線形代数15|固有値と固有ベクトルは2ステップで求める!

前回の記事では,固有値固有ベクトルが正方行列の対角化と密接に関わっていることを説明し

  • 対角化を用いた正方行列$A$の冪$A^n$の計算
  • 対角化可能であるための基本定理

を説明しました.

今回の記事では,この固有値と固有ベクトルの求め方を説明します.

結論から言えば

  1. 固有方程式から固有値を求める
  2. 連立方程式を解いて固有ベクトルを求める

という順番で固有値,固有ベクトルを求めることができます.

この記事では,

  • 固有多項式固有方程式とは何か
  • 固有値と固有ベクトルの求め方

を説明します.

固有値と固有ベクトルの復習

念のため,前回の記事で説明した固有値固有ベクトルの定義を確認します.

この記事では

  • 実数成分の$n$次正方行列の集合を$\Mat_{n}(\R)$
  • 複素数成分の$n$次正方行列の集合を$\Mat_{n}(\C)$
  • 実数成分の$n$次ベクトルを$\R^n$
  • 複素数成分の$n$次ベクトルを$\C^n$

と表します.

[固有値・固有ベクトル] $A\in\Mat_{n}(\C)$に対して,$\lambda\in\C$と$\m{a}\in\C^n\setminus\{\m{0}\}$が存在して$\lambda\m{a}=A\m{a}$が成り立つとき,$\lambda$を$A$の固有値,$\m{a}$を$A$の固有値$\lambda$に属する固有ベクトルという.

定義で零ベクトル$\m{0}$を除いているように「固有ベクトルは$\m{0}$でない」というのは忘れがちですが,実は大事なのでしっかり意識してください.

図形的には零ベクトルでない$\m{a}\in\C^n$を勝手にとってきたとき,$\m{a}$は$A\m{a}\in\C^n$と平行とは限りませんが,うまく$\m{a}$をとれば$A\m{a}$と$\m{a}$が平行になることがあります.

つまり,$\lambda\in\C$をうまくとって$A\m{a}=\lambda\m{a}$となるような$\m{a}$をとれることがあります.

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このときの$\m{a}$を固有値ベクトル,伸び率$\lambda$を固有値というわけですね.

$A\m{a}=\m{0}$のときは$\lambda=0$で$A\m{a}=\lambda\m{a}$を満たすので,$0$は$A$の固有値となりますね.

2つのベクトルの片方が零ベクトルのときは平行とは言わないので,$A\m{a}=\m{0}$の場合は$A\m{a}$と$\m{a}$は平行ではありませんが,ここはイメージの説明なのでざっくり「平行」と説明している次第です.

固有値と固有ベクトルの求め方

冒頭でも説明したように,固有値と固有ベクトルは

  1. 固有方程式から固有値を求める
  2. 連立方程式を解いて固有ベクトルを求める

という順番で求めることができます.

固有多項式と固有方程式

結論から言えば,正方行列$A$の固有値は$A$の固有方程式の解に一致します.

ということで,まずは固有多項式固有方程式の定義を述べます.

[固有多項式,固有方程式] $A\in\Mat_{n}(\C)$に対して

  • $x$の多項式$|xI-A|$を$A$の固有多項式 (characteristic polynomial)
  • $x$の方程式$|xI-A|=0$を$A$の固有方程式 (characteristic equation)

という.ただし,$I$は$n$次正方行列であり,$|xI-A|$は正方行列$xI-A$の行列式である.

具体例を考えると,固有多項式と固有方程式がどういうものかすぐに分かると思います.

次の正方行列の固有多項式,固有方程式を求めよ.また,固有方程式を解け.

  1. $A=\bmat{1&2\\2&1}$
  2. $B=\bmat{1&1&0\\2&0&0\\0&0&-1}$

(1) $A=\bmat{1&2\\2&1}$の固有多項式は

\begin{align*} |xI-A| =&\abs{x\bmat{1&0\\0&1}-\bmat{1&2\\2&1}} =\vmat{x-1&-2\\-2&x-1} \\=&(x-1)\cdot(x-1)-(-2)\cdot(-2) \\=&x^2-2x-3 =(x-3)(x+1) \end{align*}

である.また,$A$の固有方程式は$(x-3)(x+1)=0$であり,解くと$x=-1,3$となる.

(2) $B=\bmat{1&1&0\\2&0&0\\0&0&-1}$の固有多項式は

\begin{align*} |xI-B| =&\abs{x\bmat{1&0&0\\0&1&0\\0&0&1}-\bmat{1&1&0\\2&0&0\\0&0&-1}} =\vmat{x-1&-1&0\\-2&x&0\\0&0&x+1} \\=&(x+1)\vmat{x-1&-1\\-2&x} =(x+1)\{(x-1)\cdot x-(-1)\cdot(-2)\} \\=&(x+1)(x^2-x-2) =(x+1)^2(x-2) \end{align*}

である.また,$B$の固有方程式は$(x+1)^2(x-2)=0$であり,解くと$x=-1,2$となる.

$A$が$n$次正方行列なら,行列式として対角成分の積に$n$次の項が現れるので,固有多項式$|xI-A|$は$n$次式となりますね.

固有値の求め方

先程書いたように固有値と固有方程式の解は一致します.

つまり,次の定理が成り立ちます.

[固有値] $\lambda\in\C$, $A\in\Mat_{n}(\C)$に対して,次は同値である.

  1. $\lambda$は$A$の固有値である.
  2. $\lambda$は固有方程式$|xI-A|=0$の解(固有多項式$|xI-A|$の根)である.

