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線形代数4|連立1次方程式が解をもつ条件と解の自由度

中学校以来よく扱ってきた\m{x}の連立1次方程式は,行列Aとベクトル\m{c}を用いてA\m{x}=\m{c}と表すことができるのでした.

このことからも分かるように連立1次方程式は線形代数学と密接に関わっており,実際に線形代数学の基礎を理解する上で連立1次方程式を理解することは非常に重要です.

連立1次方程式A\m{x}=\m{c}

  • 係数行列のランク\rank{A}
  • 拡大係数行列のランク\rank{[A,\m{c}]}

を比べることで,解をもつ条件を求めることができます.

この記事では,「係数行列」と「拡大係数行列」,行列の「ランク」について復習をしたのち,

  • 連立1次方程式が解をもつ条件
  • 解の自由度

を考えます.

なお,この記事では実数\Rを中心に説明しますが,複素数\Cなど一般の体に対しても同様です.

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いくつかの復習

本題に入る前に,

  • 連立1次方程式の係数行列拡大係数行列
  • 行列のランク

について復習をしておきましょう.

それぞれの詳しい説明は第2回の記事,第3回の記事を参照してください.

係数行列と拡大係数行列

連立1次方程式の係数行列と拡大係数行列は次のように定義されます.

A\in\Mat_{mn}(\R)\m{c}\in\R^{m}に対し,A, [A,\m{c}]をそれぞれ連立方程式A\m{x}=\m{c}係数行列 (coefficient matrix),拡大係数行列 (enlarged coefficient matrix)という.

例えば,A=\bmat{1&2&3\\4&5&6}, \m{c}=\bmat{7\\8}に対し,\m{x}=\bmat{x\\y\\z}の連立1次方程式A\m{x}=\m{c}

\begin{align*} &\bmat{1&2&3\\4&5&6}\bmat{x\\y\\z}=\bmat{7\\8} \\\iff&\begin{cases} x+2y+3z=7\\ 4x+5y+6z=8 \end{cases} \end{align*}

で,この係数行列,拡大係数行列はそれぞれ

\begin{align*} A=\bmat{1&2&3\\4&5&6},\quad [A,\m{c}]=\bmat{1&2&3&7\\4&5&6&8} \end{align*}

ですね.

行列のランク

行列のランクを定義するためには,以下の事実が必要なのでした.

行基本変形により,任意の行列は簡約行列に変形できる.

なお,簡約行列とは,

\begin{align*} &\bmat{1&0&3&0\\0&1&0&0\\0&0&0&1},\quad \bmat{0&1&0&4\\0&0&1&2\\0&0&0&0},\quad \bmat{1&0\\0&1\\0&0} \end{align*}

のように,

  • i行から第i+1行に移るごとに左側から0が増えていき,
  • 各行の0でない最も左の成分が全て1であるような行列

のことを言うのでした.

さて,このことから行列のランクは以下のように定義されます.

行列Aに対して,Aに行基本変形を施して簡約行列Bになったとき,零行ベクトルでないBの行の個数をAランク (階数,rank)といい,\rank{A}\operatorname{rk}{A}などと表す.

例えば,行基本変形により

\begin{align*} \bmat{2&3&-2\\2&-2&8\\-3&0&-6} \to&\bmat{2&3&-2\\1&-1&4\\-3&0&-6} \to\bmat{2&3&-2\\1&-1&4\\-1&0&-2} \\\to&\bmat{1&-1&4\\2&3&-2\\-1&0&-2} \to\bmat{1&-1&4\\0&5&-10\\0&-1&2} \\\to&\bmat{1&-1&4\\0&1&-2\\0&-1&2} \to\bmat{1&-1&4\\0&1&-2\\0&0&0} \end{align*}

なので,

\begin{align*} \rank{\bmat{2&3&-2\\2&-2&8\\-3&0&-6}} =\rank{\bmat{1&-1&4\\0&1&-2\\0&0&0}} =2 \end{align*}

ですね.

