2027年度の京都大学 理学研究科 数学・数理解析専攻の大学院入試問題の基礎科目の解答の方針と解答例です.
問題は7題あり
- 数学系は第1〜6問を
- 数理解析系は第1〜5問と,第6,7問から1問を選択して
解答します.試験時間は3時間30分です.この記事では,第1〜7問について解説しています.
ただし,公式に採点基準などは発表されていないため,本稿の解答が必ずしも正解になるとは限りません.ご注意ください.
また,十分注意して解答を作成していますが,論理の飛躍・誤りが残っている場合があります.
なお,過去問は京都大学の数学教室の過去問題のページから入手できます.
「京都大学 数学・数理解析専攻|大学院入試」の一連の記事
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- 2014年度 京都大学 数学・数理解析専攻 基礎科目II(全問)
第1問:微分積分学(広義重積分の計算)
広義重積分の計算問題です.計算すればよいだけなので,確実に正解したいです.
実数$\alpha<\dfrac{3}{2}$と領域$D=\set{(x,y)\in\R^2}{0<x^2+y^2<x+y}$に対して広義積分
\begin{align*}\iint_{D}\frac{|x-y|}{(x^2+y^2)^\alpha}\,dxdy\end{align*}
の値を求めよ.
解答の方針とポイント
被積分関数の分母や積分領域に$x^2+y^2$が含まれていることから,極座標変換が第一感ですね.
多くの場合で広義積分であることを気にせず変数変換して計算しても正しい結果が得られますが,本来的には変数変換は広義でない通常の重積分に対して示されるものなので,この記事では(非負関数の)広義積分の定義に従って有界閉集合上の重積分の極限として計算します.
なお,どのような場合に広義積分でも気にせず変数変換してよいかについては,例えば「解析入門II」(杉浦光夫著,東京大学出版会)の第Ⅶ章の定理4.6を参照してください.
被積分関数を把握する
本問題の積分領域$D$は開集合となっていますが,被積分関数は連続的に一意に$\overline{D}\setminus\{(0,0)\}$上に延長できるので,($\alpha\ge\frac{1}{2}$のとき)本質的には点$(0,0)$で被積分関数が連続的に定義できないという意味での広義積分になっています.
また,被積分関数も積分領域も$y=x$に関して対称なので,求める広義積分は
\begin{align*}&I=2\iint_{D’}\frac{x-y}{(x^2+y^2)^\alpha}\,dxdy,
\\&D’:=\overline{D}\cap\{y\le x\}\setminus\{(0,0)\}\end{align*}
となります.
広義重積分の定義
非負実数値多変数関数の重積分の広義積分は,1次元の広義積分の考え方と同様に,どんどん集合$D$に近付く有界閉集合上で$f$が可積分なら,その極限を$D$上での広義積分と定義します.
非負実数値$n$変数関数$f$と,体積確定集合$D\subset\R^n$を考える.さらに
\begin{align*}D_n\subset D_{n+1},\quad D=\bigcup_{n=1}^{\infty}D_n\end{align*}
を満たす体積確定な有界閉集合の列$\{D_n\}$をとる.任意の$n$に対して$f$が$D_n$上可積分であれば
\begin{align*}\int_{D}f(x)\,dx=\lim_{n\to\infty}\int_{D_n}f(x)\,dx\end{align*}
を$f$の$D$上の広義積分という.
$f$が非負であることから,この$f$の$D$上の広義積分は列$\{D_n\}$のとりかたによらないことが従います.
本問題では$\overline{D}\cap\{y\le x\}\setminus\{(0,0)\}$に近付く体積確定な有界閉集合の列$\{D_n\}$を考えればよく,極座標変換との相性を意識して
\begin{align*}D_n:=\set{(x,y)\in D’}{\frac{1}{n^2}\le x^2+y^2}\quad(n=1,2,\dots)\end{align*}
と$D’$から$(0,0)$中心・半径$\frac{1}{n}$の開円板を取り除いた集合を考えるのが良さそうですね.
極座標変換で重積分を$r$, $\theta$の積分に書き換える
極座標変換$x=r\cos{\theta}$, $y=r\sin{\theta}$($0<r$, $-\pi<\theta<\pi$)により,$D_n$は
\begin{align*}E_n:=\set{(r,\theta)\in(0,\infty)\times\left(-\frac{3\pi}{4},\frac{\pi}{4}\right]}{\frac{1}{n}\le r\le\sqrt{2}\sin{\bra{\theta+\frac{\pi}{4}}}}\end{align*}
に対応します.$E_n$は縦線集合なので
\begin{align*}&\iint_{D_n}\frac{x-y}{(x^2+y^2)^\alpha}\,dxdy
\\&=\iint_{E_n}\frac{r\cos{\theta}-r\sin{\theta}}{r^{2\alpha}}\cdot r\,drd\theta
\\&=\sqrt{2}\int_{\theta_n-\pi/4}^{\pi/4}\bra{\int_{1/n}^{\sqrt{2}\sin{\bra{\theta+\frac{\pi}{4}}}}r^{2-2\alpha}\,dr}\cos{\bra{\theta+\frac{\pi}{4}}}\,d\theta\end{align*}
と逐次積分に書き換えられる.ただし,$\theta_n:=\sin^{-1}\bra{\frac{1}{\sqrt{2}n}}$です.
この積分は$r$については簡単に積分でき,$\theta$については$\sin{\bra{\theta+\frac{\pi}{4}}}$に$\cos{\bra{\theta+\frac{\pi}{4}}}$がひとつかけられた積分になっているので,最後まで計算することができますね.
極座標変換をしたときはヤコビアン$r$を忘れないように注意しましょう.
解答例
求める広義積分を$I$とおく.$I$の被積分関数が$\overline{D}\setminus\{(0,0)\}$に連続的に一意に延長できることと,$y=x$に関する対称性より,
\begin{align*}D’:=\set{(x,y)\in\R^2}{0<x^2+y^2\le x+y,\ y\le x}\end{align*}
とおくと
\begin{align*}I=2\iint_{D’}\frac{x-y}{(x^2+y^2)^\alpha}\,dxdy\end{align*}
である.さらに,
\begin{align*}D_n:=\set{(x,y)\in\R^2}{\frac{1}{n^2}\le x^2+y^2\le x+y,\ y\le x}\quad(n=1,2,\dots)\end{align*}
とおくと,$D_n\subset D_{n+1}$($n=1,2,\dots$)かつ$\bigcup\limits_{n=1}^{\infty}D_n=D’$だから
\begin{align*}I=\lim_{n\to\infty}2\iint_{D_n}\frac{x-y}{(x^2+y^2)^\alpha}\,dxdy\end{align*}
である.極座標変換$x=r\cos{\theta}$, $y=r\sin{\theta}$($0<r$, $-\pi<\theta<\pi$)により,$D_n$は
\begin{align*}E_n:&=\set{(r,\theta)\in(0,\infty)\times\left(-\frac{3\pi}{4},\frac{\pi}{4}\right]}{\frac{1}{n^2}\le r^2\le r\cos{\theta}+r\sin{\theta}}
\\&=\set{(r,\theta)\in(0,\infty)\times\left(-\frac{3\pi}{4},\frac{\pi}{4}\right]}{\frac{1}{n}\le r\le\sqrt{2}\sin{\bra{\theta+\frac{\pi}{4}}}}\end{align*}
に対応する.$E_n$は縦線集合だから,
\begin{align*}&\iint_{D_n}\frac{x-y}{(x^2+y^2)^\alpha}\,dxdy
\\&=\iint_{E_n}\frac{r\cos{\theta}-r\sin{\theta}}{r^{2\alpha}}\cdot r\,drd\theta
\\&=\sqrt{2}\int_{\theta_n-\pi/4}^{\pi/4}\bra{\int_{1/n}^{\sqrt{2}\sin{\bra{\theta+\frac{\pi}{4}}}}r^{2-2\alpha}\,dr}\cos{\bra{\theta+\frac{\pi}{4}}}\,d\theta
\\&=\sqrt{2}\int_{\sin{\theta_n}}^{1}\bra{\int_{1/n}^{\sqrt{2}t}r^{2-2\alpha}\,dr}\,dt\end{align*}
と逐次積分に書き換えられる.ただし,$\theta_n:=\sin^{-1}\bra{\frac{1}{\sqrt{2}n}}$とおき,$t=\sin{\bra{\theta+\frac{\pi}{4}}}$と変数変換した.
$r$に関する積分について
\begin{align*}\int_{1/n}^{\sqrt{2}t}r^{2-2\alpha}\,dr
=\brc{\frac{r^{3-2\alpha}}{3-2\alpha}}_{1/n}^{\sqrt{2}t}
=\frac{2^{\frac{3-2\alpha}{2}}t^{3-2\alpha}-n^{2\alpha-3}}{3-2\alpha}\end{align*}
と計算でき,$t$に関する積分について
\begin{align*}&\int_{\sin{\theta_n}}^{1}\bra{2^{\frac{3-2\alpha}{2}}t^{3-2\alpha}-n^{2\alpha-3}}\,dt
\\&=\brc{\frac{2^{\frac{3-2\alpha}{2}}t^{4-2\alpha}}{4-2\alpha}-n^{2\alpha-3}t}_{\sin{\theta_n}}^{1}
\\&=\frac{2^{\frac{3-2\alpha}{2}}\bra{1-\sin^{4-2\alpha}{\theta_n}}}{4-2\alpha}-n^{2\alpha-3}(1-\sin{\theta_n})
\end{align*}
と計算できるから,以上と$\alpha<\frac{3}{2}$を併せて
\begin{align*}I&=\lim_{n\to\infty}\frac{2\sqrt{2}}{3-2\alpha}\bra{\frac{2^{\frac{3-2\alpha}{2}}\bra{1-\sin^{4-2\alpha}{\theta_n}}}{4-2\alpha}-n^{2\alpha-3}\bra{1-\sin{\theta_n}}}
\\&=\frac{2^{3-\alpha}}{(3-2\alpha)(4-2\alpha)}\end{align*}
を得る.
第2問:線形代数学(正方行列の対角化)
基本的な線形代数学の問題です.間違えられません.
3次正方行列
\begin{align*}\pmat{2&1&1\\-2a&1&2\\3a&3&2}\end{align*}
が$\R$上で対角化可能となる実数$a$をすべて求めよ.ただし,実$n$次正方行列$A$が$\R$上で対角化可能であるとは,$P^{-1}AP$が対角行列となる実$n$次正則行列$P$が存在することをいう.
