【SPONSORED LINK】

H29院試/京都大学/数学・数理解析専攻/基礎科目

  
   

平成29年度/京都大学大学院/理学研究科/数学・数理解析専攻の大学院入試問題の「基礎科目」の解答の方針と解答です.

ただし,採点基準などは公式に発表されていないため,ここでの解答が必ずしも正解とならない場合もあり得るので注意してください.

なお,過去問は京都大学のホームページから入手できます.

【参考:京都大学数学教室の過去問

【SPONSORED LINK】

問題と解答の方針

問題は7問あり,数学系志願者は問1~問6の6問を,数理解析系志願者は問1〜問5の5問と問6,問7から1問選択して全6問を解答します.試験時間は3時間30分です.

この記事では問7まで掲載しています.

解答はこのページの下部にPDFで掲載しています.

問1

次の重積分を求めよ.

\displaystyle\iint_{D}e^{-\max\{x^2,y^2\}}\,dxdy

ここで,D=\set{(x,y)\in\R^2}{0\le x\le1,0\le y\le1}とする.

[解答の方針]

\max\{x^2,y^2\}を処理するために,x^2y^2の大小に応じてDを分割すれば良い.

分けた後は積分順序に気を付ける.

問2

実行列

A=\begin{pmatrix} 1&-2&-1&1&0\\ -2&5&3&-2&1\\ 1&1&2&0&-1\\ 5&0&5&3&2 \end{pmatrix}

について,以下の問に答えよ.

(i) 連立1次方程式

A\begin{pmatrix} x_1\\x_2\\x_3\\x_4\\x_5 \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} 0\\0\\0\\0 \end{pmatrix}

の解を全て求めよ.
(ii) 連立1次方程式

A\begin{pmatrix} x_1\\x_2\\x_3\\x_4\\x_5 \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} 0\\-1\\1\\c \end{pmatrix}

が解を持つような実数cを全て求めよ.

[解答の方針]

(i) 係数行列Aを行基本変形することにより求められる.

(ii) 係数行列Aと連立方程式の拡大係数行列のrankが等しいことが,解を持つための必要十分条件である.

rankは行基本変形により求められる.

問3

mnを正の整数とし,Aを複素(n,m)行列,Bを複素(m,n)行列とする.複素数\lambda\neq0について,以下の問に答えよ.

(i) \lambdaBAの固有値ならば,\lambdaABの固有値でもあることを示せ.

(ii) \C^{m}\C^{n}の部分空間VWをそれぞれ

V=\{\mathbf{x}\in\C^{m}|ある正の整数kに対して(BA-\lambda I_m)^{k}\mathbf{x}=\mathbf{0}が成り立つ\}
W=\{\mathbf{y}\in\C^{n}|ある正の整数lに対して(BA-\lambda I_n)^{l}\mathbf{y}=\mathbf{0}が成り立つ\}

で定める.ただし,I_mI_nは単位行列,\mathbf{0}は零ベクトルを表す.このとき,\dim V=\dim Wであることを示せ.

[解答の方針]

(i) vBAの固有値\lambdaに関する固有ベクトルとすると,AvABの固有値\lambdaに属する固有ベクトルとなる.

(ii) (i)から,v\in Vに対してAv\in Wであることが予想できる.すなわち,行列Aを左からかける写像V\to Wが定義できることが予想できる.

さらに,この写像が単射であることを示せば,\dim V\le\dim Wが得られる.

同様にして,この逆の不等号も同様にして得られるから題意が従う.

問4

fI=\set{x\in\R}{x\ge0}上の実数値連続関数とする.正の整数nに対し,I上の関数f_{n}

f_{n}(x)=f(x+n)

で定める.関数列\{f_n\}_{n=1}^{\infty}I上で一様収束するとき,以下の問に答えよ.

(i) I上の関数g

g(x)=\li_{n\to\infty}f_{n}(x)

で定める.このときgI上で一様連続であることを示せ.

(ii) fI上で一様連続であることを示せ.

[解答の方針]

(i) f_{n}fnだけ負方向に平行移動した関数である.関数列\{f_n\}_{n=1}^{\infty}I上で一様収束することから,f\Rが十分大きいところでは周期1の関数に近付くことが予想でき,したがってgは周期1の関数であることが予想できる.