連立1次方程式と解と自由度

それでは本題に移ります.

具体例から

まずは3つ具体例を考えます.

次の行列Aとベクトル\m{c}に対して,\m{x}=[x,y,z]^{T}の連立1次方程式A\m{x}=\m{c}は解を持つか.

  1. A=\bmat{1&1&1\\0&1&0\\0&0&1}, \m{c}=\bmat{1\\2\\3}
  2. A=\bmat{1&1&1\\0&1&0\\0&0&0}, \m{c}=\bmat{1\\2\\3}
  3. A=\bmat{1&1&2\\1&2&3}, \m{c}=\bmat{3\\2}

素朴に掃き出し法で考えましょう.

(1) 拡大係数行列[A,\m{c}]を行基本変形により簡約化すると

\begin{align*} [A,\m{c}] =&\bmat{1&1&1&1\\0&1&0&2\\0&0&1&3} \\\to&\bmat{1&0&1&-1\\0&1&0&2\\0&0&1&3} \\\to&\bmat{1&0&0&-4\\0&1&0&2\\0&0&1&3} \end{align*}

なので,連立方程式は(x,y,z)=(-4,2,3)と解けますね.

(2) 拡大係数行列[A,\m{c}]を行基本変形により簡約化すると

\begin{align*} [A,\m{c}] =&\bmat{1&1&1&1\\0&1&0&2\\0&0&0&3} \\\to&\bmat{1&0&1&-1\\0&1&0&2\\0&0&0&3} \end{align*}

なので,これに対応する連立方程式は

\begin{align*} \begin{cases} x+z=-2\\ y=2\\ 0=3 \end{cases} \end{align*}

となります.この連立方程式の第3式はどのように(x,y,z)を選んでも満たしえませんから,解なしとなります.

(3) 拡大係数行列[A,\m{c}]を行基本変形により簡約化すると

\begin{align*} [A,\m{c}] =&\bmat{1&1&2&3\\1&2&3&2} \\\to&\bmat{1&1&2&3\\0&1&1&-1} \\\to&\bmat{1&0&1&4\\0&1&1&1} \end{align*}

なので,これに対応する連立方程式は

\begin{align*} \begin{cases} x+z=4\\ y+z=1 \end{cases} \end{align*}

となります.このとき,zに任意に値を代入でき,それぞれの場合でx, yの値が決まります.

よって,z=c (cは任意定数)とすることで,解は(x,y,z)=(4-c,1-c,c)と表せることが分かりました.

解をもつための条件

この2つ目の例では

  • \rank{A}=2
  • \rank{[A,c]}=3

となっています.

このように,「係数行列のランクが拡大係数行列のランクより小さいと,どう頑張っても成り立たない等式0=a (a\neq0)が現れて解けない」ということが見てとれます.

実際,一般に以下が成り立ちます.

A\in\Mat_{mn}(\R)\m{c}\in\R^{m}に対し,以下が成り立つ.

  1. \rank{A}<\rank{[A,\m{c}]}が成り立つことと,\m{x}の連立方程式A\m{x}=\m{c}が解をもたないことは同値である.
  2. \rank{A}=\rank{[A,\m{c}]}が成り立つことと,\m{x}の連立方程式A\m{x}=\m{c}が解をもつことは同値である.

[A,\m{c}]の簡約化を[B,\m{d}]とする.

このとき,\rank{B}\le\rank{[B,\m{d}]}が成り立つことに注意すると,行基本変形によるランクの不変性と併せて

\begin{align*} \rank{A}=\rank{B}\le\rank{[B,\m{d}]}=\rank{[A,\m{c}]} \end{align*}

が成り立つ.よって,\rank{A}\rank{[A,\m{c}]}の関係は

  • \rank{A}<\rank{[A,\m{c}]}
  • \rank{A}=\rank{[A,\m{c}]}

のいずれかとなる.

ここで,\m{d}=[d_{1},\dots,d_{m}]^{T}とする.