解答の方針とポイント
正方行列について
はどちらも当たり前にしておき,実際に求められるようにしておきましょう.
固有多項式と固有値
正方行列$A$の固有値が$A$の固有方程式を解くことで求めることができることは重要ですね.
正方行列$A$とスカラー$\lambda$に対して,次は同値である.
- $\lambda$は$A$の固有値である.
- $\lambda$は固有方程式$|xI-A|=0$の解である.
つまり,固有方程式$|xI-A|=0$の解は全て$A$の固有値で,他に$A$の固有値はないというわけですね.本問題での$A$の固有方程式$|xI-A|=0$は
\begin{align*}\vmat{x-2&-1&-1\\2a&x-1&-2\\-3a&-3&x-2}=0\end{align*}
ですから,これを解けば固有値が得られますね.
正方行列が対角化可能であるための必要十分条件
正方行列の対角化については,次が重要なのでした.
$n$次正方行列$A$に対して,次は同値である.
- $A$は対角化可能である.
- $A$は$n$個の線形独立な固有ベクトルをもつ.
また,これらのいずれか(同値なので両方)を満たすとき,線形独立な固有ベクトルを$\m{p}_1,\dots,\m{p}_n$で,それぞれが属する固有値を$\lambda_1,\dots,\lambda_n$とするとき,$A$は$P:=[\m{p}_1,\dots,\m{p}_n]$によって
\begin{align*}P^{-1}AP=\operatorname{diag}(\lambda_1,\lambda_2,\dots,\lambda_n)\end{align*}
と対角化される.
つまり,「正方行列$A$を対角化する正則行列$P$は線形独立な固有ベクトルを並べたものであり,そうしてできる対角行列は固有値を並べたもの」ということですね.

固有値の代数的重複度と線形独立な固有ベクトルの個数
固有値にどれだけ線形独立な固有ベクトルが属しうるかについては,次の定理が重要です.
正方行列$A$の固有多項式が
\begin{align*}|xI-A|=(x-\lambda_1)^{n_1}\dots(x-\lambda_r)^{n_r}\end{align*}
であるとする.ただし,$\lambda_1,\dots,\lambda_r$は全て異なるとする.このとき,各固有値$\lambda_i$に属する線形独立な固有ベクトルは最大で$n_i$個である($i=1,2,\dots,r$).
この定理における$n_i$は固有値$\lambda_i$の代数的重複度と呼ばれるので,「各固有値に属する線形独立な固有ベクトルは最大で代数的重複度個存在し得る」ということができますね.
なお,$n=n_1+\dots+n_r$ですから,対角化可能性の必要十分条件の定理と併せると次が成り立ちますね.
正方行列$A$に対して,次は同値である.
- $A$は対角化可能である.
- $A$の全ての固有値$\lambda$について,$\lambda$に属する線形独立な固有ベクトルがちょうど$\lambda$の代数的重複度個存在する.
解答例
$A:=\bmat{2&1&1\\-2a&1&2\\3a&3&2}$とおく.$A$の固有多項式は
\begin{align*}|xI_3-A|
&=\vmat{x-2&-1&-1\\2a&x-1&-2\\-3a&-3&x-2}
=\vmat{x-2&-1&0\\2a&x-1&-x-1\\-3a&-3&x+1}
\\&=(x+1)\vmat{x-2&-1&0\\2a&x-1&-1\\-3a&-3&1}
=(x+1)\vmat{x-2&-1&0\\-a&x-4&0\\-3a&-3&1}
\\&=(x+1)\vmat{x-2&-1\\-a&x-4}
=(x+1)(x^2-6x+8-a)\end{align*}
である.$A$が$\R$上で対角化可能であるためには,固有値が実数であることが必要なので,$x^2-6x+8-a=(x-3)^2-1-a$より$a\ge-1$が必要である.
逆に$a\ge-1$のとき,$A$の固有値は$-1,3\pm\sqrt{1+a}$である.
[1]$a>-1$かつ$a\neq15$のとき,異なる3つの実固有値をもち,一般に実固有値に属する固有ベクトルは実数係数の連立の解で得られるから実ベクトルとしてとれる.
よって,異なる3つの実固有値それぞれに属する実固有ベクトルを一つずつとって並べた行列$P$により$A$は対角化可能である.
[2]$a=-1$のとき,$A$の固有値は−1,3,3であり,行基本変形により
\begin{align*}A-3I_3&=\bmat{-1&1&1\\2&-2&2\\-3&3&-1}
\to\bmat{-1&1&1\\0&0&0\\0&0&-4}
\to\bmat{-1&1&0\\0&0&1\\0&0&0}\end{align*}
なので$A$の固有値3の固有空間の次元が1で,これは固有値3の代数的重複度2未満なので$A$は対角化不可能である.
[3]$a=15$のとき,$A$の固有値は−1,−1,7であり,行基本変形により
\begin{align*}A+I_3&=\bmat{3&1&1\\-30&2&2\\45&3&3}
\to\bmat{3&1&1\\0&12&12\\0&-12&-12}
\to\bmat{3&0&0\\0&1&1\\0&0&0}\end{align*}
なので$A$の固有値−1の固有空間の次元が1で,これは固有値−1の代数的重複度2未満なので$A$は対角化不可能である.
以上より,求める実数$a$は$a>-1$かつ$a\neq15$である.
第3問:線形代数学(線形空間の次元)
いろんな解法が考えられる問題ですが,京都大学の傾向問題でもあります.本記事では京都大学の傾向をふまえた解法で解説します.
$V$を有限次元複素ベクトル空間とし,$f:V\to V$を線形写像であって
\begin{align*}\operatorname{Ker}(f^2)=\operatorname{Im}(f)\end{align*}
を満たすものとする.このとき,$V$の次元は3の倍数であることを示せ.
解答の方針とポイント1
$f$のままだと扱いづらいので$\operatorname{Ker}(f^2)$と$\operatorname{Im}(f)$を扱いやすい形に書き換えましょう.
$\dim{V}=0$のときは成り立つので,以下では$n:=\dim{V}\ge1$の場合を考えます.
線形変換のジョルダン標準形
有限次元複素ベクトル空間$V$に対して,線形変換$f:V\to V$はジョルダン標準形をもつ.
すなわち,$V$のある基底$\mathcal{B}$が存在して,$\mathcal{B}$の表現行列はジョルダン行列$J$となる(この行列$J$を$f$のジョルダン標準形という).
基底$\mathcal{B}$により自然に定まる同型を$\phi_\mathcal{B}:V\to\C^n$とします.すなわち,$\mathcal{B}=(\m{v}_1,\dots,\m{v}_n)$とするとき,
\begin{align*}\phi_\mathcal{B}(a_1\m{v}_1+\dots+a_n\m{v}_n)=\bmat{a_1\\\vdots\\a_n}\quad(a_1,\dots,a_n\in\C)\end{align*}
とします.このとき,表現行列の定義より$f=\phi_\mathcal{B}^{-1}\circ f_J\circ \phi_\mathcal{B}$が成り立ちます.
よって,$\operatorname{Ker}(f^2)=\operatorname{Im}(f)$は$\operatorname{Ker}(J^2)=\operatorname{Im}(J)$と同値で,あとはジョルダン行列で議論すればよいことになります.
京都大学の数学・数理解析専攻の大学院入試では,正方行列・線形変換のジョルダン標準形は頻出なので意識しておくとよいでしょう.
ジョルダン細胞のランク
次元の話なので$\dim\operatorname{Ker}(J^2)=\dim\operatorname{Im}(J)$を手掛かりにするのは自然ですね.ジョルダン行列を$J=J_{n_1}(\lambda_1)\oplus\dots\oplus J_{n_t}(\lambda_t)$とすると,次元定理と併せて
\begin{align*}n&=\dim\operatorname{Im}(J^2)+\dim\operatorname{Ker}(J^2)
=\dim\operatorname{Im}(J^2)+\dim\operatorname{Im}(J)
\\&=\sum_{i=1}^{t}\bra{\operatorname{rank}(J_{n_i}(\lambda_i)^2)+\operatorname{rank}(J_{n_i}(\lambda_i))}\end{align*}
が成り立ちます.ジョルダン細胞$J_n(\lambda)$の冪のランクは$\lambda$が0か否かで様子が大きく変わり
- $\lambda\neq0$のときは\begin{align*}\operatorname{rank}J_n(\lambda)=\operatorname{rank}J_n(\lambda)^2=n\end{align*}
- $\lambda=0$のときは\begin{align*}\operatorname{rank}J_n(0)=n-1,\quad\operatorname{rank}J_n(0)^2=\begin{cases}0,&n=1,\\n-2,&n\ge2\end{cases}\end{align*}
となりますね.よって,$f$のジョルダン標準形$J$をなすジョルダン細胞$J_n(\lambda)$を
- $\lambda=0$かつ$n=1$のものが$q$個
- $\lambda=0$かつ$n\ge2$のものが$r$個
- $\lambda\neq0$のものが$s$個
と分けて考えると良さそうですね.
次元$n$を表す
そこで,$f$のジョルダン標準形$J$を
\begin{align*}&J=J_1\oplus J_2\oplus J_3,
\\&J_1:=\bigoplus_{k=1}^{q} J_1(0),\quad
J_2:=\bigoplus_{i=1}^{r} J_{m_i}(0),\quad
J_3:=\bigoplus_{j=1}^{s} J_{n_j}(\lambda_j)\end{align*}
とします($\lambda_1,\dots,\lambda_s\neq0$).
ジョルダン細胞$J_1(0)$をもたないときは$q=0$とし$J_1$はないものとします.$J_2$, $J_3$も同様に考えます.
$n=q+\sum_{i=1}^{r}m_i+\sum_{j=1}^{s}n_j$なので,上で考えたことと併せて
\begin{align*}n&=q(0+0)+\sum_{i=1}^{r}\{(m_i-2)+(m_i-1)\}+\sum_{j=1}^{s}(n_j+n_j)
\\&=-3r+2\bra{\sum_{i=1}^{r}m_i+\sum_{j=1}^{s}n_j}
=-3r+2(n-q)\end{align*}
となり$\dim{V}=n=3r+2q$が成り立ちます.よって,あとは$q$が3の倍数であることを示せばよいですね.