2つ目の条件は「$\lambda$は$|\lambda I-A|=0$を満たす」と書いても同じことですね.


[$(1)\Ra(2)$の証明] $A$の固有値$\lambda$に属する固有ベクトルを$\m{a}$とする.

このとき,$A\m{a}=\lambda\m{a}$が成り立つから,移項して

\begin{align*} \m{0}=(\lambda I-A)\m{a} \end{align*}

が成り立つ.もし$\lambda I-A$が正則なら,両辺に左から$(\lambda I-A)^{-1}$をかけて$\m{0}=\m{a}$となるが,$\m{a}$は固有ベクトルだから$\m{a}\neq\m{0}$なので矛盾する.

よって,$\lambda I-A$は正則でないから,$|\lambda I-A|=0$を満たす.

[$(2)\Ra(1)$の証明] $|\lambda I-A|=0$が成り立つなら,$\m{x}$の連立方程式$(\lambda I-A)\m{x}=\m{0}$は非自明解($\m{x}\neq\m{0}$なる解)$\m{a}$をもつ.

よって,$\m{a}$は非自明解だったから$\m{a}\neq\m{0}$であり,

\begin{align*} \m{0}=(\lambda I-A)\m{a} \iff A\m{a}=\lambda\m{a} \end{align*}

が成り立つから,$\lambda$は$A$の固有値(で,$\m{a}$は$A$の固有値$\lambda$に属する固有ベクトル)である.

この定理より,具体的に先程の問題の行列について

  • $A=\bmat{1&2\\2&1}$の固有値は,固有方程式の解と一致して$-1$, $3$
  • $A=\bmat{1&2&0\\2&0&0\\0&0&-1}$の固有値は,固有方程式の解と一致して$-1$, $2$

となりますね.

固有ベクトルの求め方

$\lambda$が正方行列$A$の固有値と分かっていれば,$\m{v}$が固有値$\lambda$に属する固有ベクトルであることは

\begin{align*} A\m{v}=\lambda\m{v} \iff (A-\lambda I)\m{v}=\m{0} \end{align*}

を満たすことに他なりません.

これは$\m{x}$の連立方程式$(A-\lambda I)\m{x}=\m{0}$の解が$\m{v}$であることと同じことですから,この連立方程式の解が固有ベクトルとなりますね.

固有値が分かれば,定義から得られる連立方程式を解くことで固有ベクトルが得られます.

正方行列$A=\bmat{1&2\\2&1}$の固有ベクトルを求めよ.

$\m{x}$の連立方程式$P\m{x}=\m{q}$は,拡大係数行列$[P,\m{q}]$に行基本変形を施すことで解けることを思い出しておきましょう.

$A=\bmat{1&2\\2&1}$の固有値が$-1$ ,$3$であることは上で説明したので

  • 固有値$-1$に属する固有ベクトル
  • 固有値$3$に属する固有ベクトル

を求めれば良い.

(i) $\m{v}$が「$A$の固有値$-1$の固有ベクトル」であることと

\begin{align*} A\m{v}=(-1)\m{v} \iff(A+I)\m{v}=\m{0} \end{align*}

を満たすことは同値である.すなわち,$\m{x}$の連立方程式$(A+I)\m{v}=\m{0}$の解が「$A$の固有値$1$の固有ベクトル」である.

$A+I$は行基本変形により

\begin{align*} A+I =\bmat{1&2\\2&1}+\bmat{1&0\\0&1} =\bmat{2&2\\2&2} \to\bmat{1&1\\0&0} \end{align*}

となるから,掃き出し法の考え方から$\m{x}=c\bmat{1\\-1}$ ($c\neq0$)が$(A+I)\m{v}=\m{0}$の解である.

よって,「$A$の固有値$-1$の固有ベクトル」は$c\bmat{1\\-1}$ ($c\neq0$)である.

(ii) $\m{v}$が「$A$の固有値$3$の固有ベクトル」であることと

\begin{align*} A\m{v}=3\m{v} \iff(A-3I)\m{v}=\m{0} \end{align*}

を満たすことは同値である.すなわち,$\m{x}$の連立方程式$(A-3I)\m{v}=\m{0}$の解が「$A$の固有値$3$の固有ベクトル」である.

$A-3I$は行基本変形により

\begin{align*} A-3I =\bmat{1&2\\2&1}-3\bmat{1&0\\0&1} =\bmat{-2&2\\-2&2} \to\bmat{1&-1\\0&0} \end{align*}

となるから,掃き出し法の考え方から$\m{x}=c\bmat{1\\1}$ ($c\neq0$)が$(A-3I)\m{v}=\m{0}$の解である.

よって,「$A$の固有値$3$の固有ベクトル」は$c\bmat{1\\1}$ ($c\neq0$)である.

この例からも分かることですが,

  • 固有ベクトルは固有値ごとに異なる
  • 固有ベクトルは1つではない($c$のとりかたによって変わる)

ということに注意してください.

2つ目の注意について$A$の固有値$-1$の固有ベクトルは$c\bmat{1\\-1}$と求まりましたが,これは$c=1$とした$\bmat{1\\-1}$や,$c=-2$とした$\bmat{-2\\2}$なども固有ベクトルです(実際に$A\m{v}=(-1)\m{v}$を満たすことを確かめてみてください)

また,$c\neq0$としているのは,固有ベクトルは定義で$\m{0}$でないとしているためです.

次の記事では,固有値・固有ベクトルの性質を説明します.

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