(1) \rank{A}<\rank{[A,\m{c}]}のとき,\rank{B}<\rank{[B,\m{d}]}である.

このとき,あるj\in\{1,\dots,m\}が存在して

  • Bの第j行の成分は全て0である
  • \m{d}の第j成分は0でない

が成り立つ.

これにより,連立方程式B\m{x}=\m{d}j番目の方程式の左辺は0であるが,右辺は0ではないから,j番目の方程式を満たす\m{x}は存在せずB\m{x}=\m{d}は解をもたない.

(2) \rank{A}=\rank{[A,\m{c}]}のとき,\rank{B}=\rank{[B,\m{d}]}である.

主成分をもたない列に対応する未知数x_{i}を全て0とし,主成分をもつ列に対応する未知数x_{i}を順にd_1,\dots,d_mとしてできた\m{x}B\m{x}=\m{d}の解となる.

よって,B\m{x}=\m{d}は解をもつ.

これで,(1), (2)の必要性が示された.

逆に,(1)の必要性の対偶をとれば(2)の十分性が従い,(2)の必要性の対偶をとれば(1)の十分性が従う.

解の自由度

次に連立1次方程式A\m{x}=\m{c}が解をもつときの解の様子をもう少し詳しく考えましょう.

したがって,次は\rank{A}=\rank{[A,\m{c}]}として考えます.

先ほどの具体例の3つ目のように,係数行列を簡約化したとき,主成分の存在しない列に対応する未知数に任意定数を与えると,方程式の解を全て表すことができます.

これについて,「解の自由度」を以下のように定義します.

A\in\Mat_{mn}(\R)\m{c}\in\R^{m}に対し,\m{x}の連立方程式A\m{x}=\m{c}の解が任意定数をk個含むとき,解の自由度kであるという.

解の自由度について,以下の定理が成り立ちます.

A\in\Mat_{mn}(\R), \m{c}\in\R^{n}に対して,N:=\rank{A}=\rank{[A,\m{c}]}をみたすとする.このとき,\m{x}の方程式A\m{x}=\m{c}の解の自由度はn-Nである.

[A,\m{c}]の簡約化を[B,\m{d}]とする.

このとき,\rank{B}=\rank{A}=NなのでBの主成分はN個あるから,Bの主成分が存在しない列は(n-N)個ある.

このBの主成分が存在しない列に対応する未知数x_{i_{1}},\dots,x_{i_{n-N}}それぞれに任意定数c_{1},\dots,c_{n-N}を与えると,\m{x}の連立方程式B\m{x}=\m{d}の残りの未知数は全てc_{1},\dots,c_{n-N}で一意に表される.

すなわち,B\m{x}=\m{d}の解の自由度はn-Nとなる.

連立方程式A\m{x}=\m{c}B\m{x}=\m{d}の解は一致するので,A\m{x}=\m{c}の解の自由度もn-Nとなり,定理が従う.

すなわち,\rank{A}(=\rank{[A,\m{c}]})が未知数の個数に比べて小さいほど,自由度が大きいわけですね.

まとめ

以上のことをイメージとしてまとめておきましょう.

例えば,2つの連立方程式

\begin{align*} \begin{cases} x+2y=1\\ 4x+5y=2\\ 7x+8y=3 \end{cases},\quad \begin{cases} x+2y+3z=1\\ 4x+5y+6z=2\\ \end{cases} \end{align*}

を考えます.これらを比べたとき

  • 前者のように,未知数が方程式の個数に比べて少ないときは,未知数の制限が強く解が存在しないかもしれない
  • 後者のように,未知数が方程式の個数に比べて多いときは,未知数の制限が弱く未知数はけっこう自由にとれそう

というわけです.

そして実際に連立方程式A\m{x}=\m{c}の未知数の制限の強さは

  • 係数行列のランク\rank{A}
  • 拡大係数行列のランク\rank{[A,\m{c}]}

の差によって決まるというわけですね.

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