ジョルダン細胞$J_1(0)$をもつジョルダン行列$J$は,第1行と第1列が全て0なので$\operatorname{Ker}(J^2)=\operatorname{Im}(J)$に矛盾します.そのため,$J$はジョルダン細胞$J_1(0)$をもたず$q=0$となるので,$\dim{V}=3r$となり$\dim{V}$が3の倍数であることが分かります.
解答例1
$V=\{\m{0}\}$のときは成り立つから,以下$n:=\dim{V}\ge1$の場合を示す.
$V$のある基底$\mathcal{B}$が存在して,$f$の$\mathcal{B}$に関する表現行列は$n$次ジョルダン行列$J$となる.このとき
- $J$を左からかける線形写像$f_J:\C^n\to\C^n$
- $\mathcal{B}$により自然に定まる同型$\phi_\mathcal{B}:V\to\C^n$
を定めると,$f=\phi_\mathcal{B}^{-1}\circ f_J\circ \phi_\mathcal{B}$である.$\phi_\mathcal{B}$と$\phi_\mathcal{B}^{-1}$は同型なので,
\begin{align*}\operatorname{Ker}(f^2)
&=\set{\m{v}\in V}{\phi_\mathcal{B}^{-1}\circ f_J^2\circ \phi_\mathcal{B}(\m{v})=\m{0}_n}
\\&=\set{\m{v}\in V}{f_J^2\circ \phi_\mathcal{B}(\m{v})=\m{0}_n}
\\&=\set{\phi_\mathcal{B}^{-1}(\m{a})\in V}{f_J^2(\m{a})=\m{0}_n,\ \m{a}\in\C^n}
=\phi_\mathcal{B}^{-1}(\operatorname{Ker}(J^2)),
\\\operatorname{Im}(f)
&=\set{\phi_\mathcal{B}^{-1}\circ f_J\circ \phi_\mathcal{B}(\m{v})}{\m{v}\in V}
\\&=\set{\phi_\mathcal{B}^{-1}\circ f_J(\m{a})}{\m{a}\in\C^n}
=\phi_\mathcal{B}^{-1}(\operatorname{Im}(J))\end{align*}
である.よって,
\begin{align*}\operatorname{Ker}(f^2)=\operatorname{Im}(f)
&\iff\operatorname{Ker}(J^2)=\operatorname{Im}(J)\end{align*}
が成り立つ.
ここで,正の整数$n$と$\lambda\in\C$に対して,$J_n(\lambda)$を固有値$\lambda$の$n$次ジョルダン細胞とし,
\begin{align*}J=J_{m_1}(0)\oplus\dots\oplus J_{m_r}(0)\oplus J_{n_1}(\lambda_1)\oplus\dots\oplus J_{n_s}(\lambda_s)&
\\(\lambda_1,\dots,\lambda_s\in\C\setminus\{0\},\ 1\le m_1\le\dots\le m_r)&\end{align*}
とおく.ただし,便宜上,$J$が固有値0のジョルダン細胞をもたないときは$r=0$で$r$に関する和は0とし,$J$が固有値が0でないジョルダン細胞をもたないときは$s=0$で$s$に関する和は0とする.
$r\ge1$のとき,$m_1=1$と仮定すると,第1成分のみ1で他の成分は全て0の$\m{e}_1\in\C^n$に対し,
- $J$の第1行の成分は全て0なので$\operatorname{Im}J$の任意のベクトルの第1成分は0となり$\m{e}_1\notin\operatorname{Im}J$
- $J^2$の第1列の成分は全て0なので$J^2\m{e}_1=\m{0}_n$となり$\m{e}_1\in\operatorname{Ker}J^2$
が成り立ち$\operatorname{Ker}(J^2)=\operatorname{Im}(J)$に矛盾するから,$m_1\neq1$である.
また,次元定理と併せて
\begin{align*}n&=\dim\operatorname{Im}(J^2)+\dim\operatorname{Ker}(J^2)
\\&=\dim\operatorname{Im}(J^2)+\dim\operatorname{Im}(J)
\\&=\sum_{i=1}^{r}\bra{\operatorname{rank}(J_{m_i}(0)^2)+\operatorname{rank}J_{m_i}(0)}
\\&\qquad+\sum_{j=1}^{s}\bra{\operatorname{rank}(J_{n_j}(\lambda_j)^2)+\operatorname{rank}J_{n_j}(\lambda_j)}\end{align*}
である.
$(n,\lambda)\neq(1,0)$なる正の整数$n$と$\lambda\in\C$に対して
\begin{align*}&\operatorname{rank}(J_n(\lambda))=\begin{cases}n-1,&\lambda=0,\ n\ge2,\\n,&\lambda\neq0,\end{cases}
\\&\operatorname{rank}(J_n(\lambda)^2)=\begin{cases}n-2,&\lambda=0,\ n\ge2,\\n,&\lambda\neq0\end{cases}\end{align*}
なので,$J$と$J$をなすジョルダン細胞の次数を比較して$n=\sum_{i=1}^{r}m_i+\sum_{j=1}^{s}n_j$が成り立つことに注意して
\begin{align*}n&=\sum_{j=1}^{r}(2m_j-3)+\sum_{k=1}^{s}2n_k
\\&=-3r+2\bra{\sum_{i=1}^{r}m_i+\sum_{j=1}^{s}n_j}
\\&=-3r+2n\end{align*}
となり$\dim{V}=n=3r$を得る.
解答の方針とポイント2
「解答例1」では線形変換$f$のジョルダン標準形$J$に対して$\operatorname{Im}(J)=\operatorname{Ker}(J^2)$をほとんど次元の議論で使いましたが,次元の議論に落とす前にもう少し有用な条件を見出すこともできます.
$\operatorname{Im}(J)=\operatorname{Ker}(J^2)$より,任意の$\m{x}\in\C^n$に対して
\begin{align*}J^3\m{x}=J^2J\m{x}=\m{0}\end{align*}
が成り立つので$J^3$は零行列と分かりますから,この時点で3次以下の固有値0のジョルダン細胞しかもたないことが分かります.
さらに,「解答例1」で1次の固有値0のジョルダン細胞をもたないことを示したのと同様に,2次の固有値0のジョルダン細胞をもたないことも示すことができ,結局$J$は3次の固有値0のジョルダン細胞しかもたないことが分かります.
解答例2
($\operatorname{Ker}(f^2)=\operatorname{Im}(f)\iff \operatorname{Ker}(J^2)=\operatorname{Im}(J)$までは解答例1と同様.)
任意の$\m{x}\in\C^n$に対して,$J\m{x}\in\operatorname{Im}(J)=\operatorname{Ker}(J^2)$なので
\begin{align*}J^3\m{x}=J^2(J\m{x})=\m{0}\end{align*}
だから$J^3$は零行列である.正の整数$n$と$\lambda\in\C$に対して,$J_n(\lambda)$を固有値$\lambda$の$n$次ジョルダン細胞とし,
\begin{align*}J=J_{n_1}(\lambda_1)\oplus\dots\oplus J_{n_r}(\lambda_r)\end{align*}
とおくと,
\begin{align*}O_n=J^3=J_{n_1}(\lambda_1)^3\oplus\dots\oplus J_{n_r}(\lambda_r)^3\end{align*}
が成り立つ.任意の正の整数$n$と$\lambda\in\C\setminus\{0\}$に対し$J_n(\lambda)^3$は零行列でなく,4以上の任意の正の整数$n$に対し$J_n(0)^3$は零行列でないから,$\lambda_1=\dots=\lambda_r=0$かつ$n_1,\dots,n_r\in\{1,2,3\}$が成り立つ.
ここで,ある$i\in\{1,2,\dots,r\}$が存在して$n_i=1,2$なら,第$n_1+\dots+n_i$成分のみ1で他の成分は全て0の$\m{e}\in\C^n$に対し,
- $J$の第$n_1+\dots+n_i$行の成分は全て0なので$\operatorname{Im}J$の任意のベクトルの第$n_1+\dots+n_i$成分は0となり$\m{e}\notin\operatorname{Im}J$
- $J^2$の第$n_1+\dots+n_i$列の成分は全て0なので$J^2\m{e}=\m{0}_n$となり$\m{e}\in\operatorname{Ker}J^2$
が成り立ち$\operatorname{Ker}(J^2)=\operatorname{Im}(J)$に矛盾するから,$n_i\neq1,2$($i=1,2,\dots,r$)である.
よって,$n_1=\dots=n_r=3$なので,$\dim{V}=n=3r$が従う.
第4問:微分積分学(一様収束する関数列)
あまり類題の多くないタイプの問題で,そういった問題ではどういうことが起こっているのかを観察することが大切です.そのため,最初から手を付けなかった人が多かったのではないかと思いますし,実際に難易度は高めではあると思います.
ただ,きちんと観察して方針が見えれば解答自体は短くて済むので,差が付いた問題だと思われます.
開区間$(0,\infty)$上で定義された実数値連続関数$f$が次の条件$(*)$を満たすとする.このとき,$xf(x)$は定数関数であることを示せ.
$(*)$ 正の整数$n$に対して,$f_n(x)=nf(nx)$とおく.このとき,$(0,\infty)$上で定義された実数値関数$g$が存在して,関数列$\{f_n\}_{n=1}^{\infty}$は$g$に$(0,\infty)$上で一様収束する.
解答の方針とポイント1
結論が分かっているので,そこから逆算することでどう問題が成り立っているのかを考えます.
関数列$\{f_n\}_{n=1}^{\infty}$の観察
まず結論は$f(x)=\frac{C}{x}$($C\in\R$は定数)であり,このときは
\begin{align*}f_n(x)=nf(nx)=\frac{C}{x}=f(x)\end{align*}
となり,$n$によらず$f_n=f$が成り立ちます(したがって,$g=f$も成り立ちます).
逆に,$f$がそうなっていないときにどうマズいのかを考えましょう.例えば,関数$f$が大体$f(x)=\frac{C}{x}$だが,部分的にそうなっておらずグラフに「突起」があるとします.
$y=f_n(x)$のグラフは$y=f(x)$のグラフを$x$軸方向に$\frac{1}{n}$倍し,$y$軸方向に$n$倍したものになっているので,$n$を大きくすると$f$のグラフの「突起」は($x$軸方向で0に寄っていき)$y$軸方向で$n$倍されます.