これが示されれば,g[0,2]上で一様連続であることを示せば十分で,これはgの連続性と[0,2]のコンパクト性から直ちに得られる(Heine-Cantorの定理).

ただし,gの連続性は連続関数列\{f_n\}_{n=1}^{\infty}の一様収束極限がgであることから得られる.

(ii) fは,\Rが十分大きいところではgに近付くから一様連続で,\Rがそこまで大きくないところではHeine-Cantorの定理から一様連続である.

問5

pを正の実数とし,f(t)\R上の実数値連続関数で

\dint_{0}^{\infty}|f(t)|\,dt<\infty

を満たすものとする.このとき\R上の常微分方程式

\od{x}{t}=-px+f(t)

の任意の解x(t)に対し\li_{t\to\infty}x(t)=0が成り立つことを示せ.

[解答の方針]

与えられた常微分方程式は両辺にe^{pt}をかけ,任意のS>0に対して[0,S]で積分することで,

x(S)=e^{-pS}\bra{x(0)+\dint_{0}^{S}e^{pt}f(t)\,dt}

が従う.S\to\inftyのとき,e^{-pS}x(0)oに収束することは明らかで,問題は\dint_{0}^{S}e^{p(t-S)}f(t)\,dtの極限である.

e^{p(t-S)}f(t)Sが大きくなるほど”ズレ”が大きくなる.また,区間[0,S]上でe^{p(t-S)}\le 1である.

このことから,\Rの十分大きいところでの積分は十分小さく(Cauchyの条件),\Rがそこまで大きくないところではSを十分大きくとることによって積分を小さくできることによって,題意が示せそうである.

なお,条件から\li_{t\to\infty}f(t)=0は言えないことに注意.反例が存在する.

問6

XYを位相空間とし,直積集合X\times Yを積位相によって位相空間とみなす.写像f:X\times Y\to Yf(x,y)=yで定める.Xがコンパクトならば,X\times Yの任意の閉集合Zに対し,f(Z)Yの閉集合であることを示せ.

[解答の方針]

Y\setminus f(Z)が開であることを示せば良い.そのために,任意のp\in Y\setminus f(Z)に対して,Yにおけるpの開近傍でf(Z)と共通部分を持たないものが存在すれば良い.

任意のx\in Xに対して(x,p)\notin Zで,(X\times Y)\setminus Zは開だから,Zと共通部分を持たない(x,p)の開近傍U_{x}\times V_{x}が存在する.ただし,U_{x}x\in Xの開近傍,V_{x}p\in Yの開近傍である.

ここで,\bigcap_{x\in X}V_{x}p\in YY\setminus f(Z)と共通部分を持たない近傍となっていそうではあるが,有限個のXが有限集合でなければ無限個の開集合の共通部分となるため開であるとは限らない.

そこで,x\in U_{x}よりX=\bigcup_{x\in X}U_{x}だから,Xのコンパクト性から有限個のx_{1},\dots,x_{n}が存在してX=\bigcup_{k=1}^{n}U_{x_{k}}となることを用いると,このとき\bigcap_{k=1}^{n}V_{x_{k}}は有限個の開集合の共通部分だから開である.

この\bigcap_{k=1}^{n}V_{x_{k}}pf(Z)と共通部分を持たない開近傍になっていることを示せば良い.

問7

nを正の整数とし,\R^{n}の2点x=(x_{1},\dots,x_{n})y=(y_{1},\dots,y_{n})の距離d(x,y)

d(x,y)=\ro{(x_{1}-y_{1})^{2}+\dots+(x_{n}-y_{n})^{2}}

と定める.\R^{n}の空でない部分集合Aに対し,関数f:\R^{n}\to\R^{n}

f(x)=\inf\limits_{z\in A}d(x,z)

で定めるとき,\R^{n}の任意の2点xyに対して|f(x)-f(y)|\le d(x,y)が成り立つことを示せ.

[解答の方針]

f(x)=f(y)のときは明らかだから,f(x)\neq f(y)の場合を示せば良い.さらに,このときf(x)<f(y)としても一般性を失わない.

