2次列ベクトル全部の集合
を考えましょう.この
を満たすことは(計算しても図形的にも)簡単に分かりますね.
このように「
この記事では
の部分空間の定義 の部分空間の具体例 の部分空間の基本性質
を順に説明します.
なお,特に断らない限り以下では実行列・実ベクトルを扱うことにしますが,複素行列など一般の体を成分とする行列・ベクトルに対しても同様です.
「線形代数学の基本」の一連の記事
- 行列と列ベクトル
- 行列式
の部分空間と基底
部分空間の定義
冒頭で述べた列ベクトル全部の空間
[部分空間]
- 任意の
に対して が成り立つ. - 任意の
, に対して が成り立つ.
要は
は和について閉じている はスカラー倍について閉じている
といいます.
実はより一般に線形空間というものが定義され,線形空間の部分集合で線形空間の性質を満たす集合を線形部分空間と呼びます.
しかし,
部分空間の具体例
それでは,いくつか部分空間を紹介していきます.
例1(自明な部分空間1)
まずは簡単な部分空間をひとつ考えましょう.
このとき,
定義通りに
任意の
なので,
一般に
このように
例2(自明な部分空間2)
もうひとつ簡単な部分空間を考えましょう.
やはり定義通りに
任意の
このとき,
となって
一般に
このように,
例3( の部分空間)
次に冒頭で挙げた集合
が
[1]和について閉じていることを示す.任意に
このとき,
となる.これは
すなわち,
[2]スカラー倍について閉じていることを示す.任意に
このとき,
となる.これは
[1]と[2]より
例4( の部分空間1)
次のような集合も例3と同様に部分空間になることが分かります.
が
[1]和について閉じていることを示す.任意に
このとき,
であり,この2×(第1成分)+(第2成分)-(第3成分)$は
となっている.よって,
[2]スカラー倍について閉じていることを示す.任意に
このとき,
であり,この2×(第1成分)+(第2成分)-(第3成分)は
となっている.これより
[1]と[2]より
例5( の部分空間2)
条件を2つ以上もつ次の
が
- (第1成分)+(第2成分)+(第3成分)=0
- (第1成分)-(第2成分)+(第3成分)=0
の両方を満たす
条件の数が増えても部分空間であることを示すためにやることは同じです.
[1]和について閉じていることを示す.任意に
このとき,
であり,
- (第1成分)+(第2成分)+(第3成分)は
- (第1成分)-(第2成分)+(第3成分)は
となっている.よって,
[2]スカラー倍について閉じていることを示す.任意に
このとき,
であり,
- (第1成分)+(第2成分)+(第3成分)は
- (第1成分)-(第2成分)+(第3成分)は
となっている.これより
[1]と[2]より
例6( の部分空間3)
次の空間も本質的には例5までと何も変わりません.
が
あくまで和とスカラー倍について閉じていることを示すだけですね.
[1]和について閉じていることを示す.任意に
このとき,
となっている.よって,
[2]スカラー倍について閉じていることを示す.任意に
このとき,
となっている.これより
[1]と[2]より
なので,例5と同じようにして成分で示すこともできます.
しかし,行列は積について分配法則を満たしますから,いまの解答例のように行列のまま考える方が楽ですね.
なお,例5の
例6のように左から行列
部分空間の直感的な判定
次に部分空間が満たす基本性質を紹介します.
部分空間の基本性質
- 任意の
, に対して
言葉で説明すれば,それぞれ
は必ず零ベクトル を持つ に属する2つのベクトルをどのように伸ばして足し合わせても の元である
と言うことができますね.
このことから,
部分空間であるための必要十分条件
実はいまの命題の(2)は
は部分空間である.- 任意の
, に対して が成り立つ.
また,(2)が成り立つとき,
この定理があるため,教科書によってはこの(2)の性質をみたす集合
部分空間でない例
今の次に部分空間でない例を考えます.
はともに
上の基本性質で説明したように
また,部分空間は和とスカラー倍で閉じているため「真っ直ぐ」な空間となっているはずで,
このことを踏まえてきちんと書くと次のようになります.
だから,
上の基本性質を当たり前にしておけば,直感的に部分空間かどうか判断できますね.
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