このとき,$\{f_n\}_{n=1}^{\infty}$は関数$g:(0,\infty)\to\R;x\mapsto\frac{C}{x}$に各点収束はしますが,原点付近で$|f_n(x)-g(x)|$が大きい部分ができて一様収束しなさそうですね.
$xf(x)$の値が異なる$x$を比較する
上記のアイディアから背理法で考えます.もし$xf(x)$が定数関数でないと仮定すると,ある異なる$p,p’>0$が存在して,$C:=|pf(p)-p’f(p’)|>0$が成り立ちます.
このとき,$q:=\frac{p}{s}=\frac{p’}{t}$($s$, $t$は正の整数)と揃えることができれば
\begin{align*}|f_s(q)-f_t(q)|=|sf(p)-tf(p’)|=\frac{1}{q}|pf(p)-p’f(p’)|\end{align*}
なので,これをもとにさらに$|f_{ns}(\frac{q}{n})-f_{nt}(\frac{q}{n})|$($n$は正の整数)を考えれば一様収束しないことが言えますね.
さて,$q:=\frac{p}{s}=\frac{p’}{t}$($s$, $t$は正の整数)と揃えるには,$p$も$p’$も有理数であればよいですが,$xf(x)$の連続性と$(0,\infty)$における$\Q\cap(0,\infty)$の稠密性から$p$も$p’$も有理数にとれますね.
よって,$p=\frac{k}{m}$, $p’=\frac{k’}{m’}$($k,m,k’,m’$は正の整数)とおくと,$(s,t)=(km’n,k’mn)$($n$は正の整数)ととれば
\begin{align*}\frac{p}{s}=\frac{p’}{t}\bra{=\frac{1}{mm’n}}\end{align*}
が成り立ちますから
\begin{align*}\abs{f_{km’n}\bra{\frac{1}{mm’n}}-f_{k’mn}\bra{\frac{1}{mm’n}}}
=mm’n|pf(p)-p’f(p’)|\end{align*}
となり,これは$\{f_n\}_{n=1}^{\infty}$(の部分列)が一様収束することに矛盾します.
解答例1
背理法により示す.$xf(x)$が定数関数でないと仮定する.このとき,ある異なる$p,p’>0$が存在して,$C:=|pf(p)-p’f(p’)|>0$が成り立つ.
また,$f$は連続だから関数$xf(x)$も連続なので,ある$\delta,\delta’\in(0,\frac{|p-p’|}{2})$が存在して,
\begin{align*}&|x-p|<\delta\Ra|xf(x)-pf(p)|<\frac{C}{4},
\\&|x-p’|<\delta’\Ra|xf(x)-p’f(p’)|<\frac{C}{4}\end{align*}
が成り立つ.よって,$(0,\infty)$における$\Q\cap(0,\infty)$の稠密性と併せて,ある異なる$r,r’\in\Q\cap(0,\infty)$が存在して,$|rf(r)-r’f(r’)|>\frac{C}{2}>0$が成り立つ.
ここで,$r=\frac{k}{m}$, $r’=\frac{k’}{m’}$($k,m,k’,m’$は正の整数)とおく.
このとき,任意の正の整数$n$に対して,
\begin{align*}\sup_{x>0}|f_{nk’m}(x)-f_{nkm’}(x)|
&\ge\abs{f_{km’n}\bra{\frac{1}{mm’n}}-f_{k’mn}\bra{\frac{1}{mm’n}}}
\\&=\abs{mm’n\cdot\frac{k}{m}f\bra{\frac{k}{m}}-mm’n\cdot\frac{k’}{m’}f\bra{\frac{k’}{m’}}}
\\&=mm’n|rf(r)-r’f(r’)|\end{align*}
が成り立つ.よって,$rf(r)-r’f(r’)\neq0$と併せて
\begin{align*}&\liminf_{n\to\infty}\sup_{x>0}|f_{nk’m}(x)-f_{nkm’}(x)|
\\&\ge \lim_{n\to\infty}mm’n|rf(r)-r’f(r’)|
=\infty\end{align*}
となるが,これは
\begin{align*}&\limsup_{n\to\infty}\sup_{x>0}|f_{nk’m}(x)-f_{nkm’}(x)|
\\&\le\lim_{n\to\infty}\bra{\sup_{x>0}|f_{nk’m}(x)-g(x)|+\sup_{x>0}|g(x)-f_{nkm’}(x)|}=0\end{align*}
に矛盾するから,仮定は誤りで$xf(x)$は定数関数である.
解答の方針とポイント2
「解答例1」のような直観的なアイディアによる解法というより,技術的な解法なので慣れていないと発想するのは少々難しい議論ですが,$g$を先に直接求めて解くこともできます.
「任意の」を使って観察する
任意の正の整数$n$と$x>0$に対して$f_n(x)=nf(nx)$が成り立つので,$n$と$x$に具体的にいろいろ代入して様子を掴むのは大切な観察です.例えば,任意の正の整数$m$, $n$に対して
- $x=1$として$f_n(1)=nf(n)$
- $x=\frac{1}{n}$として$f_n(\frac{1}{n})=nf(1)$
- $x$を$\frac{x}{n}$に置き換えて$f_n(\frac{x}{n})=nf(x)$
- $x$を$mx$に置き換えて$f_n(mx)=nf(mnx)$
- $n$を$mn$に置き換えて$f_{mn}(x)=mnf(mnx)$
などを使えそうなものがないか「物色」します.このとき,最後の2つの等式から$mf_n(mx)=f_{mn}(x)$が成り立つので,両辺で極限をとって$mg(mx)=g(x)$が成り立ちますね.
関数方程式を解くアイディア
$mg(mx)=g(x)$は関数方程式になっているので,これを解けば$g$が得られます.
関数方程式も具体的にいろいろ代入して様子を掴むのも大切な観察です.そこで,任意の正の整数$m$, $n$に対して
- $x=1$として$mg(m)=g(1)(\iff g(m)=\frac{1}{m}g(1))$
- $x=\frac{n}{m}$に置き換えて$mg(n)=g(\frac{n}{m})$
を考えることができれば,$g(\frac{n}{m})=\frac{m}{n}g(1)$が成り立ち,任意の正の有理数$r$に対して$g(r)=\frac{g(1)}{r}$が成り立つことが分かります.
加えて$g$は連続関数列の一様収束極限なので連続ですから,$(0,\infty)$における$\Q\cap(0,\infty)$の稠密性と併せて,任意の$x>0$に対して$g(x)=\frac{g(1)}{x}$が成り立ちますね.また,
\begin{align*}|f(x)-g(x)|=\frac{1}{n}\abs{f_n\bra{\frac{x}{n}}-g\bra{\frac{x}{n}}}\end{align*}
ですから,$\{f_n\}_{n=1}^{\infty}$が$g$に一様収束することから$f=g$が得られますね.
解答例2
任意の正の整数$m$と$x>0$に対して
\begin{align*}g(x)&=\lim_{n\to\infty}f_{mn}(x)
=\lim_{n\to\infty}mnf(mnx)
\\&=\lim_{n\to\infty}m\cdot nf(n\cdot mx)
=\lim_{n\to\infty}mf_n(mx)
=mg(mx)\end{align*}
が成り立つ.そこで,$g(x)=mg(mx)$に$x=\frac{n}{m},1$($n$は正の整数)を代入すると,
\begin{align*}g\bra{\frac{n}{m}}=mg(n),\quad
g(1)=mg(m)\bra{\iff g(n)=\frac{1}{n}g(1)}\end{align*}
が成り立つから$g\bra{\frac{n}{m}}=\frac{m}{n}g(1)$が従う.
さらに,実数値連続関数列$\{f_n\}_{n=1}^{\infty}$の一様収束極限だから$g$が連続であることと,
\begin{align*}\Q\cap(0,\infty)=\set{\frac{n}{m}}{\text{$m$, $n$は正の整数}}\end{align*}
の$(0,\infty)$における稠密性を併せて,任意の$x>0$に対して$g(x)=\frac{g(1)}{x}$が成り立つ.
ここで,任意の$x>0$に対して
\begin{align*}|f(x)-g(x)|
=|\frac{1}{n}f_n\bra{\frac{x}{n}}-\frac{1}{n}\cdot g\bra{\frac{x}{n}}|
\le\frac{1}{n}\sup_{x>0}|f_n(x)-g(x)|
\xrightarrow[]{n\to\infty}0\end{align*}
だから,もとより$0\le|f(x)-g(x)|$であることと併せて$f(x)=g(x)=\frac{g(1)}{x}$が従う.
第5問:複素解析学(広義積分の計算)
複素積分を用いて広義積分を計算する典型的な問題で,難易度としては易しいです.留数の計算が少々面倒なので試験場では焦ってしまいそうですが,確実に解きたい問題です.
広義積分
\begin{align*}\int_{-\infty}^{\infty}\frac{\cos^2{\pi x}}{x^4-6x^2+25}\,dx\end{align*}
の値を求めよ.
解答の方針とポイント
「もとの広義積分を実軸上の区間$L_R$上の複素積分で表し,閉曲線$C_R\cup L_R$上の複素積分を留数定理で求め,余分な$C_R$上の複素積分が$R\to\infty$で0に収束することを示す」という基本的な議論で解けます.
広義積分と複素積分と留数定理
被積分関数の分子を2倍角の公式$\cos^2{\pi x}=\frac{1+\cos{2\pi x}}{2}$で変形すると,
\begin{align*}&f(z)=\frac{1+e^{2\pi iz}}{z^4-6z^2+25},
\\&L_R=\set{z\in\C}{z=x,x\in[-R,R]}\end{align*}
とおくことで,求める広義積分$I$は複素積分で
\begin{align*}I&=\frac{1}{2}\int_{-\infty}^{\infty}\frac{1+\cos{2\pi x}}{x^4-6x^2+25}\,dx
\\&=\lim\limits_{R\to\infty}\frac{1}{2}\operatorname{Re}\int_{L_R}f(z)\,dz\end{align*}
と表せますね.また,
\begin{align*}z^4-6z^2+25=(z-2-i)(z+2-i)(z-2+i)(z+2+i)\end{align*}
と因数分解できるから,$f$の極は$\pm2\pm i$(複号任意)でいずれも1位の極です.よって,
\begin{align*}C_R:=\set{z\in\C}{z=Re^{i\theta},\theta\in[0,\pi]}\end{align*}
とすれば,$R>\sqrt{5}$のときは$C_R\cup L_R$上で$f$は連続で,$\pm2+i$を除く$C_R\cup L_R$の内部で$f$は正則です.