もし,f(x)=d(x,z_{1})f(y)=d(y,z_{2})を満たすz_{1},z_{2}\in Aが存在し,さらにz_{1}=z_{2}でもあれば,示すべき式は三角不等式そのものである.

この問題では,このようなz_{1}w_{2}が存在するとは限らず,存在してもz_{1}=z_{2}とは限らない.しかし,f(y)=\inf\limits_{z\in A}d(y,z)\le d(y,z_{1})であることから,結局は三角不等式を用いて解くことができそうである.

つまり,もしこのようなz_{1}だけでも存在した場合は,

|f(x)-f(y)|=f(y)-f(x)\le d(y,z_{1})-d(x,z_{1})\le d(x,y)

となって題意が従う.

z_{1}が存在しない場合には,f(x)=\li_{n\to\infty}d(x,w_{n})を満たすA上の列\{w_{n}\}_{n\in\N}をとれば良い.

解答

解答は以下のPDFに掲載しています.

H29_基礎科目_解答

以下は注意事項です.

  • 解答作成には万全を期していますが,論理の飛躍,誤りがあることは有り得ます.
  • 本PDFは私に著作権があります.
  • 無断複製,無断転載は一切禁止します.これらの行為が認められた場合は,止むを得ず法的手段に出ることがあります.

この解答が大学院受験生の一助になれば幸いです.

参考文献

以下の3冊は,実際に私が使用したものである.

  • 「演習大学院入試問題(数学I) 第3版」(姫野俊一/陳啓浩 共著,サイエンス社)
  • 「演習大学院入試問題(数学II) 第3版」(姫野俊一/陳啓浩 共著,サイエンス社)
  • 「詳解と演習大学院入試問題〈数学〉」(海老原円 著,数理工学社)

演習大学院入試問題

ところどころ誤植があったり,もう少しスッキリ解答できるところがあるのが残念.しかし,問題量は非常に豊富である.全2巻で,

1巻

第1編 線形代数
第2編 微分・積分学
第3編 微分方程式

2巻

第4編 ラプラス変換,フーリエ変換,特殊関数,変分法
第5編 複素関数論
第6編 確率・統計

が扱われている.

問題の種類としては発想問題よりも,ちゃんと地に足つけた考え方で解ける問題が多い.

計算量が多い問題,基本問題も多く扱われているが,試験では基本問題ほど手早く処理することが求められるので,その意味で試験への対応力が養われるであろう.(私自身,計算力があまり高くないので苦労した.)

詳解と演習大学院入試問題〈数学〉

上述の姫野氏の問題集とは対照的に,問題数はそこまで多くないが1問1問の解説が丁寧になされている.また,構成が読みやすい.

第1章 数え上げと整数
第2章 線形代数
第3章 微積分
第4章 微分方程式
第5章 複素解析
第6章 ベクトル解析
第7章 ラプラス変換
第8章 フーリエ変換
第9章 確率

典型的な問題でも複数の解法を紹介しているので,私は参考になることも多かった.個人的にはこの本には非常に好感が持てる.

関連記事

【良いと思ったらシェアを!】

最後まで読んでいただきありがとうございました!

良ければシェアボタンから共有をお願いします!

コメント

  1. oppa より:

    問6の解答は誤りでは?
    最後直前までは良いとは思いますが,Y/f(Z)と共通部分を持たないことが言えていないと思います。
    このままでは∪V_xでも議論が成立してしまうところからしておかしいとわかります。(コメントでは,開ではないとなっていますが、これは開集合です)

    1. yama-taku より:

      ご指摘ありがとうございます.

      記事中で次の2点は誤植でしたので,修正しました.

      • \bigcup_{x\in X}V_xは開ではない」ではなく,「\bigcap_{x\in X}V_xは開ではない」
      • Y\setminus f(Z)と共通部分を持たない」ではなく,「f(Z)と共通部分を持たない」

      また,PDFにおいても,V\cap f(Z)=\emptysetの証明が抜けており,示せていませんでした.
      こちらも修正してアップロードしました.

コメントを残す

*

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください