2022年度|京都大学院試|数学・数理解析専攻|基礎科目

京都大学|大学院入試
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2022年度の京都大学 理学研究科 数学・数理解析専攻 数学系の大学院入試問題の「基礎科目」の解答の方針と解答です.

問題は6問あり,全6問を解答します.試験時間は3時間30分です.この記事では,問6まで解答例を掲載しています.

採点基準などは公式に発表されていないため,ここでの解答が必ずしも正解とならない場合もあり得ます.ご注意ください.

また,十分注意して解答を作成していますが,論理の飛躍・誤りが残っている場合があります.

なお,過去問は京都大学のホームページから入手できます.

過去の入試問題 | Department of Mathematics Kyoto University

第1問

次の広義積分が収束するような実数$a$の範囲を求めよ.

    \begin{align*}\iint_{D}\frac{y}{(1+\sqrt{x^2+y^2}-x)^2(x^2+y^2)^\alpha}\,dxdy\end{align*}

ただし,$D=\set{(x,y)\in\R^2}{x\ge0,y\ge0,x^2+y^2\ge1}$とする.

微分積分学の重積分の計算ですね.

解答の方針

パッと見て$x^2+y^2$があるので極座標変換$(x,y)=(r\cos{\theta},r\sin{\theta})$を使いたいところですね.

極座標変換後の領域を$D’$と表すと,問題の広義積分は

    \begin{align*}\iint_{D'}\frac{r\sin{\theta}}{(1+r-r\cos{\theta})^2r^{2\alpha-2}}\,drd\theta\end{align*}

となりますね.ヤコビアン$r$を忘れないように注意してください.

これは$\theta$について積分でき,そのあと広義積分

    \begin{align*}\int_{1}^{\infty}\frac{1}{r^\beta}\,dr\end{align*}

が収束するための必要十分条件が$\beta>1$であることを用います.

解答例

問の広義積分を$I$とおく.任意に$n\in\N$をとり,

    \begin{align*}D_{n}=\set{(x,y)\in\R^2}{x\ge0,y\ge0,1\le x^2+y^2\le n}\end{align*}

とおく.各$D_n$は有界閉(コンパクト)であり,$\bigcup_{n=1}^{\infty}D_n=D$である.

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ここで,極座標変換$(r,\theta)\to(x,y)=(r\cos{\theta},r\sin{\theta})$により,

    \begin{align*}I&=\int_{1}^{n}\bra{\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\frac{r\cdot r\sin{\theta}}{(1+r-r\cos{\theta})^2r^{2\alpha}}\,d\theta}\,dr \\&=\int_{1}^{n}\frac{1}{r^{2\alpha-2}}\bra{\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\frac{\sin{\theta}}{(1+r-r\cos{\theta})^2}\,d\theta}\,dr\end{align*}

である.$\theta$に関する積分は

    \begin{align*}\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\frac{\sin{\theta}}{(1+r-r\cos{\theta})^2}\,d\theta &=-\frac{1}{r}\brc{\frac{1}{1+r-r\cos{\theta}}}_{0}^{\frac{\pi}{2}} \\&=-\frac{1}{r}\bra{\frac{1}{1+r}-1}=\frac{1}{1+r}\end{align*}

なので,

    \begin{align*}I=\int_{1}^{n}\frac{1}{(1+r)r^{2\alpha-2}}\,dr\end{align*}

となる.ここで,$1\le r\le n$のとき

    \begin{align*}r^{2\alpha-1}<(1+r)r^{2\alpha-2}<2r^{2\alpha-1}\end{align*}

であり,$\lim\limits_{n\to\infty}\dint_{1}^{n}\dfrac{1}{r^{2\alpha-1}}\,dr$が収束するための必要十分条件は$2\alpha-1>1\iff \alpha>1$である.

よって,$\alpha\le1$なら

    \begin{align*}I>\int_{0}^{1}\frac{1}{2r^{2\alpha-1}}\,dr=\infty\end{align*}

だから発散し,$\alpha>1$なら

    \begin{align*}I<\int_{0}^{1}\frac{1}{r^{2\alpha-1}}\,dr<\infty\end{align*}

だから収束する.以上より,求める条件は$\alpha>1$である.

上の解答のように有界閉区間の列$\{D_n\}$を用意しているのは,座標変換は「有界領域での」重積分に関するもので,広義積分のまま座標変換するのは厳密には怪しいためです.

第2問

$V$を実ベクトル空間とし,$v_1,v_2,v_3,v_4$を$V$の1次独立なベクトルとする.$a\in\R$に対し

    \begin{align*}&w_1=v_1-v_2+v_3 \\&w_2=v_1+(a-1)v_2+v_3-av_4 \\&w_3=2v_1-2v_2+(a+2)v_3 \\&w_4=v_1-v2+v_3+(a+1)v_4\end{align*}

とおく.

  1. $w_1,w_2,w_3,w_4$が1次独立となるような$a$の条件を求めよ.
  2. $w_1,w_2,w_3,w_4$が1次従属となる$a$に対し,$w_1,w_2,w_3,w_4$で生成される$V$の部分空間$\anb{w_1,w_2,w_3,w_4}$の次元を求めよ.

線形代数学の線形独立性の問題ですね.

解答の方針

与えられた等式から,正方行列$A$を用いて$[w_1,w_2,w_3,w_4]=[v_1,v_2,v_3,v_4]A$と表せます.

(1)$w_1$, $w_2$, $w_3$, $w_4$が1次独立であることと,正方行列$[w_1,w_2,w_3,w_4]$が正則行列であることは同値でした.

そのため,$A$が正則行列となるような$a$の条件を求めれば良いですね.

具体的に行列の成分が分かっているときは,行列のランクからその行列の正則性が判定できますね.

(2)$\dim{\anb{w_1,w_2,w_3,w_4}}=\rank{[w_1,w_2,w_3,w_4]}$ですね.

解答例

$w_1,w_2,w_3,w_4$の定義から

    \begin{align*}&[w_1,w_2,w_3,w_4]=[v_1,v_2,v_3,v_4]A, \\&A=\bmat{1&1&2&1\\-1&a-1&-2&-1\\1&1&a+2&1\\0&-a&0&a+1}\end{align*}

である.$v_1,v_2,v_3,v_4$は1次独立だから正方行列$[v_1,v_2,v_3,v_4]$は正則行列であることに注意する.

(1)$w_1,w_2,w_3,w_4$が1次独立であることと,正方行列$[w_1,w_2,w_3,w_4]$が正則行列であることは同値である.

よって,正方行列$A$が正則行列(すなわち$\rank{A}=4$)となる$a$の必要十分条件を求めればよい.

    \begin{align*}\rank{A}=\rank{\bmat{1&1&2&1\\0&a&0&0\\0&0&a&0\\0&-a&0&a+1}} =\rank{\bmat{1&1&2&1\\0&a&0&0\\0&0&a&0\\0&0&0&a+1}}\end{align*}

だから,$\rank{A}=4\iff a\neq0,-1$である.

(2)$a=0,-1$のとき,(1)より$w_1,w_2,w_3,w_4$は1次従属であり,

    \begin{align*}\dim{\anb{w_1,w_2,w_3,w_4}} &=\rank{[w_1,w_2,w_3,w_4]} \\&=\rank{\bmat{1&1&2&1\\0&a&0&0\\0&0&a&0\\0&0&0&a+1}} \\&=\begin{cases}2,&a=-1,\\3,&a=0\end{cases}\end{align*}

である.ただし,2つ目の等号では正則行列をかけても行列の階数が変化しないことを用いた.

第3問

アーベル群$G=\Z/2\Z\times\Z/3\Z\times\Z/3\Z\times\Z/4\Z$の部分群$H$を$H=\set{(a,b,0,0)}{a\in\Z/2\Z,b\in\Z/3\Z}$とするとき,$G$の位数12の部分群$K$で$G=K+H$となるものの数を求めよ.ただし

    \begin{align*}K+H=\set{\alpha+\beta}{\alpha\in K,\beta\in H}\end{align*}

である.

群論の部分群の個数の問題ですね.

解答の方針

$H$で第1成分と第2成分を全て作れますが,第3成分と第4成分は$(0,0)$しか作れません.よって,$K$で$(*,*,c,d)$($c=0,1,2$, $d=0,1,2,3$)なる元を全て作ればよいですね($*$は任意の成分).

このとき,$|K|=12$に注意すると$(*,*,c,d)$の形の$K$の元はどの$(c,d)$に対しても1つずつしかないことが手掛かりになります.

なお本質的には変わりませんが,中国式剰余定理より$G\cong\Z/6\Z\times\Z/12\Z$とする方が見やすいでしょう.

解答例

中国式剰余定理より

    \begin{align*}G\to\Z/6\Z\times\Z/12\Z;(a,b,c,d)\mapsto(ab,c d)\end{align*}

は同型である.また,この同型で$H$は

    \begin{align*}H\to \Z/6\Z\times\{0\}\end{align*}

に対応する.$G’=\Z/6\Z\times\Z/12\Z$, $H’=\Z/6\Z\times\{0\}$とすると,$G’$の位数$12$の部分群$K’$で$G’=K’+H’$となるものの数を求めればよい.

$|K’|=12$に注意すると,$K’$が条件を満たすことは,$K’$は第2成分が$0,1,2,\dots,11$の元を1つずつもつことと必要十分である.よって,$K’$は1つの元から生成されるので,条件を満たすものは

    \begin{align*}K'=\anb{(a,b)}\quad(a=0,1,2,\dots,5;b=1,5,7,11)\end{align*}

である.これらの群のうち同じものを1つにまとめると

    \begin{align*}K'=\anb{(a,1)}\quad(a=0,1,2,\dots,5)\end{align*}

なので,条件を満たす部分群$K$は6個である.

第4問

$\R$で定義された関数

    \begin{align*}f(x)=\int_{0}^{\infty}|x+t\sin{t}|e^{-t}\,dt\end{align*}

は最小値を持つことを示せ.

微分積分学の最小値の存在問題ですね.

解答の方針

例えば$x=0$のときは

    \begin{align*}f(0)=\int_{0}^{\infty}t|\sin{t}|e^{-t}\,dt\le1\end{align*}

と評価できるので,少なくとも$f(x)$の最小値は1以下であることが分かります.

また,$t=0$の近くでは$|x+t\sin{t}|e^{-t}\approx|x|$なので,$|x|$が大きければ$t=0$付近での積分が大きくなり$f$は大きな値をとりそうです.

よって,$f(x)$は$|x|$が0に近いところで最小値を取りそうですね.

このことから,ある$R>0$が存在して$R\le|x|$で$1<f(x)$となることが証明できそうです.

よって,さらに$f$が$|x|\le R$上で連続であることも示せれば,コンパクト集合上$[-R,R]$に$f$が最小値を持つことが分かりますね.

解答例

$f$の定義より

    \begin{align*}f(0)=\int_{0}^{\infty}|t\sin{t}|e^{-t}\,dt\le\int_{0}^{\infty}te^{-t}\,dt=1\end{align*}

である.また,$|x|\ge3$のとき,三角不等式と併せて

    \begin{align*}f(x)&\ge\int_{0}^{1}|x+t\sin{t}|e^{-t}\,dt\ge\int_{0}^{1}(|x|-|t\sin{t}|)e^{-t}\,dt \\&\ge\int_{0}^{1}(|x|-1)e^{-t}\,dt=(|x|-1)(1-e^{-1}) \\&>2\Bigl(1-\frac{1}{2}\Bigr)=1\end{align*}

である.ただし,$e>2$であることを用いた.

さらに,任意の$x\in\R$と任意の$h>0$に対して,三角不等式と併せて

    \begin{align*}\abs{f(x+h)-f(x)}&=\abs{\int_{0}^{\infty}(|(x+h)+t\sin{t}|-|x+t\sin{t}|)e^{-t}\,dt} \\&\le\int_{0}^{\infty}\bigl||(x+h)+t\sin{t}|-|x+t\sin{t}|\bigr|e^{-t}\,dt \\&\le\abs{\int_{0}^{\infty}|h|e^{-t}\,dt}=|h|\end{align*}

なので,$\lim_{h\to0}\abs{f(x+h)-f(x)}=0$となって$f$は$\R$上連続である.

一般に有界閉(コンパクト)集合上の連続関数は最小値をもつから,$f$は$[-5,5]$上に最小値を持つ.

$[-5,5]$上の$f$の最小値は$f(0)=1$以下だから,$|x|\ge5$で$f(x)\ge2$であることと併せて$f$は$\R$上で最小値をもつ.

第5問

次の広義積分を求めよ.

    \begin{align*}\int_{-\infty}^{\infty}\frac{x^3\sin{x}}{(x^2+1)^2}\,dx.\end{align*}

複素解析学の広義積分への応用ですね.

解答の方針

ノータイムで留数定理ですね.$f(z)=\frac{z^3e^{iz}}{(z^2+1)^2}$で定まる複素関数$f$を適切な閉曲線上で複素積分し,オイラーの公式

    \begin{align*}e^{ix}=\cos{x}+i\sin{x}\quad(x\in\R)\end{align*}

を用います.

また,最後に現れる$e^{-R\sin{t}}$の積分については

    \begin{align*}\frac{2}{\pi}t\le\sin{t}\le t\quad\bra{t\in\brc{0,\frac{\pi}{2}}}\end{align*}

を用いれば上から評価できることは知っておきたいですね.

解答例

領域$\C\setminus\{\pm i\}$上の正則関数$f$を

    \begin{align*}f(z)=\frac{z^3e^{iz}}{(z^2+1)^2}\end{align*}

で定める.また,$R>1$に対して$f$が正則な領域内の閉曲線$\Gamma_R$を

    \begin{align*}&L_{R}:=\set{z\in\C}{z=x,x\in[-R,R]}, \\&C_{R}:=\set{z\in\C}{z=Re^{it},t\in[0,\pi]}, \\&\Gamma_R:=L_{R}\cup C_{R}\end{align*}

で定める.ただし,閉曲線$\Gamma_R$上の向きは正方向(内部を左側に見ならが回る向き)とする.

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このとき,求める広義積分を$I$とおくと,

    \begin{align*}I&=\lim_{R\to\infty}\int_{-R}^{R}\frac{x^3\sin{x}}{(x^2+1)^2}\,dx \\&=\lim_{R\to\infty}\operatorname{Im}\int_{-R}^{R}\frac{x^3e^{ix}}{(x^2+1)^2}\,dx \\&=\lim_{R\to\infty}\operatorname{Im}\int_{L_R}f(z)\,dz\end{align*}

である.ただし,$z\in\C$に対して$\operatorname{Im}z$は$z$の虚部を表す.

[1]閉曲線$\Gamma_R$の内部に存在する$f$の極は$i$で,$i$は$2$位の極である.よって,

    \begin{align*}g(z)=(z-i)^2f(z)=\frac{z^3e^{iz}}{(z+i)^2}\end{align*}

で複素関数$g$を定めると,留数定理より

    \begin{align*}\int_{\Gamma_R}f(z)\,dz &=2\pi i\operatorname{Res}(f,i) =\lim_{z\to i}2\pi i\cdot\frac{1}{1!}\od{g}{z}(z) \\&=\lim_{z\to i}2\pi i\bra{\frac{-2z^3e^{iz}}{(z+i)^3}+\frac{3z^2e^{iz}+iz^3e^{iz}}{(z+i)^2}} \\&=2\pi i\bra{\frac{-2i^3e^{i^2}}{8i^3}+\frac{3i^2e^{i^2}+i^4e^{i^2}}{4i^2}} \\&=2\pi i\bra{-\frac{1}{4e}+\frac{1}{2e}}=\frac{\pi i}{2e}\end{align*}

を得る.

[2]$z\in C_R$は$z=R(\cos{t}+i\sin{t})$ ($t\in[0,\frac{\pi}{2}]$)と表せるので,

    \begin{align*}|e^{iz}|=\abs{e^{R(i\cos{t}-\sin{t})}}=e^{-R\sin{t}}\end{align*}

であることに注意すると,三角不等式と併せて

    \begin{align*}\abs{\int_{C_R}f(z)\,dz} &\le\abs{\int_{0}^{\pi}\frac{z^3e^{iz}}{(z^2+1)^2}\,Rie^{it}dt} \\&\le\int_{0}^{\pi}\frac{R^4e^{-R\sin{t}}}{(R^2-1)^2}\,dt \\&=\frac{2R^4}{(R^2-1)^2}\int_{0}^{\pi/2}e^{-R\sin{t}}\,dt \\&\le\frac{2R^4}{(R^2-1)^2}\int_{0}^{\pi/2}e^{-2Rt/\pi}\,dt \\&\le\frac{\pi R^3}{(R^2-1)^2}(1-e^{-R}) \xrightarrow[]{R\to\infty}0\end{align*}

なので,$\lim_{R\to\infty}\abs{\int_{C_R}f(z)\,dz}=0$が成り立つ.

以上より,求める広義積分$I$は

    \begin{align*}I&=\lim_{R\to\infty}\operatorname{Im}\bra{\int_{\Gamma_R}f(z)\,dz-\int_{C_R}f(z)\,dz} \\&=\operatorname{Im}\bra{\frac{\pi i}{2e}-0}=\frac{\pi}{2e}\end{align*}

を得る.

第6問

ユークリッド空間$\R^4$の部分空間$X$を

    \begin{align*}X=\set{(x,y,z,w)\in\R^4}{x^2+y^2+z^2+w^2=1,x^3+y^3+z^3+w^3=0}\end{align*}

で定める.このとき$X$はコンパクトな微分可能多様体であることを示せ.

微分幾何学の多様体であることの証明ですね.

解答の方針

$f:\R^4\to\R^2$を

    \begin{align*}f(x,y,z,w)=\bmat{x^{2}+y^{2}+z^{2}+w^{2}-1\\x^3+y^3+z^3+w^3}\end{align*}

で定義すると$X=f^{-1}(0,0)$となりますから,$f$に正則値定理(沈め込み定理)を用いればよいですね.

また,一般に$\R^n$の部分集合がコンパクトであることと有界閉であることは同値ですね.

有界であることは$X$の条件からすぐ分かり,$X=f^{-1}(0,0)$と$f$が連続であることから閉であることも分かりますね.

解答例

写像$f:\R^{4}\to\R^{2}$を

    \begin{align*}f(x,y,z,w)=\bmat{x^{2}+y^{2}+z^{2}+w^{2}-1\\x^3+y^3+z^3+w^3}\end{align*}

で定める.$X=f^{-1}(0,0)$であり,$(\frac{1}{2},-\frac{1}{2},\frac{1}{2},-\frac{1}{2})\in X$だから$X\neq\emptyset$である.

ここで,任意の$p:=(x,y,z,w)\in X$が$f$の正則点であることを示す.そのために,$\operatorname{rank}Jf_{p}\neq2$と仮定して矛盾を導く.このとき,

    \begin{align*}Jf_{p}=\bmat{2x&2y&2z&2w\\3x^2&3y^2&3z^2&3w^2}\end{align*}

である.$x^2+y^2+z^2+w^2=1$より$(x^2,y^2,z^2,w^2)\neq(0,0,0,0)$だから,ある$k\in\R$が存在して

    \begin{align*}(2x,2y,2z,2w)=k(3x^2,3y^2,3z^2,3w^2)\end{align*}

を満たす.よって,$p\in M$であることに注意して

    \begin{align*}0&=3k(x^3+y^3+z^3+w^3) \\&=x\cdot3kx^2+y\cdot3ky^2+z\cdot3kz^2+w\cdot3kw^2 \\&=x\cdot2x+y\cdot2y+z\cdot2z+w\cdot2w \\&=2(x^2+y^2+z^2+w^2)=2\end{align*}

と矛盾を得る.よって,仮定は誤りで任意の$p\in M$が$f$の正則点なので,正則値定理より$X=f^{-1}(0,0)$は微分可能多様体である.

また,任意の$p:=(x,y,z,w)\in X$に対して$x^2+y^2+z^2+w^2=1<\infty$だから$X$は有界であり,$f$が連続で1点集合$\{(0,0)\}$は閉だから$f^{-1}(0,0)$も閉である.

よって,$X$はコンパクトである.

参考文献

以下,私も使ったオススメの入試問題集を挙げておきます.

詳解と演習大学院入試問題〈数学〉

[海老原円,太田雅人 共著/数理工学社]

理工系の修士課程への大学院入試問題集ですが,基礎〜標準的な問題が広く大学での数学の基礎が復習できる総合問題集として利用することができます.

実際,まえがきにも「単なる入試問題の解説にとどまらず,それを通じて,数学に関する読者の素養の質を高めることにある」と書かれているように,必ずしも大学院入試を受験しない一般の学習者にとっても学びやすい問題集です.また,構成が読みやすいのも個人的には嬉しいポイントです.

第1章 数え上げと整数
第2章 線形代数
第3章 微積分
第4章 微分方程式
第5章 複素解析
第6章 ベクトル解析
第7章 ラプラス変換
第8章 フーリエ変換
第9章 確率

一方で,問題数はそれほど多くないので,多くの問題を解きたい方には次の問題集もオススメです.

なお,本書については,以下の記事で書評としてまとめています.

演習 大学院入試問題

[姫野俊一,陳啓浩 共著/サイエンス社]

上記の問題集とは対称的に問題数が多く,まえがきに「修士の基礎数学の問題の範囲は,ほぼ本書中に網羅されている」と書かれているように,広い分野から問題が豊富に掲載されています.

全2巻で,

1巻第1編 線形代数
1巻第2編 微分・積分学
1巻第3編 微分方程式
2巻第4編 ラプラス変換,フーリエ変換,特殊関数,変分法
2巻第5編 複素関数論
2巻第6編 確率・統計

が扱われています.

地道にきちんと地に足つけた考え方で解ける問題が多く,確かな「腕力」がつくテキストです.入試では基本問題は確実に解けることが大切なので,その意味で試験への対応力が養われると思います.

なお,私自身は受験生時代に計算力があまり高くなかったので,この本の問題で訓練したのを覚えています.

なお,本書については,以下の記事で書評としてまとめています.

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