よって,任意の$R>\sqrt{5}$に対して,留数定理より
\begin{align*}\int_{C_R\cup L_R}f(z)\,dz=2\pi i(\mathrm{Res}(f,2+i)+\mathrm{Res}(f,-2+i))\end{align*}
が成り立ちますから,あとは留数$\mathrm{Res}(f,\pm2+i)$を求め,$\lim\limits_{R\to\infty}\int_{C_R}f(z)\,dz=0$を示せばよいですね.
1位の極の留数の求め方
複素関数$f$が点$\alpha$に1位の極をもつときは,$f$が
\begin{align*}f(z)=\frac{a_{-1}}{z-\alpha}+a_0+a_1(z-\alpha)+a_2(z-\alpha)^2+\dots\quad(a_{-1}\neq0)\end{align*}
とローラン展開できるということですから,両辺に$z-\alpha$をかけて
\begin{align*}f(z)(z-\alpha)=a_{-1}+a_0(z-\alpha)+a_1(z-\alpha)^2+a_2(z-\alpha)^3+\dots\end{align*}
としてから極限$z\to\alpha$を考えることで留数$\operatorname{Res}(f,\alpha)$が求められますね.
技術的には2位以上の極の留数も求められるようになっておくことも大切です.
上半円$C_R$上の複素積分は$R\to\infty$で0に収束する
$t\in(0,\pi]$に対して,大雑把には$R$が十分大きいとき
\begin{align*}|f(Re^{it})|\approx\frac{1+e^{-2R\pi\sin{t}}}{R^4-6R^2+25}\le\frac{2}{R^4-6R^2-25}\end{align*}
と見積もることができ,$C_R$の長さが$\pi R$であることと併せて
\begin{align*}\abs{\int_{C_R}f(z)\,dz}\lesssim\frac{2\pi R}{R^4-6R^2+25}\xrightarrow[]{R\to\infty}0\end{align*}
となりそうですね.
以上の議論を厳密にするには,$z=Re^{it}$と変数変換して
\begin{align*}\abs{\int_{C_R}f(z)\,dz}&=\abs{\int_{0}^{\pi}f(Re^{it})\bra{iRe^{it}\,dt}}
\\&\le R\abs{\int_{0}^{\pi}|f(Re^{it})|\,dt}\end{align*}
と評価すれば良いですね.
解答例
まず$z\in\C$の方程式$z^4-6z^2+25=0$を解くが,左辺は$(z^2-3-4i)(z^2-3+4i)$と因数分解できるから$z^2=3\pm4i$を解けばよい.
$z=a+bi$($a,b\in\R$)とおくと
\begin{align*}z^2=3+4i\iff \begin{cases}a^2-b^2=3,\\ab=2\end{cases}\end{align*}
であり,第1式の$a^2$倍に$ab=2$を代入して
\begin{align*}a^4-3a^2-4=0
\iff(a^2-4)(a^2+1)=0
\iff a=\pm2\end{align*}
が必要なので,もとの式に代入して$(a,b)=(2,1),(-2,-1)$を得る.よって,$z^2=3+4i$の解は
\begin{align*}\alpha:=2+i,\quad
\beta:=-2-i\end{align*}
である.同様に$z^2=3-4i$の解は
\begin{align*}\gamma:=-2+i,\quad
\delta:=2-i\end{align*}
である.
ここで,領域$\C\setminus\{\alpha,\beta,\gamma,\delta\}$上の正則関数$f$を
\begin{align*}f(z)=\frac{1+e^{2\pi z i}}{z^4-6z^2+25}\end{align*}
で定める.また,$R>\sqrt{5}$に対して閉曲線$\Gamma_R\subset\C\setminus\{\alpha,\beta,\gamma,\delta\}$を
\begin{align*}&L_R:=\set{z\in\C}{z=x,x\in[-R,R]},
\\&C_R:=\set{z\in\C}{z=Re^{it},t\in[0,\pi]},
\\&\Gamma_R:=L_R\cup C_R\end{align*}
で定める.ただし,閉曲線$\Gamma_R$の向きは正方向とする.このとき,求める広義積分を$I$とおくと
\begin{align*}I&=\lim_{R\to\infty}\frac{1}{2}\int_{-R}^{R}\frac{1+\cos{2\pi x}}{x^4-6x^2+25}\,dx
\\&=\lim_{R\to\infty}\frac{1}{2}\operatorname{Re}\int_{-R}^{R}\frac{1+e^{2\pi xi}}{x^4-6x^2+25}\,dx
\\&=\lim_{R\to\infty}\frac{1}{2}\operatorname{Re}\int_{L_R}f(z)\,dz\end{align*}
である.ただし,$z\in\C$に対して$\operatorname{Re}z$は$z$の実部を表す.
[1]$\alpha$と$\gamma$は閉曲線$\Gamma_R$の内部の$f$の極で,$\Gamma_R$は$f$の正則領域に含まれるから,留数定理より
\begin{align*}\int_{\Gamma_R}f(z)\,dz=2\pi i(\operatorname{Res}(f,\alpha)+\operatorname{Res}(f,\gamma))\end{align*}
である.$\alpha$と$\gamma$はいずれも$f$の1位の極だから
\begin{align*}\operatorname{Res}(f,\alpha)
&=\lim_{z\to\alpha}f(z)(z-\alpha)
=\frac{1+e^{2\pi \alpha i}}{(\alpha-\beta)(\alpha^2-3+4i)}
\\&=\frac{1+e^{-2\pi+4\pi i}}{16(2+i)i}
=\frac{1+e^{-2\pi}}{16(2+i)i},
\\\operatorname{Res}(f,\gamma)
&=\lim_{z\to\gamma}f(z)(z-\gamma)
=\frac{1+e^{2\pi \gamma i}}{(\gamma^2-3-4i)(\gamma-\delta)}
\\&=\frac{1+e^{-2\pi-4\pi i}}{16(2-i)i}
=\frac{1+e^{-2\pi}}{16(2-i)i}\end{align*}
なので,
\begin{align*}\int_{\Gamma_R}f(z)\,dz
&=2\pi i\bra{\frac{1+e^{-2\pi}}{16(2+i)i}+\frac{1+e^{-2\pi}}{16(2-i)i}}
\\&=\frac{4\pi(1+e^{-2\pi})}{8(2+i)(2-i)}
=\frac{\pi(1+e^{-2\pi})}{10}\end{align*}
である.
[2]$z\in C_R$は$z=R(\cos{t}+i\sin{t})$($t\in[0,\pi]$)と表せるので,
\begin{align*}|e^{2\pi zi}|=\abs{e^{2\pi R(i\cos{t}-\sin{t})}}=e^{-2\pi R\sin{t}}\le1\end{align*}
であることに注意すると,$R^4>6R^2+25$となる十分大きな$R>\sqrt{5}$に対して
\begin{align*}\abs{\int_{C_R}f(z)\,dz}
&\le\abs{\int_{0}^{\pi}\frac{1+e^{2\pi Re^{it}i}}{R^4e^{4it}-6R^2e^{2it}+25}\,Rie^{it}dt}
\\&\le\int_{0}^{\pi}\frac{|1+e^{2\pi zi}||Rie^{it}|}{|R^4e^{4it}-6R^2e^{2it}+25|}\,dt
\\&\le \int_{0}^{\pi}\frac{(1+1)R}{R^4-6R^2-25}\,dt
\\&\le \frac{2R\pi}{R^4-6R^2-25}
\xrightarrow[]{R\to\infty}0\end{align*}
なので,$\lim\limits_{R\to\infty}\abs{\int_{C_R}f(z)\,dz}=0$が成り立つ.
以上より,求める広義積分$I$は
\begin{align*}I&=\lim_{R\to\infty}\frac{1}{2}\operatorname{Re}\int_{L_R}f(z)\,dz
\\&=\lim_{R\to\infty}\frac{1}{2}\operatorname{Re}\bra{\int_{\Gamma_R}f(z)\,dz-\int_{C_R}f(z)\,dz}
\\&=\frac{1}{2}\operatorname{Re}\bra{\frac{\pi(1+e^{-2\pi})}{10}-0}
=\frac{\pi(1+e^{-2\pi})}{20}\end{align*}
である.
第6問:微分幾何学(写像の正則値)
接空間に慣れているなら,$\phi$の微分を直接考えると見通しよく議論できます.
一方,接空間に慣れていなくても,局所座標をとって地道に計算するのでもそれほど大変ではありません.ただ,地道に計算する方法は試験場では意外と焦ってしまうかもしれません.
写像$f:S^1\to\R^3$, $g:S^1\to\R^3$をそれぞれ
\begin{align*}&f(\cos{\theta},\sin{\theta})=(\cos{\theta},\sin{\theta},0),
\\&g(\cos{\theta},\sin{\theta})=(1+\cos{\theta},0,\sin{\theta})\end{align*}($0\le\theta<2\pi$)と定義し,写像$\phi:S^1\times S^1\to S^2$を,$\m{x},\m{y}\in S^1$に対して
\begin{align*}\phi(\m{x},\m{y})=\frac{g(\m{y})-f(\m{x})}{\|g(\m{y})-f(\m{x})\|}\end{align*}
で定義する.このとき,点$(1,0,0)\in S^2$は$\phi$の正則値であることを示せ.ただし,$S^1$は$\R^2$の原点を中心とする半径1の円周とし,$S^2$は$\R^3$の原点を中心とする半径1の球面とする.また,$(x_1,x_2,x_3)\in\R^3$に対して
\begin{align*}\|(x_1,x_2,x_3)\|=\sqrt{x_1^2+x_2^2+x_3^2}\end{align*}
とする.
解答の方針とポイント1
$\phi^{-1}(1,0,0)$の全ての点が$\phi$の正則点であることを示せばよいですね.
正則値と正則点の定義
多様体$M$, $N$に対して,滑らかな写像$\phi:M\to N$を考える.点$p\in M$が$\phi$の正則点であるとは,$p$における微分$(d\phi)_p$が全射であることをいう.
また,点$q\in N$が$\phi$の正則値であるとは,$\phi^{-1}(q)$の全ての元が正則点であることをいう.
本問題では$\phi(\m{a},\m{b})=(1,0,0)$($\m{a},\m{b}\in S^1$)とおいて$\m{a}$, $\m{b}$を求めることで,
\begin{align*}\phi^{-1}(1,0,0)=\{((1,0),(1,0)),((-1,0),(1,0)),((-1,0),(-1,0))\}\end{align*}
と分かります.よって,3点$\m{p}_1:=((1,0),(1,0))$, $\m{p}_2:=((-1,0),(1,0))$, $\m{p}_3:=((-1,0),(-1,0))$が全て$\phi$の正則点であることを示せばよいですね.
すなわち,任意の$k\in\{1,2,3\}$に対して,$\phi$の点$\m{p}_k$での微分
\begin{align*}(d\phi)_{\m{p}_k}:T_{\m{p}_k}(S^1\times S^1)\to T_{\phi(\m{p}_k)}(S^2)\end{align*}
が全射であることを示せばよいですね.
微分$(d\phi)_{p_k}$の全射性
ここでは具体的に$k=1$で考えましょう.$\m{p}_1=((1,0),(1,0))$, $\phi(\m{p}_1)=(1,0,0)$なので,微分$(d\phi)_{\m{p}_1}$の定義域と終集合はそれぞれ
\begin{align*}&T_{\m{p}_1}(S^1\times S^1)=\set{((0,s),(0,t))}{s,t\in\R},
\\&T_{\phi(\m{p}_1)}(S^2)=\set{(0,a,b)}{a,b\in\R}\end{align*}
です.ここで,$F:S^1\times S^1\to\R^3\setminus\{\m{0}_3\}$と$N:\R^3\setminus\{\m{0}_3\}\to S^2$を
\begin{align*}&F(\m{x},\m{y}):=g(\m{y})-f(\m{x}),\quad
N(\m{x}):=\frac{\m{x}}{\|\m{x}\|}\end{align*}
とおくと,$\phi=N\circ F$なので$(d\phi)_{\m{p}_1}=(dN)_{F(\m{p}_1)}\circ(dF)_{\m{p}_1}$が成り立ちます.
$N$と$F$に分けずにゴリゴリ計算することもできますが,このような計算では段階に分ける方が見通しよく計算できることが多いです.
$F$の$\R^4$への自然な拡張$\widetilde{F}(x_1,x_2,y_1,y_2)=(1-x_1+y_1,-x_2,y_2)$のヤコビ行列は
\begin{align*}J\widetilde{F}(x_1,x_2,y_1,y_2)=\bmat{-1&0&1&0\\0&-1&0&0\\0&0&0&1}\end{align*}
なので,
\begin{align*}(dF)_{\m{p}_1}(0,s,0,t)=\bmat{-1&0&1&0\\0&-1&0&0\\0&0&0&1}\bmat{0\\s\\0\\t}=\bmat{0\\-s\\t}\end{align*}
となります.また,$N$の点$F(\m{p}_1)$におけるヤコビ行列は
\begin{align*}JN(F(\m{p}_1))
&=\left.\bmat{\frac{\partial(x_1/\|\m{x}\|)}{\partial x_1}&\frac{\partial(x_1/\|\m{x}\|)}{\partial x_2}&\frac{\partial(x_1/\|\m{x}\|)}{\partial x_3}\\
\frac{\partial(x_2/\|\m{x}\|)}{\partial x_1}&\frac{\partial(x_2/\|\m{x}\|)}{\partial x_2}&\frac{\partial(x_2/\|\m{x}\|)}{\partial x_3}\\
\frac{\partial(x_3/\|\m{x}\|)}{\partial x_1}&\frac{\partial(x_3/\|\m{x}\|)}{\partial x_2}&\frac{\partial(x_3/\|\m{x}\|)}{\partial x_3}}\right|_{F(\m{p}_1)}
=\bmat{0&0&0\\0&1&0\\0&0&1}\end{align*}
となるので,結局
\begin{align*}\operatorname{Im}(d\phi)_{\m{p}_1}
=\set{\bmat{0&0&0\\0&1&0\\0&0&1}\bmat{0\\-s\\t}}{s,t\in\R}
=\set{\bmat{0\\-s\\t}}{s,t\in\R}\end{align*}
となり,これは$T_{\phi(\m{p}_1)}(S^2)=\set{(0,a,b)}{a,b\in\R}$に等しく$(d\phi)_{\m{p}_1}$は全射です.
解答例1
任意に$(\m{a},\m{b})\in\phi^{-1}(1,0,0)$をとり,$\m{a}=(a_1,a_2)$, $\m{b}=(b_1,b_2)$と表すと,
\begin{align*}g(\m{b})-f(\m{a})=(1+b_1-a_1,-a_2,b_2)\end{align*}
より$a_2=b_2=0$なので,$(a_1,b_1)=(\pm1,\pm1)$(複号任意)であり
\begin{align*}&\phi((1,0),(1,0))=\phi((-1,0),(1,0))=\phi((-1,0),(-1,0))=(1,0,0),
\\&\phi((1,0),(-1,0))=(-1,0,0)\end{align*}
なので,
\begin{align*}\m{p}_1:=((1,0),(1,0)),\quad
\m{p}_2:=((-1,0),(1,0)),\quad
\m{p}_3:=((-1,0),(-1,0))\end{align*}
とおくと,$\phi^{-1}(1,0,0)=\{\m{p}_1,\m{p}_2,\m{p}_3\}$である.なお,同様の議論で$g(\m{y})-f(\m{x})\neq0$($\m{x},\m{y}\in S^1$)であることが分かる.
ここで,$F:S^1\times S^1\to\R^3\setminus\{\m{0}_3\}$と$N:\R^3\setminus\{\m{0}_3\}\to S^2$を
\begin{align*}&F(\m{x},\m{y}):=g(\m{y})-f(\m{x}),\quad
N(\m{x}):=\frac{\m{x}}{\|\m{x}\|}\end{align*}
で定めると,$\phi=N\circ F$が成り立つから,$\phi$の点$\m{p}_k\in S^1\times S^1$での微分$(d\phi)_{\m{p}_k}$は
\begin{align*}(d\phi)_{\m{p}_k}=(dN)_{F(\m{p}_k)}\circ (dF)_{\m{p}_k}\end{align*}
となる($k=1,2,3$).
ここで,任意に$k=1,2,3$をとる.$F$の$\R^4$への自然な拡張を
\begin{align*}\widetilde{F}:\R^4\to\R^3;(x_1,x_2,y_1,y_2)\mapsto(1-x_1+y_1,-x_2,y_2)\end{align*}
で定めると,$J\widetilde{F}(x_1,x_2,y_1,y_2)=\bmat{-1&0&1&0\\0&-1&0&0\\0&0&0&1}$である.また,$\m{p}_k=(\m{x}_k,\m{y}_k)$($\m{x}_k,\m{y}_k\in S^1$)とおくと
\begin{align*}T_{\m{p}_k}(S^1\times S^1)
=T_{\m{x}_k}S^1\times T_{\m{y}_k}S^1
=\set{((0,s),(0,t))}{s,t\in\R}\end{align*}
である.よって,
\begin{align*}(dF)_{\m{p}_k}((0,s),(0,t))
=J\widetilde{F}(\m{p}_k)\bmat{0\\s\\0\\t}
=\bmat{0\\-s\\t}\end{align*}
を得る.
さらに,$\m{x}=(x_1,x_2,x_3)$とすると,異なる$i,j\in\{1,2,3\}$に対して
\begin{align*}&\frac{\partial}{\partial x_i}\bra{\frac{x_i}{\|\m{x}\|}}
=\frac{\|\m{x}\|-x_i\frac{2\anb{\frac{\partial \m{x}}{\partial x_i},\m{x}}}{2\sqrt{\anb{\m{x},\m{x}}}}}{\|\m{x}\|^2}
=\frac{\|\m{x}\|^2-x_i^2}{\|\m{x}\|^3},
\\&\frac{\partial}{\partial x_j}\bra{\frac{x_i}{\|\m{x}\|}}
=\frac{-x_i\cdot2\anb{\frac{\partial \m{x}}{\partial x_j},\m{x}}}{2\|\m{x}\|^3}
=\frac{-x_ix_j}{\|\m{x}\|^3}\end{align*}
なので,$F(\m{p}_k)=(c_k,0,0)$とおくと
\begin{align*}JN(F(\m{p}_k))
&=\left.\frac{1}{\|\m{x}\|^3}\bmat{\|\m{x}\|^2-x_1^2&-x_1x_2&-x_1x_3\\
-x_2x_1&\|\m{x}\|^2-x_2^2&-x_2x_3\\
-x_3x_1&-x_3x_2&\|\m{x}\|^2-x_3^2}\right|_{\m{x}=(c_k,0,0)}
\\&=\frac{1}{|c_k|}\bmat{0&0&0\\0&1&0\\0&0&1}\end{align*}
である.以上より,任意の$s,t\in\R$に対して
\begin{align*}(d\phi)_{\m{p}_k}((0,s),(0,t))
&=(dN)_{F(\m{p}_k)}\circ (dF)_{\m{p}_k}((0,s),(0,t))
\\&=\frac{1}{|c_k|}\bmat{0&0&0\\0&1&0\\0&0&1}\bmat{0\\-s\\t}
=\frac{1}{|c_k|}\bmat{0\\-s\\t}\end{align*}
が成り立つ.よって,
\begin{align*}\operatorname{Im}(d\phi)_{\m{p}_k}
=\set{\frac{1}{|c_k|}\bmat{0\\-s\\t}}{s,t\in\R}
=T_{(1,0,0)}S^2\end{align*}
だから$(d\phi)_{\m{p}_k}:T_{\m{p}_k}(S^1\times S^1)\to T_{(1,0,0)}S^2$は全射なので,$\m{p}_k$は$\phi$の正則点である.よって,$(1,0,0)$は$\phi$の正則値である.
解答の方針とポイント2
$S^1\times S^1$における$\phi^{-1}(1,0,0)$に属する3点の局所座標を考えて,$\phi$のヤコビ行列の正則性を示すことでも証明できますね.
