

だから,

\begin{align*}x=\sbmat{1\\0\\1\\0}-\sbmat{1\\1\\0\\1}
=A\sbmat{1\\0\\1\\0}-\frac{1}{2}A\sbmat{1\\1\\0\\1}
=A\sbmat{1/2\\-1/2\\1\\-1/2}\end{align*}

が成り立つ.よって,$y=\sbmat{1/2\\-1/2\\1\\-1/2}$とおくと$Ay=x$が成り立つ.





第4問(微分方程式)

$x>0$とする.未知関数$y(x)$に対する微分方程式

\begin{align*}(*)\qquad y”(x)+y'(x)+b(x)y(x)=0\end{align*}

は$y(x)=\dfrac{1}{x}$を解に持つとする.このとき,次の問に答えよ.

  1. 係数$b(x)$を求めよ.
  2. 方程式$(*)$の解を$y(x)=u(x)\dfrac{1}{x}$とおくとき,$u(x)$の満たす微分方程式を求めよ.
  3. 方程式$(*)$の解$y(x)$で$\lim\limits_{x\to+0}xy(x)=1$かつ$\lim\limits_{x\to\infty}xy(x)=0$となるものを求めよ.

条件を満たす常微分方程式の解を求める問題ですね.

解答の方針とポイント

誘導に従って解き進めれば(2)で1階線形の常微分方程式が得られるので,実際に解くことで条件を満たす$y(x)$が求まります.

微分方程式の解

そもそも微分方程式のとは代入して等式を満たす関数のことです.

本問題では常微分方程式$(*)$の具体的な解$y(x)=\dfrac{1}{x}$が与えられているので,代入することで$b(x)$が具体的に得られ(1)が解けます.

また,本問題の(2)でも$y(x)=u(x)\dfrac{1}{x}$が常微分方程式$(*)$の解なので,代入することで$u(x)$の常微分方程式

\begin{align*}u”(x)+\frac{x-2}{x}u'(x)=0\end{align*}

が得られます.

1階線形常微分方程式の解法

未知関数$v$,変数$x$で$v'(x)+a(x)v(x)=b(x)$の形をした常微分方程式を1階線形といいます.

関数$p$を関数$a$の原始関数の1つとするとき,微分方程式の両辺に$e^{p(x)}$をかけることで

\begin{align*}&e^{p(x)}v'(x)+e^{p(x)}a(x)v(x)=e^{p(x)}b(x)
\\&\iff\bra{e^{p(x)}v(x)}’=e^{p(x)}b(x)
\iff e^{p(x)}v(x)=\int e^{p(x)}b(x)\,dx
\\&\iff v(x)=e^{-p(x)}\int e^{p(x)}b(x)\,dx\end{align*}

と解けます.

(2)で得られる常微分方程式は2階線形ですが,$u(x)$の項がないので$v=u’$と考えると

\begin{align*}v'(x)+\frac{x-2}{x}v(x)=0\end{align*}

となり$v$の1階線形に帰着するので,実際に解くことで$u(x)$の一般解が得られます.

積分因子$e^{p(x)}$をかけて左辺を完全微分形にして解いたということもできますね.

解答例

(1)の解答

常微分方程式$(*)$の解$y(x)=\dfrac{1}{x}$に対して

\begin{align*}y'(x)=-\frac{1}{x^2},\quad
y”(x)=\frac{2}{x^3}\end{align*}

なので,これらを$(*)$に代入して

\begin{align*}\frac{2}{x^3}-\frac{1}{x^2}+\frac{b(x)}{x}=0\end{align*}

となる.両辺に$x$をかけて整理して

\begin{align*}b(x)=\frac{x-2}{x^2}\end{align*}

を得る.

(2)の解答

常微分方程式$(*)$の解$y(x)=u(x)\dfrac{1}{x}$に対して

\begin{align*}y'(x)=\frac{u'(x)}{x}-\frac{u(x)}{x^2},\quad
y”(x)=\frac{u”(x)}{x}-\frac{2u'(x)}{x^2}+\frac{2u(x)}{x^3}\end{align*}

なので,これらを$(*)$に代入して

\begin{align*}\bra{\frac{u”(x)}{x}-\frac{2u'(x)}{x^2}+\frac{2u(x)}{x^3}}+\bra{\frac{u'(x)}{x}-\frac{u(x)}{x^2}}+\frac{(x-2)u(x)}{x^3}=0\end{align*}

となる.両辺に$x$をかけて整理し,$u’$の1階線形常微分方程式

\begin{align}\label{eq:u ODE}u”(x)+\frac{x-2}{x}u'(x)=0\end{align}

を得る.

(3)の解答

解$y(x)$に対して$u(x):=xy(x)$とおくと$u$は\eqref{eq:u ODE}を満たす.よって,\eqref{eq:u ODE}の解で

\begin{align*}\lim_{x\to+0}u(x)=1,\quad
\lim_{x\to\infty}u(x)=0\end{align*}

を満たすものを求めればよい.$\frac{x-2}{x}$の原始関数として$x-2\log{x}$がとれ

\begin{align*}e^{x-2\log{x}}=x^{-2}e^x\end{align*}

となる.\eqref{eq:u ODE}の両辺に$x^{-2}e^x$をかけて

\begin{align*}x^{-2}e^xu”(x)+x^{-3}(x-2)e^x u'(x)=0\end{align*}

となり,この左辺は$\bra{x^{-2}e^x u'(x)}’$に等しいから$x^{-2}e^xu'(x)=C$となる($C\in\R$は任意定数).これを整理して$u'(x)=Cx^2e^{-x}$である.

部分積分より

\begin{align*}\int x^2e^{-x}\,dx&=-x^2e^{-x}+2\int xe^{-x}\,dx
\\&=-x^2e^{-x}-2xe^{-x}+2\int e^{-x}\,dx
\\&=-x^2e^{-x}-2xe^{-x}-2e^{-x}+D\end{align*}

なので$u(x)=-C(x^2+2x+2)e^{-x}+C D$を得る($D$は積分定数).

\begin{align*}1=\lim_{x\to+0}u(x)=-2C+C D,\quad
0=\lim_{x\to\infty}u(x)=C D\end{align*}

なので,$C D=0$, $C=-\frac{1}{2}$だから

\begin{align*}y(x)=\frac{x^2+2x+2}{2x}e^{-x}\end{align*}

を得る.

管理人

プロフィール

山本やまもと 拓人たくと

元予備校講師.講師として駆け出しの頃から予備校の生徒アンケートで抜群の成績を残し,通常の8倍の報酬アップを提示されるなど頭角を表す.

飛び級・首席合格で大学院に入学しそのまま首席修了するなど数学の深い知識をもち,本質をふまえた分かりやすい授業に定評がある.

現在はオンライン家庭教師,社会人向け数学教室での講師としての教育活動とともに,京都大学で数学の研究も行っている.専門は非線形偏微分方程式論.大学数学系YouTuberとしても活動中.

趣味は数学,ピアノ,甘いもの食べ歩き.公式LINEを友達登録で【限定プレゼント】配布中.

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