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正方行列の対角化と応用例|固有値・固有ベクトルの定義も解説

線形代数学の基本
線形代数学の基本

例えば,正方行列A=[1221]に対して,正則行列P=[1111]を用意すると,

P1AP=[3001]

P1AP対角行列となります.

このように,正方行列Aに対して,うまく正則行列Pを用意してP1APを対角行列にすることを,正方行列A対角化といいます.

実は「正方行列の対角化があることによって線形代数が広く応用される分野になっている」と言ってもよいくらい,正方行列の対角化は非常に応用範囲が広く,線形代数の中でも特に重要です.

この記事では

  • 対角化と対角化の応用例
  • 対角化と固有値・固有ベクトル
  • 固有値,固有ベクトルの図形的な意味

を順に説明します.

線形代数学の参考文献

以下は線形代数学に関するオススメの教科書です.

大学教養 線形代数(加藤文元 著)

数学科など理論系の学生向けの線形代数の入門書です.平易な例から丁寧に説明されています.

手を動かしてまなぶ 線形代数(藤岡敦 著)

理論と演習のバランスをとりながら勉強したい人にオススメの入門書です.

対角化と対角化の応用例

まずは正方行列AべきAkの計算に対角化が利用できることを説明します.

行列の冪と対角行列

例えば,A=[1234]とすると,

A2=AA=[11+2312+2431+4332+44]=[7101522],A3=A2A=[71+10372+104151+223152+224]=[375481118],A4=A3A=

と計算することができますが,この計算を見れば分かるように一般に正方行列AべきAkを直接計算するのはとても面倒です.

一方,対角行列B=[200010001]の冪Bk

B2=[400010001],B3=[800010001],B4=[1600010001]

のように対角行列の冪は簡単に計算することができます.一般に次が成り立ちます.

対角行列X=[λ1000λ2000λn]に対して,Xk=[λ1k000λ2k000λnk]k=1,2,)が成り立つ.

数学的帰納法により示す.k=1のときに成り立つことは明らかで,あるkで成り立つとすると

Xk+1=XkX=[λ1k000λ2k000λnk][λ1000λ2000λn]=[λ1k+1000λ2k+1000λnk+1]

となってk+1でも成り立つ.

つまり,「対角行列のk乗は対角成分をk乗した対角行列になる」というわけですね.

対角化と行列の冪

対角行列の冪が簡単に計算できることを用いて,一般の正方行列Aの冪Akを(直接計算するより)簡単に計算する方法を考えましょう.

n次正方行列Aに対して,B=P1APが成り立つようなn対角行列Bn正則行列Pが得られたとします.

このとき,両辺をk乗(k=1,2,)すると,行列の積の結合法則から

Bk=(P1AP)k=(P1AP)(P1AP)(P1AP)=P1A(PP1)A(PP1)AA(PP1)AP=P1AAAAAP=P1AkP

が成り立ちます.正方行列Aの間にできているPP1単位行列となるので,積を計算すると消えて連続したAの積になっているわけですね.

このように得られたB=P1AkPの両辺に左からP,右からP1をかけると

Ak=PBkP1

が得られます.対角行列Bの冪Bkは簡単に計算でき,もともとPは得られているので,PBkP1を計算すれば,Akが計算できることになりますね.

ここで考えたB=P1APを次のようにいいます.

[対角化]正方行列Aに対して,正則行列Pが存在してB:=P1APが対角行列となるとき,APにより対角化可能であるといい,BA対角化という.

対角化可能な正方行列Aの冪Akは簡単に計算できる,というのが今説明したことですね.

全ての正方行列が対角化可能であるとは限りません.つまり,B=P1APを満たす対角行列Bと正則行列Pが存在しないこともあります.





対角化と固有値・固有ベクトル

次に正方行列Aが対角化可能であるときに,どのようなことが成り立つのかを考えます.

対角化可能な正方行列

対角化可能なn次正方行列Aに対して,B=P1APを満たす対角行列B正則行列Pが存在するので,

B:=[λ1000λ2000λn],P:=[p1,p2,,pn]

とおきましょう.Bは対角行列で,Pn次ベクトルp1,,pnを並べてできた行列ですね.

B=P1APの両辺に左からPをかけるとPB=APで,これを列ベクトルを用いて表すと

[λ1p1,,λnpn]=[Ap1,Ap2,,Apn]()

となりますね.ここで,等式()の各列を比較すると

  • Aの対角化Bの対角成分の(i,i)成分λi
  • Aを対角化させるPの第ipi

λipi=Apiを満たしていますね.

固有値・固有ベクトルの定義

ここで,固有値固有ベクトルを次のように定義します.

[固有値・固有ベクトル]n次正方行列Aに対して,スカラーλ0でないn次列ベクトルpが存在してλp=Apが成り立つとき,λA固有値pAの固有値λに属する固有ベクトルという.

この「固有値」「固有ベクトル」という言葉を用いると,いま説明したことは以下のようになりますね.

[対角化可能な正方行列]n対角行列An正則行列P=[p1,,pn]によって

P1AP=B:=[λ1000λ2000λn]

と対角化されるとき,

  • λiAの固有値(i=1,,n
  • Pの第ipiは,Aの固有値λiに属する固有ベクトル

である:

B=P1APPB=AP[λ1p1,λ2p2,,λnpn]=[Ap1,Ap2,,Apn]

この意味で,正方行列の対角化は固有値と固有ベクトルと密接に関わっていることになります.

逆に「どのようなときに対角化可能か」を考えるには,固有値・固有ベクトルについての知識が必要です.





固有値・固有ベクトルの図形的な意味

最後に固有値・固有ベクトルの図形的な意味を考えておきましょう.

まず0でないaRnを用意します.

このaに左からn正方行列AをかけるとAaRnとなりますが,一般にこのAaaに平行かどうかは分かりません.つまり,aによっては

  • 平行になっていなかったり

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  • aAaが平行になっていたり

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するわけですが,後者のようにうまくaをとってaAaが平行(またはAa=0)になっていれば,

Aa=λa

となるλRが存在します.

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この等式はまさに固有値と固有ベクトルの定義式で,このときのaを固有ベクトルといい,このときの伸び率λを固有値というわけですね.

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