$\phi$のヤコビ行列と微分$(d\phi)_{\m{p}_k}$の全射性
$\phi^{-1}(1,0,0)$に属する3点を
\begin{align*}\m{p}_1:=((1,0),(1,0)),\quad
\m{p}_2:=((-1,0),(1,0)),\quad
\m{p}_3:=((-1,0),(-1,0))\end{align*}
とし,点$\m{p}_k\in S^1\times S^1$での$\phi$の微分$(d\phi)_{\m{p}_k}$の全射性を示すには,$\Phi:=\widetilde{\psi}\circ\phi\circ\psi_k^{-1}$と合成可能な
- 点$\m{p}_k$での局所座標$\psi_k:W_k\to U_k$($W_k\subset S^1\times S^1$, $U_k\subset\R^2$)
- 点$\phi(\m{p}_k)=(1,0,0)$での局所座標$\widetilde{\psi}:W\to V$($W\subset S^2$, $V\subset\R^2$)
定めて,$\Phi:U_k\to V$の点$\psi_k(\m{p}_k)$でのヤコビ行列$(J\Phi)_{\psi_k(\m{p}_k)}$が(いまは正方行列なので)正則であることを示せばよいですね($k=1,2,3$).
例えば,$k=1$の場合は
\begin{align*}&W_1:=\set{((\cos{\theta},\sin{\theta}),(\cos{\eta},\sin{\eta}))\in S^1\times S^1}{\theta,\eta\in\bra{-\frac{\pi}{6},\frac{\pi}{6}}},
\\&W:=\set{(x,y,z)\in S^2}{x>0},\end{align*}
とおいて,
- $\m{p}_1\in S^1\times S^1$の局所座標$\psi_1:W_1\to (-\frac{\pi}{6},\frac{\pi}{6})^2$を\begin{align*}\psi_1((\cos{\theta},\sin{\theta}),(\cos{\eta},\sin{\eta}))=(\theta,\eta)\end{align*}
- $(1,0,0)\in S^2$の局所座標$\widetilde{\psi}:W\to B_{(0,0)}(1)$を\begin{align*}\widetilde{\psi}(\sqrt{1-x^2-y^2},x,y)=(x,y)\end{align*}
で定めれば,合成写像$\Phi:=\widetilde{\psi}\circ\phi\circ \psi_1^{-1}$が定義できて
\begin{align*}&\Phi(\theta,\eta)=\frac{(-\sin{\theta},\sin{\eta})}{\|F(\theta,\eta)\|},
\\&F(\theta,\eta):=g(\cos{\eta},\sin{\eta})-f(\cos{\theta},\sin{\theta})\end{align*}
となりますから,点$\psi_1(\m{p}_1)=(0,0)$での$\Phi$のヤコビ行列
\begin{align*}(J\Phi)_{(0,0)}
=\left.\bmat{-\frac{\partial}{\partial\theta}\bra{\frac{\sin\theta}{\|F(\theta,\eta)\|}}&-\frac{\partial}{\partial\eta}\bra{\frac{\sin\theta}{\|F(\theta,\eta)\|}}\\
\frac{\partial}{\partial\theta}\bra{\frac{\sin\eta}{\|F(\theta,\eta)\|}}&\frac{\partial}{\partial\eta}\bra{\frac{\sin\eta}{\|F(\theta,\eta)\|}}}\right|_{(\theta,\eta)=(0,0)}\end{align*}
が正則であることを示せばよいことになります.
$\m{p}_2,\m{p}_3\notin W_1$なので,$k=2,3$の場合は$W_1$とは異なる$W_2$, $W_3$を用意する必要があります.
解答例2
($\phi^{-1}$を求めるところまでは解答例1と同様.)
\begin{align*}\m{p}_1:=((1,0),(1,0)),\quad
\m{p}_2:=((-1,0),(1,0)),\quad
\m{p}_3:=((-1,0),(-1,0))\end{align*}
とおくと,$\phi^{-1}(1,0,0)=\{\m{p}_1,\m{p}_2,\m{p}_3\}$である.なお,同様の議論で$g(\m{y})-f(\m{x})\neq0$($\m{x},\m{y}\in S^1$)であることが分かる.
ここで,
\begin{align*}&U_1:=(-\frac{\pi}{6},\frac{\pi}{6}),\quad
U_2:=(\frac{5\pi}{6},\frac{7\pi}{6}),
\\&V:=\set{(x,y)\in\R^2}{x^2+y^2<1},
\\&W_i:=\set{(\cos{\theta},\sin{\theta})\in S^1}{\theta\in U_i},\quad(i=1,2)
\\&W:=\set{(x,y,z)\in S^2}{x>0},\end{align*}
- 3点$\m{p}_1,\m{p}_2,\m{p}_3\in S^1\times S^1$それぞれの局所座標\begin{align*}&\psi_1:W_1\times W_1\to U_1\times U_1;(\cos{\theta},\sin{\theta},\cos{\eta},\sin{\eta})\mapsto(\theta,\eta),
\\&\psi_2:W_2\times W_1\to U_2\times U_1;(\cos{\theta},\sin{\theta},\cos{\eta},\sin{\eta})\mapsto(\theta,\eta),
\\&\psi_3:W_2\times W_2\to U_2\times U_2;(\cos{\theta},\sin{\theta},\cos{\eta},\sin{\eta})\mapsto(\theta,\eta)\end{align*} - $S^2$の点$(1,0,0)$の局所座標\begin{align*}\widetilde{\psi}:W\to V;(\sqrt{1-x^2-y^2},x,y)\mapsto(x,y)\end{align*}
をとる.このとき,
\begin{align*}\phi^{-1}(1,0,0)=\{\psi_1^{-1}(0,0),\psi_2^{-1}(\pi,0),\psi_3^{-1}(\pi,\pi)\}\end{align*}
であり,$\Phi_k:=\widetilde{\psi}\circ\phi\circ\psi_k^{-1}$($k=1,2,3$)が定義できるので,ヤコビ行列$(J\Phi_1)(0,0)$, $(J\Phi_2)(\pi,0)$, $(J\Phi_3)(\pi,\pi)$が正則であることを示せばよい.
ここで,$F:(-\frac{\pi}{2},\frac{3\pi}{2})^2\to\R^3\setminus\{\m{0}_3\}$を
\begin{align*}F(\theta,\eta)=g(\cos{\eta},\sin{\eta})-f(\cos{\theta},\sin{\theta})\end{align*}
で定めると,$\Phi_k(\theta,\eta)=\frac{(-\sin{\theta},\sin{\eta})}{\|F(\theta,\eta)\|}$なので,
\begin{align*}(J\Phi_k)(\theta,\eta)
=\bmat{-\frac{\partial}{\partial\theta}\bra{\frac{\sin\theta}{\|F(\theta,\eta)\|}}&-\frac{\partial}{\partial\eta}\bra{\frac{\sin\theta}{\|F(\theta,\eta)\|}}\\
\frac{\partial}{\partial\theta}\bra{\frac{\sin\eta}{\|F(\theta,\eta)\|}}&\frac{\partial}{\partial\eta}\bra{\frac{\sin\eta}{\|F(\theta,\eta)\|}}}\end{align*}
である($k=1,2,3$).
\begin{align*}&F(\theta,\eta)=(1+\cos{\eta}-\cos{\theta},-\sin{\theta},\sin{\eta}),
\\&\frac{\partial F}{\partial\theta}(\theta,\eta)=(\sin{\theta},-\cos{\theta},0),\quad
\frac{\partial F}{\partial\eta}(\theta,\eta)=(-\sin{\eta},0,\cos{\eta})\end{align*}
なので,
\begin{align*}&F(0,0)=(1,0,0),\quad
F(\pi,0)=(3,0,0),\quad
F(\pi,\pi)=(1,0,0),
\\&\frac{\partial F}{\partial\theta}(0,0)=(0,-1,0),\quad
\frac{\partial F}{\partial\theta}(\pi,0)=(0,1,0),\quad
\frac{\partial F}{\partial\theta}(\pi,\pi)=(0,1,0),
\\&\frac{\partial F}{\partial\eta}(0,0)=(0,0,1),\quad
\frac{\partial F}{\partial\eta}(\pi,0)=(0,0,1),\quad
\frac{\partial F}{\partial\eta}(\pi,\pi)=(0,0,-1)\end{align*}
である.以下,$(\theta,\eta)=(0,0),(\pi,0),(\pi,\pi)$とする.このとき,標準内積について
\begin{align*}\anb{F(\theta,\eta),\frac{\partial F}{\partial\theta}(\theta,\eta)}=\anb{F(\theta,\eta),\frac{\partial F}{\partial\eta}(\theta,\eta)}=\sin{\theta}=\sin{\eta}=0\end{align*}
なので,
\begin{align*}&\frac{\partial}{\partial\theta}\bra{\frac{\sin\theta}{\|F(\theta,\eta)\|}}
=\frac{\cos{\theta}\|F(\theta,\eta)\|-\sin{\theta}\cdot\frac{\anb{F(\theta,\eta),\frac{\partial F}{\partial \theta}(\theta,\eta)}}{\|F(\theta,\eta)\|}}{\|F(\theta,\eta)\|^2}
=\frac{\cos{\theta}}{\|F(\theta,\eta)\|},
\\&\frac{\partial}{\partial\eta}\bra{\frac{\sin\theta}{\|F(\theta,\eta)\|}}
=\frac{-\sin{\theta}\cdot\frac{\anb{F(\theta,\eta),\frac{\partial F}{\partial\eta}(\theta,\eta)}}{\|F(\theta,\eta)\|}}{\|F(\theta,\eta)\|^2}
=0\end{align*}
であり,同様に
\begin{align*}&\frac{\partial}{\partial\theta}\bra{\frac{\sin\eta}{\|F(\theta,\eta)\|}}=0,\quad
\frac{\partial}{\partial\eta}\bra{\frac{\sin\eta}{\|F(\theta,\eta)\|}}=\frac{\cos{\eta}}{\|F(\theta,\eta)\|}\end{align*}
である.よって,
\begin{align*}(J\Phi_1)_{(0,0)}=\bmat{-1&0\\0&1},\quad
(J\Phi_2)_{(\pi,0)}=\bmat{1/3&0\\0&1/3},\quad
(J\Phi_3)_{(\pi,\pi)}=\bmat{1&0\\0&-1}\end{align*}
となり,これらはいずれも正則なので$(1,0,0)\in S^2$は$\phi$の正則値である.
第7問:位相空間論(開集合・閉集合の証明)
見た目はゴツく感じますが,集合$X$, $A$がどのような元をもっているかが把握できれば証明のアイディアは難しくありませんが,近傍を考える際に勘違いしないように少々注意が必要です.
距離空間(ユークリッド空間)における開集合・閉集合であることの証明は慣れておきましょう.
$\R$の部分集合$X$を
\begin{align*}X=\set{\sum_{i=1}^{\infty}\frac{x_i}{3^i}\in\R}{\text{任意の$i\ge1$に対して$x_i\in\{0,2\}$}}\end{align*}
で定める.$\R$のユークリッド距離により,$X$を位相空間とみなす.また,$n$を正の整数,$a_1,\dots,a_n$を集合$\{0,2\}$の元とする.$X$の部分集合$A$を
\begin{align*}A=\set{\sum_{i=1}^{\infty}\frac{x_i}{3^i}\in\R}{\text{$(x_1,\dots,x_n)=(a_1,\dots,a_n)$,任意の$i>n$に対して$x_i\in\{0,2\}$}}\end{align*}
で定める.このとき,$A$が$X$の開集合かつ閉集合であることを示せ.
解答の方針とポイント
$\sum_{i=1}^{\infty}\frac{x_i}{3^i}$が0以上1以下の実数の3進小数展開であることに気付けば,開集合・閉集合であることはいずれも同様のアイディアで証明できます.
実数の3進小数展開と集合$X$, $A$
例えば,実数
\begin{align*}1\times10^2+2\times10^1+3\times10^0+4\times10^{-1}+5\times10^{-2}\end{align*}
のことを通常は$123.45$と表します.同様に,2以上の整数$k$に対して,実数
\begin{align*}x_r k^r+\dots+x_1k^1+x_0k^0+x_{-1}k^{-1}+\dots\bra{=\sum_{i=-\infty}^{r}x_ik^i}\end{align*}
を$x_r\dots x_1x_0.x_{-1}\dots_{(k)}$などと表し,この表示を$k$進数表示といいます.
よって,本問題の実数$\sum_{i=1}^{\infty}\frac{x_i}{3^i}$を3進数表示すると$0.x_1x_2\dots_{(3)}$ということになります.そのため,
- 集合$X$:3進数表示で小数点以下が0または2で表される0以上1以下の実数全部の集合
- 集合$A$:3進数表示で小数第$n$位まで$0.a_1a_2\dots a_n$固定で,小数第$(n+1)$位以下が0または2で表される0以上1以下の実数全部の集合
ということになります.
開集合であることの証明のアイディア
距離空間$(X,d)$に対して,$A\subset X$が開集合であるとは,任意の$p\in A$に対して,ある$\epsilon>0$が存在して,$B_p(\epsilon)\subset A$が成り立つことをいう.ただし,$B_p(\epsilon)$は点$p$の$\epsilon$近傍である:$B_p(\epsilon):=\set{x\in X}{d(p,x)<\epsilon}$.
開集合の定義より,$A$が開集合であることの証明の初手は「任意に$p\in A$をとる」で,うまく$\epsilon>0$をとって,$X\cap(p-\epsilon,p+\epsilon)\subset A$が成り立つことを示せばよいですね.
$p\in A$なので$p=0.a_1a_2\dots a_{n-1}a_n\dots_{(3)}$となっているので,
\begin{align*}\epsilon:=\underbrace{0.00\dots0}_{\text{$n-1$個}}1_{(3)}(=\frac{1}{3^n})\end{align*}
とおくと,$p$の$\epsilon$近傍に属する$X$の任意の元は3進数展開で$0.a_1a_2\dots a_n\dots$となっていそうですね.
閉集合であることの証明のアイディア
位相空間$(X,\mathcal{O})$に対して,$A\subset X$が閉集合であるとは,$X\setminus A$が開集合であることをいう.
開集合の定義より$X\setminus A$が開集合であることを示せばよく,このことの証明の初手は「任意に$p\in X\setminus A$をとる」で,うまく$\epsilon>0$をとって,$X\cap(p-\epsilon,p+\epsilon)\subset X\setminus A$が成り立つことを示せばよいですね.
$p=0.x_1x_2\dots x_{n-1}x_n\dots_{(3)}$とおくと,$p\in X\setminus A$より,ある$j\in\{1,2,\dots,n\}$が存在して$x_j\neq a_j$が成り立っています.そこで,そのような$j$のうち最小のものを$N$とし,
\begin{align*}\epsilon:=\underbrace{0.00\dots0}_{\text{$N-1$個}}1_{(3)}(=\frac{1}{3^N})\end{align*}
とおくと,開集合であることの証明と同様に$p$の$\epsilon$近傍に属する$X$の任意の元は3進数展開で$0.x_1x_2\dots x_{N-1}x_N\dots_{(3)}$となり$A$に属さないことが分かります.
解答例
任意の$y_1,y_2,\dots\in\{-2,0,2\}$と正の整数$N$に対して,
\begin{align*}\abs{\sum_{i=N+1}^{\infty}\frac{y_i}{3^i}}
\le\sum_{i=N+1}^{\infty}\frac{|y_i|}{3^i}
\le\sum_{i=N+1}^{\infty}\frac{2}{3^i}
=\frac{\frac{2}{3^{N+1}}}{1-\frac{1}{3}}
=\frac{1}{3^N}\end{align*}
が成り立つことに注意する.
$A$が開集合であることの証明
任意に$p\in A$をとり,$\epsilon:=\frac{1}{3^n}$とおく.$X$はユークリッド空間の部分位相空間だから,$X\cap(p-\epsilon,p+\epsilon)$は$X$における$p$の開近傍なので,
\begin{align*}X\cap(p-\epsilon,p+\epsilon)\subset A\end{align*}
が成り立つことを示せば,$A$が開であることが分かる.
任意に$q\in X\cap(p-\epsilon,p+\epsilon)$をとり,
\begin{align*}&p=\sum_{i=1}^{\infty}\frac{x_i}{3^i},&&x_1,x_2,\dots\in\{0,2\},
\\&q=\sum_{i=1}^{\infty}\frac{y_i}{3^i},&&y_1,y_2,\dots\in\{0,2\}\end{align*}
とおく.$A$の定義より$x_i=a_i$($i=1,2,\dots,n$)である.
ここで,ある$j\in\{1,2,\dots,n\}$が存在して$y_j\neq a_j$が成り立つと仮定し,このような$j$のうち最小のものを$N$とおくと,
\begin{align*}|p-q|
=\abs{\sum_{i=N}^{\infty}\frac{x_i-y_i}{3^i}}
\ge\frac{2}{3^N}-\abs{\sum_{i=N+1}^{\infty}\frac{x_i-y_i}{3^i}}
\ge\frac{1}{3^N}
\ge\epsilon\end{align*}
が成り立つから,$q\in(p-\epsilon,p+\epsilon)$に矛盾する.よって,$y_i=a_i$($i=1,2,\dots,n$)だから$q\in A$が成り立ち,$X\cap(p-\epsilon,p+\epsilon)\subset A$が従う.
$A$が閉集合であることの証明
任意に$p\in X\setminus A$をとり,
\begin{align*}&p=\sum_{i=1}^{\infty}\frac{x_i}{3^i},
&&x_1,x_2,\dots\in\{0,2\}\end{align*}
とおく.$p\notin A$より,ある$j\in\{1,2,\dots,n\}$が存在して$x_j\neq a_j$が成り立ち,このような$j$のうち最小のものを$N$とおき,$\epsilon:=\frac{1}{3^N}$とおく.
ここで,任意に$a\in A$をとり,
\begin{align*}&a=\sum_{i=1}^{\infty}\frac{a_i}{3^i},
&&a_{n+1},a_{n+2},\dots\in\{0,2\}\end{align*}
とおくと,$|x_N-a_N|=2$なので
\begin{align*}|p-a|
=\abs{\sum_{i=N}^{\infty}\frac{x_i-a_i}{3^i}}
\ge\frac{2}{3^N}-\abs{\sum_{i=N+1}^{\infty}\frac{x_i-a_i}{3^i}}
\ge\epsilon\end{align*}
が成り立つ.よって,$X\cap(p-\epsilon,p+\epsilon)\subset X\setminus A$が従うから$X\setminus A$は$X$の開集合なので,$A$は$X$の閉集合である.
参考文献
以下,私も使ったオススメの入試問題集を挙げておきます.
詳解と演習大学院入試問題〈数学〉
[海老原円,太田雅人 共著/数理工学社]
理工系の修士課程への大学院入試問題集ですが,基礎〜標準的な問題が広く大学での数学の基礎が復習できる総合問題集として利用することができます.
実際,まえがきにも「単なる入試問題の解説にとどまらず,それを通じて,数学に関する読者の素養の質を高めることにある」と書かれているように,必ずしも大学院入試を受験しない一般の学習者にとっても学びやすい問題集です.また,構成が読みやすいのも個人的には嬉しいポイントです.
第1章 数え上げと整数
第2章 線形代数
第3章 微積分
第4章 微分方程式
第5章 複素解析
第6章 ベクトル解析
第7章 ラプラス変換
第8章 フーリエ変換
第9章 確率
一方で,問題数はそれほど多くないので,多くの問題を解きたい方には次の問題集もオススメです.
なお,本書については,以下の記事で書評としてまとめています.
【オススメの問題集|詳解と演習 大学院入試問題(数理工学社)】
本書の目次・必要な知識・良い点と気になる点・オススメの使い方などをレビューしています.
演習 大学院入試問題
[姫野俊一,陳啓浩 共著/サイエンス社]
上記の問題集とは対称的に問題数が多く,まえがきに「修士の基礎数学の問題の範囲は,ほぼ本書中に網羅されている」と書かれているように,広い分野から問題が豊富に掲載されています.
全2巻で,
1巻第1編 線形代数
1巻第2編 微分・積分学
1巻第3編 微分方程式
2巻第4編 ラプラス変換,フーリエ変換,特殊関数,変分法
2巻第5編 複素関数論
2巻第6編 確率・統計
が扱われています.
地道にきちんと地に足つけた考え方で解ける問題が多く,確かな「腕力」がつくテキストです.入試では基本問題は確実に解けることが大切なので,その意味で試験への対応力が養われると思います.
なお,私自身は受験生時代に計算力があまり高くなかったので,この本の問題で訓練したのを覚えています.
なお,本書については,以下の記事で書評としてまとめています.
【オススメの問題集|演習 大学院入試問題[数学](サイエンス社)】
本書の目次・必要な知識・良い点と気になる点・オススメの使い方などをレビューしています.



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